巨象も踊る

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (462ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532310233

感想・レビュー・書評

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  • 必要なのは指導力と、目指すべき方向が明確で勢いがついているとの感覚だ。

  • 瀕死の巨大企業IBMをV字回復させた名経営者ルイスガーナーの自伝。この堕ちゆくジャイアントカンパニーを巨像と喩え如何に躍らせるかが書かれている。

    以下、備忘としたいフレーズ
    ・企業文化が経営のひとつの側面などではないことを理解するようになった。ひとつの側面ではなく、経営そのものなのだ。
    ・企業は狭いセグメントに事業を絞り込みすぎて、市場の重要な変化を見逃すことがある。
    ・世の中には四種類の人がいる。
    動きを起こす人
    動きに巻き込まれた人
    動きを見守る人
    動きが起こったことすら知らない人

  • 永代橋すぐそばのIBMは良く近くを通る事もあり親近感があった。IBMが過去にどのような経緯を経てきたかざっくりとした知識はあったものの、その変化の肝要となる10年間に具体的に何が起きていたのかは知らなかった。

    特に印象に残るのは20章企業文化、22章原則による指導(リーダーシップ)。ルイス・ガースナーは「企業文化が経営のひとつの側面ではない」、「経営そのもの」と述べ、しかもほとんどの企業が自社の企業文化を同じ言葉で表現していて本当に重要なルールはどこにも書かれていないと指摘する。また、ガースナーはプロセスを廃し、原則の表明を主張した。組織がルール、規定、プロセスを重んじる傾向は理解できるが、本質的な判断は原則に基づく必要がある。そして矛盾するようだが、日々の全ての具体的な行動もこの原則に基づく必要がある。これらは20年前の出来事だが、2020年代の今、さらに重要性を増していると感じる。

  • IBMをV字回復させたルイス・ガースナーの自伝。「新たなビジョンを打ち出し全従業員を奮起させ全てが変わった」という内容ではなく「ビジョンなんかよりも出来る改革を地道に行う」経営管理のお手本のようなストーリー。ビジョン経営に苦手意識をもつ自分には相性が良かった。

    ・小さいものは美しく大きいものは醜いという常識は戯言。
    ・小企業の経営者は建前ではゴリアテに挑むダビデを装っているが、本音では大企業のように資源を使える立場になりたいと思っている。大きいことは良い事であり規模は力
    ・ビジョンに頼るのではなく、細部までの分析に頼る
    ・権限分散、権限委任、権限集中。言葉でいろいろ論じられているが結局バランス。流行りの権限分散は弱点だらけ
    ・絞り込み、実行、リーダーシップの3点で組織は変われる

  • イノベーションのジレンマに陥りOSをマイクロソフト、マイクロプロセッサーをインテル、DBをオラクルに譲っていた1990年代のIBMを改革したルイスガースナーの「巨象も踊る」を読了。

    ITの歴史はIBMとともにあり、って感じですね。

  • 2002年の本。今のIBMの経営状況も確認しながら読むと面白い。

    危機に瀕していたIBMのCEOに著者のルイス・ガースナーが就任してからの10年は業績が大幅に回復、右肩上がりしている。

    大企業の官僚体質、個人の権利の尊重、社内政治、保守的な文化が足かせになっていて、それを変化させることに苦心したことが分かる。
    また、時代に合わせてビジネス領域を絞ったり、報酬哲学の見直しをしたりすることが効果があったのだと思う。

    とはいえ、企業の成功失敗の因果関係などは複雑過ぎて結局分からなくて後付けの講釈もかなり含まれると思うので、参考程度にしたい。

  • 瀕死状態だったIBMを救った奇跡の経営者ルイス・ガースナーの自著による再生物語。経歴は、アメリカン・エクスプレスから始まって、RJRナビスコ、そしてIBMに移る。当初は転籍することに躊躇したとのこと。友人に、これまでのビジネス経営、ハーバードビジネススクールでの学びがこのためにあるとのアドバイスで転籍を決意。転籍後の経営は、全社員に向けてのコミニュケーションを重視、これまでの慣習やIBMだけに通じるルールに捉われず、原則中心のリーダーシップを発揮することで、みるみるうちに建て直し、9年間で役員定年も迎え、潔くIBMを去って行く。原則中心のリーダーを如何に多く育成するかがポイントのようであった。

  • ・toppointで読む
    ・立て直しの成功エピソードと経営論

  • 賞味期限切れの本を一気に読み進めるシリーズを展開中。
    今更、今時この本を読んでいるのは自分以外いないんじゃないか。

    分厚めの本であるが、最初の1/3でIBMビジネスの立て直しのためにビジネス上で行ったこと、次の1/3でIBM文化の再構築について、最後の1/3で著者本人が社員等に宛てたメールや講演の内容が記されている。今更といいつつ、読んでみると結構面白く、最初はまるでアメリカのビジネスを舞台にした映画のような物語、真ん中は今でも通用するような人と組織に対する著者の捉え方が散りばめられている。当時の先端の人々が今からくる社会をどう予想していたか、2020年になってもまだ実装できていない(が実装の土壌が整いつつあるもの)等があり、技術の革新と社会の推移スピードのギャップを感じるというあたりが興味深かった。大きく立て直すことに成功した著者が、元々別業界からきたものの、業界と人間社会のITによる未来を見据えているのがすごい。

    P.181
    サービス事業の管理に必要なスキルは、製造業企業を成功に導くのに必要なスキルとはかなり違う。資本集約型の企業のなかに、労働集約的な事業を構築した経験はない。工場管理や技術開発なら得意だ。製品のコストや在庫回転率、製造工程ならわかる。だが、労働集約が的なサービス事業は全くちがう。サービスでは、モノを作り、その後に販売する方法はとれない。売り物は能力であり、知識である。それを生み出すと同時に提供する。ビジネス・モデルが異なる。経済原理がまったく異なるのだ。

    P.241
    わたしは企業文化が経営のひとつの側面などではないことを理解するようになった。ひとつの側面ではなく、経営そのものなのだ。組織の価値は要するに、それを構成する人びとが全体として、どこまでの価値を生み出せるかでき円。ビジョン、戦略、マーケティング、財務管理の側面が正しければ、そして、経営システムの他の側面が正しければ、正しい道を進むことができ、しばらくは成功を収めることができる。だが、どんな組織も、企業にかぎらず、政府、教育機関、医療機関など、どんな分野の組織であろうと、これらの正しさがDNAの一部になっていなければ、長期にわたって成功を続けることはできない。(中略)企業の当初の文化は通常、創業者によって確立される。創業者の個人的な価値観、信念、好みによって作られ、創業者の風変わりな部分も映したものになる。(中略)先見性のある企業や指導者なら、組織がひとりの指導者、あるいは何人かの指導グループの死後も生きつづけなければならないことを知っている。ワトソンはこの点を認識し、自分の時代に自社の大成功をもたらした価値観を意識的に、組織的に制度化していった。(中略)この価値観は長年にわたってうまく機能していた。組織は成功を収めるほど、偉大さをもたらしてきたものをルールの形で定着させようとする。これはよい動きになりうる。組織全体で学ぶ動き、知識をうまく伝える動きを作り出し、「われわれのやり方」をはっきりと把握できるようになるし、しかし、世界は変化する。いずれ、ルールや指針や観衆が、組織の本来の任務と関連を失っていくのは避けられない。(中略)成功をもたらした文化をルールにする動きは、価値観と行動様式をめぐって起こる「死後硬直」とも言えるものだ。成功を収めてきた組織に特有の問題であり、ときに深刻な影響をもたらしかねない問題である。成功してきた企業がその後に問題にぶつかった例は、IBM、シアーズ、ゼネラル・モーターズ、コダック、ゼロックスなど数多いが、これらの企業はおそらく、事業環境が変化したことをきわめて明確に認識していた。たぶん、どのような変革が必要なのかを理解して文書化しており、変化のための戦略すら策定していたかもしれない。最大の障害は、世界が違っていた時代に生まれた文化が高度に発達していて、それを変えることができなかった点にあると思う。

    P.251
    外部から加わったものにとって、IBMには温室のような雰囲気があった。長期にわたって外部世界から隔離されてきた熱帯の生態系のようだった。その結果、他にはみられない変わった生物が成長していた。この生態系は近親交配を重ね、内向きの成長をつづけ、内部の規則や争いに熱中してきたため、強さが失われていた。外部からの攻撃には極端に弱くなっていたのだ。
    外部の影響を遮断し、重要なことはすべて社内から始まるとする見方が定着していた点が、IBMの問題の多くの根本原因になっていたと思える。

    P.304
    わたしがみてきた中で経営幹部の最大の間違いは、期待と評価の矛盾を放置することである。(中略)部下は、上司の期待する行動ではなく、上司の評価で良い点がつく行動をとることを理解しない経営幹部が極めて多い。
    実行とは、戦略を行動計画に翻訳し、その結果を評価することである。評価にわたるもの、複雑なものであり、自社がいまどの位置にあり、目標との間の距離がどれだけあるかを深く理解していなければならない。計測できる目標を設定し、各人が目標達成に責任を負うようにする必要がある。
    そして何よりも、組織がそれまでと違うことを実行し、それまでとは違う点を重視し、それまでにもっていなかったスキルを獲得し、顧客、仕入れ先、販売会社との日常業務でそれまでより素早く、効率的に動く必要があるのがふつうだ。どれひとつとっても変革が必要だ。だが企業は変わるのを嫌がる。個々人が変わるのを嫌がるからだ。

    P.400
    市場が、世界が求めるのはソリューションである。(中略)高速化や小型化に焦点を合わせるのではなく、技術が商業、医療、生活、教育、政府、人間関係をどのように変えるかについて焦点を合わせていた。

    P.446
    IBMの研究者は、心拍数から免疫まで、人間の身体の調節機能と、コンピューター・システムに必要なものとの間にいくつもの類似点があることに気づいている。システムが一種の自己認識機能をもち、ウィルスを撃退し、攻撃からみずからあを守り、故障した箇所を隔離して修理し、故障を予知して対策をとり、各部分がフルに可動するようにスステム構成を変更する。

    P.457
    わたしはハイテク産業でほぼ十年を過ごしてきた経験から、この産業が作り出してきた技術が素晴らしいものだと確信をもって断言できる。しかし、技術がすべての回答を与えるとはまったく考えていない。技術は、差別、貧困、不寛容、恐怖など、きわめてむずかしく、きわめて重要な問題、人類がつねに抱えてきた問題を魔法のように解決できるものではない。これらの問題は人びとが必死に努力しなければ解決できない。自由な意思と自立の精神を持ち、選択死決定し、考えを推論し、利用できる手段を活用して、最大多数の最大幸福を実現する能力をもつ人たちが、そうした解決策を編み出していくのだ。

  • 買った時点で既に過去の本だった。買ったはいいけど、鮮度が命の偉業実行直後の回顧ビジネス書だったため、なかなか読み始められなかったが、予想に反して面白かった。いまだ輝きは失っていない、と言えると思う。
    企業文化こそがすべて。そして求められるのは、実行力である。そして、絞ることとスピードが命である。実行者本人が言うと、さすがに説得力が違う。なお、ビジョンは封印したとのこと。

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