巨象も踊る

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (462ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532310233

感想・レビュー・書評

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  •  この本は、以前から読みたい本の一冊であったが、なんとなく手が出なかった。ふらりと入った古本屋にあったので即購入。歩きながら読み始めると、面白くてそのまま帰宅して読み耽る。5時間程で読了。満足。
     巨大で、歴史のある組織を変革させる事の難しさを、そしてその過程で起こる可笑しくもあり憐れむべきエピソードなどを交えつつ、書き上げられている。
     成果と報酬が連動しないが、高収入を安定して支給する組織は、(悪い意味で)官僚的に硬直化する。そして、巨大なそれ(本書では「巨象」と称している)が瀕死の危機に直面したときに、「踊る」事が出来るか?というのは、字面以上の難しい経営が求められる。しかし、ガースナーはやり遂げた。
     「第1章 掌握」の中に、彼が着任して早々に開いた会議で話した経営方法が書かれている。
    ---
    ・手続きによってではなく、原則によって管理する。
    ・われわれがやるべきことのすべてを決めるのは市場である。
    ・品質、強力な競争戦略・計画、チームワーク、年間ボーナス、倫理的な責任の重要性を確信している。
    ・問題を解決し、同僚を助けるために働く人材を求めている。社内政治を弄する幹部は解雇する。
    ・わたしは戦略の策定に全力を尽くす。それを実行するのは経営幹部の仕事だ。非公式な形で情報を伝えてほしい。悪いニュースを隠さないように。問題が大きくなってから知らされるのは嫌いだ。わたしに問題の処理を委ねないでほしい。問題を横の連絡によって解決してほしい。問題を上に上にあげていくのはやめてほしい。
    (以下、略)
    ---
     かつて大阪府の公務員の労使交渉の場で、橋下元大阪府知事に対して「どれだけサービス残業やってると思ってるんですか!」と叫んでいた公務員は、自ら問題の解決に努力をしたのだろうか?残業を奨励するつもりは無いが、労働意欲というものがある一定レベルを保てるというのは幻想だ。ナウル共和国の高い失業率は、その実例となるだろう。
     労働組合の団交のような話しぶりは、自らの報酬の源泉(市場)を無視してでも、自らを利する姿勢にしか見えない。彼女は市民から何かを得よう、学ぼうとしていたのだろうか?その為に自らの時間を「投資」していたのだろうか?労働行為自体は利益を生まない事に、多くの人は気付かない。その結果が満足された時点で利益になるのだ。労働行為の押し付けをし続けている役人や労働組合は、その収入源を自ら傷めつけている事に気付かないのだろうか?
     『問題を解決し、同僚を助けるために働く人材を求めている』という言葉は、労働組合という「巨象」には響かないのだろう。

  • 速く動く。間違えるとしても、動きが遅すぎたためのものより、速すぎたためのものの方がいい。
    やはりスピードなんだよ、ビジネスは。

    約束は控えめに、行動は多めに。
    いい意味での裏切りってことですね、サプライズ。

  • ”「第III部 企業文化」と「付録A 社員に送ったメール」にはリーダーとして実践すべき内容が例示されており、企業やチームの規模にかかわらず参考になる。社内読書会の課題本になっているため、この題材をもとに対話するのが楽しみ。

    <目的>
     勤め先に適用できる実践アイデアのヒントを得る

    <質問>
    1.企業愛にあふれたメールが飛び交う背景にはどんな出来事があったのか?
     → 就任6日目に全社員宛に送ったメール(pp.112-114)が分岐点。
    CEO自らが「何かが変だ。やり方を変えるべきなのでは」だと語る。と同時に、感謝し、ねぎらい、同意し、「話し合いたい」と伝えたことは、社員に対して大きなインパクトを与えたはず。それに対する社員からの反応で、今後もメッセージを直接語ろうと考えたのではないか。
     ⇒ 自らの考え・思いを投げかけよう。そして、行動で示していこう。

    2.経営者の経営哲学だけで企業文化は変えられるのか?
     →変えられない。
      できるのは、企業文化が変わる条件を作ることだけ。
     (社員に、みずから文化を変えるよう招待するだけ)
     ⇒ だから、参加の機会をつくろう。そして呼びかけよう。
      (チャレンジTFだって、うまく使えるはず!)

    3.再建への歩みを確信したのはいつか?
     →1994.8.11付け(就任から1年4ヶ月後)の社員向けメールで「どのような尺度で測っても前身であり、勢いがついてきた」との発言あり(3四半期連続の黒字、新製品の発表、売上高増加、利益率向上、経費削減)。
      と同時に、「もどることはできない」「(まだ変革に参加していない人に)乗り遅れるな」と発破をかけている。
     ⇒ 一部の人の変化であっても、それを喜び、参加へ感謝し、繰り返し参加を促すメッセージを発信する。


    <読書メモ>
    ・何万人、何十万人ものIBMの人たちが経営陣の呼びかけにこたえ、懸命に努力し、この偉大な企業を再建する苦しい旅、ときにはおそろしい旅、しかしいつも痛快だった旅で活躍してくれた。その全員に、この本を捧げたい。(p.11)
    ・いま必要なのは事態を掌握して、行動に戻るよう活を入れられる経営者だ。つぎの指導者がまず取り組むべき課題は戦略と企業文化の変革であり、アメリカン・エキスプレスとRJRナビスコでやってきた点とかなりの部分で重なっていると、マーフは繰り返し主張した。(p.33)
    #マーフ=トム・マーフィー(選考委員。キャップ・シティABC のCEO>
    ・必要なのは指導力と、目指すべき方向が明確で勢いがついているとの感覚だ。わたしからだけではなく、ここにいる全員からこの感覚が得られるようにしなければならない。滅亡を言いたてる予言者が何人もいるような状況は望まない。望むのは、短期的には勝利を求め、長期的には興奮する動きを求めるやる気のある人材だ。(p.41)
    #最初の本社経営会議にて。
    ・経営哲学と経営方法(pp.42-43)
     ●手続きによってではなく、原則によって管理する。
     ●われわれがやるべきことのすべてを決めるのは市場である。
     ●品質、強力な競争戦略・計画、チームワーク、年間ボーナス、倫理的な責任の重要性を確信している。
     ●問題を解決し、同僚を助けるために働く人材を求めている。社内政治を弄する幹部は解雇する。
     ●わたしは戦略の策定に全力を尽くす。それを実行するのは経営幹部の仕事だ。非公式な形で情報を伝えてほしい。悪いニュースを隠さないように。問題が大きくなってから知らされるのは嫌いだ。わたしに問題の処理を委ねないでほしい。問題を横の連絡によって解決してほしい。問題を上に上にあげていくのはやめてほしい。
     ●速く動く。間違えるとしても、動きが遅すぎたためのものより、速すぎたためのもののほうがいい。
     ●組織階層はわたしにとって意味をもたない。会議には地位や肩書にかかわらず、問題解決に役立つ人を集める。委員会や会議は最小限にまで減らす。委員会で意思決定する方式はとらない。率直な意見交換を活発に行おう。
     ●わたしは技術を完全に理解しているわけではない。技術を学ぶ必要はあるが、完全に理解するようになるとは期待しないように。部門責任者は、技術の言葉をビジネスの言葉に翻訳する役割を担わなければならない。

    (第?部 企業文化)
    ・IBMでの約十年間に、わたしは企業文化が経営のひとつの側面などではないことを理解するようになった。ひとつの側面ではなく、経営そのものなのだ。(p.241)
    ★企業文化は命令で変えることはできないし、何らかの仕組みで変えることもできない。
    できるのは、企業文化が変わる条件を作ることだけだ。(略)結局のところ、経営陣が文化を変えるわけではないのだ。経営陣は社員に、みずから文化を変えるよう招待するだけである。(p.249)
    ・「ノー」の文化がとくに奇妙な形であらわれたのが、悪名高い同意拒否制度だ。IBMの人間は、組織の方針に同意しないとき、同意拒否を宣言できる。(中略)
    正式な同意拒否であれば、少なくとも周囲に対して正当性を主張しなければならない。ところが同意拒否は黙って行われることの方が多いのだ。
    #このあとのガースナー氏の社内メモが強烈な皮肉になっていて痛快!
    ・IBMの新しい企業文化の基礎になる八原則(pp.267-270)
     1.市場こそが、すべての行動の背景にある原動力である
     2.当社はその核心部分で、品質を何よりも重視する技術企業である
     3.成功度を測る基本的な指標は、顧客満足度と株主価値である
     4.起業家的な組織として運営し、官僚主義を最小限に抑え、つねに生産性に焦点を合わせる
     5.戦略的なビジョンを失ってはならない
     6.緊急性の感覚をもって考え行動する
     7.優秀で熱心な人材がチームとして協力し合う場合にすべてが実現する
     8.当社はすべての社員の必要とするものと、事業を展開するすべての地域社会に敏感である

    ・IBMの指導能力(リーダーシップ・コンピテンシー)(pp.280-281)
    ・「勝利、実行、チーム」だ。この三つの言葉で、わたしが求める姿勢を要約できた。
    ・終わりがなく休みのない自己変革(pp.285-286)
     一見矛盾する性格を併せもった企業の先駆けになる立場に立つ

     ……規模が大きく、しかも動きが速い。起業家精神があり、しかも規律がある。科学を重視すると同時に、市場主導型である。世界規模で知的資産を作り出せるとともに、それを個々の顧客に提供できる。新しい種類の企業であり、つねに学び、つねに変化し、つねに自己変革を行っていく。強固で、事業を絞り込んでいるが、新しいアイデアをいつでも受け入れる。官僚主義、偽善、駆け引きを嫌う。実績に報いる。そして何よりも、活動のすべてで人材と情熱を求める。

    (第?部以降)
    ・好業績を育む企業文化(略)を認識するのはそれほどむずかしくない。(p.300)
    経営陣はほんものの指導者であり、自立した人物だ。社員は組織の成功のために働く熱意をもっている。製品は最高品質のものだ。全員が品質に注意している。競争相手に負けるのは、大きな戦いであれ小さな競い合いであれ、全員にとってショックであり、全員が腹を立てる。凡庸さは許されない。卓越さが称賛され、大切にされ、報いられる。
    ・象が蟻より強いかどうかの問題ではない。その象がうまく踊れるかどうかの問題である。(中略)
    IBMが踊りを取り戻す際に決定的になった点に触れておきたい。大企業での権限集中と権限分散の問題である。(p.319)
    #権限分散は俊敏さを持つ意味で正しい。ただ、行き過ぎると部門最適になる。それを統合するのは新たな意味での権限集中が必要だ、ということ。


    <きっかけ>
     2011年9月の社内読書会の課題本。ちょうど社長が新任管理職に薦めていたのもあってチョイスされた。”

  • IBMを立て直した経営者が,企業経営を語る本。理図書 007.35||G36 12038773

  • 『成功はすべてコンセプトから始まる』木谷哲夫 著 ダイヤモンド社 参考文献

  • "IBMを瀕死の重賞から立て直した人物の経験談。
    印象に残ったところ

    オフィスに掲げている標語

    世の中には四種類の人がいる
    ・動きを起こす人
    ・動きに巻き込まれた人
    ・動きを見守る人
    ・動きが起きたことすら知らない人

    "

  • 気取らずに淡々とやるべき仕事をこなした結果、IBMは業績回復した、という印象。

  • IBMを死の淵から、救ったこの人に前々から興味があった。ゴーストライターを使っていないという断りどおり、確かに物書きの文章ではない。が、非常に歯切れのいい文書で読んでいて、著者の頭の良さがうかがい知れる(もしかすると訳がよいのかも)。その彼の主張が展開されているのがこの本であるが、その主張のうち、最も良いと思うのは、「プロセスではなく、原則による管理」。我が社では、「なんで、そんなことしてるの?」という質問に、いい年したおっちゃんが「昔から、しているから」となんのテライもなく答えることしばしば。「プロセスに従うのではなく、原理原則からの行動を決める」文化が非常に重要であることは明らか。私と同じ悩みを持つ人に勧める。

  • 退職してようやくガースナーの書いた本を読んでみようかという気持ちになった。IBMを崩壊の淵から救い出してその後のサービス・カンパニーへの道を作った優れた経営者だ。しかし一元社員としては、サービス・ビジネスに軸足を移していく会社での仕事は段々と厳しいものになっていき、グローバリゼーションによるオフショアによる仕事の削減、また最近のブラック企業化への道に続く流れもガースナーが作ったといえる。勿論、ガースナーがエイカーズからIBMのCEOの地位を交代しなければ、IBMが存在していなかったかもしれないことは分かる。

  • すごい。こういう会社だったのか。参考になる。

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