- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062738378
作品紹介・あらすじ
連続爆弾犯のアジトで見つかった、心を持たない男・鈴木一郎。逮捕後、新たな爆弾の在処を警察に告げた、この男は共犯者なのか。男の精神鑑定を担当する医師・鷲谷真梨子は、彼の本性を探ろうとするが…。そして、男が入院する病院に爆弾が仕掛けられた。全選考委員が絶賛した超絶の江戸川乱歩賞受賞作。
感想・レビュー・書評
-
江戸川乱歩賞受賞作なんですね。
この作品、題名が印象深く、読んでたような気になってましたが、初読みでした。面白かった〜!
ってか、この作品、題名がコレではない方が良いのでは⁉︎いや、だったらどんな題名?って言われても思いつかないのですが(^^;;
というのも、爆弾云々の事件のことも面白いのですが、私はそれよりも、この男性の“心”や“感情”、そのことを真梨子が紐解こうと調べていく流れが、特に面白かったのです。
『心は体の一部だから』という言葉を若い頃、看護婦だった母に言われて、その時の私は、だから気持ちが落ち込むと身体にも影響あるよね、くらいに考えていました。
(ちなみに、この作品の中でも“看護婦”という表現で、なんか懐かしかった)
「心を持たない男」と一言でいってしまうと、単に冷たい人間?みたいな感じだけど、そういうレベルの話ではないのです。生まれつきのその状態から、誰の、どれほどの手助けで、どう学習して、どんなふうに成長したのか?
『一度見たり聞いたりしたものは全て覚えている』という部分では、今年観ていたアメリカのドラマ「アンフォゲッタブル」での“超記憶症候群”の女刑事を思い出し…。
いくら整形手術などで見た目を変えても、骨格で調べれば一目瞭然!という話では、先日読んだ篠田節子の「鏡の背面」を思い出し…。
そんなわけで、この鈴木一郎がどんなふうに事件と関わったのか、そのサスペンス面も充分面白かったのですが、私自身は、『脳と感情』という面に重点を置いて非常に興味深く読みました‼︎
なのでね…違う題名の方が良いのになぁ、なんて思ったのでした。
心に残ったフレーズを少し。
ーーーーー
「心」は脳の作用にすぎないのだから、人間の「心」を知るためには脳という物質を研究する以外ないのだ、と。しかし子供たちと長い時間過ごしていると脳と心とはやはり別のものではないかという気がしてくるのだった。無心に笑ったり泣いたりしている子供たちを見ているとまるで魂そのものが泣いたり笑ったりしているように思えることがあった。
ある人間がどんなに優秀な頭脳をもっているといったとしても、それはその人間が必要とする範囲の優秀さをでることはないということだよ。
感情がないということは、笑ったり泣いたりすることができないということではない。笑ったり泣いたりする人間的な感情のすべてが理解できないということだ。
人間の場合なら、私という自我をひとつにまとめている力が感情だといえるわ。(中略)思想も信念もただの言葉よ。思想や信念を変更しても自己は元の自己でありつづける。それに反して感情は、気分や気持ちといったものだけど、途切れることがない。感情表出障害の人たちが約束やルールというものを過度に偏重するのは、彼らには自我をまとめあげるはずの感情の力が弱いための補償作用ではないか。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
題名が気になり買った一冊。
脳男の話でした。
刑事が脳男を逮捕しなければ、連続爆破事件は解決していた?と思ったが、それじゃ元も子もない。
面白い話だったけど、脳の機能の話など難しい所は読みにくかった。
刑事と脳男のコンビの話も面白そうだなと思った小説でした。 -
面白かった。
鈴木という人間に凄く引き込まれたし、この人間をもっと知りたいと強く感じた。
緑川の黙示録云々は少し冷めた部分あったけど…
続きもあるようなのでまた読んでみよ。 -
生田斗真主演の映画でだいたいの内容知っていた為
読むことが無かったんですが
4件の連続爆弾犯のアジトで逮捕された鈴木一郎
主犯と思われる男は逃走し行方不明
鈴木一郎とは何者なのか?
精神鑑定でどんな結果が出るのか?
物語の大半が鈴木一郎の過去を探る話です。
え?これ終われるの?
と思ったら続編ありでした( ̄▽ ̄)
鈴木一郎…気になる…
とりあえず次読みますm(_ _)m -
タイトルやあらすじから、ど派手なアクションシーンがある、サイコサスペンスみたいなのを想像してたけど、いい意味で想像を裏切られた。
硬質で緻密な文体は、淡々としながらも、説得力を持って迫ってくる。
脳男の出自に迫るシーンでは、社会派ミステリの趣すら感じるかのよう。
読み終わっての率直な感想は、この物語は、まだ、序章が終わったに過ぎないのではないかと言うこと。
これから、脳男が自分の能力や欠落にどう折り合いをつけていくのか、続編が気になる! -
第46回江戸川乱歩賞受賞作。
始まりは警察VS爆弾魔の話かと思ったけど、物語は途中から、逮捕された爆弾犯の片割・鈴木一郎の精神状態の解明にスポットが当たっていく・・・
もっと過激な警察作品かと思ったら、心の闇を抱えた自称・鈴木一郎の苦悩の物語だったりする。
ミステリーとして読んでも、精神医学ものとして読んでも、どちらでも楽しめると思う・・・?
警察物としては、ちょっと足りないかな・・・? -
脳男、鈴木一郎。
なんともいえない読後感だった。
結局、鈴木一郎の強靭な肉体、彼がやっている行動の意味…はわからなかった。 -
以前に映画版を鑑賞していたが、原作である本書とは大分内容が異なっているので新鮮に楽しめた。映画と同様に【脳男】こと鈴木一郎のキャラクターは実に魅力的で、ハードボイルド調の文体も嫌いではないが、著者のデビュー作とあってか、緻密なディテールの割に分かりにくい情景描写や、それに相反する大味なストーリー展開には少々興を削がれる。今作がダークヒーローの誕生というあくまで【序章】的な位置づけであるならば、続編の「指し手の顔」で彼が如何なる行く末を辿るのか気になるところ。ただ、作風がより洗練されていることを願うのみ…。
-
ブックオフで100円で売っていたので購入。
物語としてはとても面白かった。
感情を持たない鈴木にとても興味を持てた。
他の方の評価が意外と低いのにびっくり。
私はあっという間に一気読みしてしまうほど面白いと感じたが、リアリティーを求める人には今一つなのか??