眠れる美女 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001203

感想・レビュー・書評

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  • 川端康成の自身を投影したかのような初老の男の欲望、人形の様に眠る少女と一夜をともにできる宿を舞台に展開する倒錯した世界。
    あまりにも男のエゴの世界観でもあるように思える。この小説の時代性だと思えるが・・

  • 20220919

  • 序盤では心の中のギャルが「なんかキモいんですけどーうけるー」と言っていた。けど、読み進めるうちに、もどかしいような寂しいような、日本的な(?)エロスを理解できるようになってきた。

  •  「伊豆の踊り子」を読んで生意気にも川端康成を見くびったのが中学生の頃。思えば小学生の時も「吾輩は猫である」を読まされて夏目漱石を投げ出した。ホント、子供に本を薦める時は気をつけて欲しい。あれは子供には無理だろう。
     中学生の頃の僕が「眠れる美女」を読んでいたらどう思ったかは分からないが、作家「川端康成」のイメージは大きく異なっていた事だろう。残念だ。
     肉欲を伴わぬそれを、非常に哀しくもあるが美しく感じてしまうのは、川端康成の描写力によるものだろう。大人の官能小説(いや、官能小説は大人のものか)。こういう枯れ切らない老人になるのも悪くないなと思ってしまう。(本当に行動に出られたら迷惑極まりないが)

  • 全体的に作者の感覚に依る描写が多く、「新感覚派」と呼ばれる所以もうなずける。

    「眠れる美女」
    薬で眠らされて一糸まとわぬ女と添い寝をしながら、自分の娘や昔の女性関係を思い出す。

    「片腕」
    少女からひと晩だけ右腕を借りるという前衛的作品。自分の右腕とすげ替えて、はじめは感覚が遮断されているが、徐々に血が通い合う。少女の右腕と喋ったりもする。

    「散りぬるを」
    聴取書などの資料から、ほんのいたずら心から、過失によって少女が殺された事件を扱う。
    昭和八年作で、他の二作より三十年ほど昔の作品。

  • 「眠れる美女」
    男性として使い物にならなくなった老人たちには
    自らを恥じる部分がある
    そんな老人たちを相手に、眠らせた若い生娘を用意して
    まるで人形を愛でるように好き放題なで回し
    楽しんでいただこうという
    そういう業態の店があるらしい
    老いたりとはいえ、まだ男性であることを捨てていない主人公は
    店の禁制を破り、本番行為に至ることも
    考えてみたりした
    しかし実際にスヤスヤ寝ているすっぱだかの処女を前にすると
    なぜか、過去の嫌な記憶が浮かんできて
    気力は萎えてしまうのだった
    ひょっとすると、そうやって悩んでいる状況じたいが
    すでに魔界の中なのかもしれない
    あるいは
    自分を押しとどめようとする人生の積み重ねそのものが…

    「片腕」
    若い娘の右腕を借り受け
    これを自宅に持ち帰り
    様々な愛撫を試したのち、自分の右腕と付け替えてしまう
    まさに変態と言わざるをえない所業だが
    逆に考えると
    娘の右腕に自分自身を差し出しているわけでもあって
    男はそれに耐えられないのだった

    「散りぬるを」
    作家志望の家出娘ふたりに借家を与え、面倒みてきたのだが
    ある日侵入してきた男に、両方殺されてしまった
    いずれ愛人にできただろう娘たちのことを惜しみつつ
    殺人者の行動記録に、小説家はある寂しさを見た
    こういう、構造主義的な批評精神が
    戦後の「魔界」へと結実していったのだろう
    それは善と悪のボーダーレスな世界観であって
    虚無主義に陥りやすく
    そのために強い秩序を必要とするものであった

  • 「片腕」が圧倒的

  • 「片腕を一晩お貸ししてもいいわ。」


    川端康成も美しい文を書くのね。
    三島由紀夫が師と仰いだのも納得。
    そして幻想的な短編で編まれた作品でした。

    三島は女という性質を美しく描くのに対し、
    川端は女体を美しく描く、ある種のフェティシズムを感じた。

  • どの作品も発想がド変態

    眠れる美女
    「動」のはずの若さが「静」であるところに
    死に対する表現や物寂しさが感じられた

    片腕
    やばすぎる、腕を入れかえるシーンとか変態すぎて好き

  • 100分de名著で、ボードレール?ボードワール?の作品に関して。

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著者プロフィール

一八九九(明治三十二)年、大阪生まれ。幼くして父母を失い、十五歳で祖父も失って孤児となり、叔父に引き取られる。東京帝国大学国文学科卒業。東大在学中に同人誌「新思潮」の第六次を発刊し、菊池寛らの好評を得て文壇に登場する。一九二六(大正十五・昭和元)年に発表した『伊豆の踊子』以来、昭和文壇の第一人者として『雪国』『千羽鶴』『山の音』『眠れる美女』などを発表。六八(昭和四十三)年、日本人初のノーベル文学賞を受賞。七二(昭和四十七)年四月、自殺。

「2022年 『川端康成異相短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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