イノセント・デイズ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101206912

感想・レビュー・書評

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  • 初作家さん。
    冒頭の死刑執行から始まる、田中幸乃の一生。
    気の迷い、魔が差した、ボタンの掛け違いのような小さな綻びだった出来事がいつしか幸乃の人生を闇に落としていく。
    事件が起きる度にマスコミが、騒ぎ立てる加害者の生い立ちや人物像。
    知り合いでも無い限り、報道された通りの印象を持ってしまう。
    今日は雨が降って肌寒いが、私が暮らす街にも先日桜が開花した。
    幸乃が最後に握りしめていた桜の花びらを思いながら窓から外を見る。すぐお向かいの庭に小さな桜が見えるのだ。
    私という人間も、外側からはどう見えているのか?
    そんなことを考えながらカーテンを閉じた。


  • とても重たいお話だ。
    読者が物語の中の人物の一人として存在し、彼女の隣にいるみたい。語りかけられている様だった。

    彼女にとってはこれがハッピーエンドだったのだろうか。

  • 読むことが苦しくて苦しくてしようがなかった。
    最後は裁かれる(であろう)、田中幸乃の生い立ちをたどる序盤は、つらすぎるよという同苦と、いやいや同情の余地なしという思いが交錯しっぱなしでした。

    物事には表と裏、さらにいろんな側面があることを忘れないようにしているつもり。それは、結構思い込みが激しいなあということが多々あるから。
    読み終えて、「決めつけてはいけない」と再確認しました。
    「イノセント」であること。

    面白かった「店長がバカすぎて」のイメージを180度覆されましたが、なかなかの衝撃作でした!

  • 叫び出したくなった一冊。

    放火殺人罪で死刑を宣告された田中幸乃。

    彼女に何があったのか、幼馴染みらが紐解く彼女の人生。
    あの瞬間、全てが明らかになった瞬間、予想がつかなかったむごさに叫び出したくなった。

    あの日、祝福されてこの世に生まれてきたはずなのに。ただ"孤独"というものが彼女というものを創り上げていたのかと思うと胸がしめつけられた。

    彼女にとって、あの幼き日の星空はどれだけの輝きであったのか、想像するほどまた心が痛む。

    人の人生を利用する人生。そこに憤りと虚しさが沸き起こる。

    彼女、田中幸乃のことを絶対忘れない。

  • 「イノセント・デイズ」

    基本、小説は、ぼぼ一日または2日間で読み通します。
    イノセント・デイズは、何度も止まり、7日間かかりました。
    また、読書のまとめに着手するまで、さらに7日要しました。

    なぜ?
    著者のテーマが果たしてどこに向かっていくのか?
    の解釈や整理が難しかったからです。

    1.イノセント・デイズ
    主人公は、独り身の女性です。
    出自は、母子家庭です。
    認知がないため、父親知らずです。
    ------------ 
    母が再婚し、父方の連れ子と4人暮らしが始まります。
    イノセント、そう、純粋な無垢の日々です。
    ------------
    残念なことに、母親の事故死で、人生の流転が始まります。
    父親の暴力、祖母への引き取り、、、。

    2.衝撃の冒頭
    主人公に対して死刑宣告がされるシーンから始まります。
    そして、刑の執行当日を迎えた、主人公の回想が描かれ、物語が始まります。

    3.参考文献
    冤罪、死刑、弁護士ら著書の中のテーマにちなんだ文献は、20を超えます。
    これを観察したときに、著者が描きたかったテーマの深さ、さらに綿密な調べに対して、畏敬の念を抱いたことはいうまでもありません。

    4.さいごに
    人と繋がりづらくなった現在、また、孤独死のニュースも流れてくる昨今です。
    「ひととして、必要とされたいという欲求」と、それが破壊されつづけた場合の行き着く先の心の暗闇という、著書のテーマが重なってしまいました。

  • 早見和真『イノセント・デイズ』新潮文庫。

    読み終えて、どっと疲れた。非常に重く、辛い、嫌な後味だけがずっと残るミステリーだった。確かに衝撃的ではあるのだが。

    元恋人の家に放火し、その妻と1歳の双子を殺めた罪で死刑宣告を受けた田中幸乃。彼女が凶行を行うまでの人生を彼女に関わった人びとの視点から浮かび上がらせる。その先に待ち受けるのは…

    本作を読み始め、山田宗樹の『嫌われ松子の一生』や真梨幸子の一連のイヤミスを思い出したが、それらの作品と一線を画したのは余りにも酷い田中幸乃の不運だろう。自らの不運を運命として受け入れ、全てを諦める田中幸乃の一生には全く同意出来ない。

    • usagi1981さん
      同意できないと言えることぶきさんの、人となりに憧れを感じました。
      同意できないと言えることぶきさんの、人となりに憧れを感じました。
      2017/06/06
    • ことぶきジローさん
      erhnさん。コメントありがとうございます。自分自身、苦難に対峙する場面もありますが、それを受け入れず、乗り越える努力をしてこそ人間なのかな...
      erhnさん。コメントありがとうございます。自分自身、苦難に対峙する場面もありますが、それを受け入れず、乗り越える努力をしてこそ人間なのかなと思います。
      2017/06/06
  • 読み進める手をとめられなかった。

    1つの事件にある様々な背景。
    1人1人の歩いてきた時間。

    この物語には多くの弱い人が
    たくさん出てくると思う。

    そんな中できっと幸乃が1番強い人だったんだなと
    読み終わって感じた。
    良く頑張ったね。

  • 読んでいて、とまらなかった。

    でも、切なくて苦しくて、続きが、気になって、
    いっそ、最後のページを、読んじゃおうかな、と、おもってしまうくらいでした。

    この小説は、一生大切にしないといけない本だと思います。私の大切な人達に是非読んで欲しいです。
    切なくて、絶望感の方が大きかったけれど、辻村さんの解説を読んで、納得した部分もありました。
    小説を読んでいて、この一文を、読む為に、私、
    この小説に出会ったんだなあ。と、思う事が、あります。イノセントデイズも、そう思える一冊です。




    • 魚雷屋阿須倫さん
      これほど救いが欲しいと、思った本はなかった
      これほど救いが欲しいと、思った本はなかった
      2019/12/04
  • 他の方も書いているように、私も読んでいて、暗い、重いという印象は払拭できなかった。
    でも、ここに出てくる田中幸乃という1人の女性がどのような人生を辿ってきたのか、物語の結末がどうなるのかー。という気持ちがページを次へ次へと進ませた。

    解説で辻村さんが書かれていた様に、私も幸乃という人間には純粋で無垢な印象を抱いた。そして、純粋すぎるが故に、彼女が出会う人が彼女の純粋さや優しさにつけ込む事も。。。

    ラストは流石に、えっ!?そうだったのか!と思ったものの、彼女は少しだけ運命に逆らおうとして結局はその運命に沿ってしまった。そんな雪乃が私は不憫に思えて仕方なかった。

    残された人間がこの先、どう生きるのかは書かれてはいないが、明るい未来が見えそうにない感じだけは読み取れた。

  • 遠藤周作の『女の一生』を思い出した。最後までまっさらでキレイな幸乃。
    関わる人の幸せを願って自分を犠牲にしてしまう、第三者から見るとどうか関わらないでくれ、と思うが、幸乃にとってはそれが自然だったのかな。
    最後に自分の願いを持つことができて良かった。ただ個人的には佐々木慎一に助けてもらって、2人でやり直して欲しかった。

    本当に必要としてくれる人がいるんだとしたらもうその人に見捨てられるのが怖い

    この一文で号泣。
    その通りだね、幸乃。

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著者プロフィール

1977年神奈川県生まれ。2016~2022年に愛媛県松山市で執筆活動に取り組む。現在は東京都在住。2008年に『ひゃくはち』でデビュー。2015年に『イノセント・デイズ』で第68回日本推理作家協会賞、2019年に『ザ・ロイヤルファミリー』で山本周五郎賞とJRA馬事文化賞を受賞。その他の著作に『95』『あの夏の正解』『店長がバカすぎて』『八月の母』などがある。

「2023年 『かなしきデブ猫ちゃん兵庫編  マルのはじまりの鐘』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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