イノセント・デイズ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 1050
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101206912

感想・レビュー・書評

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  • とても読みにくい。文体とかではなく、壁があるような作品でした。
    読むことがストレスに感じるほどでしたが、読むことをやめてはならないとも感じるものがありました。
    途中でなぜ?と思いながらも進む手が止まらない。
    こんな読後感は久しぶりだけど、これもまた、読書をやめられない理由ではある。
    続きを読むために午後休みしました。これも久しぶりです。
    とにかくまだ消化できないなあ。
    心を動かされる作品に出会えてよかった。


    正義は一つじゃないかもしれないけど、真実は一つしかないはずです

    放火殺人で死刑を宣告された田中幸乃。彼女が抱え続けた、あまりにも哀しい真実――極限の孤独を描き抜いた慟哭の長篇ミステリー。

    田中幸乃、30歳。元恋人の家に放火して妻と1歳の双子を殺めた罪により、彼女は死刑を宣告された。凶行の背景に何があったのか。産科医、義姉、中学時代の親友、元恋人の友人など彼女の人生に関わった人々の追想から浮かび上がるマスコミ報道の虚妄、そしてあまりにも哀しい真実。幼なじみの弁護士は再審を求めて奔走するが、彼女は……筆舌に尽くせぬ孤独を描き抜いた慟哭の長篇ミステリー。

  • 田中幸乃が起こした事件をきっかけに、彼女の存在を後ろめたい過去と共に置き去りにしていた人物たちによって雪乃の人生と真相が次々と明らかになっていく物語。終始ヘビーなのにもかかわらず、あっという間に引き込まれた。
    『人から必要とされたい』
    ただそれだけを願っていた生きてきた田中幸乃。しかし彼女を必要とした人々に踏みにじられ、彼女の運命はどんどん歪められていく。
    「もし本当に私を必要としてくれる人がいるんだとしたら、もうその人に見捨てられるのが怖いんです。」
    と語る彼女の言葉がズシンときた。この世界に生きるには彼女は純粋で無垢すぎた。

    重い物語だとは聞いていた。ズシンと心に食らってしまう小説は苦手なのだが、それでも手にとってしまったのは他の方々のレビューが刺さりまくったからだ。
    救いがないのに、読む手が止まらない。判決の主文が章のタイトルになっていて、その文言と真実との解離がこの物語の不条理さを際立たせ、ベールに包まれた雪乃という人物をどんどん知りたくなってくる。
    そして『救いがない』と一言では言い表せない、いろんな感情が呼び起こされた。読み応えは今年度ベストに入るかも。

  • ❇︎
    読み終えて嘆きのため息が口から溢れました。

    狂った歯車はただ惰性で回り、生じた歪みは
    決して元に戻らずズレた状態で周り続ける。

    真実は何人もの人の手で、その人たちの都合で
    すり替えられ、何十にも隠されて最初から
    なかったかの様にされてしまう。

    絶望よりもっと哀しい、諦めが染み付きいて
    しまった主人公(田中幸乃)の物語。

    ーーーーー
    イノセントは純粋で無垢、そして無実。

  • 私はこの本を読むのが3回目。
    正直読むのはメンタルがきついしつらい。
    でも何度読んでもまた読みたくなる。
    なぜなんだろう。
    作者の、幸乃への想いを感じるからなのかな。

    256頁
    『ずっと死にたいと思っていた。でも、そうすることはできなかった。何かに絶望しそうになるたびに、自分を生かそうとしてくれる誰かが必ず目の前に現れた。』

  • こういう話大好き。

    終始重く暗い話だったが、早見さんの巧妙な筆致で、家族愛や友情が巧みに描かれていた。

    それらが適切に作用していれば、彼女の運命も変わっていたはず。

    最後のエピローグでは、私も佐渡山と同じく「早く倒れろ!倒れろ!!」と願っていた。

    それを容易く踏みにじり何が何でもハッピーエンドで終わらせないようにするのも尚いい。

    この物語を読んで、改めて教育の大切さを感じた。

    話の中には不良グループが何度か出てくるが、彼らのせいでたくさんの人の家族や友人の運命が狂わされたと思うと、憤りを感じた。

    だが、きっといじめの加害者にも、家で虐待を受けていたり、何らかの問題があったとすると、この憤りはお門違いなのではないかと思った。

    全ては彼らを教育すべき大人達に責任があるのではないか、そう思ってやまない。

  • 事件の真相が明らかにされたその後を、ぜひ読んでみたい。法務大臣や死刑執行に携わった者、丹下翔、八田聡らは何を思うのだろうか。それとも何者かによって有耶無耶にされてしまうのだろうか。

    私が感じたことは、巻末の解説で辻村深月さんが上手に述べられているので、そちらに委ねたい。

    田中幸乃と女性看守のやりとりの場面では、涙が止まらなかった。死ぬために生きる彼女の姿が、切れかけの電球が一瞬明るくなる様子と重なった。
    どんな理由であれ、そのとき必死に生きようとする田中幸乃の姿はとても美しかった。

  • ずっしり終始重い話でした。

    田中幸乃に同情し、わかっていた結末に悲しくなりました。生きて欲しいから倒れて欲しい。という刑務官にめちゃくちゃ感情移入した。

    正義は一つじゃないかもしれないけど、真実は一つしかない。

  • 暗い、重い、辛い、切ない。
    そんな作品だったが、ぐっと惹き付けられた。

    まずは目次に惹き付けられる。
    この目次で一体何が綴られるのか?という期待感。

    それを裏切らないそれぞれの章。

    自分ならこうなのに!!!
    と思わないわけではないが、私はこの物語が嫌いではない。

    みなさんの感想とは異なるのかもしれないが、私はラスト、安堵した。
    ハッピーエンドではないのかもしれないが、これでもう不幸にはならない。

  • 主人公、田中幸乃が死刑宣告される裁判から始まるストーリー、最初の印象は殺人鬼。
    ですが読中に、この印象は全て覆る。
    最後は助けてあげたい、登場人物の誰でもいいから助けてあげて…と思いながら進んでいく。
    そして最後は……という物語。
    悲しい、哀しい? 感想に迷う作品でした。
    あとからきます。

  • 4/16
    普段からあまりミステリー小説は読まないのですが、おすすめされたので。

    読んだ後は不思議と何かが腑に落ちた気がしました。
    これはある意味「ミステリー」だなと。

    人をその人たらしめているものは「輪郭」だと思います。自分はこういう人間だ!という内なるエネルギーと、周りからの客観的な視点でのエネルギー。
    だから、自分だけじゃ自分のことはわからないし、周りからの評価を気にしてばかりじゃ自分が保てません。
    人って、自分って、1番のミステリーだと思わされた1冊でした!

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著者プロフィール

1977年神奈川県生まれ。2016~2022年に愛媛県松山市で執筆活動に取り組む。現在は東京都在住。2008年に『ひゃくはち』でデビュー。2015年に『イノセント・デイズ』で第68回日本推理作家協会賞、2019年に『ザ・ロイヤルファミリー』で山本周五郎賞とJRA馬事文化賞を受賞。その他の著作に『95』『あの夏の正解』『店長がバカすぎて』『八月の母』などがある。

「2023年 『かなしきデブ猫ちゃん兵庫編  マルのはじまりの鐘』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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