イノセント・デイズ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.89
  • (756)
  • (1228)
  • (759)
  • (111)
  • (30)
本棚登録 : 11059
感想 : 1050
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101206912

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 違うのに!この人じゃないのに!
    真実はもうそこまで見えてきているのに、あと一歩で間に合わず、一つの犯罪も犯していない人が死刑に処されてしまうなんて……
    最後には冤罪が明らかになり、田中幸乃が救われると信じて読み進めていたけど、そんな甘い展開ではなく衝撃を受けた。
    誰かのためではなくて、自分が死刑になるためだけに冤罪を被って死刑囚になろうとする…それほどの孤独は想像できない。

    そうなるまでに、誰かが田中幸乃を救うことは出来なかったのか、遺された幼なじみの慎ちゃんはこの現実をどう受け止めたのか…

  • エピローグまで、一気読み。
    エピローグからは、結末を迎えるのが嫌でなかなかページを捲りたくなかった。
    それでも。
    やっぱり。
    そうなりますよね。

    周りも、読んだ私も、救われなかったな。

    田中幸乃だけは、救われたのかな。


    とても良い作品でした。

  • エピローグ、涙が止まりませんでした。

    幸乃に生きてほしいと思いながら読み進め、

    刑務官の「傲慢よ。あなたを必要としている人はたしかにいるのに、それでも死に抗おうとしないのは傲慢だ。」と、同じ想いで読み進め、

    幸乃が最後に見せた病気への強い意志での抵抗。
    幸乃の刑務官への最後の台詞。

    そして解説の、自ら死を選ぶ幸乃は傲慢に見えるかもしれない。
    しかし、彼女に生きてほしいと望む気持ちもまた傲慢でないとどうして言えるのだろう。

    全てがグーッと心臓を掴んだ。

    読了後、幸乃の姿が頭を離れません。
    優しく、大切な人を守り、誰のせいにもしない、彼女は強いんじゃないだろうか?

    自ら死を選ぶこと=弱いと、
    決めつけるなんてこと決してできないと思った。


  • 悲しい作品でしたが最後まで読んで良かったと思える作品でした。人は人生によって価値観や考え方が全く違うものになってしまうんだろうなと思ってしまった。でもそれを無視して本質を見極めようと葛藤する最後の方のしんちゃんが一番まともな人間に見えた。
    人の常識を自分の物差しで測る難しさを考えさせてくれる作品でした。

  • これは、読み進めるのが、相当にしんどかったです。
    放火により元恋人の妻と子を殺した罪に問われた女性の物語です。

    「十七歳ホステスの私生児」「養父からの虐待」「中学時代の強盗致傷事件で施設入所」、彼女を形容するキーワードから描かれるイメージは、決していいものではないはず。
    一般論ではない個別の事象について、その背景も知らないのに。

    知人が未遂ながらもニュースになるようなことをしてしまった際、うっかり目にしたYahooニュースのコメント欄は、それはもう酷いものでした。
    もちろん犯した罪はいけないこと、ですが、「その年でアルバイトかよwww」から、人格否定までされると、「あなたに何がわかるんだ」と言い返したくなる。
    実際のところ、普段私が目にするニュースも、似たようなものばかりと感じていながら、その背景にはそれぞれの事象がある。だからこそ、ステレオタイプ的に何かを断定してはいけないのだと思う。

    と、脱線したけれど、話を本書に戻すと、私は彼女の境遇が不憫で、読むにつけ苦しかった。
    人との出会いが人生を変える。
    そんな人生の分岐点で、常に不運の道へ進んでいく。負のスゴロクのような人生。
    幼少期に必要とされなかった経験は自尊心を失わせるし、性的虐待で傷つけられた心は諦めと不信を生む。
    翔のように恵まれた人生と、そもそも土台が違うのだ。

    だから仕方ない、という話ではない。
    自力でどうしようもないこともある、からこそ、彼女が間に合う内に出会ってほしかった。自分のことを大事にしようと思える人に。

    読んでいて、「連鎖」という言葉が連想された。
    負も正も、連鎖する。
    彼女にとっては救いを求めた光だし、彼女なりに願った「誰も傷つけない方法」を責められない。けれど、描かれなかったこの物語の先で、全てが明かされた暁には、彼女に関係した多くの人は重責を抱えて生きていくこととなる。
    人が1人で生きていない以上、誰にも影響しない、なんてことはそうそうない。

    一方で、翔の祖父が話した仕事論は、世代を超えて受け継がれる正の遺産だ。前向きに生きる、力を与えてくれる。

    どんな人に出会えるか、どんな人の中で生きていくか。
    幼少期こそ特に、運でしかない。
    自分ももしかしたら、誰かの分岐点にいるのかもしれない。そんな時、その人にとって少しでもプラスな方向を示せる人でありたい。そんなことを思いました。

  • 久しぶりに胸が締め付けられる感覚。

    一人の女性死刑囚の、死刑を宣告されるまでの人生を、関係する人々が語っていく流れです。

    帯には3日寝込むと書いてありましたが、
    それは、この本を読んで、救いがないと感じたからなのかなぁ。

    私は、主人公の幸乃が最終的に幸せをつかんだように感じて、少し嬉しかったです。

    読み手によって感じ方がそれぞれわかれるのも、本のいいところですね。

    必要とされたかった幸乃。
    必要じゃないと捨てられることが怖かった幸乃。
    そう思わせてしまった幸乃の周りの環境。
    弱くて、強い幸乃。
    しばらく幸乃が忘れられそうにありません。

    とてもいい本が読めて、良かったです。
    この人のほかの本も読んでみたいと思います。

  • 途中何度かこれ以上読み進めるかどうか考えた
    読まない方がいいような気もした
    フィクションなのに、心にダメージを受けるのはどうだろうとか、辛い気持ちになる必要があるかなとか

    でも、どんどん読み進め、今読み終わりなんとも言えない気持ちになっている

    読まなきゃよかったとは思ってない
    こういう人が現実に居ませんように、こんな生い立ちを経験する人が居ませんようにとは思う

  • 本の紹介文を読んで、気になって読みました。
    早見さんの本は初めて。

    この本を読んで、私たちは実際に起こる事件や、誰かの人生を批評したり、断罪する資格はないのだと思った。
    幸乃が特異な人格だとは思えなくて、たくさんのボタンのかけ違いでそうなってしまった、としか…。
    自分で死ぬなよっていう、誰に言われたかも忘れたような言葉を忠実に守ろうとする幸乃。
    一見正しそうなアドバイスであっても、それが受け取る相手の心にどう響くのか?深く考えずに言ってしまい、それで相手を深く傷つけたり、追い詰めたりすることもある。
    慎一が頑なに幸乃へ会いに行かない、手紙を書くこともなかなかできなかったのは、そういう軽い気持ちでの行動をとることで、幸乃を追い詰めないように、幸乃の性質を慮ってのことだったのかも。
    幸乃も、そんな慎一のことを察していたのだと思う。

    幸乃の母親が、幸せになれるように、と名付けた名前。
    幸乃は幸せだったのだろうか。
    慎一に会いたいと思うと心が波立つから、希望を持たなければ絶望することもない、希望を持たずに逝きたかったんだろう…と私は解釈したけど…人が死の瞬間なんて想像もつかなさすぎて、しばらく茫然としてしまった。

  • 誰かを必要としたり誰かに必要とされたり、そんな希望を一切拒絶し、死ぬ為に生き、死ぬ事で救われる。
    彼女はそう信じていた。
    縋るものはそこしかなかった。

    「見捨てられる不安」が「死ぬ恐怖」に勝ってしまう程に絶望してしまったのだろうか。


    私達はたくさんの偏見と思い込みを持って、言葉や物事を都合良く解釈する。

    人は弱くて脆い。
    時に傲慢で、時に卑劣な部分が見え隠れする。
    みな自分が可愛い。
    自己保身から嘘をつき、他人を傷つける事に鈍感だ。
    そこに責任は伴わない。


    それぞれがほんの少しずつでも思いやりを持ってあげられたら、ほんの少しだけでも優しい世界になるはずだ。

    「生まれてきてすみません」
    そんな悲しい事を誰にも思ってほしくない。

    上辺だけ、与えられた情報だけで判断する危うさを改めて考えさせられた。

  • なんか、色んな思いが。。。

    とにかく引き込まれて、すごく読みたくてあっという間に読んだ。

    細かいところ色々気になるとこあったけど、
    最後、回収されると思ってたのが、幾つも回収されなくて、敢えてなんだろうけど、もどかしかった。

    でも辻村深月さんのあとがき読んで、死なないことより生きてることの方が彼女のためなんだとどうして言えるのかみたいな件があって、妙に納得した。

    ただ真犯人は!?
    何も罰せられなくて良いの?
    まあ、1人は自責の念に駆られたみたいだけど、他の人たちはどうなってるんだろう。

    などなど、色んな思いが溢れた。

    早見さんの本は初めて読んだけど、一人一人がそれぞれに良くも悪くも人間味があって、だからのめりこめたのかもしれない。

全1050件中 41 - 50件を表示

著者プロフィール

1977年神奈川県生まれ。2016~2022年に愛媛県松山市で執筆活動に取り組む。現在は東京都在住。2008年に『ひゃくはち』でデビュー。2015年に『イノセント・デイズ』で第68回日本推理作家協会賞、2019年に『ザ・ロイヤルファミリー』で山本周五郎賞とJRA馬事文化賞を受賞。その他の著作に『95』『あの夏の正解』『店長がバカすぎて』『八月の母』などがある。

「2023年 『かなしきデブ猫ちゃん兵庫編  マルのはじまりの鐘』 で使われていた紹介文から引用しています。」

早見和真の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×