- Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101339221
感想・レビュー・書評
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2019/10/4
全部の話が女性が主人公の短編集。本当に短編で、え、ここで終わるのかー、続きはどうなってるんだろ〜と余韻がすごく残る話がドンドンドン!と繰り出してくる感じです。
ものすごいどんでん返しや派手な展開は正直なくて、でもそれぞれの話の主人公の女性は何かしらのものを抱えている人たちです。離婚やら浮気やらシングルマザーやら…?
主人公たちは、自分たちの現状からさらに上を望んだりすることもなく、今のままがいい、みたいな雰囲気が前面に出てくるけど、読んでる方からしたら、それでいいのか!?みたいな感覚のギャップがありました。
これは自分が男だからなのかなとも思ったり。
話の内容が現実から離れすぎた創作ではなくて、色々なリアルさを盛り込んだ上での創作話だからこそ、読んでいてそう感じたのかもしれません。
前にも「つめたいよるに」を読んだことがありますが、それともまた違った感じだと思います。どう違っているかと言われるとうまく表現できないけど、何か違います。女性の、なおかつ人生の経験をある程度積んできた人たちの視点の話なので面白かったです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
江國香織さんの直木賞受賞作。12この短編。
いずれも号泣する直前の、まさにその準備ができた女性たちの一瞬の姿が捉えられている。
あまりに繊細で敏感な日常からふと立ち昇る、不穏な気配と、一筋の絶望。
江國さんは決して見逃すことなく、間違いのない言葉でそれらを小説にしてしまうのだ。
初デートがちっとも楽しくない思い出となってしまった17歳の少女の話が良かった。「じゃこじゃこのビスケット」という比喩の感触がめちゃくちゃよくわかる。じゃこじゃこのビスケットのようだった日々は、大人になってもそっくりそのまま残っている。
そのかけがえのなさが、ほろ苦くも微笑ましい。
あとは「どこでもない場所」。子持ちの人妻と、異国から帰ってきたばかりの女友達との、夜のバーでのお洒落な会話の応酬。異国でめちゃくちゃに恋をした話。肉欲に溺れた話。
どれも読んだそばから忘れてしまうような物語なのだが、それがむしろ心地よい。心に何かがひっかかった、その感覚だけがいつまでも残る。 -
日常の中のささやかな幸福と絶望。
ー悲しみを通過するとき、それがどんなにふいうちの悲しみであろうと、その人には、たぶん、号泣する準備ができていた。
タイトルから素敵。誰かの感想に、「号泣する準備をするということは、準備の仕様のないものを準備するということで、それは最大の防御であり、同時に攻撃でもあると思った。」というものがあった。たしかにそうだ。
好きな話
・前進、もしくは前進のように思えるもの
・熱帯夜
・溝
・手
・号泣する準備はできていた
・そこなう
主人公はみな愛や恋を持った生活をしていたのにそれが失われ、いろんな理由で満たされていない人々ばかり。
愛なんて永遠ではないのだろうか、それならずっとしたいと思っていた結婚とはなんなんだろう。そんなことを思わされて、先が暗いと思ってしまった。
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面白かったです。
泣きたくなるような短編集でした。
恋を失っても、生活は続いていくし続けていかなくてはならないけど、ふとした時によみがえってくる痛みは今でも少しあります。
ましてや、その相手が今でも時々やってくる、となると。。辛い。
わたしの心の一部分も死んだままです。
でも、江國さんの描く女性は強くて孤独で好きです。 -
一番好きな作家。言葉の一つ一つが秀逸。皮肉めいていて、けれど真実を映していて、心に響いて深く沈んでいく感じ。恋の物語だけれど、これは人生の物語たち。淋しさ、孤独、頼りないぐらいまっすぐな純情。
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江國香織の独特の緩い暖かさがライトに味わえる短編集。
不倫カップルの温泉旅行の話が好き。女性の不安定さがどこか共感できる。 -
無色透明みたいで読んでいる時はするすると流れて行ってしまう。後からパラパラと見返すとどれもたっぷりと瑞々しくて綺麗に感じられた。特に「じゃこじゃこのビスケット」がすき。始まりも終わりもバシッと決まっていて痺れる。十七歳のでたらめさや当時のリアルさが自然でくっきりしていて良かった。女性同士のカップルを描いた「熱帯夜」、デパートで買物するおばさまの「こまつま」、夫の母親と旅行する「洋一も来られれば〜」、女性言葉の男性と仲間のように飲む「どこでもない場所」、姪をヴァイオリン教室に連れて行く表題作も印象的だった。
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洋一も来られればよかったのにね
どこでもない場所
手
が特に好きだった。
短編の中に出てくる女性達はみんな人間味があって
綺麗で、私より強くて、脆い部分があった。
私の人生にルイやたけるくんのような人が居たら。
たぶんその優しさに寄りかかりながら
そこそこ不幸でそこそこ幸せに生きてしまうだろうな -
あと一歩。