言語学バーリ・トゥード: Round 1 AIは「絶対に押すなよ」を理解できるか

著者 :
  • 東京大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784130841016

感想・レビュー・書評

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  • 帯「読むなよ、絶対に読むなよ!」
    一見するだけでおもしろそうなのに、まえがきを読み、直感は確信に変わりました。これは...まちがいなくおもしろい......!

    「出版社は、東京大学出版会?いやー、東大って名がつくくらいだから、易しそうな表紙で油断させておいて、専門用語がたっぷりなのだろう」と思っていたら、いい意味で裏切られました。こんなにユーモアあふれていいんですか。おもしろいひとは賢いっていうアレですか。

    もともと東京大学の出版部のPR誌であるUP(ユーピー)に掲載されていた内容なので、書籍化されなければ、きっと、お目にかかる機会もなかったでしょう。

    ユーモアたっぷりな語り口にのせられ、読むのを止めるタイミングを逃し、読み終わったのは深夜0時。
    いつまでも読んでいたくなるような文章でした。

    p22
    (前略)私たちはたいてい、曖昧性をお金の残したまま「曖昧じゃないつもり」でしゃべっているし、文脈やら常識やらを使いながら他人の言葉の曖昧性を解消し、意図を推測している。「今はもう動かないおじいさんの時計」という歌詞を聞いて、大多数の人が「動かないのは、まさか、おじい......いやいや、やっぱり時計の方だよね、うん」という良識的な解釈をするのも、歌のテーマな雰囲気を考慮して、作詞者の意図を推測するからである。

    p166
    連載「言語学バーリ・トゥード」にしても、言語学とは名ばかりで、実質的には単に私が普段考えているバカ話を披露する場である。

  • 『言語学バーリ・トゥード』川添 愛

    冒頭から、ラッシャー木村の「こんばんは」事件のことから始まるマニアックさから、こんな本読む人いるのかいなと思うが、元々この本を買ったのはジュンク堂の読書週間おすすめ100冊に入っていたから。結構読まれているということだろう。

    読み進むと、内容はとても興味深い。AIはダチョウ倶楽部の「絶対押すなよ」を理解できるかとか、「恋人は/がサンタクロース」の違いについて、かなり詳しく説明されている。

    知的好奇心が湧き上がる本である。

    読み終わってこの文章を書くにあたり、あらためて著者の名前を確認した。
    「愛って名前の男性、いるのかな、なんて読むんだろう?」
    プロレス・格闘技の知識からてっきり男性(良い年の親父)を思い浮かべてたけど、調べたらわりと童顔の女性じゃないか!

    それが一番の衝撃であった。

  • 意味と意図の違いを説明するために、誰もが知っているあの名言を引用しているのが秀逸。こんな感じで読めるならAI言語学の他著も読んでみたいと思わせる内容だった。前提の話も頷ける。

  • 堅苦しくなく気楽に読めて面白かった。
    プロレスの関係の話がよく出てくる。プロレスのことは全然知らなくても理解できるけど、やっぱり自分が知っている人や歌、出来事について書いてあるところの方が興味を引かれて面白い。

  • この本、私(昭和の終わり生まれ)と同世代か上の方であれば、夜に読むのは絶対にだめ!

    昨日購入したその日に読み始めたら、抱腹絶倒のまま、最後まで読み終わってしまった。翌朝妻から、「あなた昨日の夜何してた?テレビの音も聞こえないし、あなたの笑い声だけが聞こえてきて怖かったんだけど」といわれてしまったのだ。

    言語学…といいつつ、内容的には半分以上プロレスの話がでてくるやんけ、と思いつつ、タイトルをもう一度眺めると「バーリ・トゥード」と、格闘技の名前も入っている(←プロレスを格闘技に入れるかどうかの議論はここではさておく)。

    大学で言語学を勉強していた頃の記憶がありありと思い出された。

  • 言語学は興味はあるのだが、どうも引っかかっていた。筆写の軽妙な筆致により、これが一気に解消した。よい本に巡り会えた。バーリトゥードというタイトルも言い得て妙ですね。昭和プロレスに親しんだ身にとってはジワリくる言い回しも多々あり。

    恋人がサンタクロース、回転地獄五輪パート1ーーなんのこっちゃ?な日本語も読んでいて心地よい異空間に入ったような気分になる。コロナ禍でチェコ語を学ぶ話は自分にも似たことがあり、ふむふむと感じた。

  • おそらく、著者と同年代ということもあり、声を出して笑ってしまうこと多数。電車の中で読むことはおすすめできません。プロレスの知識ゼロなので、当然タイトルの意味も分からず、何か高尚な意味なのかしらと思って読んでいました。大笑いではないけれど、小さな爆発的な笑い。言語学の面白みの世界を少し垣間見たような気分。

  • 何に照準を合わせて読んだらいいか迷った。PR誌に連載されているということなので、気楽な読み物として読むと、意外に役にたったり、普段何気なく感じていることの根拠めいたものが書いてあって、きっと、その発見が嬉しく、また読みたくなるだろうなと思う。
    書籍として読むと、ハードルが上がってしまうので、プロレスにもあまり関心がない私には、最初から最後まで熱心に読む良き読者にはなれなかった。

    内輪ネタが、面白いのではあるが、やはり内輪ネタは内輪ネタなので、悪ノリの感がある。それもまた自虐ネタにしているので、まあ、いっかーと思いつつ読んだ。

    でも、散歩の達人のバックナンバーは買ってしまった!

  • 好みは分かれると思うけど、ハマる人にはかなりおもしろいと思う
    と紹介され、読んでみたらハマった。

    私も学生時代言語学を少しかじっている。
    言語学者に対するイメージと実態は違う!!!!!という話は、実態を知っているため、そうかこんなイメージを抱かれがちなのか、と思った。

    プロレスの話が多くて、オカダ・カズチカくらいしか知らない人間としては何を言っているのかイマイチ分からない所もあったが、川添さんのプロレス愛はひしひしと伝わってきた。

    堅い話ではないので気軽にぜひ!

  • めちゃんこ面白かった。
    と、つい第一声から昭和っぽくなってしまうのだが、昭和の似たような世代に地方で育ったコンセンサスをなんとなく共有して読んだのも加味してかあまりに面白く一気読みであった。
    内容は言語学をネタとしてはいるものの軽いエッセイで読みやすい。が、そこに何の必然もなく(著者的には必然なのだろうが)大容量のプロレスネタおよびユーミン・氷室京介・エマニエル坊やなどの絶妙に古い芸能ネタが混入されていてなんとも独特な味があってクセになるのである。
    このプロレスに対する偏愛と韜晦と鋭い切れ味の文章が個人的にはナンシー関を思い出させてたまらなく、もっと売れて週刊誌あたりでバンバン書いてはくれないものかと妄想しながら読んだ。○春とか○潮とか、お好きですよね、こういうの。まあでも世相を言語学で切っちゃったりすると陳腐化しそうだから、『UP』あたりの絶妙な冊子で隔月連載というのがニッチでちょうどいいのかもしれないけど。
    また、本文のイラストが大変素晴らしかった。痒いところに手が届くというのか、本文をちょこっと補足してさらにちょこっと膨らましたようなカットが秀逸。似顔絵としてもよく似ていて、YOSHIKIを描いた回は著者ご自身も気に入られていたようだが、とってもナイスでした。イラストは「コジマ コウヨウ」さん。忘れそうなので書いとく。
    こんなナイスマッチの連載を組めるということは本文にも登場する編集T嬢はさぞかし敏腕なのであろう。素晴らしい。
    ここまでべた褒めであるが、この勢いで家人に薦めたところ、読み始めたものの最初のほうで一度挫折しかけていた。私自身は最初から文体への親和性が高すぎて全く気がつかなかったのだが、どうも途中で微妙に文体というかテンションが変わっているらしい。連載1回めにあたる部分はちょっと表現的に引っ掛かる場所が多くて難儀だったらしいが、2回めからはスムーズに読めたとのことである。なので、最初ちょっと文章が苦手だな、と思った方もしばらく辛抱して読んでみてほしいことである。絶対面白いから。
    あと、プロレスネタが多いのが難儀というレビューも散見したが、これはもう諦めるしかない。なんだろう、プロレス好きの女性の著作物は妙に面白いものが多いので好んで読むことも多いのだが、私自身はプロレスは全くわからない。でもプロレスのところはわからなくてさーっと読み流しても大丈夫、真のプロレスファンはプロレスがマイナーで理解されないことも多いと達観しているものなので愛を吐露することはあっても押し付けてはこない。純粋な愛の発露を鑑賞して楽しめばよろしいのです。
    で、よくできた言語学的問いというのは各々が説を展開したくなるものらしく、私もどうしても自説を書きたくなったテーマがあった。それは「海老名市最高層を、住む」ってやつである。この本来は「に」であるべきところに「を」を使うキャッチコピーについて「定住する場所(静的)」から「人生の通過点の一つ(動的)」に変わったという仮説が紹介されていたが、違和感がある。
    私の仮説はこうである。例えば「入れる」という動詞で考えると、「どこどこ(場所)に入れる」「なになに(対象物)を入れる」で助詞を変えるとその前に入るものが明確に変わる。普通は「住む」という動詞には「を」で示される対象物はついてこないわけだが、あえてその違和感のある日本語を使うことで、この地所はただの居住地ではなく、積極的に選びとってなんなら投資して居住するに値する対象ですよ、という格上感を演出しているのであろう。そして面白いのは、こういう考察を経なくても、なんとなくそのような高級感をこの日本語づかいでみんなが感じるということだ。コピーライターすごいな。
    と、とめどなくレビューを書きたくなってしまうほど、本当に面白いのであった。

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著者プロフィール

川添 愛(かわぞえ・あい):1973年生まれ。九州大学文学部卒業、同大大学院にて博士号(文学)取得。2008年、津田塾大学女性研究者支援センター特任准教授、12年から16年まで国立情報学研究所社会共有知研究センター特任准教授。専門は言語学、自然言語処理。現在は大学に所属せずに、言語学者、作家として活躍する。 実績 著書に『白と黒のとびら』『自動人形の城』『言語学バーリ・トゥード』(東京大学出版会)、『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』朝日出版社、『コンピュータ、どうやってつくったんですか?』(東京書籍)『ふだん使いの言語学』(新潮選書)など。

「2023年 『世にもあいまいなことばの秘密』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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