お砂糖とスパイスと爆発的な何か—不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門

著者 :
  • 書肆侃侃房
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感想 : 78
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863853652

感想・レビュー・書評

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  • 専門的な批評用語を使わずに一般の読者にわかりやすく惜しみなく開いて(啓いて)書かれているところがすごいと思った。順番通りに読まなくても支障なし。
    *気になった作品:『二十日鼠と人間』『バニシング・ポイント』『アントニーとクレオパトラ』
    *本筋と関係ないけど、2章で紹介される「キモい」の定義、わたしはだいぶ違う意味でこの言葉をとらえていた。「出世してカネはあって競争に勝っているように見えるけどイタい」みたいな人をむしろ「キモい」と思ってた。「エモい」とかもそうだけど、新しめの言葉って使うとき気をつけたほうがいいんだろうな。
    *わたし自身は筋道立ててものを考えることが苦手で、読んだはなから内容を忘れてしまうので、この本を応用できそうかって言ったら難しいんだけども、たとえば『ファイトクラブ』の項の著者の考察は、たしかにわたしも同じようなことを感じながら観ていたので、これからも自分の読みの感覚を大切にしつつ、たまにこういう本で脳に刺激を与えるようにもしたいと思った。いやー、それにしても、映画とか本とかもうちょっと内容覚えていられるようにしたいよな…

  • 面白かった!フェミニズムって邪悪なインターネットのせいで変なイメージついてるけどこの作品はカジュアルに語ってくれて読みやすい。
    女の子視点だとこう見えるよね!って頼りになるお姉さんが解釈を語ってくれてる感じ。そういう見方もあるのか〜って思って頷いたり、嫌いな作品に対する考え方とかも興味深かった。

    なんか作品を見てるときの違和感とか、世間で高く評価されてるけど自分にとっては気に入らないポイントがあることとか、そういうギャップに対して自分の感性がおかしいのかも……と押し込めがちだけど、そもそもその世に知れ渡ってる評価が古めかしいマッチョ視点の批評なことだってあるんだよなと思えた。
    批評や評価に絶対正しいものなんてないし、与えられてる高評価だって間違えてる可能性があるのだからそんな権威に臆さず気に入らないものは気に入らないとハッキリ言ってやったって良いんだよな。
    今ある評価に反することを言うのを恐れちゃうのは「やっぱり女に芸術などはわからないね」みたいなことを言われる可能性について考えてしまうから。
    けどそんなの勝手に男性中心社会が決めた基準での評価じゃん♪もっと自由にいこか♪という気になれた。

    基本的に絶対的な正しい解釈や批評は存在しない。
    私の感想も正しくないし伝統的な男性中心社会の感想も正しくない。

    だから私だって私の感性で自由にものを語っていいのである。
    女が権威に縮こまらずに思うままの感想を言える、というのがフェミニズム批評なのかな。
    と見つけたり?みたいな!

    ところどころ「そこまで言う?」みたいな批評もあったけどそれも含めて他人の斬新な意見として新鮮に読めた。
    タイトルのセンスもいいね。お砂糖とスパイスと爆発的ななにか………。

  • なにか新しい視点が得られそうな予感でワクワク。

  • きちんと批評文を読んだのは初めてだったけど、その論理的思考力と論述力は憧れちゃう。
    高校生の時に、『文学部って何するんだろう?文学を研究するのって楽しいの?』と疑問で文学部には進学しなかったんだけど、
    こんな面白いこと考えて研究できるなら、文学部も良かったなぁと10年越しの後悔…笑

    著者の北村さんのセンスが鋭いことと、いま勉強中のフェミニズムに特化した内容だから余計にそう思うのかもしれないけど、ゴチャゴチャ考えるのが好きな私にはすごい刺さった批評の数々だった。

    とくに、「腐女子目線」の文学批評は面白かった。この多様性の時代、腐女子目線すらも他者が持てないユニークな目線!
    「腐」なんて自虐は辞めて誇っていきたいと思ったな。

    本筋のフェミニズムに関しても学びが多い内容で、紹介されていたバーレスクとかミス・マープル・シリーズとかはぜひ見てみたい、読んでみたいと思った。

  • エッセイほど軽すぎないし、ビジネス書としては緩いし……分類に迷ってその他に。

    世界の名作(小説・映画)をフェミニズム的な観点から批評したWEB連載をまとめたもの。
    自分は、翻訳物の小説がものすごく苦手なので原作小説をほとんど読んでおらず、映画も見たことのある映画の方が少なかったのだけど、読んでない・見てない作品でも十分に理解でき、批評として成立しているのはすごい。

    印象に残ったのは以下2つの批評

    ●バベットの晩餐会

    これ『ショコラ』じゃない?『ショコラ』だよね?と思うくらい内容が酷似している。
    敬虔なクリスチャンの多い村に外からやってきた女性が人々を開放し、人々は彼女が企画した晩餐会を通じて快楽に目覚める……みたいな。
    制作年を考慮すると、むしろ『ショコラ』が『バベット~』へのオマージュ的な意味もあるのだろうか。
    あれも原作あるのだけどな。

    ●「女性だけの街」についての考察

    「インフラとか力仕事をする人がいないから女だけのコミュニティなんか成り立たない、というのは、女性差別であるだけではなく、男を単なる道具としての機能に押し込めるような発想だと思います。」(P.210)

    女性が書いた女だけのコミュニティを描いた小説で、コミュニティが崩れる原因となるとは“愛とセックス”だと指摘する著者。
    Twitterの“女だけの街”に対して批判するようなミソジニストは、女性を道具としてしか見ていないから、女性から見た自分の価値も、道具としての価値しか見いだせないというパラドックス……。

  • 批評本を私は初めて読んだけれど、読んで良かったなと思った。
    本や映画を通して作者の考えを教えてくれるので、非常にマイルドなフェミニズム本だと思う。
    紹介されていた作品を鑑賞してみたくなった。あと、バーレスク、行ってみたい!
    満遍なく、歴史と本を知ることの豊かさ・面白さを教えてくれた。
    あと、個人的に178ページの「フェミニズムは女性の自己表現を重視する思想です。」という言葉が、それだ!となって刺さった。しっくりきた。
    読んで良かった。

  • 作品を見て、読んでみたくなる面白い批評の文章でわりとさくっと読めた。
    タイトルの意味がよくわからず、「不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門」の副題に興味を持って読んだ。
    古典的な文学作品に腐女子やツンデレ的な解釈をする点を指しているのだと思うが、それは着眼点や切り口の面白さであって「不真面目」とも違うように思う。
    わりと普通の感覚で説教されている感じがなくて、「フェミニスト」ってこんな感じ?となった。

  • 批評の本をはじめて読みました。女性が読んだら自己啓発本、男性が読んだら恋愛指南書のようにも捉えられます。
    いろんな人に読んでほしいと思った作品でした。
    注釈で出てくる古典作品、映画を目にして、また読み直したいです!

  • 「なぜわざわざけなすんだ、単純に楽しめばいいじゃないか、と言う人がいます。でも、私は深い意味を読み解くほうが楽しいからやっているのです」

    「楽しいからやっている」批評を読みたかった。実際凄く楽しく読みました。私も檻から出て、少しずつエンパイアステートビルを登り、上から眺めたい。

  • 映画や文学作品をフェミニズムの立場から批評。
    映画や文学作品の中に見る、「男らしさ・女らしさ」、「女性の性欲」、「女性映画」などについて語っている。

    「人間は今まで生きてきた世界によって、知らないうちにものの見方を規定されてしまっている。」という箇所に、はっとした。
    自由だと思っていても全然自由じゃない。自由であることの難しさ。

    また、フェミニストというと「男性否定、何が何でも女性が正しい」という過激なものをイメージしがちだが、そういう内容ではない。

    男女ともに「女とは(男とは)こういうもの」という己の持つ固定観念で相手を抑圧したり支配したりすることがなくなると、もっと楽に生きられのではないだろうか。

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著者プロフィール

英文学者、批評家。

「2023年 『高校生と考える 21世紀の突破口』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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