お砂糖とスパイスと爆発的な何か—不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門
- 書肆侃侃房 (2019年6月16日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784863853652
感想・レビュー・書評
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映画や小説などのフェミニスト批評。
特に良かったのは最初のエッセイ。『さよなら、マギー 内なるマーガレット・サッチャーと戦うために』
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よく考えればマギーよりもはるかに素晴らしいフェミニストのロールモデルはいろいろいるではないですか。
芸術好きなら、ナイジェリアの作家チママンダ・ンゴズィ・アディーチェや、メキシコの画家フリーダ・カーロを思い浮かべればいいし、スポーツが好きなら大西様単独横断飛行したパイロットのアメリア・エアハートを心に住まわせましょう。全部ダメなら、マドンナとかビヨンセとかにパワフルなダンスで抑圧を追っ払ってもらいましょう。
もしあなたがラディカルなアナキストなら、田舎娘から自由奔放な活動家になった伊藤野枝とか、リトアニアからアメリカに移民した不屈の闘士エマ・ゴールドマンなどを心に住まわせればいいと思いますし、もう少し穏当に仕事で成功したいと思っているのなら、アメリカの最高裁判事であるブルース・ベイダー・ギンズバーグとか映画スターのエマ・ワトソンなどがいます。
(中略)
「さよなら、マギー。できるだけ、お会いしたくないものです。」
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#お砂糖とスパイスと爆発的な何か #北村紗衣 #読書記録
改めて、読みたくなったり観たくなったりできる批評本でした。
#サフラジェット (未来を花束にして)
#嵐が丘 (観たことある気になってたが、ガラスの仮面の中でだった。)
#西の国のプレイボーイ #負けるが勝ち #サロメ (舞台)
#二十日鼠と人間 #ワーニャ伯父さん (ドライブマイカー観たとこで、タイミング良い)
#バニシングポイント (ホモソーシャルカーアクション映画)
#ファイトクラブ
#カリブ海の秘密
#私を離さないで (原文で読むべきだな、と思わされた)
#フェミニジア #侍女の物語詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本のタイトルは、マザー・グースのうた「男の子って なんでできてるの?」の詩からとったとのことでした。女の子あらゆるステキなものでできているを変えて、爆発的な何か。ナイスなものでなくてよく、なる必要もない意味をこめて。社会に生きてるだけで、知らず自分の属している世界で通じる凝り固まった思考でものを理解しがち。切り口を変えて、ものを見る必要を感じます。すでに知っていた作品は、自分が新たな切り口を持ち得たか、もう一度見直したくなる本でした。
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あらすじ(書肆侃侃房より)フェミニストの視点で作品を深く読み解けば、
映画も演劇もこんなにおもしろい。
自由に批評するために、自らの檻をぶち壊そう!
映画と演劇を年に200本観るシェイクスピア研究者による
フェミニスト批評絶好の入門書!(http://www.kankanbou.com/books/jinbun/jinbun/0365)
ゆるめのエッセイで読みやすい。
ただ面白い!だけでなく、映画や文学をあらゆる方向から考える、いろんな見方があるんだよってことを教えてくれるし、その中の一つとしてのフェミニズム批評を提案してくれている感じ。
以下印象的だった箇所
ただ「面白かったー」がなんとなく物足りなくなってきて、もう一歩、深く楽しんだり、調べたり、理解したいな……と思う時に必要なのが「批評」です。(p.9)
→大学、大学院行ったことで私もだいぶこの気持ちが芽生えてきたなと実感しておるし、良きことだなと思う。
内容紹介に留まっているだけでは、あまり面白い批評にはならないのが普通です。ここで大事なのが、何かひとつ、切り口を見つけることです。作品全体をあるキーワードで解釈できるような切り口が見つかれば、それだけでけっこう対象が興味深く思えてきます。(p.11)
→レポートや論文にも言えることだなと思う。私も図書館バイトでテーマ設定について話すことがあったけど、「切り口」については特に力を入れて話しておった。ここを定めるといいレポートが書けるし、伝わりやすいよね。
(#女性映画が日本に来るとこうなるについて)女性向けの映画を日本の会社が売る際には、映画の内容が想像しづらいような日本語タイトルがつけられたり、代わり映えのしないステレオタイプなデザインのポスターやチラシが作られたりすることを批判するツイートが、画像つきでたくさんポストされました。(p.152)
良質な女性映画を長きにわたって生み出してきた日本においていまだに女性観客のニーズが認められず、輸入物の女性映画が適切に宣伝されていないのは悲しむべきことだと思います。ロマンティックな可愛い映画は楽しいですし、私も好きですが、ロマンスが主要テーマでないような映画をことさらにロマンティックに見せかけ、「どうせこうすれば女性に売れるんでしょ?」というような態度で宣伝することはお客にウソをついているのと同じだと思います。(p.156)
→これは本当にそう!本の中で言及されてた『未来を花束にして』はもちろん、ふと思いついたのは ”Legally Blonde”が『キューティ・ブロンド』になってたり(法律要素どこいった、キュートでブロンドだったら映画で否定されたステレオタイプのままじゃん)、”A League of Their Own” (彼女たちのリーグ)が『プリティ・リーグ』になってたり(可愛い付けたがるのなんなん、女性たちのガチ野球なのに)、”Whip It”が『ローラーガールズ・ダイアリー』になって、ポスターがほんわかしてたり(流血上等のばちばちバトルなのに)。日本人オーディエンスに伝わりやすいタイトルにするのも大事だけど、やけんってあまりにも雰囲気を変えたり、映画のテーマと逆行するようなタイトルをつけるのはまさに客に対してウソついてると言っていいし、製作者にも失礼な気がしやすね。 -
取り上げられている映画はほぼ見たことがなく、だからこそ「プリンセスは男のロマン!」の項には目から鱗でした。
いったい誰のための「プリンセス」なのか。作中で「プリンセス」がこのように表現されるのはなぜか。
そうだよなあああ~~~~!!!(大の字)
アップデートを繰り返していると言われるディズニープリンセスでさえこう読めるのだなあと、絶望するというか絶句するというか。
自分の創作のありかたも変えてゆきたい…… -
やっぱりちょっと視点が違うので新鮮で面白かった。
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バーレスクやシェイクスピア劇を観てみたくなった。自分は今まで批評をした事がないので、これを機に挑戦してみようと思う。
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題名を見て面白そう、と思い読み始めた。
題名と内容の関係性は分からないまま読み終えた。
本文の中に海外映画の邦題が内容を的確に表したものではなく、女性受けするものになっている、というような話が出てくるが、この本の題名もちょっとそんな感じかな。
私はフェミニストはあまりわかっていないと言った方がいいだろう。
男性だから、女性だからって区別しなくてもいい、みんな人間でしょ。
敢えて女性は、って全面に出すことって逆に差別では?なんて思ってしまう。
今私は男女差がそれほど無い場所で生きている。
女性を全面に出して生きることだってそれはその人の生き方。
肩肘張らないで生きていきたい
読み物としては色々な解釈を提示してもらって面白かった。
物語の深いところに隠れている物を読み取ることの面白さも知った。
でも私はプリンセスは嫌いじゃない、おばさんだけど女子だから。 -
ヴァージニア・ウルフを読んでみたくなったし、
シェイクスピアも観てみたくなった。
民話の分類法のことは知らなかったので、いろいろな物語の位置付けがどうなっているのか見てみたいな。型を知っていれば、分類上はあそこだなと想定できてただ見るだけでは見逃す繋がりを見つけられそう。
これまでに見聞きしてぼんやりと描いていたものより、ツンデレって範囲が広いんだなと感じた。