- Amazon.co.jp ・電子書籍 (30ページ)
感想・レビュー・書評
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読む前に想像していた以上に、グロテスクで怪しく、けれどもどこか美しさのある、不思議な作品でした。
鈴鹿峠にて、旅人の追い剥ぎを生業としていた山賊の男。彼はある時、一人の旅人の男を殺し、その妻を、自分の八人目の妻として家に連れて帰ります。
その女は、とても美しく、怪しい魅力に満ちているけれども、残酷な女でした。
女は山賊に命じて、七人の妻のうち、六人まで、彼自身の手で殺させます。何かに取り憑かれたように、新しい妻に従う男。ただ一人、一番醜く、身体に障害のある女だけが、女中として生かされる。
そこから奇妙な三人暮らしが始まり、やがて、女のわがままを機に、三人揃って都暮らしを始めます。
妻は山賊の男に、金目の物だけでなく、人の生首を持ち帰るように要求するようになります。女は集めた生首を部屋中にかざり、首遊びをして…。
毎年男の気をなんだかおかしくさせる、美しくも禍々しい魅力を持つ満開の桜の木。
同じく、美しくも怪しい女の持つ吸引力。
二つの怪しい美が重ね合わされながら、グロテスクで奇怪な物語は展開していきます。
正直、途中で読むのをやめたくなるくらいのグロテスクな描写もあったのですが、人を惑わす桜の怪しくも美しいイメージが、男が内に秘める孤独と相まって、不思議と余韻と魅力を感じさせる作品でした。 -
女のあまりの美しさにすべてを与え、
とろけるような幸福に満たされる男。
刹那に訪れる不安。
どういう不安なのか、なぜ不安なのか、
何が不安なのか。
ただ分かることは桜の森の満開の下に
いる心地のような底知れぬ不安と似ていた。
澄んだ声で笑い、薄い陶器の鳴るような声をあげ、
嬉々として生首を耽溺し遊び狂う女。
夜ごと生首を捕ってくる男。
女の美しさの側で恋に狂いながらただ側にいたかった男。
自らの欲しい物を手にするために男が必要だった女。
頭上には花、その下には虚空。
女の美しさと桜の幻想的にして圧倒的な
景色に息を飲み、薄ら寒さを覚える。
桜の森の下で花びらの散りゆく寂しさは
男の中の孤独を揺さぶる。
怪しく美しい幻想怪奇。 -
なんと恐ろしく悲しい話なんだろう……
男の胸の内を考えると苦しくなる。
不思議なラストで終わるが、それすらも美しかった。 -
この物語は何なのでしょう。いまだに言葉にするのが難しく、しかし圧倒的に妖しく美しい。読む者を言葉の力のみを持って酔い、惑わせ、温かい恐怖に突き落とす。言葉に出来ない感情が溢れ、読むたびに何故か涙が流れます。「孤独」そのものになった男と、最後に残る「虚空」。あまりに、あまりに美しい本当に稀有な小説。
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坂口安吾、全部青空文庫になっていたのを知らなかった。
昨年、野田版「桜の森の満開の下」観たので。
こんなにも美しい物語がよく書けたものだ。
悪魔的な才能に思う。
桜の森の満開の下です。あの下を通る時に似ていました。 -
桜は狂気。
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なんとなく突然読みたくなって。
満開の桜の下に座る、強い風が吹く、舞い散る花びらで視界がけむる。
みたいなイメージが強く残ってて。
内容うんぬんというより、ただただ美しく狂おしい桜吹雪という印象。
温度の冷たいはなし。 -
ブンゴウメール4月配信作品。
坂口安吾の作品もブンゴウメールで初めて読ました-
桜の木の下には…、というのは色々なところで読んだこと聞いたことはあったけれど。
途中で首遊びが出てきた時は、それが唐突で、比喩なのか?本当に本物の人の頭なのか?人形のことなのか???混乱しました。
不思議で淋しい、幻想的なお話でした。
メモ
今様━今日風・現代風の意味。
歴史的には,平安時代中期から鎌倉時代にかけて宮廷で流行した歌謡のことを指す。
これを「今様歌」といい,今様はその略。神楽歌(かぐらうた)・催馬楽(さいばら)など以前からの歌(古様)に対して,当代最新(今様)の流行歌。
変な家は、そう!ポプラさんがいっちば~ん、でした。
びっくりしたよ!
家の設計などの話かな?と思っていましたが、ああ...
変な家は、そう!ポプラさんがいっちば~ん、でした。
びっくりしたよ!
家の設計などの話かな?と思っていましたが、ああ、何という殺人・・・・ホラーということでしょうか?