ラブカは静かに弓を持つ (集英社文芸単行本) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 音楽著作権連盟に勤めている橘が争っている音楽教室の証拠をつかむ為にチェロの生徒として潜入する。音楽教室での練習曲など使われている曲が争点だ。音楽教室の師、浅葉との関係、上司、又、子供の頃の複雑な過去などが絡み合いとても面白い。音楽に関わる身としてイベントで著作権協会に払っているが著作権に目を向けた内容もよかった。

  •  ラプカとは隠密行動をする深海魚ということ、「戦慄きのラブカ」(架空の曲)というチェロの楽曲が伏線となり、音楽著作権連盟の社員・橘樹が社命により大手音楽教室の生徒として通う潜入調査員の内面が描き出される。子ども時代から10数年ぶりに奏でるチェロに接する喜び、教室の先生との交流、そして様々な背景を持った教室の老若男女の生徒仲間たちとの交流、その中で裏切り行為に悩む主人公。音楽、チェロの魅力を再確認する味わい深い音楽表現の描写、スパイ行為の緊迫感、謎の美人からの接近の謎? 多くの人との感動的な繋がり、音楽著作権の話しなど、多面的な魅力を備えた佳品である。ドラマは起伏に富み、最後近くのコンサートへ向けて盛り上がっていく。読者の私自身が久しぶりにピアノに接しているだけに特に臨場感を感じる場面が多かった。ただ、主人公の橘の行動がここまで極端になれるのか!は少し距離を感じた。

  • 読後感が良かったです。
    気持ちが明るくなりました。
    バッハの無伴奏チェロ組曲を調べて聴いてみました。
    チェロの音色の美しさと物語の清々しさが重なりました。図書館で予約を待った甲斐がありました。

  • 実際にあったJASRAC職員によるヤマハ音楽教室への潜入調査をモデルにしたサスペンス風小説。どこでどんでん返しがあるのかと緊張してたら無かったわ(笑)。ミステリじゃない小説を久々に読んだ。スパイに任命された社員側の物語は、師弟関係と仕事の間で揺れ動く心情を描き続ける。裁判直前に主人公のとった個人的な行動は想定外のスクープにより翻弄され、師弟関係の破綻に社章が象徴的な役割を果たす。心理ドラマとしてはハラハラするし、なんなら音楽がテーマということもあり映像化に向いてるとは思うけど(商業目線)、子供時代にチェロを辞めた事件のトラウマが、本筋にあまり関係せず回収されないのがサスペンスとしては残念。

  • チェロってステキだなと思わせてくれました。スパイとして暮らしていく主人公の気持ちの変化が切なく心苦しかったです。創作のチェロの曲も素敵ですのでYouTubeで聴いてみてください!

  • 音楽教室から著作権料を取ろうとしている著作権協会の職員、かつてチェロを習った経験のある橘が音楽教室への潜入調査を命じられる。音楽教室から著作権を取るという話は、実社会ではすでに最高裁で判断が出ている。小説と関係ないし、すでに法的に決着が出ているものにどうこういってもしかたがないが、教室では「先生」が部分的に見本を見せることがあっても、そのすべてを演奏することはめったにない。レッスンを入り口として、楽譜を購入し、CDを購入し、されに演奏会にも足を運ぶようになったりするのだと思うのだけど。音楽教室の個人レッスンに20年以上通っているので、内容は身につまされる。

  • 途中から、いつ言うの?いつ言うの?とドキドキしながら読み進め、「良かった!」と安堵したのも束の間、またどん底に。

    音楽教室に潜入という特殊な任務の中で
    人って、信頼関係っていいねと思えるラスト。

  • 最初、このテーマ?ってほど意外なテーマを扱っていることにびっくりした。
    読み進めていくと、会社組織の一員としての自分と、一個人として音楽や場を愛する自分の乖離に苦しむ様子がじわじわくる。どっちが正でどっちが偽ではないからしんどいんだろうなぁ。
    テーマとなっている映画音楽もきいてみた。独特の世界観。繰り返しきけばきくほど輪郭がはっきりしてくるようて揺らいでくるような、不思議な曲で、この本とよく合っていた。

  • 音楽を愛する人たちへ向けて書かれた、少し粗雑な言い回しかもしれないが、そんな小説だ。あわせて人と人とのつながり、信頼、そういった何か大切なことについて、前面に押しだしてくることなく、心に訴えかけ、震えさせてくれる物語だ。

    昨今の著作権をめぐる事案が一つの流れを作っており、作者は相当に詳しくそのことについて探索を重ねたと思われる。しかし、それもあくまで物語の背景であり、これが話の流れに瑕疵を生じないように描かれているところに、この作者の並々ならぬ力を感じた。

    現実味のある背景があるからこそ、音楽に対する深い愛、さらにそれを通して人との絆を得ることの尊さ、切なさが、より心に沁みわたってくるといえよう。主人公はアマチュアのチェロ弾きなのだが、その音を奏でるシーンは、文字の間から音楽が間違いなく立ち上がってくる。

    作中で需要な役割を果たすような曲やその作曲者は架空のものであるが、それが逆にいいのかもしれない。物語を通じて聴こえてくる旋律は、それぞれの読み手に委ねられている。小説という音の無い世界から、でも確実に聴こえてくる“自分の”響き。やはりこれは音楽を愛する人たちへ向けられた一冊だ。

  • これで大賞取れないのか!とびっくりしました。
    チェロ(音楽)を中心に人の感情が揺らいでいく様はとても美しかったです。
    最高の作品でした!

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