さらさらと読める短編集で、気軽に楽しむことができた。どのお話も素敵で、程よい分量だった。
2024年4月21日
- センスの哲学 (文春e-book)
- 千葉雅也
- 文藝春秋 / 2024年4月5日発売
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センスとはなにか、センスがいいとはどういう状態か、というのが本書のメインだが、個人的には創作論として自身の創作に反映できそうな考え方が多く、良い読書をしたなと思った。面白いと思うものにはリズム、有と無の繰り返しが必要で、ある種の遠回りや引き延ばしという「無駄」が大事であること。それを再確認できただけでも大きい。
2024年4月21日
- 訂正可能性の哲学 ゲンロン叢書
- 東浩紀
- 株式会社ゲンロン / 2023年9月1日発売
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今まで出版されている東さんの哲学書を踏まえれば、この本は非常に飲み込みやすい内容であると思う。家族は開いて閉じている集団であるという考え方から始まり、民主主義としてなぜビッグデータに基づくAI政治を行ってはならないのか(その危険性はなにか)について説く本書の内容は、自身の経験に照らし合わせて納得できるところがかなりあり、同時に初めて考えさせられることも多く、実り多いものであった。全人類一度は読んだほうがいい。
2024年4月21日
- 教養としての「ラテン語の授業」――古代ローマに学ぶリベラルアーツの源流
- ハン・ドンイル
- ダイヤモンド社 / 2022年9月28日発売
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ラテン語について学びたかったのに、人生教訓本というか、豆知識本というか……自分が求めていたものとは違った。語学をしたい人向けではない。
2024年2月5日
- ローティ『偶然性・アイロニー・連帯』 2024年2月 (NHKテキスト)
- 朱喜哲
- NHK出版 / 2024年1月25日発売
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とても良い一冊で、全人類読んだほうがいいと言えるくらいの内容だった。一度はこういう観点や考え方に触れておいたほうがいい、と個人的には思う。世の中で言われる本質や常識、正義、正解……こういうものに疑問を感じる自分に対し、自分だけがおかしいのか?といつも少し心許なかった。だがこの本の説明にしっくり来、今後はこの感じ方を肯定し、対話を、更新を繰り返していきたいと強く感じた。
2024年2月5日
- チョンキンマンションのボスは知っている アングラ経済の人類学
- 小川さやか
- 春秋社 / 2019年7月30日発売
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タイトル通り、アングラ経済の一例としてチョンキンマンションまわりで作者が見聞きし体験したこと、そして解析が書かれている。なるほどそういう形もあるのか、という面白さや発見はあれど、これを即日本の経済に採用できるかというとそうはならない。どうしたって背景事情や情勢、文化、宗教、etcetc……すべてが関わってなにかしらの制度は成り立つのだから仕方がない。
2024年4月21日
- 正義とケアの現代哲学――プラグマティズムから正義論、ケア倫理へ
- 徳永哲也
- 晃洋書房 / 2021年9月30日発売
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正義論とケア理論に関する本で、色んな議論については学べたが、結局モヤッとするところがかなり色んなところにあり、スッキリとはしない終わり方、持っていき方だった。結局正義とは哲学で定義された正義の話でしかないし(世間で用いられる正義とはずれる)、ケア理論はフワッとしていて具体値が示されない。
2024年2月5日
- 2001年宇宙の旅〔決定版〕
- アーサーCクラーク
- 早川書房 / 1993年2月28日発売
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いくつかのSFで引き合いに出されるのもあり、どんな話なのだろうと思って読んでみた。なるほどなと思う一冊だった。
2023年9月6日
- 屍者の帝国 (河出文庫)
- 伊藤計劃
- 河出書房新社 / 2014年11月6日発売
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伊藤計劃の遺稿を円城塔が引き継いだ作品とのことで、ふたりとも好きなので是非読みたいと思い購入した。あとがきでも触れられているがこれはまさに円城塔の作品で、伊藤計劃に寄せて……などというものではない。題名通り屍者の帝国の話でありながら、歴史改変物で、自分が知っている作品や人物名が次々出てきて、それが色んな意味を孕んでいるところにも興奮をおぼえた。円城塔らしいお話、締め方だった。
2023年9月6日
- The Indifference Engine
- 伊藤計劃
- 早川書房 / 2013年3月15日発売
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Indifference Engineとはなんなのだろう……と思いながら読んで、そんな発想があるのかと驚かされたのは勿論のこと、他の短編集もかなり面白く、興味深く読んだ。短くても濃い。
2023年9月6日
- デューン 砂の惑星〔新訳版〕 下 デューン・シリーズ (ハヤカワ文庫SF)
- フランク・ハーバート
- 早川書房 / 2021年10月5日発売
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上巻を読むのが苦痛だった。全くもって何を言っているのかわからないし、何が起こっているのかもわからない。状況も掴めないし、無駄に複雑で概観が捉えられず。それなのに断片的に色んな人物の目線で色んな出来事が展開されていく。時系列さえままならない。この文章の先に楽しみはあるのか?何度も数行読んで諦めたり寝落ちしたりを繰り返した。それでもなんとか読み進めた。すると中巻からなんとなく分かる気がしてきた。下巻ではやっとわかってきた。なにが起こっているのだろう、から、どうなるのだろう、という気持ちにやっとなった。細かい点は不可解なものが多く、なんだか矛盾してないか?というものもある。しかしストーリーとしては面白い……すべてが見えてこれば。見えないうちは本当に何が起こっているのかわからなくて苦しい。ついでに言うとDUNEは砂の惑星で完結せず、次がある。下巻を読み終わりそれがわかって絶望した。読む気力は今はない。
2024年4月21日
- ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)
- 伊藤計劃
- 早川書房 / 2010年12月8日発売
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今まで読むのを躊躇っていたのが馬鹿らしいと思うほど、「良い」本だった。考えさせられるものが沢山あり、同時に美しくも残酷なお話であった。他人の優しさを押し付けられるという感覚や、自分の全てを外部に委ねてしまったほうが楽だという感覚、それらは私にとっても他人事ではない。むしろ強く感じている部類の人間だと自分では思っている。だからこそこの本は一層自分にとって重く、何を考えなければならないのか、ということを今一度再考する機会を与えてくれる本だった。
2023年8月21日
- 日本のカエル48 偏愛図鑑: 東大生・さこの君のフィールドノート
- 迫野貴大
- 河出書房新社 / 2020年6月16日発売
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とても良かった。今までカエルかわいい!だけで終わっていたのが、最近は写真やイラストを見るたびに「これはアマガエル……」などと思えるのが嬉しい。同定ポイントがかなりわかりやすい上に、エピソードが逐一面白く、ひとつひとつの種に対して愛や印象を強く持てるのが素晴らしいと思う。普通の図鑑ではない構造だ。
2023年8月21日
- 禅とオートバイ修理技術 上 (ハヤカワ文庫NF)
- ロバートMパーシグ
- 早川書房 / 2016年3月31日発売
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タイトルの時点で何?だが、中身もかなり何??という本だ。そもそもストーリーの軸が見えてこない。主人公の主観的な視点で物語が展開されていくので、主人公が納得して話している部分が私達には何なのか見えていない。全貌が把握できず、だんだんと明かされていくような、まるでミステリー小説のような構造だ。その上突然の禅や哲学や教育やオートバイや思考。難しい。難しいけれど、部分的には面白い。
2023年8月21日
- 虐殺器官〔新版〕 (ハヤカワ文庫 JA イ 7-6)
- 伊藤計劃
- 早川書房 / 2014年8月8日発売
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ハーモニー同様大変興味深い本で、良い読書体験をさせてもらった。ストーリーはハーモニーとは全く異なるが、内包するテーマはハーモニーと同じものも違うものも含まれているように感じられ、妙に親和性が高く、まるでセットのような本だなと思うなどした。個人的にはハーモニーの方が終わりの美しさや表現の面白さ、テーマ的に好きだが、虐殺器官もかなり好きだ。責任、赦し、平和、自由。色々なことを考えさせられるが、同時にどこか他人事で、そんな自身の姿勢がまたこの本によってチクチク刺されるのが面白い構造になっているように感じた。
2023年8月21日
- 三体0【ゼロ】 球状閃電
- 劉慈欣
- 早川書房 / 2022年12月21日発売
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三体シリーズを読了して、あんなに満足感でいっぱいになったのに、ここで敢えて「ゼロ」に戻ることで得られるものがあるのか?三体特有のハラハラ感やワクワク感、ドキドキ感を得ることができるのか??……と疑心暗鬼になりながらも読み始めた本であったが、期待通りに最高の読書体験を提供してくれる、「三体」シリーズの一つとしてふさわしい素晴らしい本だった。なんならすでに読んだ三体において、「あの場面、実はこういう背景があったのか!!!」なんていう発見もあり、より一層三体という物語を楽しめる本でもあったと思う。個人的にはかなり好きなお話で、大変満足した。
2023年8月21日
- 創造と狂気の歴史 プラトンからドゥルーズまで (講談社選書メチエ)
- 松本卓也
- 講談社 / 2019年3月13日発売
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難しい本ではあったが、統合失調症至上主義とも呼べるような状態からその脱却(の可能性)まで、その都度歴史的背景と症例、哲学的思考や流行影響諸々を俯瞰できるような構成になっており、大変面白く読み進めることができた。ざっくりとしか捉えられていないだろうが、それでも興味深い内容で、狂気と創造というものがどう関連付けられるのか、時代とともに変わっていく様が目の前で展開されているようで良かった。
2023年7月2日
- 疾風怒濤精神分析入門:ジャック・ラカン的生き方のススメ
- 片岡一竹
- 誠信書房 / 2017年9月25日発売
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精神分析とは一体何なのか?何が特徴的なのか?他とどう違うのか?ということをくっきり認識できるだけでなく、ラカンのロジックにざっくり触れてもらえることで精神分析がなぜその手法をとるのか、なぜ自分の生き辛さが発生するのか等考えることができる良書だった。話の筋が追いやすく、分かりやすく、しっかりと導いてくれる感があって大変読みやすかった。勿論ラカンの理論が完全に正解で、ここで述べられていることが全て正しくて、ここに書かれていることをベースに人生が全て理解できる、ということではないだろうが、それでも自分の人生や、自分のどうしようもない生きた軌跡や行為に対して、ひとつの見方をもたらし、同時に他人の生に関しても新たな見方をもたらしてくれるという点で大変価値のある本だったと思う。
2023年4月24日
- ユ-ビック (ハヤカワ文庫 SF 314)
- フィリップ・K・ディック
- 早川書房 / 1978年10月1日発売
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こういうSFが読みたかったんだよ!となる作品だった。ディック感覚がたまらない。何が起こっているのかわからないドキドキハラハラ感と、かっこいい描写、人物たちの緻密な心理の変化など、様々な要素が絡み合い、ストーリーもメッセージ性も抜群の作品となっていた。
2023年3月4日
- ソラリス (ハヤカワ文庫SF)
- スタニスワフ・レム
- 早川書房 / 2015年4月8日発売
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今まで宇宙SFものは幾つか読んできたが、そのどれとも違う視点、軸に沿って書かれたお話だった。簡潔に言うならば、コミュニケーションのお話だった。私たちは宇宙というものを、地球の延長線上のものであると考え、生命というものを、ヒトの延長線上に考えるクセがある。ヒトが感じ取れることは誰でも感じ取れるし、そもそも「感じる」という現象が常に相手に存在するとおもっている。だが実際はどうなのか。器も違う、器官も違う、環境も違う、何もかもが異なるモノに対してその投影は可能なのか。そしてもし、可能ではない場合、両者が接したときに何が起こるのか。そういう、人間と地球をメインに据えた考え方に疑問を呈し、再考させられるような内容だった。
この話を読み終わった時、私はこの考えが、ヒト対ヒトコミュニケーションにも適用できるものではないか、なんならしなければならないものではないか、と思うなどした。自分がスタンダードで、周りはそのスタンダードを共有しているという考え方でコミュニケーションをすると、なにかがおかしい……という風になることがある。我々はそんな環境で、どのようなスタンスで、どのような希望と絶望と諦めを抱えて生きていけばいいのだろうか。
2023年3月2日
- 火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)
- レイ・ブラッドベリ
- 早川書房 / 2010年7月10日発売
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別惑星と地球との関わりをモチーフにした物語はいくつか読んできたが、今まで読んだものとは少々印象が違い、まさに「年代記」という感じだった。淡々と、それでいて細かい描写で情景が描かれ、短いお話が連なっていき、時が進んでいく。謎を解明する、とか、そういうワクワク感はあまりない。ただひたすらに火星人や地球人といったヒトの振る舞いや考えが、個人レベルで、はたまた惑星規模で動いていくだけである。
2023年2月19日
- 社会契約論/ジュネーヴ草稿 (光文社古典新訳文庫)
- ルソー
- 光文社 / 2008年9月20日発売
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原著を読むことで、断片的に聞くイメージはやはり断片的なものでしかなく、ルソーが本当に強調したかったことを捉えられていたわけではなかったのだ、と改めて思った。
2023年2月19日
- 蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)
- 恩田陸
- 幻冬舎 / 2019年4月10日発売
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人に薦められて読んだ。ピアノのことは全然わからないので、正直読み始めた時は「ピアノの話か、ついていけるだろうか」と不安だった。が、物凄い表現力で、わからないのに何故か感情が刺激されて、物凄い音楽を聴いているような気持ちになり、心が揺さぶられ、涙まで出かける場面まであった。すごいの一言だった。
2022年12月26日