恥辱 (ハヤカワepi文庫 ク 5-1)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200427

感想・レビュー・書評

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  • 衝撃すぎてなんかもう思い出したくないけどとにかく衝撃だった。衝撃すぎて読んでから7年経ってもまだ感想が書けるほど。こんなエグい物語を書く人がいるのか。でも普段考えることもないし、避けていることをガンガン突きつけられて胸糞悪いし、苦しい。密度の濃い感情を起こさせる事においてやっぱりブッカー賞はすごいんだなあと思ったけど、好き好んで読もうとは思わない…。

  • エリート大学教授が性欲により落ちぶれていく話。簡単にいうとそれだけなんだけど、じゃあ落ちぶれていくってなんだろう?アフリカは落ちぶれている?都会で大学教授をすることはエリート?生きていく上での恥辱とはなにか?
    自分たちが味わった恥辱について、大学を追い出された元、エリート大学教授と、アフリカの田舎で農園経営をして必死に1人で生きていくその娘が話し合う所がある

    「最下段からのスタート。無一文で。それどころか丸裸で。持てるものもなく。持ち札も、武器も、土地も、権利も、尊厳もなくして」
    「犬のように」
    「ええ、犬のように」

    生きていくなかで、何に裁かれていかなければならないのか。美しい女とセックスをして、それを申し訳ないと形だけでも涙ながらに謝罪しないことは糾弾されるべきことか?裁かれることか。女1人で身寄りもない田舎で農園を営む夢を持ち続けることは裁かれることか?誰かに糾弾されることか?わからないけど、人が生きるだけで誰かが嫌悪を抱いて、それらに制裁を与えたい、屈辱している姿を見たいと思う人間はそこかしこにいるのだろうなーと思った。

    文中でひとつのキーワードになっている犬について描かれている本当に最後の最後の後半がすごく好きだった。多分、犬は人間に最も近いものとして描かれることが多いからめちゃくちゃ死ぬんだろうな。
    犬のように生きて、犬のように優しく抱かれて、犬のように何が訪れるのかわからぬまま死ぬのだ。

    犬がめちゃくちゃに死にますが、犬とはわたしでありあなたかもしれない。

  • 気分が落ち込んだ時に読んでたからますます落ち込んだ。救いがない……。

    定年まぎわのおじちゃん教授は性欲ギラギラで教え子とやっちゃって教職を追われ、娘が住むアフリカへ行ってみるんだけれどギャングどもにやっつけられてやれやれ……というはなし。

    救いのない時代の救いとは何か。成長なき時代の成長とは何か。ただ恥辱に耐えていくしかないのか。
    身分不相応な望みを持つことは罪なのか。

    しっかし陰気な小説だなーと思いました。

  • 人間を単純に2つに分けることはできない。という真理を感じる小説だった。
    良い人、悪い人。幸せな人、不幸な人。偉い人、偉くない人…。

    時代や文化が変われば、価値観は変わる。同じ時代、同じ文化においても、人によって価値観は異なる。
    だから、本当の意味で相手を理解するというのは、ほぼ不可能だ。

    だからこそ、自分の言葉や行動は、自分の意思や正義に対して正直であるべきだ。そして、その中では自分は自由でいられる。
    人は誰も迷う。いつでも迷う。だから学び続けなければ、前に進めなくなるということだ。

  • 西洋でも東洋でもないアフリカ的な生き方。いろいろな見所のある面白い作品だった。

  • 「百年の誤読」から。ノーベル賞受賞作家ってこともあり。主人公じいさんの、結構なろくでもなさ加減が面白かったです。ただおそらく、自分が本作の素敵さを十分に味わいきれていないんだろうなというもどかしさを踏まえて、満点はつけずです。アパルトヘイトがまかり通っていたかの国の抱える難しさとか、本作からそれとなく伝わってくるものも興味深かったです。もう一方のブッカー賞受賞作品も是非味わってみたい、とは思えました。

  • 南アフリカの大学(都会)と田舎の二つが舞台。
    仕事で2度しか訪れていないが、リアリティをもって読むことができた。
    主人公は西欧文学専攻の大学教員。それがセクハラ疑惑から転落し、犬の殺処分に携わる中で、これまでの人生を振り返る。その振り返りは生やさしいものではない。過去の女性は彼の中では全て美しく輝く。しかし、唯一、実の娘ルーシーだけは、妥協点が見えない。彼女こそ、もう一人の主人公ともいえる存在。覚悟が決まっていて、不可解だが、魅力的なのだ。

    読み終わって、ただただすごいものを読んでしまったという感想しかない。ヒロイズムのかけらもないのに、人間とは、社会とは何なのか、考えさせられる。

  • 主人公とその娘の墜落の仕方がうまく対比をなしていて、且つ彼らを陥れる(作為、無作為問わず)人々との照らし方もこれまたうまい。

    動物病院での殺処分など、モチーフも唸らせる。

    ただ、盗難車が見つかった件は何だったのだろう…?

  • 読んだ!主人公がクズで、負け犬小説と呼ばれているらしい。自分は主人公よりもっとクズなので「これで負け犬〜?」と思ってしまうところはあるけれど、後半、本格的に負け犬になってからは、ちょっと他人と思えなくて妙に肩入れして読んでしまった。
    傑作と言われている小説でも自分には感動ポイントが理解出来ないものがある。、理解できないなりに歩み寄っていくと「なぜ傑作といわれるか」が段々わかってくるという事がある。そういう読書体験だった。

  • 最初からイライラしたけど、どこかであっと驚く展開でもあるのかと読んでいったけど、あまりに予想通りの展開でした。そして最初から最後まで主人公が嫌でした。娘の毅然としたところはスカッとするけど。

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著者プロフィール

1940年、ケープタウン生まれ。ケープタウン大学で文学と数学の学位を取得して渡英、65年に奨学金を得てテキサス大学オースティン校へ、ベケットの文体研究で博士号取得。68年からニューヨーク州立大学で教壇に立つが、永住ビザがおりず、71年に南アフリカに帰国。以後ケープタウン大学を拠点に米国の大学でも教えながら執筆。初の小説『ダスクランズ』を皮切りに、南アフリカや、ヨーロッパと植民地の歴史を遡及し、意表をつく、寓意性に富む作品を発表して南アのCNA賞、仏のフェミナ賞ほか、世界の文学賞を多数受賞。83年『マイケル・K』、99年『恥辱』で英国のブッカー賞を史上初のダブル受賞。03年にノーベル文学賞受賞。02年から南オーストラリアのアデレード郊外に住み、14年から「南の文学」を提唱し、南部アフリカ、オーストラリア、ラテンアメリカ諸国をつなぐ新たな文学活動を展開する。
著書『サマータイム、青年時代、少年時代——辺境からの三つの〈自伝〉』、『スペインの家——三つの物語』、『少年時代の写真』、『鉄の時代』、『モラルの話』、『夷狄を待ちながら』、『イエスの幼子時代』、『イエスの学校時代』など。

「2023年 『ポーランドの人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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