恥辱 (ハヤカワepi文庫 ク 5-1)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200427

感想・レビュー・書評

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  • 軟派な中年白人親父は変わっていく。「ひとの栄辱とはなにか。魂のよりどころはどこにあるのか(そもそも魂はあるのか?)。」どこか馬鹿にし、受け入れようとせず、距離を置いて接していたひとがいる。いつの間にか壁が低くなり、言いたい事を言って喧嘩もして、抱擁も交わす。価値観の違う人を丸ごと理解するのは難しいけど、どこかで折り合いをつけて日々を過ごすほかない。

  • (再読中)

    うーん、これはー、これはー、キツイ。きつい本だがすごい。可愛い女子大生と合意の上かと思ったら、ところがどっこいセクハラで訴えられる大学教授がその後もっと酷い事件に巻き込まれる・・・。救いはあるのかないのか、自分でどうにかするしかないのか。南アフリカ社会に生きる白人(アフリカーナー)という世界。これぞ現代海外文学を読む醍醐味。それにしても父娘の会話がなんというインテリジェント。
    翻訳のテンポがよく、つらい内容の物語も、 なんだか日本語の美しさに救われそうだ。これは英語で書かれていてもこういう印象を持つような文章なんだろうか? 巻末の解説は野崎歓氏も、翻訳を褒めている。

  • 最高。
    ただ頑固な生き方を通すと
    こうなっちゃうのかな~、と。
    でもオレも丸くはならないぜ!!

    http://ffapparelkiroku.blog71.fc2.com/blog-entry-31.html

  • じじい教師が女生徒に手を出したらパワハラ・セクハラで訴えられてしまった恥辱
    しかも謝罪より先に自分のプライドを守ろうとしてしまう、まさに恥の上塗り
    結果、学校を追放されて、娘の暮らす田舎に転がり込んでいくのだけど
    彼はそこでさらなる恥辱にまみれていくことになる

    94年にアパルトヘイトが撤廃されたとはいえ
    それによって「血のつながり」や「文化的差異」まで無くしてしまえるわけもなく
    結果として、それまで「進歩的」とされてきたタイプの人々が居場所を失ってしまったのだと思う
    そうやって社会的に宙に浮いてしまった人々はいやおうなくふたつの選択を強いられていく
    すなわち、恥辱を受け入れるか否かだ

    (アパルトヘイト撤廃は91年じゃなくて94年でした…
    訂正させていただきました)

  • 話のつくりが対称的できれいだと思う。
    主人公は物語前半で触れられる自らの行動と同じ方法で(言ってみれば)復讐されて
    被害者の父親と同じ立場に陥ったはずなのにその点に関する言及が奇妙なまでに避けられている。
    この辺が"他者"の話になるんだと思う。かなり印象的な本です

  • あのですね、これをですね、
    帰省の折の、新幹線で読もうと買ったのです。
    ブッカー賞作家ですし、勧められましたし。

    ですが、これは大晦日に読むには、
    相当に適さない本でした。

    もっともっと、晴れがましさから縁遠い時に、
    読むべき本であると気付いたのは、読み終わった後。
    絶望とかすかな再生であるがゆえに、
    本当に絶望しているときに読むべきだと感じて、
    再度読むことは、なぜか避けております。

  • 2009年3月4日購入

    最近、予定調和的?な本ばかり読んでいたせいか
    読み終わった後は毒にあてられた気分である。

    読み始めは小憎らしいインテリ中年だった主人公が
    愛という名の無力を学んでいくのを読むのは
    まことに嫌な気分であった。

    最初は大したことない話だなと思っていたが
    途中から様子が一変する。
    そこからの味のない、
    しかし目をそらすこともできない話が始まる。


    赤ちゃん教育で冒頭に紹介されていたので買ったが
    これを読みながら子育ての本を書くとは…

    そのせいでちょっと違う内容を期待していたので
    評価は4だがたぶん5に値する内容だとは思う。

    それと岩井克人が
    私有財産制とは非常に崩れやすい制度だ、といって
    アフリカの話を出していたがなるほどと納得。

  • ラウリー教授がいとしい!

    「抒情だ。わたしには感情表現が欠けている。
    愛を巧くあつかいすぎるのだ。燃えあがっているときでさえ歌えない。
    わかりますか。そのことを悔いに思う。」

    あまりにもかなしい

    昔からよく思うのは、感受性が強すぎるのも人づきあいがうますぎるのも物分かりがよぎるのも、どれも障害となる。
    メラニーになりたかった。

  • ポストアパルトヘイト時代の南アに於ける、白人と黒人、男と女、農村と都市、人間と動物、富者と貧者、ハイカルチャーとサブカルチャーといった二項対立とその混沌とした逆転に次ぐ逆転が、失脚する主人公の流転とその娘の苦難という形でショッキングかつ鮮やかに描かれていて、一気に読んだ。

  • ブッカー賞を初め
    国内外の数々の文学賞を
    受賞している『恥辱』です 

    南アフリカと言う地にあって
    今まで 
    いかに西欧的環境に守られていたか
    という現実を 
    徹底的に突きつけられる出来事に
    更なる 恥辱をもって塗れます

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著者プロフィール

1940年、ケープタウン生まれ。ケープタウン大学で文学と数学の学位を取得して渡英、65年に奨学金を得てテキサス大学オースティン校へ、ベケットの文体研究で博士号取得。68年からニューヨーク州立大学で教壇に立つが、永住ビザがおりず、71年に南アフリカに帰国。以後ケープタウン大学を拠点に米国の大学でも教えながら執筆。初の小説『ダスクランズ』を皮切りに、南アフリカや、ヨーロッパと植民地の歴史を遡及し、意表をつく、寓意性に富む作品を発表して南アのCNA賞、仏のフェミナ賞ほか、世界の文学賞を多数受賞。83年『マイケル・K』、99年『恥辱』で英国のブッカー賞を史上初のダブル受賞。03年にノーベル文学賞受賞。02年から南オーストラリアのアデレード郊外に住み、14年から「南の文学」を提唱し、南部アフリカ、オーストラリア、ラテンアメリカ諸国をつなぐ新たな文学活動を展開する。
著書『サマータイム、青年時代、少年時代——辺境からの三つの〈自伝〉』、『スペインの家——三つの物語』、『少年時代の写真』、『鉄の時代』、『モラルの話』、『夷狄を待ちながら』、『イエスの幼子時代』、『イエスの学校時代』など。

「2023年 『ポーランドの人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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