- Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151200427
感想・レビュー・書評
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理解し合えない者どうしが理解し合えないまま終わる小説。ただし頭では。この小説は「他者」だらけ。人間のみならず動物たちも重要なサブキャラクター。
しかし本作を読み進めるにつれてかすかに、ほんの少しではあるけれども理性よりももっと深いレベルでの共感の兆しが香ってくる。それは、両者の妥協とか契約とかそんなもので解決されはしないが、「少なくとも」チャンスがあれば分り合いたい、と扉を半分開けて待っている状態とでもいうのか、その半分開かれた扉の向こうから漂ってくる香りだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
離婚歴のある大学教授デヴィッドは、娼婦や教え子にまで手を出してその色欲を満たしていた。しかしその中の一人の学生に告発されたことで、大学を追われ片田舎の娘の農園で、一時的に暮らすことになった。そこで、彼はさらなる「恥辱」を経験することになる…。ノーベル賞作家のブッカー賞受賞作ということで身構えていたが、読みやすく軽快な印象を受けた。彼の専門は英文学なのだが、その人生のどん底ともとれる状況でも、ワーズワースとバイロンの存在が最大の癒しであり、救いなのだということは分かりやすい。しかしそれにしてももっと悩めよ…とは思うが。メインは娘と父。あくまで一人の独立した人間で、父とは何の関係もないものとして自己主張する娘と、農場での出来事を機に心配が絶えない父との衝突。その問題が未解決のまま(のように私には思えた)終わったのが気になる。
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犬のように
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性欲旺盛なおっさんの人生が転落していく話
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主人公は元大学教授。盛を過ぎたことを認められない男のはなし…と思ってたら、これは、ひとの感じるすべての傷みを書いてあるのではと思った。感情は揺さぶられる、静かにだけど。
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原罪の意識について考えさせられた。
現在形で書かれている意味についてたも。 -
肌の色の記述を避けるのは、南アでの検閲を逃れるためとあとで知ったが、それがクッツェーの作品の魅力を引き出しているとも言える。人間の営みにはカフカ的なものが隠されている。