アルモニカ・ディアボリカ (ミステリ・ワールド)

著者 :
  • 早川書房
4.06
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本棚登録 : 745
感想 : 111
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152094223

感想・レビュー・書評

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  • 開かせていただき光栄です』の続編。
    あの事件から5年。
    エドとナイジェルを失い残された解剖医ダニエルの弟子達は
    犯罪摘発情報新聞『ヒュー・アンド・クライ』の発行編集をしていた。
    そんな彼らの元に坑道内で空を舞う天使の目撃と共に
    屍体が発見されとの情報が入る。
    調査に行った彼らが見たのは
    5年前に出奔したナイジェルの死体だった!!
    ナイジェルの胸には血で
    《ベツレヘムの子よ、よみがえれ!アルモニカ・ディアボリカ》と書いてあった…この意味は?
    いくつもの視点が絡み合う重厚な物語。
    最後の一行に泣けた。

    悲しい物語。

  • プロットそのものがかなり入り組み、相当複雑な構造になっているのだが、それを齟齬なくまとめ上げているのはさすがだと思う。
    ただ、通読して感じるのが、なんだかこれまでの皆川作品とは少し違う、という漠とした心地。
    二昔前のロールプレイングゲームのように、極めて限定的な細い筋の上を、辻褄を合わせるために辿らされているかのような、とでも表現すればいいのだろうか。
    登場人物のことごとくがストーリーにバチッとリンクしていく様に、いつものような気持ちよさの代わりにちょっとした強引さというか、お仕着せのご都合主義に近いものを感じてしまった。

    「開かせていただき光栄です」の世界が再び展開されていることについては素直にワクワクするし、何より前作で感じた"ナイジェルのバックグラウンドが結局明かされなかったな…"という私の疑問を氷解させてくれ、おそらくは「開かせて…」を書く時に既に続編の構想も存在していたであろうことが窺える。
    年月を経て、バートン先生の弟子たちがそれぞれ進むべき道に分かれていくことには、一抹の寂しさを覚える。

    いずれにせよ、もう少し紙幅を費やせばさらに収まりのよい作品になったのではないだろうか。
    若干収斂を急いでいるように感じられたのも、雑な印象を受けた一因だと思う。
    これまで皆川博子氏の作品にはおしなべて高評価の私だが、泣いて馬謖を斬る心境で、星3つ。

  • 「開かせていただき光栄です」を読んでいるほうがいろんな意味で絶対に良い、バートンズと盲目判事ジョン・フィールディングとその助手アンが活躍するミステリです。18世紀のイギリスの克明な描写をもとに、当時ならではの苦難に阻まれながら、「天使」の殺人の謎を追っていきます。
    前作を読んでいるのが前提というか、読んでなければ勿体ないのは確かなのですが、だからこそ今回の事件、物語はかなり厳しいなあと思えたのです。ナイジェルがだった、不憫すぎる。不憫といったら下に見るようでよくないかもしれませんが…、悲惨の一言の手記で明かされる過去、その回想にたびたび紛れ込むエドへの思慕の切なさに、キリキリさせられるばかりです。そしてそれがラスト2行に万感の思いを抱かされます。たったのその2行が、この物語の肝であり読後の感傷を広げます。ああもう、なんて容赦がないのでしょうか…皆川先生。でもだからこそ素敵。惚れています。
    事件のほうは、数多くの登場人物に若干こんがらがったり、最終的な真実についてはすべてが絡まり合ってつながったことには凄いと思えましたが、判事たちの推測で結としている部分が、ちょっともったいないなあという感じがしました。
    エドは結局本当に何を想ってあんなことをしたのか。それを推測ではなく、彼の口からききたい、と思えたのです。それは次作を待て!ってことでしょうか。イン新大陸で。
    …悲劇しかやっぱり見えないので、かなり怖いですが、やはり読みたいです。

  • 前作「開かせていただき光栄です」の続編。ガッツリ続編なので、これから読まれる方はまず前作から。

    とりあえず、解剖医のダニエル、彼の弟子たち、盲目判事のジョンたちに再び会えたことが嬉しい。謎めいた言葉を刻まれた遺体に、何やら怪しげな思惑を持った人たち。そこに、まさかのあの二人が絡んできて、、、。複雑なミステリトリックもさることながら、余りに過酷で、無情過ぎる彼らの過去。あの二人にも本書で再会できたことは嬉しかったけれど、結局、前作以上に切ない結末に。こんな方法でしか決着を付けられなかったのか、、、残されたジョンたちも自責の念を抱え続けそうなそんな結末。でも未来は感じました。更なる続編があったらいいなと思います。

  • 「開かせていただき光栄です」続編。繋がりがあるので、順番通りに読むことをお薦めします。
    謎めいた言葉「アルモニカ・ディアボリカ」の意味をたどるうち、明らかになるさまざまな事件。やがてはナイジェルの過去にもつながり、物語は大きな広がりを見せます。
    過去と現在をつなぐ多くの事象、そして徐々に浮かび上がる真実の姿はある意味、残酷。判事の苦悩も痛々しく、事件の終着点もハッピーエンドとはいかない余韻を残すけれど、後味は悪くありません。

  •  18世紀のイギリスを舞台にした解剖ミステリ『開かせていただき光栄です』の続編。
     前作から数年後のまったく別の事件を扱った話だが、前作の真相や犯人が土台となっているので、初めて読む人は注意されたい。

     盲目の判事サー・ジョンと仲間たちが、胸に〈ベツレヘムの子よ、よみがえれ!〉と書かれた屍体の謎を追ううちに、前作で自分たちの元を去った友人の影に気づく。腐敗した政治や、社会的弱者に対する差別が公然と行われていた時代背景を元に、犯罪が起こった哀しい理由もしだいに明らかになっていく。

     前作同様、作者が八十歳を越えているとは思えない軽妙な筆致で、猥雑なロンドンと田舎のオックスフォード、現在と過去を行ったり来たりする。一緒に謎を追うサー・ジョンと身分の低い仲間たちとの格差(移動手段や食事の差)もしっかり描きながら、悲惨な出来事があった場所の過去の空気までが色濃く迫ってくる。これが謎解きや犯人探しと同じくらいこの本の醍醐味になっている。

  • 面白かった。
    主要人物のキャラも、だんだん思い出していった。
    きつい描写もあるが、その背後の悲哀を描き、読ませてくれる。
    18世紀イギリスの雰囲気が、生き生きと伝わる。
    『開かせていただき光栄です』を前提とした続編。
    前作を読んでおいたほうがいい。

  • 『開かせていただき光栄です』http://booklog.jp/item/1/4152092270の続編。
    ならべて面陳したい表紙。

    あれをどうやって続けるんだ?
    →そうか、まあそう続くよな
    →ええ!?そうくるの!?
    →あぁ…そうなるよな…
    と、いいように気持ちを翻弄される楽しい読書だった。
    完全にキャラ読み。でも背景も楽しい。建築法を色々知りたくなった。


    アンは賢い人とみなすとイラっとくるけれど、おバカさんだと思うと可愛いなあ。
    この人将来どうなるのかしらとか気になる。
    ネイサンの、思春期を脱しても未だ迷子な普通さにほっとする。
    悲しい話だから、癒し系ジャガイモ・ダニエルの出番が少なくてさみしい。


    あの子はもっとあっさり人を乗り捨てできるような悪魔でもよかったのにと思いつつ読んでいたんだけど、最後まで読んでそうかそうなりたくなかったのかと思ったら一気に悲しい話になった。
    この読後感は悪女系の話に似ている。この子を幸せにしてやってよという。

    期せずしていいタイミングで読んでしまった。
    これの前に読んだのとリンクしてる。

  • 前作同様、非常におもしろく読ませて頂いた。ただ、本書全体に漂う雰囲気を前作と比較すると、「切ない」と表現することができよう。その理由はいくつかあるが、それらを述べると、本書の楽しみがなくなるため、ぜひ読んで感じて頂きたい。
    また、私はTwitterで知ったというか、本書を最後まで読むと、そのTwitter情報が真実性を帯びるのだが、どうやら続編がありそうだ。陽気なバートンズにまた会いたいなあ。楽しみに待ちたい。

  • 「開かせていただき光栄です」の続編。前作を読んで直ぐだったので、物語前半に判明する事柄に愕然としました。これもトリックのひとつなのでは?と半ば疑いながら読み進めたため、頭がこんがらがりそうでした。読み終えても事件の流れがはっきり見えず、エドの行動も不明なところが多く、なんだかもやもやしています。時間があれば再読しようと思います。
    あと、些細なことですが、あの音名の調は「ト長調」ではなく「ハ長調」では?と思います。暗号には関係ありませんが。

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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