- Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334926229
感想・レビュー・書評
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大量殺人を行った男の、一つの事件のルポの体裁を取ったミステリ。ひねくれているように言われているが、本格という芯がまっすぐ通っている。ルポ調だけに淡々とした語り口で書いたところが逆に難しかっただろうと思う。
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実録小説&解説コラムの形式を借りたミステリ。この「なぜ」を成立させるためには、手慣れた連続殺人者である必要があったわけだ。
『昨日の殺戮儀』を読みたくなっちゃいますねぇ。奥付の先まで作品に含まれているんですね。こういう作りは楽しい。
突然現れた探偵と時野はなにか関係があるんでしょうか?他の作品に出てくるのかな? 『昨日の殺戮儀』を読むのはかないそうにないけれど、著者の他の作品も読んでみたくなりました。 -
傑作。猟奇殺人実録ノンフィクションの体をとった本格ミステリ。最後の最後、さりげない一文ですべてがひっくり返る衝撃。自分が今まで読んできたものが、突然また新たな意味を持って目の前に現れる。これほどの作品が注目も浴びずにいるというのが信じられない。
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稀代の連続殺人者、佐藤誠が遠海事件に際して、どうして死体を残し、またタイトルにある「どうして首を切らなくてはならなかったのか」という疑問を現代の考察と佐藤誠の証言で話は繋がっていく。最後にどんでん返しとちょっとした出来事が巻末にある。-犯人はすでに分かっている状態で、どうストーリーが展開していくのかと思ったが、まあすんなりと読み進めることはできた。
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初めての詠坂雄二。本作が二作目だそうだが、何だこの“こなれた感”は(笑)
テンポが良くて…というより、文体や表現がこなれてるので読みやすい。そして何てことのない普通の会話の面白さリアルさに舌を巻く。凡庸な作家なら、かぎ括弧でだらだらと会話を繋げるだろうところ、ブリッジの文を絡めつつ展開していくのでまったく飽きない(しかもそのブリッジも俯瞰やト書きではなく会話の一部になるという京極氏がよく使う手法に近い)。
本作は謎解き(ミステリ)というより、タイトルにもある「なぜ首を切断したのか?」に収斂していく物語。この「理由」を知ったとき、物語が一気に胸に迫る。オススメ! -
80人以上を殺したと自供した佐藤誠。
彼の殺人のなかで、遠海事件と呼ばれるものをピックアップした犯罪実録小説。
詠坂雄二が小説部分を、その合間に犯罪学者の解説を挟むといった構成。
初めての作家さんです。
小説の合間の解説が邪魔だなぁ、と思いながらよみ進めましたが真相には驚き。
タイトルの「なぜ首を切断したのか」。
これだけの謎で見事にひっぱられてしまいました。
だけどそれだけだったらまだ星三つでしたが、最後の最後にあきらかになる事実でノックアウト。
真相とは関係のない部分でしたが、ここでやられてしまいました。
ただ、この詠坂氏も嫌なやつでしたし、ほかの誰にも心情的によりそえず。
もちろん佐藤の気持ちなんてわかるはずもなく。
ちらりと登場した探偵役もなんだか高飛車な印象でしたし。
読んでいる間じゅう嫌な気分でした。
それでもお見事でした。 -
八十六件の殺人事件を自供した稀代の殺人事件容疑者
「佐藤誠」が起した遠野事件におけるクビの切断...を
メインに事件そのものと佐藤誠なる人間をルポルタージュの
形式を借りて小説風に仕上げた、小説。
その手法からしてヒネくれてますが、展開自体も
二転三転しつつもその真相は決して明確でないってのも
相当ねじくれたミステリ。作者である「詠坂雄二」という
作家が作中登場したり、今作を読む限りでは、「佐藤誠」
が自白に至るきっかけになった探偵「月島」など
あまりにも説明不足なのに気にせず読めます。
随所に仕掛けた作者のトラップは最後の最後に
ギラリと刃を向けてきますね。おフザケのような
見開き広告も最初はダマされたw。これ読みたいのにーw。 -
犯罪実録小説という形式そのものを仕掛けに用い、「終わりに」「巻末資料」で真相のすべてを明らかにする。仕掛けの大胆さ、周到さ、ひねくれっぷりに脱帽。傑作! なんでもっと話題にならなかったの?
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数十人もの人間を完全犯罪に近い形で殺した殺人鬼が主人公。なのに、ばさばさと人を殺していくような話では、ありません。扱われる事件は、たったひとつの異質な事件。それでもインパクトは十分なのですが。
問題は、殺した理由ではなく首を切った理由。解ってみれば案外と単純だったな、と思いましたが、盲点ですね。いろんな意味で、やや不思議なテイストのミステリです。 -
犯人が既に分かっている状態で、いくつかの事件の詳細を隠したかたちの殺人事件。
完璧なシリアルキラーである「佐藤誠」が、なぜこの事件に限って首を切る「だけ」で済ませたのか、というのが事件の肝……ではあるのだが。
何よりも、作品全体に仕掛けられたものすごい数のミスディレクション、伏線、手がかり、サプライズこそが、この作品の肝なんじゃないかと感じる。
本格ミステリではなく、犯罪ノンフィクションの体裁を模し、「はじめに」、「おわりに」、合間のコラムなど、どこまでも読者にそう思わせようという仕掛けだらけ。
それによって読者は「佐藤誠」にある種の期待を感じるわけだ。
「ものすごい理由の、ものすごい殺人なのではないか」みたいな。
終盤、二転三転する事件の真相解明の中、あれだけ無味乾燥だった「佐藤誠」が次第に「人間」に近づいていく過程もまた面白い。
巧妙にしかけられたミスディレクションの渦の中に巻き込まれる快感がある。
読者が勝手に思い込んだ「佐藤誠」像も、合間のコラムすら伏線の一つなのだから。
また、「おわりに」の最後の一撃と巻末資料。
ここにまでサプライズを仕込むかと。