- Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488195120
感想・レビュー・書評
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物語の始まりは、
退役軍人である主人公オーエンは、家から送られてきた手紙をきっかけに故郷の街に戻ってくる。そこで彼は家族から、家の玄関先に定期的に人骨の一部が置かれていることを聴かされる。その骨は少年の頃、森で行方不明になった弟のものだった、
という感じです。骨が戻り、オーエンが戻り、止まっていた時間が動き出す。
描き方としては、主人公にのみ焦点を当てるタイプではなく、登場人物たちにぱっ、ぱっ、とスポットライトを当てていくもの。そのため、登場人物の心情に感情移入はしづらいように感じた。兄から弟への愛情を身に迫ったものとして感じられなかったのは少し残念に思う。
物語は、はじめはゆっくりと、オーエンの周りにいる意味ありげな登場人物たち(の行動)について語られ、後半は事件の核心に早足で近づいていく。けれど、謎解きもの、という印象はあまり受けなかった。何故、殺されたか、誰が殺したのか、は物語の中心からは少し離れたところの問題だったように思う。事件の周囲にいる人々の思惑に頁を割いている。
登場人物たちはみんな色とりどりのセロファンを持っていて、それをジョシュ(殺された弟)の死体の上に被せている。事件を複雑化させたのは、そのセロファンであり、死体と彼らの上に流れた時間だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「クリスマスに少女は還る」の衝撃が再現されるのかと思ったが…。謎めいた語りは魅力たっぷりで、我知らず先へ先へと誘われていく。でもついつい比べてしまうのでねえ。「クリスマス〜」は「あれを読む前の私に戻ってもう一度読みたい本」のひとつなので。
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街の人々の秘密が次から次へと暴かれていく前半はちょっと退屈だったけど、人間の狂気があばかれていく後半はおもしろかった。
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個人的な事情で、読むのにとても長くかかったので、読むたびに全体像を組み立てなおすのが大変で、さらに時間がかかるという悪循環。
傑作だとは思うけど、そんなわけでなかなか入り込めなかった。もったいない。未読の「クリスマスに少女は還る」はちゃんと時間をとって読もう。 -
SPAの書評を見て読んでみた。
地味な話だけど、確かに最後まで飽きさせない語りはさすが。
ただ、人物達にいまいち移入出来なかった。お国の違いだから? -
まさに、歪んだ愛の物語である。
20年ぶりに兄が帰郷した。それは、15歳で失踪した弟の骨がひとつづつ家に戻ってきたからだ。
「クリスマスに少女は還る」のオコンネルのノンシリーズです。
「クリスマスに少女は還る」も、マロリーシリーズも、個性的というよりもっと強烈な人々が出てくるが、これはもっと偏っている。誰もかれもが、自分の世界をひたすら守ろうとしていて、そのための手段を選ばない。その一方で、狂おしいまでの他者への愛が行動の基盤になっている。
愛が歪む、その悲しい結末を見るようだった。
にしても、オコンネルの人物造形はすごい。
妻に死なれた判事の家に、突然現れ、家政婦として居ついてしまうハンナ。物語は、彼女ゆえに動きだし、帰結する。
そして、主人公を愛しながら歪んでしまっている隣家の娘。
歪んだ理由は、とてもまっとうで、歪んだヘンな人間ばっかりでてくる物語の中で、彼女と主人公の二人だけが妙にイノセントに見えるのである。
多分、それが作者の手だったんだろうと思うけどね。
ともあれ、オコンネルは最高に面白いです。
お願いですから、マロリーシリーズの続きをさくっと出して下さいm(__)m -
現代 カリフォルニア州北部 コヴェントリー
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最初は独特の文体にダレたが、途中からは圧巻の一言。
ツイン・ピークスのように狂った住人たちの街に降り立った「大天使」オーエンの冒険のはて。
悲惨な物語なのに、不思議と明るい読後感。
思春期の恐ろしさ。
大傑作。 -
「クリスマスに少女は還る」がとても印象深い作家さん。
今回の作品もかなり良かった。登場人物の会話もテンポも描写も良く、すっとアメリカの田舎町の舞台へ引き込まれる。いたるところに伏線がはられ、あとから「ああ、そうかあ」と納得。ただ、英語では頭文字が異なるが、日本語ではイヴリンとイザベルがよーく似ていて時々混同(笑)。勢いだけで読み終えてしまう軽いミステリとは一線を置く、読みごたえあるミステリ。