何人かの高校生たちの一人称で構成されているお話。
そう、何人か忘れた(笑)
最初の方がとても読みにくくて、読み終えるのに何ヶ月もかかった。
この作家さんの文体に慣れたら一日で読み終えられたと思う。
19歳の時に書かれたらしいけれど、うーん。
読み手を選ぶ。
少なくともアラフォーの私には、17歳の日々が遠すぎて共感しにくかった。
私が高校生の時とは全然違うんだもの。
いまの子ってそうなのかぁ、と感じたくらい。
突然終わって、え?ってなった。
斬新とは思うけれど、私は桐島くんの章でしめてほしかったな。
どちらかと言うと映画部がメインになっていく…謎。

2018年8月17日

読書状況 読み終わった [2018年8月17日]
カテゴリ 毒にも薬にも…

とても不思議なお話。
そしてとても切ないラスト。
何も考えずに受け入れるように読むことをお勧めします。
変に勘ぐったりしない方が楽しめる。
何度も驚き、先が気になって途中から一気に読んでしまった。

2018年5月7日

読書状況 読み終わった [2018年5月7日]

【マドンナ】
妻子持ちの春彦が、配属されてきた知美に恋情を抱いてしまう話。
ライバルは部下の山口。
中年男のせつない気持ちを綴りつつ、妻の偉大さを思い知らされる。
お見通しかつ、受容する大いなる妻。
真のマドンナは知美ではなく、春彦の妻なのかもしれない。
個人的に春彦と山口が上下関係を忘れて殴り合うくだりがすき。

【ダンス】
ムーミンに出てくるスナフキンのような浅野の、根無し草のような生き方に憧れた。
しかし会社という大きな歯車の一部であることを思い知らされるシーンでは、ある意味胸がすっとした。
主人公の芳雄が部長と取っ組み合いになるところは「マドンナ」の春彦と山口を彷彿させた。
俊輔は結局、ダンスの道に進むのだろうか?

【総務は女房】
どんなに敏腕な営業マンでも、女房を陥落させることはできない。
総務は女房というタイトルが、のちのち意味深になっていく。

【ボス】
同い年で中途採用された浜名陽子の部下となった茂徳。
彼は、営業部の慣例を次々ぶち壊しつつ、業績を下げない浜名に対し、欧米スタイルをやめて郷に入っては郷に従え、と何度もぶつかる。
実は、浜名には夫とふたりの子供がおり、妻として部長として、おそらく母としての役割をきっちり、慇懃たる笑をたたえてこなしているのだった。
茂徳は臍をかみつつ、そんな彼女の意外な一面を垣間見て、そのシーンでストーリーが終わる。
完全無欠の女傑のような浜名の、可愛らしい一面というのがなんというか、男性目線の描き方だなあという印象。

【パティオ】
妻と死別、また離別した独居老人の生き様を描いた本編。
45歳の信久がオフィスから毎日眺めている謎の老人「おひょいさん」と年老いた父を重ね合わせ、あれやこれやと気をもんでしまう。
おひょいさんが好んだ藤棚のあるパティオ、そして父が生きがいとしているであろう家庭菜園の場が奪われてしまいそうになり、信久は憂い、激昂する。
しかし老人達は若かりし頃の自尊心や、自立心を捨てておらず、心の拠り所は自力で別に探すということを知らされる。
(70代から見たら)若輩者の信久の優しさと、優しさゆえの傲慢さに共感した。
私も独居老人が寂しいものと決めつけていたけれど、彼らは老いを受け入れながら、年齢だけにとらわれない生き方を模索してるのだろう。
もちろん寂しくてむやみに他人に話しかける老人にもよく捕まるのだけど…。

2018年5月6日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2018年5月6日]

【ヒロくん】
社会においての男尊女卑は根強く残っている、そう痛感させられながらも、読後の爽快感がたまらなかった。
主人公は30代半ばで管理職についた聖子。その夫が「ヒロくん」
キャリアウーマンとは程遠い私でも、聖子の歯がゆさや怒りに共感できた。
そして、今井の憎たらしさよ。男性作家がよく描いたものだ…いや、男性だから書けたのか。
同じ怒りでも、男の場合は「カミナリ」で女の場合は「ヒステリー」
あーほんと、そう。
聖子と部下の裕子が抱き合って泣くシーンだけは、ちょっとよく分からなかったな。
そこだけ、やっぱり女は感情的といってるような気がした。
聖子にはうだつのあがらぬようなヒロくんがぴったり、という話。
…かな?

【マンション】
マンションを買うというのは、自分と向き合うこと。
20歳からずっと賃貸暮らしで、この先もマンションなど買えるはずのない私には無縁のお話。
マンション購入にあたり、優先すべきことがいくつか出てくるけれど、最終的には自分らしく生きられることっていうお話。
しかし「ヒロくん」の聖子といい、本編のゆかりもバリバリのキャリアウーマンである。
もしかしてそういう短編集なのかも、と今更思った。
桜井くんにヒロくんを重ねてしまった。
話の落としどころがとてもよい。

【ガール】
表題作。
なんとなく想像した通りなのと、自分自身が重ねられなかったので、レビューのしかたに迷う。
社会の変化が青春時代を長くした、というのは納得。少年法でさばける年齢を低くする反面、二十歳で成人なんて早すぎる、とも思ってしまうのだけど、それは余談。
年相応とはなんなのだろう?
私は人生において、この年までガールでいたことがあっただろうか。
お光が陰口を叩かれている場面はとても胃が重くなった。
私より若いんだよな、お光。

【ワーキング・マザー】
なんとなく始まって、なんとなく終わった。
そろそろ男性の描く女性…というか、奥田さんの書く女性に疲れてきた。
一人息子を育てながら営業畑でバリバリ働く女性のお話。
主人公は実家の世話にはならず、学童やヘルパーさんの力を借りて仕事に打ち込むんだけど、とても消化不良。
そうそう!みたいな共感がなかったからか。
ライバルのように描かれるアラフォー未婚女性の方がまだ理解できるかも。
うーん、でも仕事できないから、この本を買ったこと自体間違ってたと思い始める始末。
いやおもしろいんだけど。

【ひと回り】
これはとても痛かった。胸も耳も痛かった。
34歳の容子が指導することになったのは、ひと回りも年下でハンサムな慎太郎。
慎太郎は容姿がいいだけでなく、年上女の心をくすぐる初々しさがあり、容子はその魅力に囚われていく。
馬鹿な、馬鹿なとおもいながら。
その容子ですら私より10歳近く年下なのだけど、共感してしまった。
私も付き合うならうんと年下がいい。自分になくなった若さをなにかで補いたい。
若い女の子と張り合えるわけないんだけど。
「ヤング」を卒業できない、傍目に痛々しい女であることをやめたい。
主人公の容子は最終的に、同世代が集まる合コンで知り合った男とくっつくかな?というところで終わる。
私も分相応を認めなくては。
って、そんな話だったかな?

2018年3月29日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2018年3月29日]

空気がきれいなだけの田舎町。
まるで私が育った町のようだった。
田舎には田舎のいいところがあるんだけどねえ。
ってそれはさておき。

閉鎖的な空間で起こった事件。偶発の悲劇。
途中までは「告白」と同じようなオチなのかな?と勘ぐっていた。なんだかミスリードされた気分。
最初からずっと面白くて一気に読んだけれど、ところどころ腑に落ちない点があった。

ロリコンふたり出てくるのはどうかな。
っていうか、犯人がエミリに性的暴行をくわえて殺害した動機って、なんなのだろう?
秋恵を愛していたのだから、ロリコンではないよね…
なんかちょっとできすぎな感じがした。
おもしろかったけども。

しかし、湊かなえは本当にエグい話を書くなあ。
おもしろいんだけど。

2018年3月9日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2018年3月9日]

長いレビューをして、でも消して書き直した。
やはりそこそこ長くなった。
「これから重松清を読む方なら是非」
「いま中学生の君にぜひ」
重松さん乱読した中年の私向きではなかった。
ちなみに友人から借りた。

「十字架」というタイトルと作者名だけでもなんとなく「こんな話」っていうのが見えてしまう。
こんな自分が嫌だわー。
「ゆるす」「ゆるさない」も、重松さんの作品に頻出するテーマ。
乱読してきた作家さんゆえ、読みやすさと馴れ合った感覚で一気に読めたけど、冒頭からすでに退場してる「フジシュン」視点でずっと読んでしまったので、苦しいながらも退屈だった。

そもそも、いじめられて自殺した「フジシュン」の遺書に名前を書かれてしまった子たちと、遺族と、それを追う記者のお話なので、軽く楽しく読めるわけがない。

Aでもない、Bでもない、結局なんだかわからない、みたいな表現が多すぎて、実際そんな心境なんだろうけど、ちょっとくどい。
フジシュンの父を頑なに「あのひと」と表現するのも疲れる。

ユウくんとサユが共犯者の逃避行的にお付き合いしちゃうあたり、フジシュン目線の私は「つらい」「やっぱリア充同士がくっつくよね」「僕はどこまでもモブキャラだな」としょげてしまった。
どんなモブキャラにも家族がいて人生があるんだ。

そんな「モブ」だったフジシュンが命と引き換えに背負わせた十字架、そんな感覚。
とはいえ作中故人の意図なんて語りようがないわけだから、やっぱ最後までずっとモヤっとした。
ユウくんの名前を親友として遺書に記したのは、本当に「単なるあこがれ」からだったのか、なんてねえ。

いじめっこがあっさり自爆しちゃうところ、雑誌記者がやたらと子どもたちをつるし上げるところなど、分からなくもないけど雑に感じた。
特にいじめっこのモブ感はすごかった。
「母子家庭で親がケバい」=不良になる→無免で事故って自爆の図式は悲しすぎる。
この彼にはこの子なりの人生があったはず。

2016年8月11日

読書状況 読み終わった [2016年8月11日]

さまようって言葉、小学生のときに初めて知って、底知れぬ恐怖を感じた。
たぶんドラクエの敵キャラの名前にそんなのがついてたんだと思う。
「迷う」は怖くなかったのに、「さ」がついただけでこの世の未知がぽっかり穴をあけて足元をすくおうとしてるような気になり、それに抗えず途方に暮れていた。
まあ、彷徨うと迷うは違うんだけど、子供心に「一文字ついただけで、めちゃくちゃ怖い」って感じた。

500ページくらいのボリューム、分厚いなぁ…何日費やすかな?なんてのんきに構えてたら、休日を丸一日使って読み切ってしまった。
時折しおりをはさみ、食事したりスマホ触ったりしてたけど、こんなに集中して読めたのは久々。

妻を亡くした男性が、宝物同然だった一人娘を未成年の犯罪で亡くし、人生を大きく狂わせ、自滅していく話。

そう!自滅なの。破滅でもいいや。
それも本人にしたら最悪の、たぶん想定外だったかたちで。
報われなさすぎる。

少年法とは?更生とは?警察とは?
多くの疑問符を投げつけてくる作品。
読んだ後は疑問符がこびりついて離れず、何度か感情を揺さぶられ泣いたことも忘れ、私はまた「さまよう」という響きで途方に暮れた。

私個人は、長峰には生きてほしかった。
カイジには死んでほしかった。
とはいえ、どんな結末でも満点にはできなかっただろう。
この手の物語には、誰しもが納得する終わり方なんてきっとないんだ。

自首をして、罪を償いながら娘の供養をするという最善の道、生き抜く大きなチャンス。
それを奪ったのが誠ではなく、警察側の密告っていうのに震えた。
途中で違和感に気づくも、最初からずっとミスリードされてた!
悔しい。

ていうか誠、最後まで腹立たしかった。
父親も最悪だ。この親にしてこの子あり、と作中に出てくるように、何となくどの加害者の親もそこそこのクズに見えた。
最たるものが誠の父親だけど。

長峰の命を奪ったのが刑法でもカイジでもなく、一介の刑事で、しかも織部というあたりにもえぐさを感じた。
彼の心境は多くの読者を共感させていたと思うから。

冒頭からクライマックス付近まで、長峰や、または彼を擁護する者の視点で語られていた。
だからこそカイジや和佳子の目前で、長峰が警察の手により射殺されるシーンは、油断したとしか言いようがない。
残りページが少なくなるにつれ、結末が読めなくなり、突然投げ出された気持ちになった。
読み終えて反芻してみても、やはりいたたまれない。

さまよう刃というのは、何なのだろうと最初からずっと考えていた。
たとえばカイジのような残酷で卑劣で、それでいて結局「子供」の化物たち。
被害者の身内の「できることなら自分の手で殺してやりたい」という気持ち。
法治国家のやるせなさにどうにか立ち向かおうとする一部の刑事であった、というのが最終的にしっくりくるんだけど、刃は刃。
信念を貫くため、守るためのものではなかったという読後の脱力感。

やっぱりゆるせないのは、更生の見込みがないクソガキとかいうレベルじゃない、胸糞悪いカイジが生き延びてしまったこと。
そして相変わらず生ぬるい少年法とかいうやつに護られてしまうであろうこと。

東野圭吾さんで言うなら「容疑者Xの献身」の結末くらい、読後の突き放され感と虚無感がキツかった。
限りなく5に近い4。他の方のレビューを拝読して何度もかみしめてみよう。

2016年8月7日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2016年8月7日]
カテゴリ おすすめだ!

アニメ化した時に友人から誘われたが、断ったことを思い出し、書店で手に取った。
かなり今更。ネタバレを含んでしまいました。

良くも悪くも読みやすすぎて、児童書みたいだなーと思ったら、森絵都さんはほんとに児童書出身だそうで。

天使の登場とか、まんがのような台詞回しとか、物語のかなり序盤で「これは、もしかして」と気づいてしまった点とか、何度か挫折しそうになったけど、中3の「ぼく」の一人称で語られるのでスラスラ読めてしまい、何度か泣いてしまった。
感受性の強かった昔の自分を思い出した。
14歳の脆さたるや。

私は青年よりは中年寄りだけど、私にもこんな思春期があったし、そんな時代に読んだ児童書で胸が高揚したり、落涙したり、微笑んだりした。
そういうのを思い出して、懐かしくなって、できれば私も自殺して当選して、挑戦してみたい…と思うには年齢的に遅すぎか。

出てくる女の子、二人とも苦手で、そこはすごく読みにくかった。イライラした。
特にひろかは理解できない。思春期の情緒不安定を考慮しても無理だし、容姿もなんか苦手な感じだった。口調もウザイ。いや、むしろ口調がうざい。「ひろかは、ひろかは」うるさかった。
このくらいの年齢の子供がいてもおかしくない私の、心の狭さかな…と思う。

嫌なことが重なって、精神的に弱ってたところだったから、軽い気持ちで死んだ。
自殺する時なんて、そんなものなのかもしれない。もっとひどい目にあってても生きてる人はいるけど、心の強度は人それぞれ。
知人が若くして自殺しているので、そこは分からなくもなかった。

個人的に、満が真の自殺について吐露したシーンで一番泣いた。
自殺する前の真が、どんな口調で満に接していたのか気になったけど。

評価が難しく、悩んだ。
児童書としての扱いなら、満点だったかも。

2016年8月4日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2016年8月4日]
カテゴリ おすすめだ!

「PK」
連作なのかわからないまま読み始めたけど、各話リンクしてた。
個別にざっくり感想。

時間軸があちこち飛ぶけどなんとか終えた。
勇気を持つものにしか勇気はもらえない。みたいな言葉がのちにも活きる。
鉄仮面のような秘書のキャラが不意に人間味を出してきて、ラストはにやにや。

サッカーの描写がけっこう念入りで、ちょっとくどくて斜め読みするのを我慢した…。

「超人」
1作目に出てきた大臣と秘書、大臣に救われた子供が出てくる。
冒頭がスーパーマンらしきシーンなので入りにくい。サッカーのPKも、特殊能力者のPKも登場。
突如現実味のない話になり、やや星新一を彷彿させる。

「密史」
タイムパラドックス、パラレルワールド。
だめだ、ついてゆけないってなった。
それこそショートショートなら読める、楽しめるジャンルだけど、この長さは私にはキツイ。
最初の二作と毛色が違うのに、なぜたかリンクしてて、それがとても不自然で…
とおもってあとがきをみたら、この作品はSF雑誌に掲載されたもので、一冊にするにあたり、前二作と絡ませたのだとか。

もう、青木豊が何を言っているのか本当に理解できず、ご存知でしょうが圧力にも負け、いらない部分を執拗に書き綴り、肝心なところをボヤっとさせて、何より文字で見るだけでも身震いしてしまう、この世から滅亡して欲しい虫の名前が連呼されていて、それだけでも苦痛(笑)

最後の話のせいで、この1冊の評価をぐっと下げてしまった。
私の頭が悪い、それもある。読み返せば分かるというレビューもあったけど、最後の話はやはり目が滑りそう。
最後の能力者「時間スリ」という発想は面白かったけど、目新しいかどうかは謎。普段読まないジャンルだからなあ。
他の話となまじリンクしてるせいで、何度かページを戻った。

友人に借りた本なので返すけど、未読のうちに借りてしまったので彼女の感想がある意味楽しみだ。

2016年8月2日

読書状況 読み終わった [2016年8月2日]
カテゴリ 毒にも薬にも…

何のジャンルなのか分からないまま、あえて知らないまま、表紙裏をかたくなに見ずに読み始めた。

「誤植か?」と思わせる破格の時給。
求人誌に掲載された秘密だらけの「実験」
被験者は12名。

自殺他殺諸々で人が死んでいくのに、なんとなく現実味がなかった。
人生があっさり終わっていくのに、被害者Aで片付けられてる。

そうだ、私は久しくミステリを読んでいなかった。

語弊があるのを承知で言うならば、ミステリは謎解きが一番で、人の生き死には二の次。
なんていうと悪口のようだけど、そこそこの厚さを1日で読めてしまう求心力があった。

主人公が名推理を披露してスッキリ解決…してるはずなのに、華々しさがなく、一時的に「退場」までさせられる。
あくまで「ミステリ好きの」「空気を読まない」「どこにでもいる大学生」
ビビるし、数字は苦手だし、英語もダメだし、推理小説は好きだけど、彼よりミステリ好きの登場人物も出てきちゃう。

☆5にしたかったけど、須和名という超お嬢さまキャラが浮きに浮いてて、初っ端から鼻につき、いらなかった。
とはいえ、「クラブ」の存在意義の裏付けや、最後のちょっとしたオチ?に必要なんだけど…
場違いお嬢さまの人を見下した感じが生理的に受け付けなかった。

最後まで犯人が分からない、大体の目星が外れる、まさかの結城の活躍(笑)
あんまり読まなくなっていたミステリ畑にまた帰りたくなった。面白かった!

2016年7月30日

読書状況 読み終わった [2016年7月30日]
カテゴリ おすすめだ!

当たり屋とかせこい裏稼業を生業としてる(しかも下請)柄が悪くて適当な溝口と、その相棒たちの数奇な物語。
チンピラの話かぁ、と決め込んでたので、この連作短編集はなかなか読み終わらなかった。

溝口と岡田が出会っていたと「思われる」タキオン作戦。
表題作の「残り全部バケーション」

最終章「飛んでも8分」のラストでは不覚にも泣いたけど、これはちょっと悔やんだ。
むしろ笑うところの方が多かったかも。
伊坂幸太郎の描く人物はほんと、おもしろい。

伏線が張り巡らされ、きれいに回収されてくけど、きれいすぎる気がした。
それに、溝口のキャラがなんとなくやっつけに思えてしまった。ここが肝心だった…。

「残り全部バケーション」
タイトルで買ってしまったけど、実際、この言葉が最後の鍵にまでなってる。
どこまで計画的に作ったものか分からないけど(笑)モヤっとした終わり方。
この終わり方を、タイトルが救ってくれると信じて閉じた。

作者の意図にまんまとはまったりして面白い本だったけど、やっぱり溝口の描き方に首を捻って終わってしまったー。
これはうまく言い表せない(笑)

2016年7月28日

読書状況 読み終わった [2016年7月28日]

冷蔵庫に閉じ込められていた「ミハル」
その「コエ」に呼び寄せられた悠人と、近所の寺の院主。
何度も出てくる阿弥陀の話、無神論者の私にはしっくりこなかった。
でもそれに嫌悪感や反発心を抱く事は無かった。

「コエ」「喉が切り裂かれたもの」「ミミ」

このあたりが曖昧でもやっとした。
ミハルがなぜ周りを不幸にしてゆくのかも謎。
死なせたくないものを死なせない力だけではダメだったのか。
その存在自体が不吉だから、村が陰鬱なものになっていったのか。

「リツコ」という存在の救い。
物語の最後に新しく宿る命。
希望かと思えば、一抹の不安にも感じる。
なにしろモヤモヤする本だった。

ただ、ハマり出すと読みやすいので1日で読めてしまう。
個人的には千賀子の狂いようが怖かった…
「ぴょーん」がトラウマ。

2016年7月24日

読書状況 読み終わった [2016年7月24日]
カテゴリ 毒にも薬にも…

タイトルと作家からある程度予測できる内容というか、流れ。
毒親持ちの私は自殺未遂をした娘の心境がとてもわかる。
わかったからキツイ。

母性のある女と、母性を持たない女。
女には二種類あるという。
私は後者だなあ。

一気に読めたし後味の悪さも終章で緩和されたけど(地味な伏線がきれいに回収されてた!)憂鬱な気持ちで読むしかなくて…
「告白」も同じように、いやもっと救いのない鬱々とした話なのに、本作はなんかぼやっとしてた。

2016年7月18日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2016年7月18日]
カテゴリ 毒にも薬にも…

人形町で起きた殺人事件と、調査にあたる加賀という警部補。
彼は練馬署から転属になったばかりの「新参者」だった。

もうかなり前にドラマ化していて、視聴していたのだけど、最後の方見忘れてしまい、長年犯人が分からないままだった(笑)
ハードカバーで本を買うことのない私は、頭の片隅で文庫化を待ったものの、平置きされている時期に書いそびれ、そのあと読書をやめてしまった。

幸いブクログに登録していたので、読みたいもののリストから発掘。
殺害された峯子という女性と、人形町の人々のふれあいを通じ、様々な人間模様が丁寧に描かれている。もちろん、容疑者の調査であり、アリバイを調べることが主なのだけれど、単なる刑事モノではなかった。
涙が出るほどではない。が、ひとつひとつのエピソードに胸が温かくなった。

先輩刑事、上杉の過去と結びついてゆく結末は、意外すぎて驚いた。
何度か登場するものの、上杉に焦点を当てるとは思っていなかった!

読了後は人形町をふらふらと散歩したくなる、不思議な本だった。
人形焼食べたい。私はこしあんが好きかな。

2016年7月18日

読書状況 読み終わった [2016年7月18日]
カテゴリ おすすめだ!

前作「死神の精度」の続編。
ネタバレしてます。
どうしても千葉さん=金城武で再生してしまい、それがしっくりくるほど映像の出来がよかった。
とはいえ、死神が「仕事」をするときどき、その姿は変わるという設定。
これは前作にあったっけ…?

伊坂作品を読むきっかけで、大好きな作品の続編なので、どうしても期待値が高く、ハードルも高めに読み始めた。
とはいえ、そこそこ分厚い。
これはハマらなかったらお蔵入りしそうと思ったけど、グイグイ引き込まれていった。

相変わらず比喩や暗喩に対してとんちんかんな千葉さん。
ところどころ、こちらも噴き出してしまう(笑)
最後の方はほろりとしてしまい、ラスト数行で、これは「死神の敬意」というタイトルでもよかったのかも?なんて思える台詞も。

絶対悪の本城に対して「20年見送り」が下された時はなんだか読む気が失せそうになったけれど、くじけずに読んでよかった。
本作を買った際、友人が「精度」の方を買っていて、先に読み終え、面白かったと言っていたので、続編も強くおすすめしたい。
私も前作を何年ぶりかに読み返したくなったし、映画もまた観たくなった。
久々に伊坂作品ですっきり(笑)

2016年7月12日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2016年7月12日]
カテゴリ おすすめだ!

良妻賢母になる光子の人生に触れなさすぎ。光子の詩から始まるというのにないがしろにされすぎ。
初の辻仁成だったけど、女の私から見たらなんだか…なんだかね…沓子も言ってたけど、ずるい。好青年って、もはやどこが?って感じ。
バンコクの描写や現地の方々のあたたかさなど、読みやすかったけど、あてつけから始まり肉欲に溺れる様は「結局、相手のどこが良かったの?」で完結してしまった。
50過ぎて最後に再会して抱擁とか、ただただ気持ち悪い。どこまで光子を裏切るのか。
ただ文章はホント読みやすかったし、まつ毛の長さをパラソルのよう、など表現するのは面白かった。新進気鋭の作家さんばかり読んできたせいかもしんない。

2016年7月5日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2016年7月5日]
カテゴリ 毒にも薬にも…

この本をこれから読まれる方向けです。

あとがきを読んで、これが一般人の作った小説のリメイクと知った。ちなみに短編集と思っていたが、連作になっている。
リメイクと知っていたら買わなかっただろう。
乙一さんの作品はまだ2作しか読んでいなかったから、彼独自の世界をもっと探索したかった。
とはいえ「乙一らしさ」がなんなのか分からない。最後に彼の著作を読んだのはもう何年も前だった。

伊坂幸太郎氏の作品を読んだ後なので、平仮名が多く、読みやすく、読みにくくもあった。
同じような厚みの本なのに、読み終わるまでにかかった時間がまるで違う。
本作品は3日で読み終えた。本当なら1日で一気に読めたと思うが、最初の話が大変理解しにくくて、読む気を失せさせた。
リメイク前も紛らわしかったらしいが、処理したあともいまいちだった。乙一氏には申し訳ないけど。

全体的にただよう「ラノベ臭」が鼻についた。
たしかに読みやすいけれど、児童書と小説の中間のようなこれは、ほとんどまんがだ。
ウィットにとんでいるとか、ユーモアがあるという感じではなく「笑わせようとしてる」
まあ、ちょろい私はそれで笑っちゃったのだが。

最も面白かったのは「王国の旗」
このお話のおかげでサクサク読み進めることができた。
投稿された原文はどんなものだったのだろう。

パラレルワールド、文善町、しおねさんを意識して読むと、まとまった感じになると思う。
読了後もう1度読んだ方が面白い気もしたけれど、個人的にはそこまですることもないかな…?

積み上げた本が倒れて活字中毒の少女が埋もれ、煙が立つ、みたいな表現はわたしは勘弁して欲しかった(笑)

それなりに面白かったので買わなきゃ良かったとまでは言わないけど、ラノベに嫌悪感があるなら買わない方がいい。

2016年6月26日

読書状況 読み終わった [2016年6月26日]
カテゴリ 毒にも薬にも…

街中の落書き、グラフィティアートと、それにまつわる連続放火を追う兄弟のお話。
兄弟とはいえ春は、母親がレイプされたことによって生まれた父親違いの弟。
家族とは、遺伝子とは、悪とは。
いろいろ考えさせられる。
そしてなかなか分厚いうえに、遺伝子絡み、芸術、歴史、思想などこ難しい話題が多く、頭の悪い私にはとても読みにくかった(笑)

そして半ばほどでなんとなく「犯人」に気づいてしまい、読み終わるまでかなりグズグズした。
私の予想は当たり、予想外のことも起こり、終盤は主人公の弟「春」の取ろうとする行動にハラハラ。
ハムラビ法典の引用から想像すると、何となく「これでいいのか?」って疑問もわくけれど、兄弟(主に兄の泉水)の出した結論に救われた気もした。
重力から解き放たれた瞬間でもある。

2016年6月19日

読書状況 読み終わった [2016年6月19日]

70才のいくと、15才の敦子。年の差はあれど、二人とも偽りたい、記憶から無くしたい「じぶん」がいた。
二人をつなぐ敦子の同級生、逸夫。
彼もまた、何も変わらない日常に退屈し、モヤモヤとしたフィルターを通して世の中を漫然と見ていた。
何も変わらない日常がいかに大切だったかを思い出し、いくと敦子を連れ出して、ある行動に出る。

その、とある行動がタイトルとリンクしていたので、それに割と早く気がついてしまったのが残念。
「自殺」というキーワードをうまく使ったなぁという、好印象。

2016年4月30日

読書状況 読み終わった [2016年4月30日]

途中までまあまあよくある失踪ものかー、と思ってダラダラ読んでいたけど、半ばあたりから一気に読まずにいられなかった。
けれど読後感は悪い。バッドエンドとも言える。
人が死にすぎグロ過ぎ、初老男性と子どもの(しかも男女とも)性描写はえぐい。
物語の核にいる加奈子は結局第三者の口から語られるばかりで、読み終わった後ほんとうはどうだったんだろう?って思うところがあちこちにあった。
一気読みさせる牽引力はすごいけど、得るものはない。逆に男性が書いているだけあって、男親って娘をこんな風に見れるのか…と気持ち悪さが勝ってしまってダメだった。
得るものはないけど読まなきゃよかった!ってほどでもないし、文章は本当に読みやすくて惹きつけられるものがある。
ただ出てくるどの人物(大人)にも感情移入や同調ができない。好意的に読めない。
母性も父性も暴力やドラッグ、性行為に負けてしまうという、子どもには見て欲しくないお話。
近親相姦ものはほんとだめだー。

2014年7月22日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2014年7月22日]
カテゴリ 毒にも薬にも…

伊良部先生シリーズの三作目。
回を増すごとに伊良部がおかしくなってるのに、最終的には今までになくマトモに見える。
が、表題作の「町長選挙」でぶち壊し。
謎めいた看護師マユミもセリフが増えたり出番そのものが増えたり、バンド活動なんかの背景が見えてきて、ミステリアスな部分が大幅にカットされたかんじ。
マユミについては2冊目の「女流作家」くらいまでにしといてほしかったなー。描写。
もともとこの一冊は登場人物にすぐわかるモデルがいて、ナベツネだったり、ホリエモンだったり、黒木瞳だったり…
この時点で いいの? つか投げやりじゃない? って気がした。
たとえばアンチエイジングに励む女優なんかごまんといるんだから、わざわざ黒木瞳と川島なお美を当てはめなくてもいいのに。これって作者の怠慢じゃないのかなぁ。

とはいえこのシリーズは大ハズレがないので安心して読めました(笑)
2冊目の完成度が一番高かったなー。

この作家さんの他作品を読んでないので、ちょっと期待を残しつつ、また伊良部先生も描いてほしいと思ってしまう。

2013年12月10日

読書状況 読み終わった [2013年12月10日]

うまいこと繋がった連作。
後味の悪い話ばかり続くなぁ…と自分の本棚を顧みた。
本作の大半は後味の悪さもあれど、いい意味の裏切りによって救われる話もあり、でもやっぱりメンタルを削られる(笑)

個人的にはサチがちゃんと…というか、まあ其れ相応の生活を営んでいたことが驚き。
そこが描かれていたことにびっくりしたけど、やや出オチ。
ハンコ屋の親子を翻弄した女の正体が明かされないままだったのも気になる。
この二つは性的倒錯が特に色濃く描かれていて、ちょっとげんなり。
あとはこの作者って女の人の表現あんまりうまくないな、と思った。
色白黒髪、どの登場人物もそんな印象しか残らない。
昔から色の白いの七難隠すというし、黄色人種のコンプレックスみたいなものかー。

一気に読めるしそこそこうまくできてるけど、道尾さんの作品にしてはそんなに面白くない、かな。
時間を潰すのにはいい。気持ちが落ちてる時は読んでもいい気分しないだろうけど。

2013年12月10日

読書状況 読み終わった [2013年12月10日]

久々に読書欲がわき、短編をさくさくっと読みたくて購入した初まほかるさん。
変わったハンドルが災いして、なんとなく手に取れずにいた作家さんですが…
気持ち悪いのが読みたくて買ったけど、よくもまあこんなにも人間のおぞましさを短い中に凝縮させたものだ、と(笑)
不思議と心に残らないんだけど、読後感の悪さは望んだ通りでした。
登場人物の性別、年齢が自分と近いものが多くて、共感できたり、逆になおさら嫌悪したり。
あとがきを読んだらこの方のストーリーは大体こういうかんじらしく、話題になったあれやこれやを順次手にしたくなりました。
ただし読後感の悪いものを欲してる時だけ、かなー。

2013年12月6日

読書状況 読み終わった [2013年12月6日]

ほぼ1年ぶりに再会した伊良部先生。
相変わらず生理的にちょっと無理でぶっ飛んでて、でも前作のように話数を重ねていくうちに親しみすらわいてくる不思議な精神科医。
訪れる患者はその奇妙な存在に落胆し、しかし引き寄せられ、最終的には癒しも得てしまい、なんだかんだで精神のおりから解放されていく。

あー、わたしもこの先生のお世話になりたい(笑)

今回もサクサク読めて、最後の一作「女流作家」ではまさかの…

これは伏せておこう。
まさかこの作品でこんな?っていう、そんな自分にびっくりして欲しいので。

しかし、このシリーズに出てくるほとんどの患者は強迫性障害なんですよね。
周りに実際2人ほどいたので、できるものなら伊良部先生のとこに送りつけてやりたいなあ。

2013年12月6日

読書状況 読み終わった [2013年12月6日]
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