静かで、繊細な心の揺らぎをじっと追っているような美しい上品な映像が印象的な作品。
キャロルとテレーズのどちらが最初に恋に落ちたのか?
クリスマス前に賑わうニューヨークのデパートの一角で互いに目が合って引き寄せられているような気もするけれど、独特なキャロルの雰囲気に気圧されて戸惑うテレーズはもうすでに言葉を交わす前に恋に落ちていたのかもしれない。
女性同士の恋愛映画はいくつかあるけど、そのほとんどはとても狂気に満ちていて破滅的なものばかりで、それらはとても映画的で圧倒されるけれど、共感性できないものが多いけれど、それまで同性愛の経験のないテレーズと、子持ちの主婦であるキャロルが互いに忖度しながらも、歩み寄ったり躊躇する様は理性的で、その上品だけどとても地味な2人の心のゆらぎをケイト ブランシェットとルーニー マーラという安定感のある女優に演じてもらうことでとても映画的な作品に仕上がっている。
1950年代のニューヨークを表現する少し粗めな画像と、テレーズが纏う当時のガーリーファッションがとても素敵でまるで50年代に作られた作品を観ている気分にもなる心地よさがある。
原作は未読ですが、同性愛者でもある作家パトリシア ハイスミスが"クレア モーガン"という偽名で1952年に発表した"THE PRICE OF SALT"という作品ということで、同性愛者をテーマにした作品を書くことさえも隠し通さねばならなかった当時の差別的な社会風潮が見え隠れしていて、その押さえ込まれてもどかしい想いがこの静かな作品にはぶつけられているようか気がした。
しかし60年以上経った現代、こよ作品が美しい映画作品となり、世界中に広まることで2人の愛も認められたようで、映画のパワーの素晴らしさを改めて感じることもできた作品。

2017年10月30日

読書状況 観終わった [2017年10月30日]

50年代の街並みの美しい映像と、バランスよく考えられた衣装の配色の秀逸さだけでも一見の価値があるおしゃれさなのに、内容もテンポ良く、台詞も全てが粋で、観た後もじんわり静かに胸を打つ秀作でした。

故郷とは生まれ育ったところとは限らない。
自分のための人生が歩めた所、そして初めて自分らしく居られる場所こそ本当の故郷なのだと改めて思う。
最初、とても自信なさげで、言いたいことも言えず内向的だったエイリッシュが恋を知って、だんだんと自信を持ってきらきらと魅力的なニューヨーカーになっていく様子がトントン拍子に描かれていたので、後半に起こった予想外の展開がズシンと響く。
最愛の姉ローズとエイリッシュの文通は清らかで、でもそこにはきっと微かな嘘があったのだろう。
故郷に縛られるローズはどこかで自分の不遇を嘆きながらもエイリッシュに彼女の叶えられなかった人生を託していたのかもしれないと思うととても切ない。

運命は本当に意地悪で、目の前に何もない時もあるのに、いきなり選択肢をいくつも突きつけて試してくるものだ。
自分がもし、エイリッシュの立場だったらどうしてたのだろうと悩んでしまう。
もしも自分の中での答えは決まっていたっても、周りの環境が本当の自分を解放させることを許さないこともある。
この場合は、彼女にとっての完全悪、魔女のケリーがある意味一役買ってくれたわけで、どんな人にもある意味人の人生を動かす役割があるんだなぁと思ってしまった。
つぐないや、ラブリーボーンの時のあの美少女シァーシャ ローナンが大人の女性になっていたことに時の流れの早さを感じつつ、未だあの透き通る瞳に純朴さが残っていて、エイリッシュのキャラクターをより愛おしい存在にしてくれていました。
パッケージにもなっているレンガ壁に寄りかかっているエイリッシュの画は色合いがとても綺麗でおしゃれだなと思っていたけど、とても意味があるシーンたったのね。
本当に早く観れば良かったと悔やんだ作品でした。

2017年10月30日

読書状況 観終わった [2017年10月30日]

テンポよし、キャラクター設定よし、プロットよしでめちゃめちゃ面白かった♪
こんな事現実にはありえないと思いながらも、デーヴみたいなユニークで、ハートフルな人がアメリカの大統領の替え玉になってくれるなら!と今だからこそ妄想したくなるストーリーでした。
だってこの大統領の倒れ方とかトランプにもあり得そうだから、、ある意味リアル。

本物の大統領とは冷戦状態だった大統領夫人を演じたシガニー ウィーバーがクールだったのに、だんだんと女として切ない思いになっていく様も見所です。
アメリカ政治の仕組みや、大統領の政務の感じも予備知識なくてもわかりやすく描いていて、楽しく学べるし、普通の人間だって大国の代表になれるのかも!とふとアメリカン・ドリームを抱かせてくれるストーリーでした。
デーヴのラストの演説はとても印象的で、あんな風に思って国を担うような政治家って絶対いないなーと思いつつ、日本の政治家にも是非これを見てシンプルな部分から考えを構築し直してもらいたいと真に願ってしまいます。

2017年10月30日

読書状況 観終わった [2017年10月30日]

始まりからかなりグロテスク、妙に明るいラジオの音、繰り返し流れるあの歌、そしてチリンチリン♪と、迫り来る秀逸な心理ホラーの演出のせいで
私これダメかも→いや、もう少し頑張れそう→やっぱ無理だ→あーでもやっぱオチが気になるー!
と色々と葛藤して、目を塞いだシーンは数あれど、ビビリのわたしがなんとか最後まで持ちこたえました。
ってか検視室&遺体安置所兼自宅ってなに?
精神崩壊するでしょ普通!と突っ込みたく不気味なシチュエーションにもう悪い未来しか予感できない。

生まれてこのかたなるべくホラーやスプラッターモノを避けながら生きて来たのですが、他の方のレビューを読んできたお陰でいくつかの恐怖映画をチャレンジして慣れてきたつもりでしたが、私にはこれはまだ早かったみたい、、、
前半の心理的追い込み方は半端なく怖いながらも見入って低予算の作品ながらも恐怖の積み重なりは容赦ない。
オチが凄いとかそういうのではなかったけど展開は想像以上に残虐で、ジェーン ドゥの死体がもしあそこまで美しくなかったら途中で耐えきれなくなっていたかもしれません。
これはホラー好きの人にとっては序の口なのかな?私は日中観たけど結局気持ち悪くなり、夕飯作るの放棄することになったので主婦の皆さん、ご飯作る前にはこの絶対に観ないほうがいいです。
大人なのにまだ観られない映画があることにショックですが、とりあえず少しずつ、少しずつ克服していこうと思いました。

2017年10月30日

読書状況 観終わった [2017年10月30日]

盲目マッチョ最強老人VS 浅はかすぎる男女3人
確かに低予算だが、迫り来る恐怖、そして緊張、緩和の連続で人の心理を見事に恐怖に陥れる映像はアメリカで注目されたのも頷けるパニック映画で、ビビりの私がもしこれを映画館で見たら確実に過呼吸になってたと思う。

この種のパニックものは正直言うと苦手だし、主人公たちに全くもって同情できないので、どうかみんな助かってという強い希望が無いから、心持ちが不安定。
パニック映画をあまり見てない私だからなのか、地下室の予想外の恐怖の展開とかもう、気持ち悪すぎて、とにかく主人公たちが早く脱出できるかよりも早く終われと願ってしまった。

強いて言えばセキュリティ会社息子のアレックスが好きな女にうまく利用されてる感が否めなくて可愛そう。
彼がやってることも間違いなく犯罪かもしれないけど、初めから最後まで言っていることが1番まともな気がするから、彼だけでも助かって欲しいとひたすら願ってた。

「神様はいない。」
剛力な退役兵士老人は呟いたけど、彼らに、というかロッキーに、何度かの蜘蛛の糸は垂らされていたのにそのチャンスを無下にしてしまう愚かさは救いようもない。
でも、妹にはもっと罪はないからどうか彼女には今後も何も起こらないことを祈るばかりです。

2017年10月30日

読書状況 観終わった [2017年10月30日]

北風が吹くころ、フランスにあるグレーがかったとある村に赤ずきんを被った奇妙な母娘2人が舞い降りた。
よそ者たちを一切受け入れず、埃がかったような暗い街並みにぱっと華やかな色合いのショコラティエが開店して、甘い香りに誘われた村人たちの頑なな心がひとり、またひとりと解かれていくおしゃれなおとぎ話のような作品に始終夢心地でした。
皆に希望のショコラを分け与えるまるで魔法使いみたいな不思議な雰囲気を持ったヴィヴィアンヌが、ひとりの生身の女性として悩んだり悲しんだりする様子もリアルで好き。

カトリックの規律に固められて、表面上は真面目に生きていても心が貧しかったら本質はなにも変わらない。
美味しいものを笑いながら心と体で味わって、音楽をかけて踊る喜びから人間らしさと優しさが生まれてそれが周りに伝染する。
何を否定し、排除するかではなく何を受け入れるかだよね。
グレーがかっていたはずの村がいつのまにかオレンジ色に輝いていたのが印象的でした。

2017年10月30日

読書状況 観終わった [2017年10月30日]

折角の新垣結衣なのに、彼女の可愛さが全然生かされてないし、大泉洋も霊体なので、語りのみで演技するシーンが少なすぎて若干無駄遣い感が強いくてなんか、勿体無い。

亡くなった旦那がいきなり他人の身体に乗り移って現れたのに割とさやの反応がノーマルなのは不自然だし、まぁファンタジーなので多少の粗が各所にあるのはいいとしてもあまりにプロットが甘い気がする。
ささらに来てからの田舎ならではのハートフルな人間同士の関わり合いを描きたかったのだろうけども、どれもキャラクターやエピソードが中途半端で、原作のあらすじをざっとダイジェストで見せられた感覚でした。
良かったのは→心くんの中に大泉洋が入っていきなり饒舌になるシーンはかなり可愛くて笑えた。流石天才子役!

2人の子供役の男の子の赤ちゃんがめっちゃ可愛い!度々観るのやめようかと思ってたけど、彼の殺人的な可愛さのおかげで停止ボタン押さずに行けました。

2017年10月30日

読書状況 観終わった [2017年10月30日]

豪華な教会のオープニング。上品そうな話だとおもったけど、初めから若干コメディ?ってな感じが見え隠れしてくる。
そして思った以上にカオス。いや、完全にカオスな結婚式に発展していき、アルトマンの描く「こんなウェディングはやだ!」的なはちゃめちゃ群像劇。
いや、面白かったです。
ただ割と群像劇は大好きなの方ですが、流石に40人というあまりにも多すぎる人数に収集がつかない!はじめは髪型、ドレスの色とかでなんとか覚えて、会話から関係性を把握しようとやり過ごしたけど、脚本が良いのかいつのまにか人間関係が自然とパズルはめるようにだんだんとはっきりして来て、そこからはちゃんとストーリーに集中できるようになりました。

とある豪邸で開かれたその家の孫の結婚式。いわゆるハウスウェディング。
教会の挙式からみんなが到着する寸前、新郎の祖母であり、この豪邸の女主人が逝去するが、医師と看護師で式が終わるまでは隠し通すことに、、、
因みにこのことがけっこうすごいエピソードだからそれをメインにしてのドタバタが始まるのかと思いきや、、
途中から女主人の存在忘れてしまうくらい、色んなことが起こりまくる。親族全員が割とゲスが多くてこんな一族潰れてしまえて思う。
素敵な豪邸を舞台に、人間の醜態むき出しなめちゃくちゃなウェディングパーティーの中で割と平和そうに見えたのは、裏庭でこぅそりマリファナ吸ってた男女のシーンだけ。。
そんな風に思ってしまうほどのカオスな状況を知らぬまま、亡くなった女主人はほんとにラッキーだったねと言いたくなる。そんな孫のウェディング。

2017年10月8日

読書状況 観終わった [2017年10月8日]

韓国の「怪しい彼女」も割と面白かったけど、多部未華子が最高にキュートで役柄にぴったりなので、こちらの方が好み。
ストーリー展開もほぼほぼ同じですが、小林聡美さんの設定が韓国版にはなくて、あちらはプロデューサーとの恋愛がメインだった気がするので家族へのばあちゃんの深い愛をしっかりと見せてくれたこのストーリー構成のほうが個人的に胸にぎゅっと突き刺さりました。
ちなみに若い娘になったばあちゃんが、子育て中の主婦を励ますシーンに図らずも泣いてしまった。。

ストーリーはローマの休日への憧れを散りばめて、20歳になったばあちゃんがどんどん可愛くなる(ファッションは60年代風レトロ)でキュートで、周りがみんな彼女のことが気になっちゃうのがすごくわかるし、歌も良かった。
いい歌い手って、どれだけテクニックで歌が上手く歌えるとかじゃなくて、自分の魂に乗せてその歌詞の世界を人に「伝えられる」かということなんだろう。
そこのところも戦争孤児で苦労しながら体の弱い娘を育てたばあちゃんが、美しい若い歌手になって、内にある色んな経験をした時の感情を持って歌うというカタチを作って見せてくれているので「悲しくてやりきれない♪」はジーン来た。
昔の歌はやっぱりいいなー。
精神はばあちゃんのまま、外見は多部ちゃん。多部未華子のばあちゃんっぷりがあまりにも可愛くて愛おしかった作品です。

2017年10月8日

読書状況 観終わった [2017年10月8日]

豪雨によって道路が冠水して連絡手段さえも遮断されたモーテルに集まる男女11人。
赤の他人だったそれぞれが少しずつ繋がってくるエピソードの見せ方も、11人のキャラクター設定も非常に分かりやすく、しかも、テンポも良いく緊張と緩和の連続で惹きつけられる。
1人、そしてまた1人と殺されていき、その死体の周辺には犯人がカウントダウンしているかのように、モーテルの部屋番号が記されてる鍵があって、次は誰?そしてこの中で誰が犯人なのか緊張感が途切れない。
密室というわけではないけれど、冠水で閉ざされたモーテルという限られた小さな世界の中でのミステリーなので、少しずつ小出しにされるヒントを回収したり、度々過ぎるおかしな点を見つけたりとひと時も目が離せないし、モーテルの連続殺人と並行して会議室で行われるとある死刑囚の再審議がモーテルの惨事と果たしてどんな風に繋がっていくのかも見所です。

途中から、あれ?これホラー?みたいな方向性に行くことも更なる目くらましになって、いつのまにか犯人を探る思考までストップしてしまう。
こういうテーマの作品は沢山あるし、オチは途中からなんとなく分かるけれど、ラストの犯人までのどんでん返しは予想もしてなくてかなりショックだったし、こんな破綻しそうなプロットなのに意外としっかりと練られていて観てても飽きがこないで楽しめました。

最後のオレンジ農園の幸せなシーンで、エドの存在意義が虚しく印象に残るエンディングでした。

2017年10月8日

読書状況 観終わった [2017年10月8日]

高貴で美しく着飾るアリダ ヴァリが、髪を振り乱して般若のような醜い女となるまでのヴィスコンティが描くメロドラマのような人妻不倫の物語。

イタリア人中年の公爵夫人と若きオーストリア中尉と紡ぐ美しいとは言えないゲス不倫の物語ですが、壮大な音楽を背景に流れるイタリア貴族の絵画のような格式高いシークエンスは、オープニングの長回しで映し出されるオペラ劇の延長のようにも見えて、作品全体に溢れるクラシカルで芸術的な映像は実に重厚感があってワクワクさせられる。
アリダが演じる気高い公爵夫人が、初めての恋を目の当たりにして、十代の少女のように周りが見えないほどに自分を見失い、最終的に消化されない想いに憎しみにまみれていくまでの表情の変化で見せる演技は、今見たらありきたりなこんなストーリーの中であっても色褪せない素晴らしさがある。
そして、美しき中尉を演じたファリー グレンジャーの胡散臭さプンプンのいい意味でわかりやすい演技は、始めから悪い予感しか感じさせず、期待通りほんとうに見事なゲス男ぶりを見せてくれて、美しく着飾った夫人がそのクズ男の罠に落ちてどんどん愚かな女なるという予定調和に、こうはなりたくないと思いつつも楽しん観てしまう自分もいた。

ヴィスコンティの描く悲劇の中でも最ももって救いようのない虚しい人間関係を描いた本作品は、心に打つものは何もないのだけども、こんなしょうもない恋愛模様を壮大に、芸術的なものしてしまう才能にはひたすら感服してしまうし、全くもって共感性もなく、好きな系統のストーリーではないのに、なんとも言えぬ重厚感な雰囲気に気圧されて、結果的には観ることができて良かった思ってしまうヴィスコンティ作品の魔力、恐るべし。

2017年10月8日

読書状況 観終わった [2017年10月8日]

私は男はつらいよをあまりにアットランダムに観てきたようで、初期の男はつらいよがお初でした。
おいちゃんが1代目の森川信さんで、なんかめちゃめちゃ新鮮!(初期から観てる方にしてみればこちらが本家でしょうが、、)
あと、珍しく後半までマドンナが出てこないという斬新さ。
こちらの作品のテーマが「寅さんカタギになるの巻」ということで、北海道で世話になった親分の死に際を見て真剣に身の振り方を悩む寅さん。
人間とは油まみれになって汗水垂らして働くんだ!というフレーズに酔いしれて、自分が働ける場所を探し彷徨うが上手くいかず、案の定やっぱり柴又を離れることになるけれど、今回の家出の仕方がちょっとかわいいし、少しだけ詩的な感じで好き。

山田洋次監督が久々にメガホンを取った作品ということで、ようやく出てきたマドンナをドラマ版の時のさくら役だった長山藍子さん、その母親がおばちゃん役だった杉山とく子さん、そしてマドンナの恋人役を博役だった井川比佐志さんが演じてるとのことで、ドラマ版見たことないけどさすが山田洋次監督、粋なことするなぁと感心しました。
ほんとはこの回がラストのつもりだったということもあり、初期からのファンたちにとってはいろんな意味で特別な作品だったのかなぁと思います。
関係ないけど、マドンナ在住の浦安にディズニーランドが生まれてない頃なので、かなり長閑で新鮮でした。

それにしても工場で汗水流して働くための寅さんの珍しいオーバーオール姿はめっちゃかわいかった。
寅さんのあのウキウキした行ってくるよポーズハマりすぎてしばらく忘れないと思うし、あれステッカーにして売ってほしいな。
必見です。

2017年10月8日

読書状況 観終わった [2017年10月8日]

スタートから、もう嫌な予感しかしない。
楽しいシーンなんて1つもない。
どんよりした雰囲気がへばりついてくるようで、嫌な気持ちになるのにもう見届けるしかない。そんな感じ。
浅野忠信の気味の悪さは抜群だが、筒井真理子の静かな狂気がズキズキ響く。
事件から8年経った後の夫婦の1つ1つの言動に始終どきっとさせられて、張り詰めた緊張感にもうこの家に普通の空気は戻ることはないのだと実感させられる。

登場人物が皆関わっているようで初めから誰とも関わっていない、まるで分厚いガラスの壁の箱の中に入ったまま過ごしてるようでその独りよがりの世界が小さな業を増やしていく。
普通の感覚持つ大半の人間が罪を持ったらなんらかの形で罰を受けなければ心がずっとうしろめさという十字架のせいでどんどんと蝕まれていくのだろう。
ならばいっそ罪を罪とも思わないほどの人間のほうが幸せなのではないか。
そう一瞬思っていまう自分に少しゾッとした。
もっと語りたいけど語りたくない、深層心理が抉られてしまいそうになる不気味さで押しつぶされそうになる。

エンディングの始めにかかるオルガンの音が不気味で心が落ち着かないままだ。
もう二度と観ないと思う。
だけど観れてよかったとも思う。

2017年10月8日

読書状況 観終わった [2017年10月8日]

アウトローで不道徳で悲劇的。
アメリカンニューシネマの先駆的作品の中でも抜群にスタイリッシュで独特なカメラワークも魅力的な作品。
「BABY DRIVER」を観たら何故かこちらをまた観たくなってしまった。
勿論現代と比べると荒いとこはあるとしても、この時代特有のエネルギーは半端ない。
昔はあんまり分からなかったクライドの魅力も今ならなんとなくわかる。
あんな色気あるのに、性的不能という設定も後半の2人の愛の盛り上がりにうまく響いてきて、もう2人は地獄の果てまで一緒なんだなと思う。

悲劇しか残されてないラストぎりぎりまで軽快なカントリー音楽をバックミュージックにする所が迫り来るあの衝撃的なラストシーンをより残酷にしている気がするし、
最後の日にボニーが着ているドレス姿がとびっきり可愛くて、あのオフホワイトの生地が銃弾でどんどん血で染まるシーンがある意味美しくて、壮絶さを色濃くしていて、実に映画らしい作品です。

2017年10月8日

読書状況 観終わった [2017年10月8日]

静かで、でも淡々とはしていない。
わずかな気の緩みさえも許されることはないようなどんよりとした緊張感の中で話は進む。
白血病を患ったエホバの証人の信者の青年と看護師である婚約者。
腸の中に麻薬のカプセルをして密輸する男。
カジノバーで不倫をしている高齢の男女。
大金をカジノで失うその上司。
全く接点のない大人たちこそれぞれれの運命の分かれ道はまさしく神のゆらぎによってどうとでも転ぶ。
原題の直訳ではないけれど、これはとても考えられた邦題だと思う。

時系列は少々分かりにくいし、関わりのない登場人物たちのそれぞれの生活シーンは少々退屈でもある。
しかし彼らの1つ1つの選択がまるで糸をいきあうかのように一瞬にして繋がると、すべてのなんでもないシーンも回収されていき、割としっかりとした骨太なストーリーだったんだなと思う。
普通ではない人間たちではあるけれど、とてもリアリティがあるし、音楽のない半ば殺風景な世界観のおかげで彼らの微妙な心のゆらぎをしっかりと見せてくれていた。

「飛行機が落ちるのは全能の神が存在しないからだ。」
大切な人をもしも飛行機事故で失ったのなら神なんか存在していないのではと思ってしまうけれど、飛行機が落ちることも、やはり神の仕業なのではという皮肉な考えもふとよぎる。
本当に天国があり、永遠の命がそこにあるのかもわからない。
神に縋りながら信仰に生きることにしても、信仰など無くても、結局は誰にでも自分の心の中に住む神様が必ずあり、その本意に従うことしかないのだと、じわじわ実感させられる作品でした。

2017年10月8日

読書状況 観終わった [2017年10月8日]

國村隼さんが出演という以外、全くの前情報なしで新感染を観た勢いで韓国映画のこちらを鑑賞してみましたので、こんなにオカルト感と宗教と呪術とか民族感とかが混沌と入り混じりここまでエクソシスト色強いとは、、、。
私、ちょうど昨晩からたまたま首に汗疹みたいなのが出てて、この作品の被害者たちの湿疹シーンとか鑑賞中はかなり痒くなり、私もなんかやばいのに感染したのか??とかあらぬ疑念までとりつかれながら私も主人公の警察官のおっさんと共にこの小さな村で出来た迷宮に迷い込んでいました。

この映画、始終画面全体が鬱蒼としてなんだかずっと湿ってる。
いい意味でとてもリアルなオカルト感、映像のエグさが目白押しで、邦画で言うと「悪人」とか「怒り」と同じ色合いだなーとふと感じてたけど、そういえばあの2つもやはり韓国人の李相日監督の作品だから同じ世界観なのかも、と勝手に考えてしまいました。

はっきりとした答えはないからモヤモヤは残るので、その表現方法は「沈黙」「怒り」そして上映中の「三度目の殺人」のにも通じるものがあり、最後まで鑑賞者をうねりの中に巻き込む感じはかなりドSです。
やはり、人間は信じたいものを信じたように見るし、思い込むとそうでしか思えない厄介な生き物で、疑念を持つことでなにもかも歯車が狂ってしまう。
舞台はすごく小さな集落の村という枠で描かれているけれど、繊維に少しずつ水が沁みたるように村人達がだんだんと「何か」に侵されてく様はまるで地球上の人間たち全て姿を物語っているように描かれているので人ごとではない気もしてくる。
山の上に居る謎の日本人は一体何しにこの地に訪れたのか?
彼は悪魔なのか?それとも救世主なのか?

思い込みという自分の中に生まれる悪霊は一人歩きして、個々の人間の精神世界の中で独自のストーリーが展開していく。
私たちが映像で見せられたものは彼らのフィルターを通した世界であり真実なのかもわからない。
そこら中に散らばったかけらを簡単に繋げて真実を導き出すことができない、複雑な映像展開が逆に観終わった後も、いく通りもの結論を考えさせてくれる。
昔、日曜日学校で読んでいた新約聖書も忘れてたのにまさかこの作品の中で頭に蘇ってくるとは思わなかった。
終わった瞬間は何々???パニックに陥ったけど改めてじわじわと凄みを感じる作品でした。

関係ないけど、見事にイケメンや美女をほとんど使わないで勝負するなんて、やるなーと感心。
かなり山奥の集落ということで、主人公の警察官のおっさん達のビジュアルも家族の感じも地味で、かなりリアリティを感じました。
本当にストーリーと映像、エネルギーで勝負したんだろうなと思うと感服します。

2017年10月8日

読書状況 観終わった [2017年10月8日]

男に支配されることを極端に嫌い、突拍子も無いカタチで子供を授かりシングルマザーとなった女性ジェニー。
そんな自立心が強くて独特な感性を持つジェニーと彼女に育てられたガープの人生を描いた物語。

人生を輝かせよう!頑張ろうではなくて
ほとんどが耐える、許すの繰り返しで
ハプニングの連続。良いことばかりじゃないけど、ただ一番愛する人が隣にいることを愛おしいと思えるような、そんなガープの優しい眼差しの世界は暖かくて心地よかった。


なんとなく「フォレストガンプ」みたいな印象だけど、あそこまで映画的な人生では無い。
淡々としてるけど、後半に向けて割と激しい、マジかよオイオイ、、、って感じのことが訪れる。

このガープを演じた若い頃のロビン ウイリアムズの笑顔の演技といい、母親役のグレン クローズの凜とした姿といい、そして性転換したジョン リスゴーといい、本当にキャストが魅力的で、70年代から80年代初期のファッションやアメリカの雰囲気もとっても良い。
ジョン アーヴィングのベストセラーということなので原作はきっと同じくらいかそれ以上に面白そう。読んでみよ!
さあ、一日を1つの人生のように生きてみよう!

2017年10月8日

読書状況 観終わった [2017年10月8日]

ヒトラーだけの最期の話というわけではなく、全面降伏までのヒトラーの側近たちの含めた群像劇。
ブルーノ ガンツ演じたヒトラーは今までま数々の役者が演じてきたような圧倒的な支配者といて側面ではなく、ソ連に追い詰められて裏切られ始めた弱さと人間味を帯びたヒトラーの姿を演じていて、この描き方に賛否両論あったのも無理はない。
まぁ、普通の人間らしい側面を持っていたからといって感情移入できるわけではないし、自分の側近達への労りの言葉と、女性に紳士的な優しい眼差しを与えるその一方で、思い通りにならないと突然癇癪を上げ、時にナチの為に戦う民間兵に対してゾッとするような冷たい感情と、ユダヤ人虐殺を肯定するような理想論を語る姿が、紛れもなく彼がサイコパスな支配者だったことを容易に想像させる。
でもそれよりもこの作品で恐ろしいのは、沢山の側近たちへがこのヒトラーの語る理想論を狂信的に正しいと信じ込んでいたことだ。
この物語を語った個人秘書ユンゲは今の時代こそヒトラーが怪物だったのだとインタビューで語っているが、彼女もまた家族を捨ててでもヒトラーと共に生きようと彼に忠誠を誓ったほどの信者の一人でもある。

包囲されたベルリンの中では様々な人間の業が渦めく。
脱出を試みるもの
思考停止するもの
快楽に興じるもの
追い詰められて心中するもの
などなど、、、
ヒトラーやその側近たちが地下壕に息を潜めその先行きを議論する間にその裏でヒトラーの信念を信じて「ヒトラー ユーゲント」として命をかけて防衛戦で戦う少年少女たちが使い捨てのようにされて命を失った事、そしてゲッベルズ夫妻の6人の子供たちのように親の思想によって訳もわからずに失われた幼い命が多数あったことに対してきっとヒトラーは生きていても何も感じることはないのだろう。

語り部となったユンゲは言った。
若かったから、知らなかったからでは許されない。自分が間違いなくあの怪物の片腕であり、忠誠を誓ってしまった信者であるという恐ろしい事実を語ることは勇気がいることだと思う。
ドイツの歴史の中で最大の過ちでもある足枷について、彼女が亡くなる前にすべて語ることがでにたことは良かったと。

因みにミサイルが発射された今日だから言う。お願いだあの北朝鮮のあいつ。早くこのヒトラーのように地下壕で追い詰められて自害してほしい。だれも迷惑かけずに、、、
ヒトラーを持ち上げるつもりは全くないけれど、彼はきっとヒトラーほどの自害するようなそんな覚悟もないのだろな。

2017年10月8日

読書状況 観終わった [2017年10月8日]

とある家族のクリスマスを通した群像劇。
割と印象に残る台詞もいくつか出てきてアメリカ版ラブ アクチュアリーみたいな印象です。
アメリカ特有のちょつ押し付けがましいクリスマスの愛の物語だと思ったけど、実はどちらかというと「クリスマス」という一日は「絶対に幸せな振りをしなければいけない」という煩わしさをちょっとだけ皮肉った目線で描いていたので楽しめました。

同じ日にダイアン キートンの「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」を観て、あちらと設定全く同じ40年寄り添った老夫婦を演じていて同じような役だなーと思ってたけど全然違う女性に見えることにまず驚いた。
あちらでは笑顔がキュートだった魅力的だった彼女がこちらでは普通のおばさんにしか見えなくて、、流石ですダイアン キートン❤︎

日本でも流行り?つつある熟年離婚。スキンシップが十分できてそうなアメリカでも例外ではないのですね。
子供ができるといつの間にか見る方向が変わってきてしまうこんな夫婦は特別じゃないからリアル。
特に母親は子供のために自分の人生を後回しにして必死にその時を生きていくから、子供が成長して独立したとしても今まで通りの子供中心だった人生を否定されたくない気持ちも理解できるし、子供が家を出たら、切り替えてもう一度夫婦として向き合えるんじゃないかと新しい形を提案する夫サムも合ってるからややこしいなと思う。
こんな誰もが起こりうる間違ってない夫婦お互いの微妙なすれ違いが割と綺麗にすっきりと描かれていて割と感情移入しやすかったです。

最後はなんとなーく無理やり?なご都合主義な感はありましたが、それでこそアメリカ!ってな感じで幸せな気持ちになれたからまぁいいか。

始終流れるナレーションの語り部は彼だったのね❤︎

2017年9月12日

読書状況 観終わった [2017年9月12日]

文明から切り離された森の中で生活する奇妙な家族が「下界」に降り立って、その生活や文化のギャップをユーモラスに描くコメディだと思ってましたが意外なほどシリアスで考えさせられる作品。

猟をして鹿を食べたり、夜は焚き火の明かりで哲学書を読みながらお互いの思想を語り合うような生活は魅力的だし、海辺で、草花を頭に飾ってヒッピーのような姿でママの好きだった「Sweet Child O’ Mine」を歌って踊る子どもたちの姿が妖精のように美しくて、幸せそうで、この家族の一員になりたいと本気で思った。

森の生活のキャプテンでもある父親ベンは、敬愛するノーム チョムスキーの哲学を独自の解釈で時々おぃおぃ!と突っ込みたくなるような教育をするけれど、その一方では子どもたち一人一人をちゃんと個人として尊重して対等に接しているから、子どもたちもベンを心から慕って愛してるんだろうなと思う。

もちろん、親の思想によって子供たちの人生を縛ってはいけないし、どんなに仲の良い家族でも一生家族だけで過ごせるわけもないわけで、妻の死や息子の反抗期でいきなり現実に向き合うこととなって、強靭な彼の心がいきなりポキっと折れてしまった時の姿は、彼の家族への深い愛が分かってたからこそとても切なくて遣る瀬無いシーンだった。

この作品はベンたちのようなアナーキーな生活をするコミューンを批判してるわけでも、賞賛するわけでもないけれど、自分の確固とした思想を持ってしても、自分たちの作った夢のユートピアだけで人生を完結する事なんかできなくて、いつか現実社会のコミュニティとの間にそれなりに折り合いをつけて生きていかなきゃいけないんだということを考えさせてくれる。

一筋縄ではいかないベンたち家族は、再出発してまた、はじまるこれからの日々もきっと色々大変な難問が待ち構えているけれど、ベンの子どもたちへの愛と、子どもたちのベンに対する敬愛が満ちていた、羨ましい家族のカタチを見せつけられたのできっと大丈夫。
最後はなんだかとても幸せな気分で劇場を後にした。

2017年9月6日

読書状況 観終わった [2017年9月6日]

簡潔で無駄がない、それでいて感動させる。クリントイーストウッドらしい、本当に安定の作品でした。
なぜあんな簡単なことに気がつかないのだろう?と客観的に見ると思ってしまうけど、システマチックになり過ぎた機関とはどこもそんなもの、それを上回る機転と柔軟さがなければ打ち勝つことなんてできないんだろうな。
トムハンクスと本物のキャプテンの似せ方も見事でした。
アメリカらしい、アメリカの真実のヒーローものです。

2017年9月6日

読書状況 観終わった [2017年9月6日]

普通の人間のちょっぴり見られたくない部分を抉るのがうまい西川監督らしく、妻の死という哀しいテーマなのに、少し滑稽で、きれいごとにしないところがリアリティがあって好きでした。

自分の後ろめたさを隠すように妻に嫌味をい続けるとこや、妻を失うと自分のことが何もできないほどなのに、他人の家庭に一生懸命関わって自分の背負っているはずの十字架を少し軽くしてみたり、、後から色々なことに気がついてそれが手遅れだったり、、
西川監督はとことん男の弱い部分とか、嫌らしい部分をまるで胸のなかをメスで切り分けるかのように描き出すので、男性は観ていて少しソワソワしてしまうかもしれない。

人はみんな完璧に良い人にはなれなくて、小賢しかったり、ズルかったり、残酷だったりすることもあるけど、そんな自分の過去の行為に蓋が出来ないから、なんとなく他で良いことしたりして自分に対して言い訳をしているところがある。だから永い言い訳ってこの映画の幸雄くんだけじゃなくて、みんなにとっての言い訳の物語なのかな。少し自分もドキッとさせられました。

キャスティングかとてもよくて、特にとと姉ちゃんで青葉ちゃん役してた子役の子の演技が自然体のうまさで驚きました。

子供の演出も含めて、今までの西川監督の映画の中でも是枝監督色の強い作品で、役者そのものの素材とか本質をしっかりと活かした脚本なので、勿論好き嫌いが、あると思いますが、個人的にはすごく好きな作品です。
深津絵里さんを、美しく映していた映像が印象的で、特別に泣かせるシーンはないのに随所で涙が出ている自分に気がつきました。

2017年9月6日

読書状況 観終わった [2017年9月6日]

ハリーポッターの映画のファンですが、忘れていた部分もあり不安でした。
予備知識があればところどころの伏線も拾えるのでかなりワクワクしますが、こちらは今までのシリーズを観ていなくても、最低限の知識(魔法界と人間界が共存しているという事実)さえわかっていれば楽しむことができると思います。

ストーリーは始終ダークな感じで不安な魔法界を映し出してザワザワしますが、エディレッドメイン演じる動物学者ニュート君のおとぼけぶりもさることながら、人間として唯一メインを張るジェイコブも本当に魅力的で、二人の純粋な許されない友情物語がとても好きでした。

CGの素晴らしさは目を見張るものがあり、もう圧巻としか言いようがない。
気がつくとでてくる魔法動物も不気味なのにかわいくて仕方がなくなっていました。

子どもの登場を殆ど抑えて、唯一の子どもたちも不気味に描きつつ、魔法界の政治的な部分を中心に物語を仕上げていたので、どちらかというと子ども向けではない感じでした。

まぁハリーポッターのシリーズも、後半はかなり子どもを無視した作りになって。ハリーポッターファン殆ど成長してるだろうしいいのかなと感じます。
ただ子どもと予備知識なしで観に行く親子向けの映画ではない。それは忠告しておきたいです。

なかなか忙しくてUSJに行きたくても行けない働く大人たちにまずは是非、映画館で是非、魔法界の動物たちを堪能してほしいです。

ジョニデ出るってでてこないじゃないかとおもったら、、そんな感じね! 続編楽しみ。

2017年9月6日

読書状況 観終わった [2017年9月6日]

楽しみにしていた「エクスマキナ」
AI(人工知能)に人間のような愛の心は生まれるのか?
美しくて、ロマンティックなようでいて、やっぱり一筋縄ではいかない、世にも奇妙な物語。

生々しさと無機質さの狭間にあるようなアリシアのヌードが美しい。

SFとヒューマンドラマの中間っぽく難しくないし、ビョークのなかで一番好きなall is full of loveのPVの世界観みたいで、個人的にどハマりな映画。

2017年9月6日

読書状況 観終わった [2017年9月6日]
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