読む心の栄養剤!大人になって読みたい絵本5選

こんにちは、ブクログ通信です。

ノンフィクション作家の柳田邦男さんは、絵本には三度読むときがある、と言っています。子どものとき、子育てのとき、そして子どもが独立したあと。これはつまり、人生の多くの時間が絵本を読むのに適しているということではないでしょうか。

絵本には、ひらめきやイマジネーションなどを養う力があります。仕事や勉強で忙しい。そんなときにこそ、夜眠る前のひとときに、絵本を手に取ってみてはいかがでしょうか。今回は、数ある絵本の中から、大人だからこそ楽しめるものを5作品選びました。気になった作品がありましたら、ぜひチェックしてみてくださいね。

1.ジャン・ジオノ『木を植えた男』人は破壊もし、創造もする

木を植えた男
ジャン・ジオノ『木を植えた男
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あらすじ

1913年、私は若い足に任せ、プロヴァンス地方の山脈を突き進んでいた。山深いその地域は荒れ果て、見捨てられた村には廃墟が残る。何時間も歩き続け、私は水を求めていた。水筒はすでに空だった。どこまでも続く荒れ地に、何かが見える。それははじめ、一本の木のように思われた。近付くとそれは羊飼いの男であった。男は私に水を飲ませ、スープをふるまってくれた。そして夜になると男は、小さな袋からどんぐりを取り出した。

おすすめのポイント!

孤独な男は、荒涼の地に木を植える活動をしています。誰かに頼まれたのでもなく、見返りがあるのでもないこの活動を、男は何年も、何十年も続けていきます。その不屈の精神力と、たゆまぬ熱情はどこから来るのでしょうか。悲しみや困難を前に、私たちは落ちこんだり、自己卑下に陥ったりします。男の行いに感動するとともに、自分にとって「木」とは何かを考えさせられます。大人の心にも深く問いを残す傑作絵本です。

ジャン・ジオノさんの作品一覧

「木を植えた人」の絵本版。肉体を持って生まれた、私たちが表現出来うる、静かで穏やかな、しかしとてもパワフルな、愛の具現…心をとても揺さぶられます。奉仕、愛、理想、可能性…いろんなことを自らに深く問いかけてくる内容です。大人にも、強くお勧めします。

yokoさんのレビュー

2.エラ・フランシス・サンダース『翻訳できない世界のことば』”わびさび”を英語に訳せますか?

翻訳できない世界のことば
エラ・フランシス・サンダース『翻訳できない世界のことば
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あらすじ

世界には、ほかの言語に言い直そうと思うとなかなか難しいような言葉がたくさんあります。歴史や文化など、背景がわからなければ理解できないことが詰めこまれているそれらの言葉を、感性豊かな解説とイラストで書き表しました。「水面に映った月明かりの道」や「トナカイが休憩なしで移動できる距離」など、何となくお国柄が垣間見える単語を見ながら、その国の人々の生活を想像してみてくださいね。

おすすめのポイント!

日本語からも四つの単語が収録された本書には、言葉というものの味わい深さが詰まっています。日本語は、擬音語や擬態語がとても多い言語と言われています。この絵本を見ながら、ほかにどんな「翻訳できない」言葉があるか、考えてみるのも楽しそうですね。この単語いつ使うの?これを一語で!?と、驚きと面白みに満ちた絵本。まだまだ世界には知らないことばかり、だからこそ、何だか楽しくなってくる作品です。

エラ・フランシス・サンダースさんの作品一覧

世界中の翻訳しにくい言葉の絵本。100語くらいが紹介されているが、知っていたのは日本語を含めて5つだった。あとは知らない言葉ばかり。言葉の解説のイラストが上手く表現されていて判りやすいし、世界の言葉の広がりが感じられ勉強にもなる。日本語からは4語。「ボケっと」「詫び寂び」「積読」「木漏れ日」が紹介されていた。各国の気に入った言葉をどこかの場面で使ってみたいと思ったが、相手がその言葉の意味を知らないと使えない。相手に言葉の意味を正しく説明するのも難しいし、やはり絵本で楽しむのが良さそう。子供へのプレゼント本としての使い方が良いと思う。

bachbyggさんのレビュー

3.セーラ・L・トムソン『終わらない夜』夜はどこにつながっている?

終わらない夜
セーラ・L.トムソン『終わらない夜
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あらすじ

夜、誰もいない廊下から、汽笛が響いた。「さあ、のって!」不思議な電車に乗車して、夢と目覚めの間のような、幻想の旅に出かけよう。冷たい月の光が照らす世界は暗く青く、どこか薄ぼんやりとしている。現実は知らぬ間に夢想に変わり、その境目がわからなくなる。マグリッドやバロに感銘を受けた画家のロブ・ゴンサルヴェスの絵に刺激され、セーラ・L・トムソンが詩を添えた絵本。魔法にかけられたような夜へといざないます。

おすすめのポイント!

水面に映る木々が、いつの間にか女性に変わっている表紙絵に魅せられたなら、ぜひこの絵本を開いてみてください。眠れない夜、私たちはどこへでも旅をすることができます。雪のシーツにくるまったり、キルトの畑を飛び回ったり、奇妙な夜を楽しんでみませんか。夜の美術館に迷いこんだような感覚になるこの絵本は、芸術作品として鑑賞するのにも適しています。単調な日々が退屈に思えるときや、うまく眠れない夜のお供に。

セーラ・L・トムソンさんの作品一覧

どうしても欲しかった絵本。いや、絵本と言うより、ロブ・ゴンサルヴェスの絵画に詩を被せたもので、むしろアート集に近い。想像の先にある不思議な世界に迷いこんだかのよう。

kirifueさんのレビュー

4.平田研也『つみきのいえ』思い出は海のなかに

つみきのいえ
平田研也『つみきのいえ
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あらすじ

水に沈みかけた街で、老人は暮らしていた。彼は海面が上昇するたび、上へ上へと家を建て増しし、「つみき」のように積みあげられた家に住んでいる。そして絶対に、その家に住むのをやめなかった。穏やかな生活を送っていたある日、老人は大工道具を海に落としてしまう。道具を拾うため、老人はダイビングスーツを着こみ、海のなかへと潜っていった。下へ下へと潜っていくと、そこにはかつて住んでいた家々が残っていて……。

おすすめのポイント!

作中では家が「つみき」のように積まれていきますが、人生や思い出も、「つみき」のように重なっていくものなのだと気付かせてくれる作品です。家族や友人、恋人たちと過ごした尊い時間の上に、私たちは今、立っています。老人の心情が伝わり切なくもなりますが、心温まる作品です。一人の時間にじっくりと読みたい絵本。原作のアニメーションは、日本映画で初めてアカデミー短編アニメ賞を受賞しました。

平田研也さんの作品一覧

とても綺麗な絵とは対照的に、海に飲み込まれていく家のストーリーは、切なくて時として寂しく悲しい。年月分の積み重ねが、家の礎として水中に残っているのを見ると、家を通して人生を振り返っているような感覚になった。それでもこの話はどこか幸福で、多くの人が少し故郷を思い出すんじゃないかな。

ねねさんのレビュー

5.向田邦子/角田光代『字のないはがき』三人の直木賞作家の合作絵本

字のないはがき
向田邦子『字のないはがき
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あらすじ

私の家は六人家族だ。お父さん、お母さん、私、弟、大きい妹、小さい妹。戦争が始まって、食べものが手に入らなくなり、爆撃で家や家族をなくす人も増えてきていた。大きい妹が先に疎開し、そして小さい妹も、疎開することになった。お母さんは肌着をたくさん縫って名札をつける。お父さんは、まだ字の書けない小さい妹に「はがき」をいっぱい渡して、「元気な日は丸を書いてポストに入れなさい」と言った——。

おすすめのポイント!

この作品は、向田邦子さんの『眠る盃』に収録された、戦時下の思い出を綴るエッセイ「字のない葉書」が原作になっています。向田さんのファンを公言する角田光代さんと西加奈子さんが、文と絵を担当してできた、直木賞受賞の女性作家三人による合作本です。絵本らしく噛み砕いた文章も、シンボリックな作画も、しみじみと余韻の残る絵本になっています。戦争を知らない世代だからこそ、想像力を働かせて読みたい一冊です。

角田光代さんの作品一覧

大人が泣く。疎開した妹さんのために、かぼちゃをとる場面から、ポロポロきて、お父さん号泣のシーンでは、私も号泣。子供からは、お母さん、よだれが垂れてるよって言われた。ちがう!涙!子供には、ピンとこないのかな?今は、そうであっても、記憶の片隅に入れておいて、成長してから、検索して欲しい一冊。

YU kidsさんのレビュー


頭がやわらかくなったり、大事なことに気付いたり。栄養ドリンクを飲むように、心の栄養補給に絵本はいかがでしょうか。オススメした5作品のなかから、ぜひ気になったものを手に取ってみてくださいね。