小暮写眞館 (書き下ろし100冊)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 5177
感想 : 772
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  • Amazon.co.jp ・本 (722ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062162227

感想・レビュー・書評

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  • 宮部さんの紡ぐ物語はやっぱり凄い。本作は家族小説でありながら様々な事象が折り重なった作品だ。語り口の英一が高校生の割に大人び過ぎていてちょっと読みにくかったし合わなかったのだが物語の面白さはピカイチ。優しい世界観ながら風子という無くなった家族の存在や危なっかしい垣本さんなど影を落としているシーンも多々ある。その共存を巧みにコントロールしているのが本当に凄いと思う。ラストにはその全てに着地点を用意してあって繋がっていくのは感涙もの。700ページ超の大作ながら読んで良かったと思える作品だった

  • 変わり者の両親が、小暮写真館を購入して、自宅にした。
    そこに住み出した事で、ひょんな誤解から心霊写真を解明することに。
    写真はそこにある物を写すだけじゃなく、人の心まで写しとる。
    前半は心霊写真とそれに関する人々を描くストーリー。
    後輩は、主人公一家の過去から引きずる辛さと向き合って行く事と、主人公の淡い初恋が描かれている。
    人生はままならないけど、一時駅に停車しても、また次に向かって走り出せる電車みたい。

  • NHKでドラマ化されたのを見逃して小説を読もうと思って手に入れたのはいいものの、その分厚さに恐れをなして後回し後回しになっていたが、ラノベ小説部門の文庫が出ているのを知って、何だジュブナイル小説なのかと思ってやっと読むことに。小暮写真館だった古屋に引っ越してきたちょっと変わり者の花菱一家、その長男英一が主人公の物語である、最初は小暮写真館で撮られた思われるちょっと訳ありの心霊?写真、そこに潜む物語が悲しい、花菱一家の中で亡くなった風子にまつわる親者の悪意の連鎖、そして不動産屋に勤める柿本順子の話が切ない。

  • 大きく4話に分かれて構成されていましたが、長かった~。

    店舗兼住宅の小暮写眞館。持ち主の小暮泰治郎が亡くなった後、この家に移り住んできた花菱家のお話。物語は高校生の長男、英一の目線で描かれています。
    実はこの花菱家、3兄弟の真ん中の風子ちゃんが4歳の時に亡くなっています。「死」というものに敏感になっている家族と、この写眞館に強い想いを残している小暮おじいちゃんとの魂の共鳴というのでしょうか、少し不思議な出来事があったりします。

    ひょんな事から心霊写真のようなものを手にした英一が、写真に写っているものの謎解きをしていく形で様々な人と関わっていき、その人の想いを感じていく過程はすごく胸が熱くなって良かったです。

    ただ、『ソロモンの偽証』の時も感じたのですが、宮部みゆきが描く子供はしっかりしすぎている!真面目すぎるというか…。特に今回は弟の光くんなんてまだ小学生なのに、高校生の兄と対等に会話している姿や、そうかと思えばおねしょだったり行動がとたんに幼くなっていたりで違和感ありまくりでした。出来が良い、しっかりした弟という設定でしたが、読んでいて何度も、あれ、この子はいくつだったけ?と思ってしまうくらい状況がすんなり入ってこない場面が多々ありました。

    人間の心理描写はすごく上手い作家さんだと思うのに、子供が主役になるととたんにリアリティに欠けてしまう印象が…。読み手側(私)の問題でもあるのだろうか…。

    素直におもしろかった、良かった、と言えない自分が悲しい(T_T)

  • 140405 中央図書館
    全編合わせるととても長いのだが、現代の人情物、青春小説の香りもとりまぜて、「ふんわり」と読めて後味も良い。他の作家とくらべても、宮部みゆきは、上手だな、と思わせる味わい。

  • 写真館だった店舗付き空家に四人家族が越してきた。
    長男英一が高校を卒業するまでの三年間。
    家族を巡るほのぼのとした物語というわけではない。

    心霊写真や念写などの不思議話ばかりでもない。
    人は見たいものを見るし、聞きたいように話を聞く。
    では、見たくないもの、嫌なこと、おっかないものに出会ったらどうするか。
    しかも、複数の人間で同じものを見てしまったら、というお話。

    宮部ワールドだから苦い思いばかりでなく、安心して読めます。
    加えて、私にとっての楽しみは東京弁だあ。

    東京弁の醍醐味は間合いにある。
    少々お節介で二、三歩先走り「んなわけないか」と自分突込み。
    そんな言葉が紡ぎ出す日々の機微にほっとするのだ。

  • 宮部みゆきさんの作品を初めて読みました!
    前から読んでみたいと思っていて、ようやく読むことができました。
    1人1人の個性がしっかりしていて、登場人物がどんどん増えていっても混乱することなく読めました(^ ^)
    そして、1人1人のエピソードが共感できて、読んでいてあったかい気持ちになりました(o^—^)ノ

  • 久しぶりに読んだ宮部さんの現代物。

    私が好きだった頃の現代物に戻ったようで、嬉しくて読み進んでいくと、そこにはやはり何十年かを生きてきた宮部さんがいた。

    そして、とっても良かったです!

    大人であろうと子供であろうとみんな様々な思いを心に抱いている。
    読み進むうちに、そんないろいろな思いにふれ、人の哀しさ、せつなさ、優しさ、温かさなどを感じることになる。

    宮部作品にはつらい現実も描かれているのだが、作者が人を信じているということが感じられてそこが大きな魅力なのだ。

    それを感じさせてくれるのは主人公の周囲の人々だ。
    友人や両親はじめ周りの大人たち以外に、ふとすれ違ったような人達、そんな人物達こそが宮部作品をこんなにも魅力的にしてくれているのだと思う。

    最近はあまりに読むのがつらくなる作品もあって、現代物はすぐには手がでなかった。
    でも今回はよかった。最後の最後ぐっときた。
    読み終わって表紙の写真をみると、またまたじんときた。

    出版されて2年近くたってしまったが、春のこの季節に読めてそれも私にはうれしいことだった。

  • あぁ、また一つ、いい作品に出逢えた。そう思える作品。やっぱり、宮部さんはすごいなぁ。どんどん物語の中へ惹き込まれていった。700ページを超える長編だが、本作は「模倣犯」や「理由」などとはちょっと異なり、どちらかというとラノベ風な軽妙な筆致で長さを感じさせない。

    ちょっと変わった両親と、8つ年下の賢い弟をもつ高校1年生の「花ちゃん」こと花菱英一くん。両親が思い切って購入した中古住宅は、故・小暮さん(享年85歳)が経営していた写眞館。リフォームもそこそこに暮らし始めると、なぜか古い写真にまつわる謎を解明する羽目に…。

    4話構成、1話進むごとに物語の奥行きが深まっていく。家族、友達、ちょっと気になる人…。人と人との温かい繋がり、かと思えば骨肉の争い。その中で、花ちゃんは少しずつ大人になっていく。このあたり、先日読んだ「魔術はささやく」にもちょっと通ずるような感じもするなぁ。

    最後は、少し切なく、でも心がじんわりとしました。おススメです。

  • 長編で、本を見てびっくりしました。
    ハードカバーで分厚く、電車の中で立って読むのがとても大変でした。
    宮部作品は、長編ものも多いのですが、なぜ、数冊に分けなかったんでしょう。
    彼女の作品はとても気になっていますが、本格的社会派ミステリーはまだレベルが高そうなので『ブレイブ・ストーリー』を読もうと思っていましたが、先にこちらを手に取ることに。
    「初のノンミステリー」だというこの作品を読んでみようと思いました。
    ノスタルジックで爽やかな少年の日々に、心霊写真の謎が溶けあうように、語られています。

    かなりゆるい感じなのが意外でした。宮部さんは、こんな作品も書くんですね。(メインを知らないけれど)
    朝井リョウの『桐島、部活やめるってよ』に触発されて描いた青春小説、というのが興味深いです。ベテランでも、新人作家の影響を受けることってあるんですね。
    とくに大きな衝撃もなく、淡々としている日常。表紙のように、ほのぼのとした空気が漂っています。

    登場人物たちの再生と成長物語にじんわりしますが、いかんせん長編です。
    電車で読んでいた私には、物理的な本の重さや支える手の方に気が行ってしまい、あまり内容に集中できませんでした。
    文庫版が出たら、もう一度読みなおそうと思います。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

宮部みゆきの作品

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