1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉前編 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101001593

感想・レビュー・書評

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  • ■ Before(本の選定理由)
    社会人になって数年目で上巻だけ読んだと思う。
    約12年振りの再読。

    ■ 気づき
    私自身も随分変わり、物語から受ける印象も違うような気がする。ヤナーチェックは聴いたことがないけれど、ジョージ・オーウェルは数冊読んだし、六本木のホテルのバーの雰囲気も知っているし、おおむね、文化人類学者がらどんか人達かも知っている、たぶん。

    ■ Todo
    青豆と天吾の物語が結びつく兆しがある。早く続きを読みたい。

  • 祝!国際交流基金賞受賞
    http://www.jpf.go.jp/j/about/award/index.html

  • 「村上春樹の『1Q84』入荷しましたー」

    朝の通勤電車に乗り込む前にそんな声が聞こえてきた。駅前の小さな本屋さんの店員が外に出て宣伝をしている。村上春樹さんの新刊が出る、というのは出版における一つのイベントめいたものがある。私がそのイベントを初めて体感したのは『ねじまき鳥クロニクル』が文庫化された時だった。少し遅ればせながらようやく手に取った『1Q84』。かなり入り込んで読めた。今までの自身の春樹体験でもっともよかったかもしれない。それはこの『1Q84』という作品がいい、ということと一致するわけではないと思う。何か今までの春樹作品がいろいろと腑に落ちた感じだ。

    これまで春樹さんのものは中長編はほぼ読んできていたが短編やエッセイはかなり取りこぼしがある。そして『アンダーグラウンド』も読んでいない。今回『1Q84』を読んで『アンダーグラウンド』を読みたい、と思った。春樹さんの作品間のいろんなことがつながる感じが自分の中であった。『1Q84』自体も春樹さんがこれまでやってきたことをいったんまとめてみる、という思いがあるように感じた。

    Book1の途中まで読んだ時「これは無意識のことが書かれているのか」と思う。そうすると何かがほどけるように読めていく。「そうか、そうか」とうなずきながらページをめくる手が加速した。

    読みながら春樹さんはこれを河合隼雄さんに読んでもらいたかったんじゃないだろうか、と考えていた。するとユングが引用される箇所に出会う。「ああ、やっぱり」と思う。チェーホフの『サハリン島』の引用も印象に残って見事だと思うけど、引用されるものの多彩さも楽しかったことの一つだ。

    村上春樹さんといえば日本人離れした登場人物の会話というのも特徴の一つだと思う。私もこれまで「まあ、そういうもんなんだろう」と評通りの読み方をしてきたのだけれど、これは「夢の語法」なんではないかと今回読んでいて思った。夜寝る時に見る夢の中では、論理的にはつながっていないような出来事同士でも何の違和感もなく連結されていく。村上春樹の登場人物同士の会話はまさにこれだ。誰かが何かを言う、すると相手は「あなたの言うことはわかるわ」とか相手が言ったことの単純な繰り返しを同意として返したりする。夢の中ではおかしなことでも全てが必然のようにつながっていくこととこれは感覚的につながる。こういうことは既に言われていることなのかもしれないが、なんで今まで気づかなかったのだろう、というぐらいこの書き方が自分の中で了解されるところがあった。

    この本を読んでいて一番スリリングだと思ったところは、青豆と宗教団体のリーダーの対決の部分だ。リーダーの言葉は実は非常に理が通っていて魅力的とも言える。危険なカルト集団ともなりえるリーダーの言葉に理屈を見いだすのは大変後ろめたいことだ。だから、春樹さんはこれをどう乗り越えるのか、という関心を持ちつつ読んだのだが、これを「超える」という形では答えが示されていないように感じた。もっと違うアプローチを示してくれたように私見では思う。傷ついたものはどう癒されていくのか、ということと、暴力というものがどのような性質を持っているのか、が徹底的に書き込まれているのだと思う。

    春樹さんのイメージする「暴力」は、「どこかに突然投げ込まれてしまうこと」ではないかと思う。何かの拍子に突発的に起こった事件に巻き込まれて被害者となってしまうこと、というのがかなり直接的にイメージされるけれど、「どの時代に生まれるか」とか「誰を親として生れてくるか」といったようなことだって、よく考えれば自分で選べることではない。そういう感覚に共通するものに「暴力」を見ているのではないだろうか。

    幸せに生まれてくる人もいる。けれどもそうでない人もいるだろう。そういう時に「暴力」という強いイメージまでいかなくても、ある種の感情が喚起されることはあると思う。そして「暴力」を受けた、と感じた側はそれによって傷ついた心をどのように癒していけばいいのだろう、というようなことを春樹さんは考えているのではないだろうか。

    そして私見ではそれは別の心に出会うこと、そしてそれを探し求めることなのではないだろうか。「心」というよりも「魂」という感じか。魂はどのように傷つき、どのように癒されるのか。青豆と天吾は互いの魂を求めている。そしてそれを求めていく過程が癒される過程と近似するのではないかと思う。

    村上春樹さんがこんなにも売れる作家である、というのが昔から不思議だった。ストーリーとしてはそれほど論理的に説明できるものではないし、どの辺をみんな面白がっているのだろう、と思っていた。村上春樹作品というのは、そういう意識下で論理的に説明できるようなものではないのではないのだろうか。読む人の心の深い所へ沁みていくような作品だからこそ、こんなにも多くの読者を惹きつけるのかと思った。

    今回、他の作品に対するイメージもだいぶ塗り替えられ、いろいろと読み直したいなと思った。他にもいろんなことを思った気もするけど、それは少しずつ残していくとしよう。

    • 花鳥風月さん
      確かにお祭りですね~。この祭はけっこう好きなんです。

      > 音楽や文学との繋がり

      「音楽との繋がり」で思い出すのですが、ヤナーチェクの「シ...
      確かにお祭りですね~。この祭はけっこう好きなんです。

      > 音楽や文学との繋がり

      「音楽との繋がり」で思い出すのですが、ヤナーチェクの「シンフォニエッタ」にも興味津々です(この人もチェコの人なのか…)

      > (勿論、嫌われてもいて)

      春樹さんにはあまりいいことを言ってない人のものもけっこう読むのですが、それだけ無視できないような存在なのかな… と思っています。村上春樹推しの内田先生の著作が気になるところです。
      2012/08/01
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「この人もチェコの人なのか」
      そうです。クンデラ原作の映画「存在の耐えられない軽さ」で使われたりしています。
      熱心なファンが居て「日本ヤナー...
      「この人もチェコの人なのか」
      そうです。クンデラ原作の映画「存在の耐えられない軽さ」で使われたりしています。
      熱心なファンが居て「日本ヤナーチェク友の会」で自費出版されたり。。。
      もう随分前ですが、サイトウ・キネン・フェスティバル 松本で、オペラ「利口な女狐の物語」が上演された時は観に行きたかった(チケット取れず)
      「内田先生の著作が気になるところです」
      一応6冊読了したので、心置きなくガイドブック?が読める・・・ケトルでは本に出てきた音楽リストがあるそうなので楽しみにしています。。。
      2012/08/22
    • 花鳥風月さん
      nyancomaruさん

      『1Q84』読了されましたか? 「ケトル」そういえば本屋で見かけてたのに買うの忘れて別の本買ってました… 次行っ...
      nyancomaruさん

      『1Q84』読了されましたか? 「ケトル」そういえば本屋で見かけてたのに買うの忘れて別の本買ってました… 次行った時に買おうっと。「ケトル」の音楽リストを見てちょっと世界を広げてみたいです。
      2012/08/25
  • 久しぶりに読み返した。ほぼ前回読んだ記憶が無くなってたのである意味新鮮だった。
    重厚なストーリーでかつボリューミーな文章はとても読み応えがある。
    青豆と天悟の物語が少しずつ重なっていくのかな、ということを予想させる構成で私は一巻が1番好き。

  • この物語を読む前と後では決定的に違う世界になっているんだという予感ばかり感じながらページを進めてた。
    面白すぎる。

  • 青豆さんがとっても魅力的

  • 交互に繰り広げられるミステリアスな2つの物語。銃撃事件という共通点。その先どう繋がるのか。

  • 安定のハルキ。BOOK3はいらなかったかな。

  • 村上春樹を初めて読んだ。
    面白い。一気に引き込まれた。

    天吾と青豆の2人の視点が交互に行き交うのだが、きっとどこかでお互いの共通点があるのだろうな。
    ジムのトレーナーをしつつ、殺し屋をする青豆。
    塾講師をしつつ、小説家を目指す天吾。
    2人とも二足の草鞋を履いている。

    青豆はスポーツドリンクの会社にて親友を亡くし、天吾は母を亡くしている(どういう経緯で亡くなったかは不明)。

    青豆には、老婦人と護衛の男、警察官の女あゆみ。
    天吾には、編集者小松、ふかえり、先生、人妻。

    ここからどう物語が動くのか楽しみ。

    今の所、2人とも時空の歪み的なものを

  • 遅ればせながら、村上春樹のこの名作を読んでます。
    物語は、主人公の女性「青豆」と男性「天吾」の視点から交互に進行します。彼らはそれぞれの偶然の出会いから、その後の人生に大きな影響を与える出来事に身を投じていきます。
    相変わらず、描写は独特であり、物語の雰囲気を繊細に表現してます。また、登場人物たちの心の揺れ動きや内面の葛藤も丁寧に描かれていて、共感できる部分も多いです。リアリティとファンタジーの融合していて、非常に引き込まれる作品です。まだ、物語の全容がわからないので、これからの展開が楽しみです。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

村上春樹の作品

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