戦う姫、働く少女 (POSSE叢書 Vol.3)

著者 :
  • 堀之内出版
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感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784906708987

作品紹介・あらすじ

ジブリの少女やディズニープリンセスは何と戦い、どう働いたのか。それは現代女性の働きかたを反映していた―。『逃げ恥』から『ナウシカ』まで。現代のポップカルチャーと現代社会を縦横無尽、クリアに論じる新しい文芸批評が誕生!

感想・レビュー・書評

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  • 1980年代以降のグローバリゼーション、ことに新自由主義が女性の労働環境に及ぼしてきた影響をポストフェミニズムの観点から概観し、それがポピュラー・カルチャーの登場人物にどう投影されたかを論じた刺激的な論考。

    本書で扱われた作品をざっと挙げると、『スターウォーズ』『アナと雪の女王』『ブリジット・ジョーンズの日記』『おおかみこどもの雨と雪』『千と千尋の神隠し』『魔女の宅急便』『風の谷のナウシカ』『逃げるは恥だが役に立つ』『エヴァンゲリオン』『かぐや姫の物語』『ブルージャスミン』…。観たことがあるものも、ないものもあったが、なるほど、ある視点に立って鑑賞すると、こういう見え方をするのかと学びが多かった。

    内容はかなり高度で、完全には理解ができていない。正直、深読みしすぎなのではとか、恣意的に作品を選んでるのでは、とか、色々思うところもあるが、作品は時代を写す鏡なんだなあと感じる。「おおかみおとこ」や「ナウシカ」の解説は、自分では思いもしない角度からの論考で、おぉっと興奮した。こういう本を読む醍醐味は、自分にない考えを知ることができる点にある。

    終章もまた読み応えがある内容だ。『百円の恋』で貧困女性の悲哀が、『ブルージャスミン』『ゴーン・ガール』『メイド・イン・ダナゲム』で、貧困女性とキャリア女性の分断と互いの連帯の可能性について語られる。しかし現状、コロナ禍では女性の貧困が際立ち、分断がより深まったように見える。作者の言う連帯の可能性の根は絶たれていないのか、状況の変化を見極めたい。

  • 『アナとエルサ、ブリジットとサンドバーグという二項対立によって排除されているのは、女性の労働と貧困である。』

    タイトルと表紙から思っていたほど軟らかい本ではなかったが、論旨が丁寧にほぐされていくのでついていけた。
    面白かった!
    たまたま『暇と退屈の倫理学』を読んですぐで良かったなー、双方向に理解の手掛かりになるところが割合あったので。
    フェミニズムの流れと新自由主義の関係など、とても興味深かった。
    また再読して考えていきたい。

  • 現代の労働、特に女性の労働をめぐる諸問題を、身近な映画やドラマなどのポピュラーカルチャーを扱いながら、嚙み砕いて分析し、解決の糸口を探る内容。問題の内容や根本を掘り下げるほど、現代について悲観的な気持ちになってしまったが、筆者の結論について一定の納得感はあった。
    最近の私の関心はいかに資本主義の中で生き抜くかであり、身の回りの女性を見ている中で・自分の未来も見えない中で感じていたモヤモヤについて、現在の社会が直面している問題を辛辣なほどに描いており、共感する要素と腑に落ちる要素があった。
    映画やドラマのネタバレ必須であること、筆者の解釈について少し抵抗を感じる方もいるのかもしれない点でマイナス1。

    特に「かぐや姫の物語」と「風の谷のナウシカ」を分析した第5章が印象的だった。宮崎駿氏と高畑勲氏の生み出した作品とメッセージの解釈は、感動的であり、友達にシェアしたくなった。

    すでに鑑賞したことのある作品もあれば、ない作品もたくさんあったので、扱われていた作品を少しずつ鑑賞していきたい。

  • 最近観た『おおかみこども』と『インターステラー』目当てで手に取ってみた。のっけからシェリルサンドバーグとブリジットジョーンズを対比させるあたり、おおおと思ったけど、いかんせんアニメにあまり興味ない(ナウシカももののけ姫もみてない)のと、この手の文章をあまり読んだことがないせいで「脱構築」「表象」「切り結ぶ」といったたぶん基本的な用語の意味もいまいちピンと来ず、書かれていることは面白いのにクリアに理解できないもどかしさで途中飽きた。白状すると、第五章はほとんど飛ばしました。ところがどっこい、最終章がものすごかった。『逃げ恥』と『ハウスワイフ2.0』の共通点にはなるほどとなったし、何よりわたしの愛してやまない『ブルージャスミン』が登場、『百円の恋』や『ゴーンガール』と並べて解説されるのだ。最後に紹介される『メイド・イン・ダゲナム』っちゅう映画が日本未公開なのが惜しまれるけれど、主演女優ふたりの写真を見たときには「そんな偶然あるのかよ!」と叫びたくなった。サリー・ホーキンスがさらにのちになって『シェイプオブウォーター』でああいう女性を演じたことについて、河野さんの考察を読んでみたくなったり。「連帯」というワードが示され、本を閉じる頃には感動すら覚えていました。連帯、できるといいのにね。あと、読めば読むほど自分の職業が、この本で論じられる主婦的(?主婦化?だったっけ?)労働そのものだって気づいて泣けた。

  • 横文字が多くてよくわからない部分も多かったけれどディズニー映画で最近は「守られるお姫様」って見ないなぁと確かに思いました。
    最近のディズニーはお姫様に限らないしキスで目覚めたりして男性に依存しないでむしろ積極的に火中のクリを拾いに行くようなヒロインもいるし。

    一件無関係なアニメ(映画・テレビ)作品でも意外と時代を感じるんですね。


  • 少し難しかったのですが、
    大学の先生が授業で扱ってくれて、
    理解できた時は今の社会とジェンダー表象について考える時とても参考になる一冊だと思いました。

  • ポップカルチャー的な軽いタイトルとは裏腹なバリバリの学術書。アニメファンではない私のような読者は、最後まで読み進める気力を保ち続けるのが難しいかもしれない。それでも日本の「女性活躍」政策にみられるネオリベ・フェミニズムの問題点がより深く理解できておもしろかった。また自分はなぜフェイスブックの利用を止めてしまったのか ー 「絶え間ないアイデンティティ管理維持という労働を通して自分を企業家化する」ことに疲弊してしまった ー が言語化されていて腑に落ちた。

    コロナ禍でより深く大きく広がった社会の痛みを経験した私たちは、「自助」や「自己責任」を基調とするコロナ前の(現在の)新自由主義経済に無邪気には戻れない。エッセンシャルワーカー(その多くが非正規雇用、女性、低賃金)がいかに社会にとって大切な存在なのかが広く認知された今、連帯の必要性もより切実に理解されたのではないだろうか(それを具体的な社会的変革につなげていけるかどうかは今の時点ではまだ未知数だとしても)。

  • 【新着図書ピックアップ!】ヒロイン。少女から大人の女性まで、誰もが憧れる女主人公。レイア姫、アナとエルザ、おおかみこどもの花と雪、千と千尋、逃げ恥のみくり、ナウシカなどなど。本書は、創作物に登場するヒロインの生き様をわたしたち共通の文化として捉える試みがなされている。ただし、紹介されている作品を未見・未読のお方は注意されたし。

    【New Book!】This book traces the history of fictional heroines in recent 30 years by examining their lifestyles.
    I highly recommend this book for anyone interested in literature, sociology, cultural and gender studies.

  • 大学のサークルの先輩が本を出したっていうので図書館で借りてきて読んでみた。物語の女性主人公を通して説く社会文化論。
    身近な物語を題材に、よくもこんなにも小難しく考えたなというのが率直な感想。まあ、大学のセンセーが書いているので、その分マニアックにはなっていると思うので、自分の興味を超えているところはナナメ読みすれば、素人でも十分楽しめる。
    ジブリの映画はテレビでやる時に漠然と見てきただけだから、今度意識して見ようかな。

  • 岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
    http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00580274

    ジブリの少女やディズニープリンセスは何と戦い、どう働いたのか。それは現代女性の働きかたを反映していた―。『逃げ恥』から『ナウシカ』まで。現代のポップカルチャーと現代社会を縦横無尽、クリアに論じる新しい文芸批評が誕生!(出版社HPより)

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著者プロフィール

【著者略歴】
河野真太郎(コウノシンタロウ)

1974年、山口県生まれ。専修大学国際コミュニケーション学部教授。専門は英文学とカルチュラル・スタディーズ。著書に『増補 戦う姫、働く少女』(ちくま文庫)、『新しい声を聞くぼくたち』(講談社)、『この自由な世界と私たちの帰る場所』(青土社)など。

「2023年 『はたらく物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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