■夫に恋人がいることを知って傷つきながらも、諦念を抱いて日々を送る美和。そんな彼女と共に、天然石のアクセサリー・ブランドを立ち上げた幼馴染の絵梨。そして、絵梨のかつての恋人であり、さまようようにして生きる少年ミチル。いつしか、美和とミチルは週に一度だけベッドを共にするようになる……。優しさと慈しみに満ちた長編恋愛小説。

■■柔らかな文章と静かに進んでいくストーリー。どこにもあわただしさや刺々しさがない。でも底部に流れるのは痛みや孤独や哀しみ。読むタイミングを謝ると、間違って自分が沈んでしまいそうだ。淡々と物語が進んでいくんだけど、その淡々さが心地よい。でも、最後はぐっときました。哀しい。

2011年8月18日

読書状況 読み終わった [2011年8月18日]
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■中学一年生のあさぎは、母の再婚と私立中学への入学を機に新しい町に越してきた。新しい家族にも新しい学校にも馴染めない彼女の心の拠り所は、近所の郵便局に勤める青年、中村だった。―だから私は、中村さんのその「にこっ」という個人的な笑顔を見に郵便局に通うのを、誰にも秘密の、ささやかな楽しみにするようになっていた。子供でいられない子供達と大人になれない大人達の出会い。第二十二回小説すばる新人賞受賞作。


■■回りにいる大人に振り回されながらも、自分の居場所を少しずつ見つけ出そうとする子ども(元子ども)の物語。自分で自分が一番見えていないんだってこと、本当に一生懸命がんばっている子ほど、自分はまだまだなんだって思ってること多いってよく思います。これはそんな子ども達の話。最初、あさぎや中村さんに物凄く感情移入してしまったせいか、周りにいる人たちがとても理不尽な人たちに見えて仕方なかった。だけど、後半少しずつ彼女達が成長するにつれて、そこにいる人たちの優しさや暖かさに気づいていく場面で、読んでいる私までとても感動して泣けてしまいました。久しぶりに本読んで泣きました。とても素敵な物語でした。出会えてよかった。

2011年8月13日

読書状況 読み終わった [2011年8月13日]
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■恒川光太郎が五つの物語で世界を変える―。風を、迷いを、闇夜を、鳥を。著者はわずか五編の物語で、世界の全部を解放してしまった――。静謐な筆致で描かれた短編は、小説の新たな可能性を切り拓く!


■■短編集。どのお話も恒川光太郎らしい不思議に満ちた話でした。読み終わったあとにぽわりと心が温かくなるものもあれば、舌の上に苦味が残るものも。

2011年8月12日

読書状況 読み終わった [2011年8月12日]
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■お騒がせコンビの中学生男子が持ち込んだのは、金色に輝くお宮の写真。トラブルが始まったのは、それがきっかけだった…。片野厚介は新任の中学教授。教え子の笹井と勝又が、立ち入りが禁止されている神社の裏山で、美しい奥宮をみつけたと言ってきた。その在処をめぐって接触してくる、怪しい組織と、謎の美少女中学生。降りかかるピンチの連続に、三人は、幻のお宝を守れるのか。


■■子供向けにつくられているのかな??ずいぶんと文章が易しく、ミステリーっぽい仕上がりではあるけど、あくまでも「ぽい」というだけ。やんちゃな中学生と文字では書いてあっても、実際のことろはかなりお大人しいほうだと思う。大きな展開もなく、クライマックスは多少盛り上がりはしたけど、全体的に薄味でした。しかし、地味な主人公先生が、実は一番の隠し玉だったことは、少し面白かったかな。

2011年8月8日

読書状況 読み終わった [2011年8月8日]
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■「みんな、俺の話を聞いたら尊敬したくなるよ。我が家は、六人家族で大変なんだ。そんなのは珍しくない?いや、そうじゃないんだ、母一人、子一人なのはいいとして、父親が四人もいるんだよ。しかも、みんなどこか変わっていて。俺は普通の高校生で、ごく普通に生活していたいだけなのに。そして、今回、変な事件に巻き込まれて―。

■■ありえない設定。でもそのありえなさが、面白くて好きだ。伊坂幸太郎の書く人物はどれもものすごく個性的なんだけど、独特の筋の通った正義のようなものを持ってて、魅力的でしようがない。とくにこの父親たちは、なんかほんと笑えるぐらいに個性的な真っ直ぐさでかっこいい。子供が小さい頃に描くスーパーマンみたいな父親だって思う。

2010年11月19日

読書状況 読み終わった [2010年11月19日]
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■「完全犯罪テクで悪人を始末せよ」裏活動に精を出す醍葉学園“推理小説研究部(通称・完全犯罪研究部)”が学校爆破事件で廃部に。平和が訪れると思いきや、懲りない部員たちは密かに裏活動再開!イジメ、オカルト、猫殺し、父親殺害計画…続発する事件を解決するべく最恐女子高生・杉野更紗たちがアブナイ正義で大暴走!元顧問・由利千早にもありえない災いが。

■■一作目のラストを読んだ後では、まさか続編が来るとは想像してませんでした。主人公の状態を思えば、よく続きを作れたなぁ・・・と。私的には好きなお話だったのでシリーズ化は嬉しいです。相変わらずテンポよく、薄暗くて陰鬱な空気をコメディチックに書いてしまうところがすごいなぁと。しかし、動物好きにはときどきイタタタっと目をつむってしまうシーンも少々。

2010年11月15日

読書状況 読み終わった [2010年11月15日]
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■沖縄本島沖の孤島―水波照島にあるヒラモリ電器の保養所で開かれたクリスマスパーティー。大手企業の御曹司・平森英一が主催するとあって、会には有名スポーツ選手や俳優などの豪華な招待客が名を連ねていた。そんな宴の夜、惨劇が!人気プロ野球選手、井沢健司が無残な死体となり発見されたのだ。その後、連鎖し起こる不可能殺人。事件の背後にある深い闇に迫る。絶海の孤島に住む双子の姉妹、断崖の上の怪しげな建造物、連続殺人事件勃発率99.9…%。オヤジギャグを愛す女子高生コンビ(ミリア&ユリ)が難事件に挑む。

■■それほど間をおかず続編。相変わらず漫才三人組でしたでも事件に関してはすごく薄い印象しかなかったのが残念。

2010年11月10日

読書状況 読み終わった [2010年11月10日]
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■美貌と知力を尽くした果てに、手に入れたのは王の愛か、それとも権力か。フランス、イギリス、オーストリアの宮廷を舞台に繰り広げられる、宮廷絵巻。歴史の影を生きた愛人たちが描くもうひとつのヨーロッパ史。

■■かつてヨーロッパの政治は王の寝室で愛人たちによってまわされたといっても、ある意味過言ではないような世界。面白かったです。しかし、やはり人間関係はかなり複雑で混乱してしまうのは・・・私がおバカさんだからなのだろう。

2010年11月7日

読書状況 読み終わった [2010年11月7日]
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■「時間を超えて電話が繋がるなんてこと、あると思う?」携帯電話に残された、見知らぬ男の子からの留守メッセージ。奇妙な間違い電話に引き寄せられて、東京湾に臨む埠頭で出会った有海と春川。17歳と19歳、オトナとコドモのあいだで押し潰されて行き場を失った2人の、それはあまりにも刹那的で欠陥だらけのつたない恋-。怖いものなんてなかった。無敵になった気分だった。明日地球に隕石が衝突して世界中の人類が滅んで2人きりになったって、困ることは何もないような気がした。

■■刹那的な幸せを追いかけた若い男女の物語。あまり主人公の女の子が好きになれなかった。馬鹿っぽく書きすぎなのでは? それともそれが普通なのか?

2010年11月4日

読書状況 読み終わった [2010年11月4日]
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■ミステリについて語り合い、校内で発生した事件を推理する醍葉学園“推理小説研究部”。だが顧問教師・由利千早は就任早々知ってしまった。部員・杉野更紗の姉を殺した犯人をはじめ、悪人の始末を目論む「裏の部活動」を。日夜、完全犯罪テクを研究する部員たちはそれを武器に大暴走。由利先生に彼らの正義を止める手立てはあるのか?そして彼女たちを襲う命の危機。

■■この作者物語のノリが好きだ。いい意味でも悪い意味でも。いろいろなことがふわふわと軽いけれど、その軽さがこの物語の味噌だと思う。シリアスだけど、シリアスすぎないというか。ミステリーというよりは、若干アクション入ってた。彼らはよく動く。タナトスシリーズと繋がってたことに、最後の最後で気づいて、一人でギャフン。

2010年10月31日

読書状況 読み終わった [2010年10月31日]
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■世界の運命を握る鍵は、彼女達の手の中にあった。激動の時代を生きた、プリンセスたちの生涯。

■■写真が多くて読みやすくはありましたが、解説がわりと大雑把なので人物関係がかなり混乱してしまう。

2010年10月9日

読書状況 読み終わった [2010年10月9日]
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■奇妙な恋、奇妙な幸せ。いびつで切ない下宿物語。

■■一見さわやかそうに見えて、その実どろりとした人間関係を抱え込んでいる住人たちによる連作短編。透き通る湖面の奥の汚泥のような醜さが、むしろ私には面白かった。

2010年9月27日

読書状況 読み終わった [2010年9月27日]
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■14歳の少女が、友人、家族、憧れの人との関係のなかで、一つずつ自分の感情を増やしてゆく―進学や恋愛、就職の悩み…誰にでも訪れる当たり前のような出来事を、自分らしく受け止め、大人の入口に立つ23歳になるまでを丁寧に辿る。

■■思春期から大人の女性へと成長していくまでのお話。平凡ではあるけれど、その平凡さが日常を少しずつ形作っていくもので、幸せや、ちょっとした不幸せを運ぶものなのだと思う。

2010年7月5日

読書状況 読み終わった [2010年7月5日]
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■村はずれで暮らす妖鬼の皐月に、奇妙な依頼が持ち込まれた。病で死んだ酒屋の奥方の霊が屏風に宿り、夏になると屏風が喋るのだという。屏風の奥方はわがままで、家中が手を焼いている。そこで皐月に屏風の話相手をしてほしいというのだ。嫌々ながら出かけた皐月だが、次第に屏風の奥方と打ち解けるようになっていき―。しみじみと心に染みる、不思議な魅力の幻妖小説。第15回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作。

■■柔らかく優しい、そして少し切ない。妖怪をテーマにした短編集。

2010年6月29日

読書状況 読み終わった [2010年6月29日]
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■わたしの心をこんなに強くしめつける存在が。何百万遍、いってもいい。ほかに誰がいる。あのひとのほかに。苦しければ苦しいほど、わたしの心は磨かれる。注目の大型新人、初めての書き下ろし長編。

■■同性愛のお話。性的な生々しさよりも、狂気的な生々しさすさまじい。

2010年6月26日

読書状況 読み終わった [2010年6月26日]
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■小学校4年生の結仁は魔法使いになりたいと真剣に願うちょっと変わった女の子。放課後は毎日、幼なじみの史人、葵と魔法使いになるための特訓をしていた。合い言葉は、「3人の願いが叶うまで魔法使いクラブをやめてはいけない」。しかしある日、七夕の短冊にその願いを書いたことがきっかけで一瞬のうちに、クラスの笑い物になってしまう。一人だけ違う世界にはじきとばされたような、さみしくて怖い気持ちに襲われる。8年後、高校3年生になった結仁はまだ、「世界は突然自分を裏切り、はじきだす」という呪いのような記憶にしばられて生きていた-。

■■濃密。そして、青山七恵らしいお話だとも。以前は自分と合わないなぁと思ってたけど、これは面白かったです。小学生の幼馴染三人組の八年間の物語。正直成長譚とは言えない。むしろある意味退化にも近い。でも人間の成長って走ってみたり歩いてみたり、ときどき立ち止まって足踏みして、後戻りしてみたり、遅々としながら進んでいくものだと思う。終わり方がぷつんと糸が切れたみたいだったので、その後の三人がものすごく気になるところ。

2010年6月24日

読書状況 読み終わった [2010年6月24日]
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■中学1年生の海月が幼馴染の樹絵里に誘われて入部したのは「飛行クラブ」。メンバーは2年生の変人部長・神、通称カミサマをはじめとするワケあり部員たち。果たして、空に舞い上がれるか!?私たちは空が飛べる。きっと飛べる。かならず飛べる。空とぶ青春小説。

■■面白かった!いいな、青春。しかしまったく中学生らしからぬ苦労性の主人公が哀れ・・・。この子の周りにはことごとく個性的すぎる子ばかりが集まって、主人公が理不尽に振り回されるさまは・・・むしろ面白かった。コミカルな文体で、楽しめました。できればもっと長編であったらなぁと。

2010年6月22日

読書状況 読み終わった [2010年6月22日]
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■ある日萬朝報に載った『記憶に自信ある者求む』という求人広告。昔から見たものを瞬時に覚えてしまう力に長けた博一は、義父の勧めもあってその募集に応じ、見事採用となった。高い日給を受け取りながら、大学教授から記憶力の訓練を受けていた博一だが、あるときを境に急に教授と連絡が取れなくなり不安を覚える。そこで友人である高広に相談を持ちかけたところ、『赤髪連盟』に酷似したこの出来事に、礼が興味を示し-(表題作)。心優しき雑誌記者と美貌の天才絵師。ふたりの青年の出会いをはじめ、明治の世に生きる若者の姿を、人情味豊かに描いた四編を収録した短編集。好評“帝都探偵絵図”シリーズ第二弾。

■■今回は礼&高広コンビが脇に来て、ほかのキャラが主人公を。面白かった~。やわらかな文体が、なかなか掴みづらい世界観をわかりやすく表現してて読みやすい。続刊が楽しみ

2010年6月19日

読書状況 読み終わった [2010年6月19日]
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■もしあなたが世界からこぼれ落ちても、私が両手をのばして、受け止めよう-『博士の愛した数式』『ミーナの行進』の小川洋子が世界の片隅に灯りをともす、珠玉のナイン・ストーリーズ。

■■確かに夜明けの縁をうろうろとさ迷うようなお話でした。不思議で独特の世界観。

2010年6月15日

読書状況 読み終わった [2010年6月15日]
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■著者が初めて試みたエッセイと小説による短編集。平凡な日常の出来事がつむぎだすファンタジックで不思議な6つの物語。

■■作家の人って、小さな日常の出来事からこんなふうにお話を広げていくんだなぁと。っていうか、作者と同郷なので、方言がなんとも気恥しかった。

2010年6月13日

読書状況 読み終わった [2010年6月13日]
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■十一月。文化祭実行委員を務める琴葉と棚彦。本番に向けて準備が進むなか、何者かを狙って空から臼が落ちてきた。女生徒に届いたメッセージは、天使からの“殺人予告”なのか。それとも「ミス霧舎学園」を決めるエンジェルクイーンコンテストが標的なのか。学園ラブコメディーと本格ミステリーの二重奏、「霧舎が書かずに誰が書く!」“霧舎学園シリーズ”。十一月のテーマは見立て殺人。

今回はちょっとイマイチ感がぬぐえず。謎解きのシーンが二つの場面に交互にまたがっているうえに、ものすごくあさっさりと流されていくので、結局なにが言いたかったのか????状態。え?死体は出たの?出なかったの?かなり消化不良。

2010年6月13日

読書状況 読み終わった [2010年6月13日]
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■初恋に秘められた謎(ミステリ)を追え!吹奏楽の“甲子園”-普門館を目指す弱小吹奏楽部で繰り広げられるチカとハルタの名推理。『退出ゲーム』の続編にして青春ミステリの決定版。

■■退出ゲームの続編。キャラの個性がさらに増したというか、強くなったというか、よくなったというか。こんな学校あったら本当に行きたい。少しずつ増えていく吹奏楽部のメンバー。頑張ったなぁ。さらなる続編が期待できそうなので、楽しみ。

2010年6月10日

読書状況 読み終わった [2010年6月10日]
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■穂村チカ、高校一年生、廃部寸前の弱小吹奏楽部のフルート奏者。上条ハルタ、チカの幼なじみで同じく吹奏楽部のホルン奏者、完璧な外見と明晰な頭脳の持ち主。音楽教師・草壁信二郎先生の指導のもと、廃部の危機を回避すべく日々練習に励むチカとハルタだったが、変わり者の先輩や同級生のせいで、校内の難事件に次々と遭遇するはめに-。化学部から盗まれた劇薬の行方を追う「結晶泥棒」、六面全部が白いルービックキューブの謎に迫る「クロスキューブ」、演劇部と吹奏学部の即興劇対決「退出ゲーム」など、高校生ならではの謎と解決が冴える、爽やかな青春ミステリの決定版。

■■ミステリーというよりは青春小説。吹奏楽部に所属する主人公のチカと幼馴染のハルタを中心とした高校生活物語。適度にコメディあり、シリアスありで面白かったです。ただ常に最後は「良かったね」で終わってしまうような都合の良すぎるハッピーエンド感が、時々引っかかってしったのは個人的な感想。主人公初め、登場人物はみな一癖二癖はありそうな個性派ぞろいなのが、面白い。こんな学校、こんな部活なら是非わたしも参加してみたいものだ。

2010年6月8日

読書状況 読み終わった [2010年6月8日]
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■「今年で120歳」というおねえさんと出逢ったタカシは、彼女に連れられ、遠く離れた南の島で暮らすことになる。多様な声と土地の呪力にみちびかれた、めくるめく魔術的世界。

■■南の島を舞台しにした不思議な七つの物語。相変わらずの独特で不思議な世界観。いつもは和風テイストなんですが、今回は物凄く南国でした。

2010年6月7日

読書状況 読み終わった [2010年6月7日]
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