- ぼくらは都市を愛していた
- 神林長平
- 朝日新聞出版 / 2012年7月6日発売
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久々の神林長編であり、神林思弁SF全開の傑作。
帯に書いてあることは気にしなくて結構。とにかく神林神林していて、非常に心地よい。
ストーリー説明は不要でしょう。読んでください。
こんな話は神林しか書けない。
神林ファンなら狂喜乱舞できる現在の神林の到達点。
読め!
2012年9月8日
- 機龍警察自爆条項 下 (ハヤカワ文庫 JA ツ 1-4)
- 月村了衛
- 早川書房 / 2012年8月7日発売
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ストーリーをうだうだ説明する必要はない。
極上のエンターテインメントにして、警察小説、近未来SF。
前回は姿、今回はライザが主人公。次の巻はユーリだそうです。
IRFと特捜の知恵比べとそこに中国が絡んでくる。
面白い小説が読みたい人にお勧めの一作。
2012年9月6日
- 機龍警察自爆条項 上 (ハヤカワ文庫 JA ツ 1-3)
- 月村了衛
- 早川書房 / 2012年8月7日発売
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感想は下巻
2012年9月6日
- 鉄腕バーディー EVOLUTION (12) (ビッグコミックス)
- ゆうきまさみ
- 小学館 / 2012年8月30日発売
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奥の院が動き、連邦と地球が開戦一歩手前の触発状態になる。
禁書の正体が判明し、レビとバーディーは、それによって、地球とアルタ人等の関係を知る。
次が最終巻なので、話が一気に動きだしています。
はたして、つとむとバーディーの見る未来とはどのようなものか?
次が非常に楽しみです。
2012年8月30日
圧巻。
2000年代を駆け抜けた俊英伊藤計劃の残した長編のプロローグを、友人であり同時期から常に最先端を行く円城塔が書き上げた珠玉にして至高のSF。
虚実交えた登場人物たちが織りなす思考・言葉のタペストリー。
伊藤計劃の追い求めた言語や意識の問題を、やはり言語や記号を追求する円城塔が見事に再構築、『虐殺機関』『ハーモニー』だけではなく、『From the Nothing,With Love」をも包含し、円城塔がPuroject Itohの円城塔的完成形を提示した力作であり、円城塔のSF作家としての実力を見せつけた大傑作です。
もともと話に合わせて文体を変えられる円城塔ですが、ここまで押さえた筆致で書けるとは、恐ろしい才能だ。
間違いなく、今年だけでなく、オールタイムベスト級の傑作なので、読め!
そうとしかいいようがない。
2012年9月3日
- ふわふわの泉 (ハヤカワ文庫 JA ノ 3-12)
- 野尻抱介
- 早川書房 / 2012年7月24日発売
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『大風呂敷と蜘蛛の糸』や『南極のピアピア動画』につながる、技術・科学の持つ夢と宇宙へのあこがれ、それを優しい視点で描く野尻らしい作品。
夢の素材(研究所レベルでは少量の合成に成功している)の量産工業化に成功した女性の物語です。
周りの人物が優しくサポートするのもいつもどおり。
ファーストコンタクトした知性がまじめで、返答が間抜け(知性としてのあり方、思考が地球人とかけ離れている)のは、コンタクトネタをきちんと考えているからでしょう。
10年以上前に書かれたものですが、宇宙知性についてが東浩紀『火星のプリンセス』とかなり重なるのは興味深い。
SF読んでほのぼのしたい人にお勧めします。
『太陽の簒奪者』のようなハードなものも書いているので、作者に興味を持ったら、こちらも読むといいでしょう。
2012年8月26日
遠野と似た「遠乃」に囚われた佐々木喜善と伊能嘉矩。そこは未生の黙されて語られぬ物語が現に立ち上がる場所であった。
閉じこめられた二人はそれに立ち会いながら、脱出を試みる。期限は一年。
柳田国男『遠野物語』の成立に関与した実在の二人を主人公に、『遠野物語』的世界を再構築した伝奇小説の傑作。
民話や妖怪、伝承好きな人にお勧めです。
私は大好きなので、この評価になりました。
2012年8月24日
- THE FUTURE IS JAPANESE (Jコレクション)
- 伊藤計劃
- 早川書房 / 2012年7月20日発売
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日米作家の書き下ろしアンソロジー(『自生の夢』と『indifference engine』は再録)。元はアメリカ発売のものです。
アメリカ作家のはサイバーパンクの影響が強いかアニメの影響が感じられます(エウレカかと思った)。現実の日本ではなく、欧米が持つ日本のイメージの小説。日本と中国が混ざっていたり……。
日本作家のはやはり読みやすい。『自生の夢』は別格として、円城にしてはわかりやすいお得意のボーイ・ミーツ・ガールもの、
相変わらず視線が優しい小川一水、意外に正統SFの菊池秀行(上田早夕里『リリエンタールの末裔』を思い出した)と収録されています。
基本的にはSF読みにしか勧められないので、点数はちょっと辛め。
2012年8月18日
- かめくん (河出文庫)
- 北野勇作
- 河出書房新社 / 2012年8月4日発売
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北野SFの原点にして、一つの到達点であり、後の北野勇作のすべてが集約された傑作物語。
また、2000年代の日本SF復活の幕開けとなる長編の一つ。
10年ぶりの再刊で読み返したけど、10年間に北野勇作の作品をいろいろ読んだので、10年前より作品がより理解できるようになったと思う・
背景レイヤにかなりハードなSF設定があるのに、その前景レイヤに日常とノスタルジーを感じさせる風景、どこかずれているけどほのぼのとした優しい世界。
それを描き出す作者の文章が考え抜かれ、でもなんか読みやすく、擬音の巧みさもあり、淡々と進むけど奥が深い小説。
この風景がカメモリのどこかにひっそりと冬眠して、いつかかめくんが少しの懐かしさとともに夢でもいいから思い出してくれることを思いながら、ラストでまた少しく泣いた。
とにかく読んで欲しい、かめくんのお話です。
2012年8月10日
- OUT OF CONTROL (ハヤカワ文庫 JA ウ 1-12)
- 冲方丁
- 早川書房 / 2012年7月20日発売
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『天地明察』の原型中編が収録されています。おしどり夫婦は描かれていません。登場人物が少ないので、こちらの方が改暦話としてはわかりやすいかもしれません。
あとはオーソドックスなホラーがほとんどです。
作者の投影なのか、ぴりぴりとした焦燥感が漂っているのも特徴です。
冲方丁の別の面を知るには良い中編集だと思います。
2012年8月3日
- 拡張幻想 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)
- 大森 望
- 東京創元社 / 2012年6月28日発売
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3.11、はやぶさ、小松左京逝去、伊藤計劃へのオマージュが多い2011年年のSFベスト短編集。円城、神林、小川一水、伴名は読んでいたのでさらりと再読という感じだった。
大西科学は小林泰三の傑作短編を思い出しました。
今回の収穫は、<すべての夢|果てる地で>。イーガンや山田正紀を彷彿とさせるスピード感とタームにあふれるアクション巨編。間違いなく長編のネタでしょうが、よくここまで切り詰めたものだ。あのオチはやはりあの巨星へのものでしょうね。
とり・みきはこの作者だからこそ描ける話。さらりと凄い。
宮内のバカSFミステリもおもしろかった。
どこから読んでも充実したアンソロジー。堪能しました。
2012年7月31日
- NOVA 8 ---書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫)
- 山田正紀
- 河出書房新社 / 2012年7月5日発売
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今回はSF色が濃すぎ ワーイヽ(゚∀゚)メ(゚∀゚)メ(゚∀゚)ノワーイ
『雲のなかの悪魔』を筆頭に『#銀の匙』『曠野にて』、『オールトの天使』『大卒ポンプ』とファンタジー色の強い『落としもの』(これは連作にしてますむらひろしの絵で見たい)。
『雲のなかの悪魔』が往年の山田節全開でもう圧倒されるされる。SF的タームを生のままぶちまけているのも、らしい。『最後の敵』『神獣聖戦』『崑崙遊撃隊』等々の発想もぶち込んだ、山田宇宙SF。パノプティコンは『虚無回廊』のSSへのオマージュか。
飛浩隆は、ドリスの物語としてこれを書き継いで欲しいなぁ。
北野勇作は、相変わらず北野勇作的SF。根底にあるSF的設定をあえて描写しないで、文章で世界を作る職人芸。流石です。
東浩紀のはちょっと待たされすぎたかな。ただ人類以外の知性が山田正紀とほぼ同じ結論なのが興味深い。東は「魂」、山田は「クオリア」と言葉は違うけど。
バカSFとかホラーもあるし、読み応え十分の一冊です。
2012年7月23日
- 天冥の標6 宿怨 PART1 (ハヤカワ文庫JA)
- 小川一水
- 早川書房 / 2012年5月10日発売
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Ⅰ、Ⅱで見知った名前がぽろぽろ出てくるんで、巻末に年表等がついていてよかった。
評価は続きを読んでからにします。
2012年6月27日
- 惨劇アルバム (光文社文庫 こ 37-2)
- 小林泰三
- 光文社 / 2012年5月10日発売
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相変わらず日常から一歩ずれた「狂気」を描くとうまい。
書き下ろしの連作中編で、崩壊した家庭を書いています。
オチはちょっと予想がつかなかった。
傑作というよりは佳編でしょうか。
そろそろ計算するSFを書いて欲しいなぁ。
2012年6月19日
- サイバラバ-ド・デイズ (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5003)
- イアン・マクドナルド
- 早川書房 / 2012年4月15日発売
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本当は★3.5くらい。
「Days」というだけあって、近未来、分裂後のインドの日々を描いています。共通するアイテムはパーマとホーク。
最初の数編は事件らしい事件は起きません。
『小さき女神』『ジンの花嫁』で盛り上がり、最後のいっぺんで近未来インドの歴史を俯瞰するという構成です。
大きな事件が起こるのを期待して読むと肩透かしですが、日常を描く佳品としてお勧めできます。
2012年6月18日
- 猿猴 (講談社文庫)
- 田中啓文
- 講談社 / 2012年5月15日発売
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ミステリ、人情物とともに田中啓文得意の伝奇小説。SFもすばらしいのですが作者がてれるのか、遊びと駄洒落が満載で、凄い設定を破壊しまくるので万人にはお勧めできないかな。
伝奇小説は『郭公の盤』(合作ですが)以来。日本神話とUMA。謎の狂信集団を配し、田中啓文の巧みなストーリー展開で、正統派伝奇小説として仕上がっています。
ただし、作者は最後の2ページを書きたかったんだろうと思う。
そこから出発して、その前の伝奇小説部分を仕上げるのは流石です。
2012年6月3日
- Delivery (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
- 八杉将司
- 早川書房 / 2012年5月24日発売
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SFだからこそ描ける、SFでしか描けない、崩壊と喪失、創造と誕生と転生の物語。
とかいっても、決して観念的な話ではなく、スーパーディザスター後の地球と月を舞台に、ノンオリジンの主人公が「一つの頭脳」を追いかける活劇が大半です。
ラストは小松左京か山田正紀かと思わせます。
本年度SF小説で、1,2を争う傑作でしょう。SF好きは読みましょう。
2012年6月3日
最後の幸村の言葉は『神獣聖戦』のある作品のラストを思い出させます。
幸村ということで、血湧き肉躍る話を期待すると拍子抜けするでしょう。合戦部分はばっさり切り落としてるし。
描かれるのは、戦国乱世の終焉に立ち会う天才軍配師の才を持った人間の物語とでも言うべきか。乱世の軍配師のように、人であり神であり魔となる才がありながら、最後まで人であった男の話。
その一生を常に神の視点から見つめる鷹。山田正紀ですから、神は見てるだけで何もしてくれないけど。
講談とか風太郎ばりの小説書けるのに、あえてそれを避けて淡々と語っているのが逆に新鮮。
もっともいろいろニヤっとする仕掛けが潜んでいますけどね。
2012年5月30日
- ファイナル・オペラ (ミステリ・ワールド)
- 山田正紀
- 早川書房 / 2012年3月23日発売
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現実と幻実の狭間をゆらゆらと生きる語り手。能の幽玄世界を体現したような花科の一人称で語られる物語。
幻想と本格推理とSF的なものまで包含し、それをまとめ上げ、力でねじ伏せながら、しかし読みやすい、奇跡のような一つの小説。
と、書いてみたけどうまく説明できない。推理と幻想の危ういバランスが崩壊していない小説。お勧めです。
推理合戦とか本当の犯人は『虚無への供物』へのオマージュでしょう。
現実とうまくコミットできない花科が語り手なので、検閲図書館も現実なのか幻なのか……不安定です。
八王子空襲の文章は山田節全開。それ以外でも山田正紀の過去作品を思わせる部分もある。
そして……『50億ドルの遺産』か『ロシアンルーレット』のような……。山田正紀はたまにこういう話を書くから油断できない。
2012年5月27日
- 幽女の如き怨むもの (ミステリー・リーグ)
- 三津田信三
- 原書房 / 2012年4月1日発売
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短編では結構あったのだけど、長編で刀城が現実の事件だけ解いて、謎は謎のままにしておくというのは珍しいかもしれない。
手記、聞き書き、作家の連載と3人の視点から書いて、最後に刀城がまとめて謎を解くという構成は本格の王道でしょうね。
とにかく読みやすいし、シリーズの中でこれから読んでも問題はないので、読むことをお勧めします。
表紙もきれい怖いし ヽ(゚∀゚)ノ
2012年5月21日
- The Indifference Engine (ハヤカワ文庫 JA イ 7-3)
- 伊藤計劃
- 早川書房 / 2012年3月9日発売
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全部読んでいたのですが、小説と漫画だけまとめると、伊藤計劃の進化・深化がよくわかる。
007へのオマージュ作品と『屍者の帝国』が時代は違うけど、『ハーモニー』の後の話みたいになるんだろうなぁ、とは思うのですが、もう本人の手では書かれない 。゜(゚´Д`゚)゜。
円城が書く『屍者の帝国』がどうなるか楽しみだ。
2012年5月21日
- 星を継ぐもの (3) (ビッグコミックススペシャル)
- 星野之宣
- 小学館 / 2012年4月27日発売
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3部作全部放り込むつもりかな。というか放り込むき満々だろう (゚∀゚)
さすが星野之宣。はっきり言って、ホーガンの原作をうまく租借していて、読みやすい一級のエンターテインメントにし、ホーガンよりわかりやすい。
ホーガン生きていたら、きっとまた褒められるに違いない。
2012年5月21日
- 鉄腕バーディー EVOLUTION (11) (ビッグコミックス)
- ゆうきまさみ
- 小学館 / 2012年4月27日発売
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前巻で一つの区切りがついているので、この巻から新しいエピソード開始という感じか。
話のスケールが大きくなってきているのですが、まだ序盤と言うことで、今後どんな力業で伏線や謎を解いていくか楽しみ。
2012年5月21日
- いま集合的無意識を、 (ハヤカワ文庫 JA カ 3-45)
- 神林長平
- 早川書房 / 2012年3月9日発売
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表題作を読んで思ったのだけど、神林の考えている無意識と、伊藤計劃の無意識って微妙に違うと思う。
前者は集合知とでもいうか(媒体は何であれ)多数に形作られる意識されざる意識。後者はそれさえもぶっ壊して、voidになってしまい、人という器だけが共有されてしまう(意識自体存在しない)無意識。
意識や知性、実在、それを裏付ける言葉に真っ向から挑んでいる神林と、それをぶっ壊すところから始める伊藤計劃。
たどり着くのは同じところだったのかもしれない。
表題作以外では、雪風のスピンアウトや「七胴落とし」を代表とする子供の話などバラエティに富んでいます。
そろそろ長編も書いて欲しいなぁ。
2012年5月21日