蹴りたい背中

著者 :
  • 河出書房新社
3.07
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  • Amazon.co.jp ・本 (140ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309015705

感想・レビュー・書評

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  • 綿矢りさすごいなあ

  • ブクログ談話室で、出だしが印象的だということで紹介を頂いたので読んでみました。

    もう何年も前になりますが、十代で文学賞を取ったということで話題になりましたね、この作者。

    文学的評価はよく分かりませんが、でもやっぱり文章うまいなと感じます。これを書いた段階でも十代やそこらだったと思いますが、同じ物書きとしてちょっと嫉妬しますね。

    ストーリーは、他人に馴染めない上に孤独癖があるツンデレ女子高生。なんてことはないきっかけで、クラスメイトのミーハーオタク男子と仲良くなります。

    二人の間には奇妙な友情が(たぶん)あるのですが、男子の方はグラビアアイドルのおっかけに余念がありません。一方、主人公の女子は、おそらく彼とそれ以上の心の結びつきを求めている(安直に恋心とかではなく)のですが、二人は全然「進展」がないんですね。

    それで、まあ、主人公はその男子の背中をやたらと蹴りたくなると。ツンデレ女子高生の、人間関係に対するねじくれた心境が「蹴りたい」という気持ちに表れていますね。

    文学作品と思って肩肘張って読むと、肩透かしをくらいそうな、意外な軽さです。二人の関係もなんだか微笑ましく感じられて、僕は好きですよ。

    続編はあるのでしょうか。二人の関係がその後どうなったのかが気になります。

  • 学生時代の記憶が呼び起こされる。同い年とはいえ、無作為に選ばれたような集団の中で過ごす息苦しさは自分を惨めにする。これを読んだ後に『けいおん!』とか観るとマジでふぁんたじーな世界だと分かる。もう女子高生の日常系アニメとか観れないわ。

  • オタクの話でも読んでいるとのめりこんでしまう。おもしろい!

  • 「蹴りたい」と表現した彼女は凄い。

  • 抱きつきたいでも殴りたいでもなく、蹴りたいというのがいい!気になる人への狂暴な恋情をとっても的確に秀逸な表現で描いていると思う。綿谷さんは女性特有の歪みや醜さをよく理解されていると感じる。

  • 最年少の芥川賞受賞。ブックオフで100円。そんな理由で買ったまま部屋のすみに長い間置いてあったこの本をついに読んだ。面白かった。学生の頃を思いだした。グループというものにうまく所属できなかったときの自分、長く感じた10分休憩などなど。青春と呼ばれる時期。光り輝いているぶん、闇も濃い。

  • 多分これが青春。
    「爽やか」の気配くらいはあるけど、基本的にはうまくいかなくて恥ずかしくて強がって、そういう死にたくなる類の、ある種のかわいらしさ。

    今回は再読。
    初めて読んだのは多分高校生の時で、震える程共感して、涙まで流して読んだ大切な本だったはずなのに、今読んでみたら思ったより普通だった。
    ただ心にぼんやり愛情のような虚しさのようなでも充実したなにかが残ったのは同じだ。
    あの頃世界だったものが過去になったから、渦中にいないから、こんなに冷静に読めてしまったのかな。
    歳をとるってこういうことかな。今しか感じられないことをもっと感じたい。

  • 当初の個人的な意見としては、感情移入が難しく読みづらい本、でした。読んだ当時はまだ中学生だったと思いますが、やはりこれは大人になってから読むと感想が変わりますね。精神的に不安定な思春期の少女の内面を、全体を通してよく描けていると思います。
    ただ、蹴りたい背中という主題の意味はラストでわかるのですが、それにしてもオチが弱いような。しかし余韻が心地よいです。
    キャラの変態性も好きです。
    また、文章の運び方が良いですね。言葉選びが僕好みです。

  • 授業で一部分だけ取り上げられたので興味をもって読んでみました。

    とってもリアルな文章でした。実際にここまで難しい考え方をするかどうかはわかりませんが。
    芥川賞とはいえ若い人が書いてるというのでどんなものかなーと思って読んでみたら、他の著名な文学作品と比べても遜色ないれっきとした文学作品でした。さすが芥川賞!

    でもテーマとかがふわっとしてて、何について書いているのかがわからなかったです。それが狙い?
    「!?」が使われてるのもなんだかなぁ…若者らしくて良いのかな?

    でも、授業で組分けするときの様子とかリアルでした。お気に入りのシーン。

  • 主人公と一人の男の子の高校生活での日々の生活を通して
    描いている作品。「蹴りたい背中」という意味がよくわかる。

    【宮崎大学】P.N:M.O

  • ずっと読みたかったけれどハードカバーは買わない主義の私。
    しかしふいに立ち読みしたら続きが気になって気になって、
    結局3回ほどの立ち読みにて読了しました。
    綿矢さんは文章が上手だと思う。
    使う言い回しや選ぶ言葉が本当に面白い。
    たびたび「はわ~」って感心させられるほどの上手さ。
    主人公の気持ちもとてもわかる気がして、親近感が沸きました。
    ううん、うまいなぁ。

  • 当時最年少で賞を取った人の有名な本。
    当時はどっこでも売られていたなあ~
    とりあえず図書館にあったので読んでみました。

    感想は。…あまり良く分からかった、と言うのが本当です。
    自分が高校とか学校からはなれちゃって大分経つからかもしれませんけれども。ただ、意固地になるために意固地になっているのか孤独になりたくないために孤独な状況に自分を追いやっているのか選んでいるつもりで選ばれてしまっているのか。そんな状況はなんとなく分かる気がします。恋愛感情ではないと本人だけが否定している異性への感情とかも。

    ただ主人公みたいな子は付き合いずらいだろうなあ、と思います。まあ自分にも少なからずこんなところがあるから苦手意識を持つのでしょうが。同属嫌悪、なんでしょうね。

  • 普通に読めば、「グループづきあいに嫌気がさした女の子が、外れ者としてやってくけど、毎日周囲をバカにする一方劣等感も抱えている日々。ところが自分よりもっと外れたアイドルおたくのクラスメートとの交流のなかで、憎らしさとほのかないとおしさ?も交えた感情を抱き始め……」
    って話に読めますし、この本が刊行されたときの、中学生の私はそのとおり読んで「くだんない!これが芥川賞かよ」と思った。
    けど、今読み返してみると、この本。
    主人公に「蹴りたい」と思われ続けるアイドルおたくの男は主人公の自己愛と自己嫌悪の投影対象としての役割を担ってるんですね。それを書きすぎずに、主人公へ自分自身のゆがんだ思いの自覚も促さず、書かないことでこの作品を「文学」たらしめてい力量はさすが。やっぱりあの若さでそんな巧みな小説の構造をする綿谷りささんは、十分に芥川賞に値する

  • おもしろいくらい癖になって、何度も繰り返し読んだのはいい思い出。

  • 2010年12冊目。
    140頁。

    ブックオフで購入。


    ---あらすじ---
     愛しいよりも、いじめたいよりも、
    もっと乱暴な、この気持ち。
     高校に入ったばかりの“にな川”と“ハツ”はクラスの余り者同士。
     臆病ゆえに孤独な二人の関係のゆくえは・・・・・・




     高校時代、現代文の問題集に本書の冒頭部が載っていて、それを読んで以来いつか読んでみようと思いながら、なんとなく読んでいなかった本書。結局、“夢を与える”を先に読んでしまった。
     思春期特有の、素直になれない感じというか、大人と子供を行き来している感じというか、そういう心情が上手く表現されているように感じた。“泥臭く幼い”というのが、ハツにもにな川にも一番よく当てはまる表現なのかもしれない。




    p.3
     葉緑体?オオカナダモ?ハッ。っていうこのスタンス。あなたたちは微生物を見てはしゃいでいるみたいですけど(苦笑)、私はちょっと遠慮しておく、だってもう高校生だし。ま、あなたたちを横目で見ながらプリントでも千切ってますよ、気怠く。っていうこのスタンス。

    p.4
     高校に入学してからまだ二ヶ月しか経っていないこの六月の時点で、クラスの交友関係を相関図にして書けるのは、きっと私くらいだろう。当の自分は相関図の枠外にいるというのに。

    p.60
     この、もの哀しく丸まった、無防備な背中を蹴りたい。痛がるにな川を見たい。いきなり咲いたまっさらな欲望は、閃光のようで、一瞬目が眩んだ。

    p.66
     カーテンの外側の教室は騒がしいけれど、ここ、カーテンの内側では、私のプラスチックの箸が弁当箱に当たる、かちゃかちゃという幼稚な音だけが響く。

    p.64
     かくれてねむる。

    p.64
     幼い人、上手に幼い人。そして彼女の前にいた泥臭く幼い私。

    p.68
     教室での私と彼の間には、なぜか、同じ極の磁石が反発し合っているような距離がある。

    p.121
     ぞっとした。好き、という言葉と、今自分がにな川に対して抱いている感情との落差にぞっとした。

  • これを読んだのは高校三年生の時、今からだいたい四年ほど前のことです。
    過去にさかのぼってレビュー・感想を書こうと思ったのは、先日「蛇にピアス」を読んだため。

    ※記憶をほじっています。

    既存の作家さんとかぶるような部分もあって、まだどことなく稚拙な感じもするんだけれど、蹴りたい背中、というタイトルが表したかった物は何となく感じ取れた。

    最後に彼女が蹴ろうとしたのはにな川の背中だったが、にな川に感じたもどかしさ以上に、彼女は自分自身に対してもどかしさを感じていたのではないだろうかと思う。
    にな川はアイドルオタクと言うにはぬるい情熱しか持っていないが、彼女はそれ以上にぬるい物しか持っていない。

    蛇にピアスが不良の子の話という毛色なら、蹴りたい背中は普通の子の話という毛色だろう。中にある物は別としてふたつが読者に提供するインパクトはそのような感じだと思う。
    蛇にピアスと併せて感じたことは、選考員はこの時代の若い書き手が持っていた、高温な情熱よりも低温な情熱を評価したのではないかと言うこと。

  •  クラスの余り者、つまりいじめられているわけではないけれど、特定のグループに入っているわけでもない、そんな高校1年生の長谷川初実(ハツ)が、同じく余り者で「オリチャン」というモデルの熱狂的ファンである、にな川に抱く感情。にな川という人物、ただ「オリチャン」を追いかけるオタクならまだいいのですが。正直、頭の中には「変態」とか「異常性癖」という言葉が浮かんできました。まあ、変態とオタクの境目がどこにあるのかは解りませんが。
     ハツは彼の背中を“蹴りたい”という、強い衝動に駆られるのです。その気持ちは、解るような解らないような。実際に自分がそんな衝動に駆られたことはありませんが、にな川のような人物がそばにいたら、肘鉄くらい食らわしてやりたくなるかも。

  • 作中の中では、蹴りたい背中とはにな川のことを指しているが、実は本当に蹴りたくなる背中とは主人公だという・・・。少なくとも私にはそう感じられた。

  • 主人公ハツの感情はよくわかる。そうそう、こういう気持ちになるんだよね、思春期の頃は。
    それを小説という形で表現できたことに価値があると思う。
    そしてその繊細で、研ぎ澄まされた感性は、もっと大人になっても小さなかけらとなって持ち続けているんだよ。それを思い出させてくれた。
    芥川賞の選考委員もそこを評価したのでしょう。でも受賞が重荷になりませんように‥。
    文章のつなげ方やニュアンスが太宰治の「女生徒」を思い出させる。
    未読の方は合わせて読んでみるといいかもしれません。
    初版時に読了。

  • 病んでた頃に読了。これを読んで、少し泣いた。

  • 10代で書いたのがすごいが、10代でしか書けなさそうなリアルな痛々しさがあるなあ、絹代ちゃんがいい子なのが救い

  • 誰しもが持っている言葉にし難い暴力性を掴まれる気がした。分かるよ。

  • 再読。図書館本。

    書き出しから文章のきれいさに感動。
    日常を細かく観察した描写がすごい。

  • ▼福岡県立大学附属図書館の所蔵はこちらです
    https://library.fukuoka-pu.ac.jp/opac/volume/103184

  • やっぱり綿谷さんの小説は面白い。比喩表現がほんとうに上手くて、話の臨場感を引き立てている。
    若い女の子の歪な恋?の形がとても可愛いし、なんともいえない妖艶さがある。愛と憎しみは紙一重と言われるけど、この場合愛しさと虐めたくなる感情の一重さがとても胸をうつ感じがあった。

    高校での息苦しさとか、一人でいる時に感じる孤独の虚しさのような感情をリアルに表現していて、人間関係の難しさや面倒くささを感じた。オリちゃんというにな川の好きなモデルと、冴えない高校生2人の対比が、切なくなるほどだけど、それがにな川の抱くマイナスな感情につながることを主人公ハツは知りいじめたくなる……。ハツのにな川への感情、私は好きだし、分かってしまうかも。
    途中の、「ひとにしてあげたいことは何一つないのに、されたいことばっかりだ」っていうところが、どうしようもなく一人になっている子の本音だよなぁ。好きで一人でいるって強がっても、結局ひとに囲まれて、自分が承認されたらずるずると人間関係の糸に絡まってくんだ。
    ハツの強がりも、本心もあってだと思うけど、ずっと人と話さないと、考えがどんどんひねくれてしまう気もする。その考えが的を射てるときももちろんあるけど。惨めだな…。それでも、「取り残された2人」が歪ではあるかもしれないけど人間関係を築けているのは、救い。
    学校で特有のどうしようもないひねくれと、本心と、恋愛対象とみているか分からないけど確実に他の人とはちがう感情を抱いている相手とのお話。高校とか中学だから起こる話でもあると思った。
    ハマってはいけないようなものにハマっていく感じ…好きなんだよな

  • クラスで浮いている女子高生のハツが主人公。同じように浮いているにな川と、モデルのオリチャンをきっかけに関わるようになるが、、

    学生の時のこのモヤモヤした気持ち、久々に思い出した。今みたいに要領よく人と関われなくて、1人で寂しいだけなのにそんな自分を正当化して他人を見下して。
    にな川は同じように浮いてるのにそんなことに囚われてなくて、彼の世界にハツはいなくて、それに対して嫉妬して見下して傷つけたくなって。

    あと10分休みの長さね!しんどいよね~~。話すこともないのに友達のとこ行ってたな…浮いてると思われたくなくて。

    人にやって欲しいことは沢山あるのに、人にやってあげたいことは何も無い。わかりすぎる。
    わたしがもっと不器用だったらハツみたいになってたな。そして絹代いい人すぎる。

    相変わらず表現が多彩で面白かった。

  • モヤモヤする。モヤモヤが最後まで解決しないところもリアル。高校生の、自分でも自分の感情が上手く整理できない感じ。大人になってやっと整理できる感じが懐かしくもあり、でもやっぱり若さゆえの歪んだ感情が面白かった!
    でもやっぱりスッキリしない感じが心にモヤモヤを残してる

  • 綿矢りさの中では普通な方

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著者プロフィール

小説家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

綿矢りさの作品

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