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朽ちる散る落ちる (講談社文庫)
- 森博嗣
- 講談社 / 2005年7月15日発売
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舞台は「六人の超音波科学者」でも出てくる研究所。
あの作品を読んだ時、あれだけ地下室の存在を匂わせておいて終わり方があんなもんなのかと思っていたけれども、それは今作に繋がるということだったのね。
解説の方が書いていらっしゃったが、このシリーズに限らず森ミステリィのシリーズは単品で完結するものではないのだと改めて感じた。
終了はするんだけれども、以前の作品の所々に潜まれた伏線が(伏線と思っていなかったものも含める)、後の作品にて少しずつ少しずつ見えてくる…このワクワクは森ミステリィファンには堪らない。
今回の舞台である宇宙と地下、まさか繋がりがない訳にだろうと思っていたけれど、そうやって繋がっていたのか。途中から薄々と感づいてはいたが、本当にそうだとは思わなかった。
作品のタイトル「朽ちる散る落ちる」
これは今回のミステリィを如実に表していたのね。
最後に、私には林さんの魅力がさっぱり分かりません。
これは、いつか分かる時が来るのかしら…
2015年6月27日
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花酔いロジック 坂月蝶子の謎と酔理 (角川文庫)
- 森晶麿
- KADOKAWA/角川書店 / 2015年5月23日発売
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「名無しの蝶は、まだ酔わない 戸山大学〈スイ研〉の謎と酔理」の改題での文庫版。
続編が出る事も相まって復習がてらと。
改めて読んで感じた事は、
「人生酔っぱらって何が悪い」
人は様々なことに酔うように、酔うにも理由があったりする。何も考えてないようで、悩みがあるかもしれない。
青春って青い春って書くように、悩んだり遊んだり、時には記憶がなくなるほど酔ったりと大人になり切れてないからこそ青臭くて良いんだよ。
まだまだ未熟で何にもなれていない彼らが今後どのように成長し、何に酔うのか、続編が楽しみである。
再読して何となく感じたのが、酔研にいることを足踏みしていると言い表したこと。
「恋路ヶ島サービスエリアとその夜の獣たち」のサービスエリアが小休止であるっていう表現と何か繋がるっていうか、連想してしまった。
2015年6月12日
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黒猫の刹那あるいは卒論指導 (ハヤカワ文庫 JA モ 5-2)
- 森晶麿
- 早川書房 / 2013年11月7日発売
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付き人がまだ研究に迷いがあった時の(そっとであるかは疑問だが)助言をくれた黒猫とそんな彼女が少し成長するまでが描かれている。
大学時代は勉学も然り、就職についても多いに悩む時期だったのを覚えている。そんな中自分が知らなかった世界を見せてくれる、考えるきっかけをくれる、そんな人が現れたらどんなに良いだろう。
考えたり悩んだりする時間は後にして思えば、一瞬で、本当に刹那といえる時間なのかもしれない。
そんな中、一生懸命になる私達は未熟で恋も愛もまだまだ。
そんなジリジリし始める黒猫と付き人の始まりの物語。
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四季彩のサロメまたは背徳の省察
- 森晶麿
- 早川書房 / 2015年4月22日発売
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初めの一頁読んだだけでこれは外で読むべきものではないと少しの背徳感を覚えた。
どう考えても高校生とはとても思えない彼の風貌や言動、ましてや学び舎で行われているとは到底考えられない行為の数々。筆者の以前の著書を読んでいる私には、今までの作品とは全くの別世界が広がっているのではないかと感じたほどだ。
別世界と感じた本書もやはり根底には著者らしさが感じられたように思う。淫靡で官能的でありながらも、「美」があるのだ。エロスは卑猥ではなく、そこに美しさが伴う。だからこそ美は芸術品として残されるのだろう。
彼は大人びていて、女を知り尽くしていて「歩く女百科全書」と呼ばれている。しかし、そんな彼も春夏秋冬を通して女の一面を知ってやはり高校生であったのだとある意味安心した。
彼は女の美しさ、可愛らしさ、醜さ、嫉妬深さも思い知る一年で青年期を越して大人になる。
女というものを知った彼は女を愛する事ができるのだろうか。
男性諸君、女は皆可愛く美しいだけではない。
薔薇に刺があり、綺麗なものに毒があるように
女性は皆「サロメ」なのだ。
2015年月
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捩れ屋敷の利鈍 (講談社文庫)
- 森博嗣
- 講談社 / 2005年3月15日発売
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萌絵が!
それだけでも興奮ものですが、紅子が林を待つように、犀川先生が出てくるのかしらとそわそわして読み進める私がいた。電話越しでも彼らの掛け合いを久々に聞けたのはとても嬉しかった。
掛け合いと言えば、保呂草と萌絵。
Vシリーズを読み進めていたから最初は紅子に、しこさんとれんちゃんがいないのが寂しかったが、それはそれ、これはこれ。Vシリーズにはない若さと(紅子も十分若い。若いのは承知しているが落ち着いてる様からいうと萌絵のが若い印象であるのは当然だろう)エネルギッシュさと聡明さを兼ね備えた女性と対する保呂草を見てるのがとても面白かった。
ミステリーでトリックの巧みさを森作品に求めてないとはいえ、エンジェル・マヌーヴァの盗んだ方法については、何だかなあと思ってしまったのは事実。
皆が気になる紅子と萌絵の関係性。
保呂草が今作を通じていっているように「彼女らは良く似ていて、共通点が多い」その辺りにその謎があるのではないか。それを読者がこの先知る事が出来るのか…
人の欲望は尽きないからこそ、私は次作も読み続けるだろう。
2015年4月20日
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六人の超音波科学者 (講談社文庫)
- 森博嗣
- 講談社 / 2004年11月16日発売
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Vシリーズ7作目。
個人的な事だがVシリーズをここまで来るのにどれだけかかっているんだと自分につっこんでしまう。
他の作家やシリーズに寄り道寄り道、紅子と七夏の対立に勝手にどきどきハラハラして少しの間敬遠してしまったり。その辺りを楽しんで読めないあたり、私は凡人だと本当に痛感する。
今回のトリックは、とても分かりやすかった。
読み進めるにつれ、本のタイトルから連想しやすかった様な気がする。トリックの一つの要因が何とも凡人らしいというか世俗的という風に感じた。今までの殺害動機(S&Mシリーズを含む)は超人的で、社会として世間一般では理解出来ない様な事が多かった印象だが、今回は層でもない様な気がする。
所詮、科学者も超人的でないところを持ち合わせているという事か。
人間というのは方法がある場合、多少困難でもその方法を使う。それ以外の方法を考えない。
本当その通りだよなあ。それしか目に入らず、なんとかして困難を乗り越えようとする。考えて新たな方法が発見出来れば、その方が簡単かもしれない…
最後に、あんなに優雅でお人形さんみたいなのに、ちくしょう!っていう紅子さんが本当に愛おしい。
2015年4月7日
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黒猫の薔薇あるいは時間飛行 (ハヤカワ文庫 JA モ 5-4)
- 森晶麿
- 早川書房 / 2015年1月23日発売
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仏と日本、環境が違う二つのカップルの恋。
一見全く関係なさそうなことがある一人の人物が共通点となり交錯する。
片や終わったと思っていた恋が時間をかけ実るが、片や終わりを迎え形を変える恋。
恋にはタイミングが殊に重要なのだと改めて思った。
実ろうが実らなかろうが、「いま」を生きていてその中にはかつての時間を感じる事ができ、二人の時間もそこにはあるのである。
恋はある世界では終わり、ある世界では終わらない。
自分が生きている世界、感じている世界ではどちらになるのだろうか。終わろうが終わらなかろうが二人の世界は私の中で生き続けるのだろう。
今離ればなれになっている彼らはどうなるのだろうか。
彼女の気持ちは決まり、もう逃げ出さないらしい。
どうか終わらない世界でありますように。
2015年3月24日
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珈琲店タレーランの事件簿 4 ブレイクは五種類のフレーバーで (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
- 岡崎琢磨
- 宝島社 / 2015年2月5日発売
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タレーランの新作。
久々に短編、とても良かったと思う。ここ2作ぐらいはずっと長編で一冊通してすべて話や謎が繋がっているというのも読み応えがあるが、短編で少しずつという原点回帰している方が私は好きかもしれない。
また、いつもは常連客であるアオヤマが一人称で進んでいく話が今回は各話の主人公の一人称で進んでいくのがいつもと違って良かった。
舞台である珈琲店タレーランと関連している話達という位置づけなのかもしれないが、他の方のレビューでも見たが、あまり珈琲と関連していないこともあるのでそこは小話と言えど珈琲に関する話に徹底して欲しかったというのも同感だなと思った。
2015年3月14日
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香彩七色 ~香りの秘密に耳を澄まして~ (メディアワークス文庫)
- 浅葉なつ
- KADOKAWA / 2013年6月25日発売
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香りにまつわるお話、ミステリ仕立てとのことで気になって購入。
男女のバディもの、一方は専門家並みの知識を持ち、一方は素人というのは最近の流行なんだろうと思う。
ストーリーとしては明解でテンポ良く読めたのがよかったなあと。
ただ、香りをテーマにした小説なら、もっと深い何か専門的なことが関わってくる方が良かったのではと思うのは私だけではないはず。ライトノベルとして、香りの世界を覗く入門としては丁度良いように思う。
現在続刊がないようだが、続刊が出るならば今後の展開次第ではもっと面白くなるのではないかなと思う。
2015年3月2日
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恋路ヶ島サービスエリアとその夜の獣たち
- 森晶麿
- 講談社 / 2015年1月21日発売
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SAは通過点に過ぎず、小休止が人生において特別なものでもない。それが拝読する前の印象だし、大半の人も同意見だと思う。ところが一転、小休止を侮る事なかれ。SAであんな事が起きるなんて誰が予想しただろうか。
小説の中の出来事に過ぎないかもしれない。でも現実にあんな事が起きないとも限らないと思う。大事件ではなくても、ちょっとした小休止で人生が変わるかもしれない。
「口笛が聴こえる夜は何かあるかも」
そう考えるだけでワクワクどきどきすること間違いなし!
2015年2月17日
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ビブリア古書堂の事件手帖 (6) ~栞子さんと巡るさだめ~ (メディアワークス文庫)
- 三上延
- KADOKAWA / 2014年12月25日発売
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2015年1月15日
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かぜまち美術館の謎便り
- 森晶麿
- 新潮社 / 2014年11月21日発売
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名画の解釈を小説内の絵画や環境に置き換えることで、謎が解決していく。そのような目線で名画を見ていなかったから、その解釈が斬新で興味深いものだった。
町の人なんていない。
そんな風に考えたことなかった。
人がいなければ町は風化していくものだけれども、ずっと人がいる訳でもない。人だって流れるもの。
風のように、緩やかに流れ着くものもあれば、すぐに去ってしまうものもある。そこに留まるものもいる。
人は風の様なものだから、誰の目線だって気にしなくていいんだ。ただ、必死に生きればいいんだ。
ヒカリくんは佐久間のように、カホリのように、絵画を通して町の人にもそうだったように、私にも人のあり方を、生き方を変えさせてくれたような気がする。
すべては赴くままに。
最後は切なくなったけれど、これもまた淀んでいた風が
次の場所を求めて流れた証拠だろうね。
2014年12月26日
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名無しの蝶は、まだ酔わない 戸山大学〈スイ研〉の謎と酔理 (単行本)
- 森晶麿
- KADOKAWA/角川書店 / 2013年12月25日発売
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2014年12月4日
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ラブコメ今昔 (角川文庫)
- 有川浩
- 角川書店(角川グループパブリッシング) / 2012年6月22日発売
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自衛隊員の恋愛模様を描いた第二弾。
他の方が言っているように自衛隊を描いた小説は数多あっても彼らの恋愛を題材にした小説は少ないと思う。
第一弾である「クジラの彼」が思いのほかハマったので、今作も購入。
有川浩の作品の良さは、すらすらとテンポ良く読める点だと思う。内容が薄いとかいうことではない。大人向けのライトノベル作家と自称しているようにドラマや漫画を読んでいる様に感じながらも、それでいて、ただ軽い訳ではなく考えされる面もある。
タイトルにラブコメとあるように、女子なら誰でもきゅんきゅんする話が詰まっている今作も、ただの恋愛小説として面白いと思うだけではない。
それは、自衛隊員の恋愛模様だから。
この小説はノンフィクションではないけれど、この小説を通して今まで関わりがなかった、興味もなかった人に彼らの仕事は如何なるものか、使命とは、彼らの持つプライドについて知るきっかけになったのではないかなと思う。
個人的には、「軍事とヲタクと彼」、「秘め事」がお気に入りでした。
また、第三弾が出ることを期待して…
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魔剣天翔 Cockpit on Knife Edge (講談社文庫)
- 森博嗣
- 講談社 / 2003年11月14日発売
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トリックは相も変わらず騙されました。
私は国文学科じゃないけれど、特に理系は弱い方で、部品についてなんて名前や用途すら知らない。ましてや家のどこにあるのかすら未だ知らない。
だから、解いたというよりは、漠然とした感情で犯人はこの人かなーとしか思えなかった。
私自身はミステリのトリック云々よりも森博嗣作品の醸し出す美しさが好きで読んでいる様なものだから、別に良いっちゃいいんだけれども。
人は高みを、完璧を目指す。それが実際でいう高い場所なのか、どうなのかは分からないけれど。でも人間なんてどこか欠落してて完璧なんていない。完成させられた形なんてないんだけれども、完璧なものを、完璧な美しさを持つ人…それが彼であり、彼女でもある。
大勢の人間にとってはその完璧なまでの美しさ、微笑は魅力的であり、一方で恐怖すら感じるのだろうね。
2014年10月8日
恋愛小説家の夢センセとセンセに振り回される編集者が4つの恋愛のおとぎ話にまつわる謎を解く連作小説。
シンデレラ、眠れる森の美女、人魚姫、美女と野獣、これらの話を女の子が憧れるロマンティックな話としか思っていなかった私には、美しく儚い、時に可憐な女性像を覆される、とても面白く興味深い解釈だった。黒猫シリーズ好きの私は、この解釈の面白さがとても大好きだ。
最大の謎である夢センセの正体について、最初は月子と同じく疑っていたけれど、途中途中で引用される「彼女」の文章で薄々感づいたので、ああやっぱりと言った感じだった。
本物とは何なのか。
ニセモノとは何なのか。
夢センセが言う本物には、私自身はまだまだ遠い気がする。
2014年9月11日
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珈琲店タレーランの事件簿 3 ~心を乱すブレンドは (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
- 岡崎琢磨
- 宝島社 / 2014年3月24日発売
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他の読者さんも感じているように、今までのタレーランとは少々変わっていた印象。
1作目では、日常にある不思議を解いた短編集といった感じでとても気軽に読めた印象だった。2作目は短編といった感じではなかったが、京都を舞台にしていたことも、バリスタの妹が鍵になっていたことで、1作目とそこまで軸がずれてなかったように思える。
そして3作目。既刊2作に比べ、ミステリー色が強くなり、またこの作品特色のバリスタとアオヤマの掛け合いの面白さは少なかった印象。
それでもストーリーや話の展開、現在の章の後ろに千家目線での過去が描かれる形は面白かったなあと思う。容姿のみを描くことでこれは美星なのか山村なのかと考えさせられた。
犯人やその事件を起こすに至った経緯、未来を考えると今作は切なくなるばかりであるが、未来が少しでも明るくなることを願うばかりだ。
2014年7月14日
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黒猫の接吻あるいは最終講義 (ハヤカワ文庫 JA モ 5-3)
- 森晶麿
- 早川書房 / 2014年5月23日発売
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シリーズ2作目の長編。
何気なく某密林を覗いたら、あまりの低評価で驚いた。確かに緻密で難解な推理要素や、あっと驚く様な大どんでん返しをこの作品に求めていたら詰まらないと感じるのではないだろうか。
この作品の醍醐味は、あくまで美学なのである。
黒猫の美学談義や、彼なりの解釈を興味深いと思えなかったり、理解しようと思えなかったら頁を進めることができないのかもしれない。そう思う。
私自身は美学と事件や登場人物の人間性の関係が交わりながら進行して行くこの物語にすっかり虜になってしまった一人である。
バレエ・ジゼルとポウの作品の共通性、優美とは一体何なのか。彼らの、塔馬にとっての運命の女とは。
塔馬は運命の女の復活を望み、そして彼自身解放されたのかもしれない。芸術家ではなくただの凡人の私のとって、それ以外の路は本当になかったのだろうかと思わずにはいられない。清々しさと同時に切なさを感じた。
黒猫の接吻。
あの表現にじれったさを覚えるけれど、今の彼らにはあれが最良で、あれ以上のことはできないのだろうね。
2014年6月10日
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クジラの彼 (角川文庫 あ 48-4)
- 有川浩
- 角川書店(角川グループパブリッシング) / 2010年6月23日発売
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甘々な恋愛小説を久々に読んだ。
ただの恋愛小説ではなく、どちらか一方、または両方が自衛隊に所属しているという恋愛小説。だからこそ、気になったのかもしれない。普通に毎日を過ごしているだけじゃ恐らく関わらないであろう人々、遭遇しないであろう状況などを楽しめるのかなって。単純に海自とかに興味があったって言うのもあるけれども。
読んで思ったのは、私達が恋愛する上で感じる距離や時間なんて彼らにとったら、どうにかしようと思えばどうにか出来るレベルの悩みなんだと。
潜水艦乗りならば、ある一定の期間は海中で連絡だって、ままならないし、陸自だって基地や駐屯地から何時だって出られるわけじゃない。抜け出せばそれは脱柵という所謂脱走だ。転属だって全国津々浦々。どこに行くかさえ分からない。
そんなこと知ったら、私達なんて、頑張れば会えるだろうし、電話だって時間が見つけさえすれば声が聞けるのだ。
彼らほど時間と距離が恋敵という人々もいないんだろう。
でも、彼らは特別ではないんだって、読んで感じた。
普通に恋して、恋人や家族に会いたくて会いたくて、そんな想いは民間も自衛隊も関係ないんだなあと。
かたい話になっちゃったけど、どうにもこうにもきゅんきゅんするのである。
ますます、このジャンルにハマりそう。続編もあるみたいだから楽しみだなあ。
2014年5月16日
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夢・出逢い・魔性 (講談社文庫)
- 森博嗣
- 講談社 / 2003年7月15日発売
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夢・出会い・魔性
夢で逢いましょう
You may die in my show
相変わらずのタイトルの美しさ、面白さには惚れ惚れする。
今回は、この世界の固定概念と、いかに私がそれに捕われているかを痛感した。
稲沢さんの正体。無口でスーツを着込み、車を運転する。
稲沢さんは小柄で、そして名前にもヒントや疑問に思う点はあったのに、どうして決めつけてしまうんだろうか。人って一度認識したらそうと信じ込んでしまうんだ。
それは、自分に対してだって。
自分が自分でどういう人間か決めて、そう宣言して、実際にもなっていく。ポジティブな意味でもネガティブでもそうなっていくなと思った。要は気持ちなんだ。気持ち次第なんだ。
人は多少なりとも誰かを、何かを被ってる。
私だって、普段普通に生活をしているようで、心の奥底には本性があるのだから。
それが表向きに影響されるか否か。今回の事件はそれが鍵だった。
2014年5月2日
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月は幽咽のデバイス The sound Walks When the Moon Talks Vシリーズ (講談社文庫)
- 森博嗣
- 講談社 / 2003年3月15日発売
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かなり久々に森博嗣作品読了。
文中にあるように私自身今回の密室殺人のミステリに何らかのトリックを見いだし、トリックだと勝手に決めつけ、意志や意図があると考えていた。
ミステリ小説を読んでいるからという勝手な固定観念を持っていた読者の一人だった。
人は意図や意志がない物にはそれらを見いだそうとし、しかしそれらがないものには意図や理由が隠されている場合もある。
解決編で提示されたものの中で、本当は意図があったものはなかったのか。考えれば考えるほど奥が深くなる。また何かを探すためにもう一度読みたくなる。
それが、森博嗣の作品だと改めて感じた。
2014年4月2日
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ビブリア古書堂の事件手帖5 ~栞子さんと繋がりの時~ (メディアワークス文庫)
- 三上延
- KADOKAWA / 2014年1月24日発売
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本にまつわる謎を解くミステリーのシリーズも第五弾となって、今回も以前から出てきている登場人物の意外な過去も明かされる展開。
今回の2章に「ブラックジャック」にまつわる話があって、私自身、中学校時代図書室に入り浸って、椅子にも座らず棚に寄りかかって床に座るながら熟読した記憶が呼び起こされた。
そのブラックジャックにもそんな裏側があるなんて知らなかったし、久しぶりにあの世界に浸りたいと思った。
謎解き自体は、他の巻に比べるとなんだかなーと思う部分もあったけれど、智恵子と父の馴れ初めと栞子と大輔の進展にはドキドキさせられてよかったなぁと。
2014年2月20日