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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062196017

作品紹介・あらすじ

1977年に刊行された佐野洋子の名作絵本『100万回生きたねこ』に捧げる短編集。人気作家13人による短編小説や詩のアンソロジー。
著者は、江國香織、岩瀬成子、くどうなおこ、井上荒野、角田光代、町田康、今江祥智、唯野未歩子、山田詠美、綿矢りさ、川上弘美、広瀬弦、谷川俊太郎。

感想・レビュー・書評

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  • R4.8.30 読了。

     『「1977年に刊行された佐野洋子の名作絵本『100万回生きたねこ』に捧げる短編集。人気作家13人による短編小説や詩のアンソロジー。
    著者は、江國香織、岩瀬成子、くどうなおこ、井上荒野、角田光代、町田康、今江祥智、唯野未歩子、山田詠美、綿矢りさ、川上弘美、広瀬弦、谷川俊太郎。…本書の紹介文より。』

     すべて猫が出てくる話なのかと思っていましたが、そうではないお話もありました。それぞれのお話の前にこの絵本に対しての作家さんの短い文章が書かれており、これを読むのも楽しかったですね。
     短編集はいろんな作家さんの千差万別な物語に触れることができるので、知らない作家さんや好きな作家さんの文章などを一冊で楽しめるのでちょっと得した気分になりますね。この本の中の物語はどの物語もだいたい20ページ程の短い文で構成されているので、とても読みやすかったです。

     もし自分が100万回生きられるのとたったひとりの大好きな人と一生を一緒に生きられるとしたら、どっちの人生を選ぶのかな?と思いを巡らせてしまいますね。

  • なんかもっとほのぼのした短編集かと思っていたけど、ホラーっぽいものが混ざっていたり、猫が出てこなかったり。
    なんとも不思議なアンソロジーだったなぁ。
    思ってたんと違うってやつ?

  • もう、きゃっきゃしながら楽しく読みました(^-^)

    佐野洋子さんの絵本『100万回生きたねこ』を13人の作家さん達がトリビュートした短編集。

    気になったいくつかの作品の感想を。

    トップバッターは江國香織さんの『生きる気まんまんだった女の子の話』
    本家の『100万回生きたねこ』の場面がありありと目に浮かぶあのシーン。まるで絵本のとらねこと、この小説の主人公と、読んでいる私が同時におんなじ哀しみを感じているような、そんな不思議感覚になりました。

    角田光代さんの『おかあさんのところにやって来た猫』
    うちの牝猫が4日間行方不明になった事を思い出し、思わずこの小説の主人公猫と重ねてしまい切なくなります。
    5日後に帰ってきてくれたのですが、何故行方不明だったのかは(もちろん)謎のまま。うちの猫もこういう気持ちだったのかも!と飼い主は妄脳で思ってしまいましたよ(笑)

    今江祥友さんの『三月十三日の夜』
    これは絵本を読んでるようにシーンごとに絵が浮かびました。行われていることは激しくて恐ろしいことなのに印象は静か。この人の本読んでみたいな、と思ったら2015年に亡くなられたそうです。残念です。

    唯野未歩子さんの『あにいもうと』
    女優さんとしての彼女は好きだったけれど、小説は初読みでした。少し淫靡で意地が悪い。ざらざらとした嫌な気分になるけど、それが忘れがたいです。

    川上弘美さんの『幕間』
    これはもう冒頭から「あれだ!絶対あれだ!」と勘づき、笑いが堪えられなくなりました。この作品が一番好きでした。

    元夫の谷川俊太郎さん、息子の広瀬弦さんの作品も入っていて豪華さに身もだえしそうな素敵な本でした。

  • 片目のジャック(♀)と出会ったのは、
    僕がまた兵庫県西宮市に住んでいた頃だった。
    ジャックは公園に住む黒猫の野良で、
    噂によると、生まれたばかりの子猫の時に
    人間に虐待をうけて
    その時の傷で片方の目がなくなってしまったのだという。
    僕はまだその頃、現役のプロボクサーだったので、
    朝のロードワークのついでにこっそり猫缶をあげていて、
    初めは警戒心あらわにしていたジャックとも、
    いつの間にか仲良くなっていた。

    自分でもどうしたらいいのかは
    分からなかったけれど、
    愛される喜びを知らない彼女が
    幼い頃の自分自身とダブって
    ほっとけない気持ちになったのかもしれない。 

    けれど、ジャックは猫とは思えないくらい、
    本当に優しくていい子だった。
    いつも僕が座るベンチを
    僕が餌を持ってくるまでの間に
    必ずあたためててくれたし、
    僕がロードワークを終えて帰るときには公園から駅まで着いてきて
    必ず見送ってくれた。
    (縄張りがあり自分のテリトリー以外の場所には決して行かない野良猫の習性を考えるとこれは本当に珍しいことだ)

    ジャックの辞書には『諦め』や『妥協』の二文字はない。
    片目などもろともせず、
    いつも狙いを定めてハトやカラスを捕まえようと
    躍起してるし(笑)、

    自分のエサを狙う、敵うハズのない大型のカラスにも
    木の上に登り大ジャンプして応戦する。


    そう、僕は、ジャックに恋していたのだ。


    どんな時も決して諦めない姿勢と 
    辛い、楽しいで運命や物事を捉えるのではなく、
    起こりうるありのままを受け入れて、
    人生を精一杯、楽しむ心。 

    ジャックは、
    いつか空も飛べると思っていたはずだ。



    佐野洋子の名作絵本『100万回生きたねこ』に捧げられた、
    人気作家13人による、トリビュート短編集『100万分の1回のねこ』を
    僕は片目のジャックや愛猫であったヤミクロを思いだしながら、
    文字通り泣き笑いで読んだ。
    (忙しいことだ)


    両親を幼い頃に亡くし、花屋を営む優しい叔母さん夫妻に育てられた女の子。
    生きる気まんまんの女の子は
    百万回生きたトラ猫の話を教訓に
    「生きるために誰も好きにならないわ」と決め、実践してゆく。
    やがて年頃の美しい娘に成長した彼女は孤独であり続けるために
    ぞっとするような顔つきで
    うんざりするような性格の無職の男を見つけ、
    恋をとばしていきなり結婚したのだったが…
    『生きる気まんまんだった女の子の話 / 江國香織』、

    突然いなくなった飼い猫の「竹」を毎日捜す小学生の少女。
    やっとの思いでたどり着いた彼女が知らない家の庭で見たのは
    竹にそっくりの八兵衛という猫だった…
    『竹 / 岩瀬成子』、

    夫が営む古本屋を手伝ってきた妻は、自分にまったく関心を持たず構ってくれない夫への不満を抱えていた。
    そんなある日、お客が処分した古本入りダンボールから出てきたのは
    その家の息子と思われる者が書いた遺書だった…
    『ある古本屋の妻の話 / 井上荒野』、

    外の世界を知らず、
    人間のお母さんの愛情を一杯受けて育った家猫の「おちびちゃん」。
    ある日、窓から外を眺めていたおちびちゃんは、茶色くて大きな虎模様の猫に出会い、初めて見る外の世界の魅力に引き込まれ、ついに住み慣れた家からの脱走を試みるが…。
    『おかあさんのところにやってきた猫 / 角田光代』、

    歳を積み重ねながら何度も生き返る人間の男の子と
    百万回生きた猫の絆。
    一人と一匹の「死ねない理由」にニヤリとした(笑)
    『幕間 / 川上弘美』、

    愛情深い科学者によって
    何度も生き返らされる猫の悲劇を皮肉混じりに描いたショートショート
    『博士とねこ / 広瀬弦』、

    他にもくどうなおこ、町田康、今江祥智、唯野未歩子、山田詠美、綿矢りさ、
    谷川俊太郎など、そうそうたるメンバーが競演している。

    中でも僕が心を持っていかれたのは、
    愛を知らなかった猫が
    愛する意味を知るために犠牲にしたものに涙した、
    角田さんの話。
    これは、猫を飼ったことのある誰もの心に強烈に響く話だと思う。

    他には
    佐野洋子さんが出版したいくつかの本のタイトルを
    さりげなくストーリーに織り込むという
    ウルトラC技に唸った江國香織さんの話や、

    絵本のとら猫も登場するサービス精神に拍手した井上荒野さんの話や、

    抜群の意外性で
    トリビュートでも川上ワールド健在だった川上弘美さんの話かな。

    どの作家も自分の持ち味に+アルファを加えて物語を書いているので、
    いつもの作風とはちょっと手触りがちがっていたり。

    原作に対するリスペクトや『好き』が伝わるのはもちろんだけど、
    目には見えないが、
    いい意味での作家同士の対抗心や
    完成された絵本が原作なだけに
    下手なモノは書けないという、
    それぞれの作家のプライドや緊張感なんかも
    そこはかとなく感じさせて(笑)、
    そのプレッシャーがあったればこその
    自由でバラエティに富んだ
    いいトリビュート集になったのだと思う。



    読み終わった僕はまた物思いに耽る。

    恋の終りはいつも突然だ。
    片目のジャックは霧深い冬の朝、車に轢かれて死んでいた。
    出会って2年が経った本当に寒い朝だった。
    彼女も絵本の中のとら猫に会ったのだろうか。

    その後、何年かして、同じ黒猫のヤミクロと出会い、僕は一緒に暮らした。
    7年後その彼も逝ってしまった。


    そして、今年また僕は猫と出会った。
    黒白猫の野良のバツマルだ。



    人生はめぐる。
    猫もめぐる。

    野良猫に、さよならを言う方法はまだ見つかっていない。

    • 5552さん
      円軌道の外さん、こんにちは。
      寒いですね~。当たり前ですが。

      大量のいいね!ポチ&コメント爆撃(笑)ありがとうございました。

      ...
      円軌道の外さん、こんにちは。
      寒いですね~。当たり前ですが。

      大量のいいね!ポチ&コメント爆撃(笑)ありがとうございました。

      先程私のレビューのほうにコメントを返させてもらって、いざ投稿ボタンを押してみたら、何度押しても「コメントエラー」の文字が!ショック。
      ブクログに問い合わせてみたら私の使っているKindlefireは推奨対象外だとの返事がきました。またショック!
      こちらはコメント載せられるかなー。

      円軌道の外さんのレビューでジャックファンになりました♪
      出来た子ですねー。
      ジャックに愛されてたんですねー。
      前に獣医さんが言ってたんですが、野良猫は苦労している分、こちらの愛情に感謝し、たくさん愛してくれる子が多いそうです。

      今のバツマルとの仲はそういう距離の関係も楽しいですよね。
      一週間前より近くに寄らせてもらえた!とか
      今こっち見てなかったか!とか(笑)

      こちらの『100万分の1のねこ』は前から気になってたこともあり、ネット書店で頼んじゃいました。月曜日に近くのセブンイレブンに着くはずなので楽しみです♪
      執筆陣では女優さんもやってる唯野さんが気になります。昔『パルコフィクション』という映画で見て好きだったので。どんな物語を綴るのだろう。

      素敵なレビューありがとうございました。

      お邪魔しました。
      2018/01/28
    • 円軌道の外さん
      5552さん、遅くなりましたが、
      てんこ盛りのポチとコメントありがとうございます!
      いや、ホント寒いです!(>_<)
      毎日外仕事なので...
      5552さん、遅くなりましたが、
      てんこ盛りのポチとコメントありがとうございます!
      いや、ホント寒いです!(>_<)
      毎日外仕事なので、寒さにめっぽう弱い僕は、
      作業スボンの下のパッチ(もも引き)と
      ヒートテックの上着とネックウォーマーは欠かせません。
      それでも作業中は階段をダッシュするので
      仕事開始30分で汗だくになります(泣)
      また冬場は汗だくの服を着たままだと心臓が止まりそうなくらい
      寒くなって身体が冷えるので、
      冬場は仕事がホントやりづらい季節なのです。
      (着替える暇もない忙しさなので)

      あちゃあ~!
      コメント書いたのに反映されないって
      かなり凹みますよね~( ̄▽ ̄;)
      僕は携帯オンリーなので今は大丈夫ですが、
      昔違うサイトで僕も同じ目にあって、泣きそうでしたよ(笑)
      僕は書くのがかなり遅いし、
      コメントの返事も、何度も書き直して、30分は格闘してるので、
      それが消えた時のショックは
      計り知れないものがあります(笑)
      あっ、でも僕のコメントへの返事なら
      気にしなくて大丈夫なんで、
      (あれば勿論大喜びですが笑)
      読んでくれてさえいれば無問題です!(^^)


      おおーっ!ジャックのファンが増えた!(嬉)
      もう少しファンが増えたら
      ファンクラブ作ってジャックの足跡をたどるバスツアーでも企画しますか(笑)♪
      日本の桜百選にも選ばれてる風情のある桜並木公園が、
      ジャックのふるさとなので。
      そこで七輪で魚でも焼きますか(笑)

      確かに野良にゃんこは仲良くなるまでが
      大変だけど(笑)、
      一度心許すと、僕の足音が聞こえると
      100mも遠くから
      駆け寄ってくるくらい、なついてくれましたね。
      僕はジャックがいた公園のにゃんこたち10匹ぐらいとは
      みんな友達だったので(笑)、
      時間がある時はロードワークの間に、
      1時間くらいにゃんこ軍団と猫じゃらしや松ぼっくり投げて遊んでました。
      通りすがりのランナーたちは
      にゃんこ軍団を手なずける僕を見て、
      『猫使いか!』と思ってたでしょうね(笑)


      あっ(笑)そうそう、バツマルがついに!
      ついに~~~っっ!
      触らせてくれましたよ!(嬉泣)
      ばんざーい!ばんざーい!(*^-^)

      餌上げたらがっついて食べて、そのあと落ち着いたら

      『ほら、いいよ、触ってみな』って感じで、
      額を突きだしてきたんですよ!
      スゴいでしょ!(笑)

      いやぁ~もうこの手はとーぶん洗いません(笑)
      アイドルの握手会で舞い上がってるオタクたちの気持ちが初めて分かった気がします(笑)

      あっ、その後、
      『100万分の1のねこ』は手に入れられましたか?
      5552さんのレビュー楽しみです!

      てか、『パルコフィクション』のタイトルに思わず笑ってしまいました(笑)
      面白い映画だったのかな?

      またあらためてそちらの本棚にも
      ゲリラ爆撃しに行くので(笑)、しばしお待ちを~(^^)
      2018/02/05
  • 私にとっては、読んだことのない作家さんばかりの短編集。
    誰がどんな物語を聞かせてくれるのか楽しみながら読みました。

    角田光代さんのが良かったかな。「しあわせは知らないけれど、しあわせの反対は、わたしにもなんとなくわかる。」
    このフレーズ、相田みつをさんの「しあわせは、いつもじぶんのこころがきめる。」に通じる感覚だと思った。
    角田光代さんの作品、今度何か読んでみよう。

  • 繰り返すものと終わるもの。
    それぞれの話の最後で、心に何かザクッときたなあ…。

  • 永遠の命よりたった一度の愛


    僕ら猫からすれば
    人間の心って面倒くさいよね
    いや、口から出る言葉と、心と、
    体がバラバラだからさ…

    負の想像ばかり逞しくしてどうするの。
    相手を思い遣る気持ちが自分の要求の前にみえなくなるなんてこともね…
    どんなことも心向きが大切だってこと、
    教えてあげたいよ。

    僕らみたいに、吹く風に身を任せてごらん…
    もう少し楽になるよ、たぶんね。

    それと、人間サマを見ていて
    分かったこと。。

    後から分かるんだ
    愛ってやつは。。。
    だから、今、一緒にいられる人を
    (猫をw )大切に✨ (=^x^=)

    • 嵐さん
      この前実家のねこちゃんが寿命で亡くなってしまいました。RlKOさんのレビューを読んで改めて今一緒にいられる人を大切にしないといけないと思いま...
      この前実家のねこちゃんが寿命で亡くなってしまいました。RlKOさんのレビューを読んで改めて今一緒にいられる人を大切にしないといけないと思いました。限りある命は大切にしないといけないですね。
      2015/11/25
    • kakerikoさん
      こんばんは。嵐さん、度々ありがとうございます。体は小さくても猫ちゃんはかけがえのない家族。いなくなって気付くことって沢山ありますよね。仰る通...
      こんばんは。嵐さん、度々ありがとうございます。体は小さくても猫ちゃんはかけがえのない家族。いなくなって気付くことって沢山ありますよね。仰る通り限りある命を、時間を大切にしたいと思います。
      この本は佐野洋子さんの絵本『100万回生きたねこ』のオマージュとして様々な作家さんが猫にまつわる新たなストーリーを生み出してくれていて興味深かったです。ではでは(^-^)
      2015/11/25
  • 『おかあさんのところにやってきた猫』角田光代さんの作品が、ネコになった気持ちで読めた。トトと言う名の猫と暮らしているらしい角田さんの猫愛が伝わってきた。
    ネコに前世の記憶があるならば、100万回飼い主に巡り合って、大好きになったりそうでなかったり。
    ヒトとネコがオーバーラップする作品でした。

  • 江國香織さんの
    「生きる気まんまんだった女の子の話」はすごく淋しくなりました。
    角田光代さんの
    「おかあさんのところにやってきた猫」はとても悲しかった。人生の悲哀があると思いました。
    町田康さん
    「百万円もらった男」は教訓話のようだと思いました。
    唯野未歩子さんの
    「あにいもうと」はオチもわかるけど、なんかとても面白い小説だと思いました。
    綿矢りささんの
    「黒ねこ」はポーの作品を読み返してみたくなりました。

    でも、この本、なんか1度読んだことがあると、角田さんのところでやっと気づきました。2回ともわざわざ図書館から借りたんですね。これだけ有名な絵本のオマージュ本、普通1度読んだら忘れないですよね。まだ、物忘れする歳じゃないと思うんだけど・・・。
    でも、この本を読んで寝たら、今朝、夢の中に、数年前、亡くなったうちの猫が出てきてくれたんです。それだけでも2度読んでよかった!

  • 猫ってここに書いてあるような、会話とか想像とかしてるんやろうか。テイムみたいな能力で、確かてえですなあ。{ฅ●ω●ฅ<んな訳ねえだろう。}

  • 生き死にを100万回も繰り返していたねこの存在を
    佐野洋子さんがこっそり(?)世に広めちゃったものだから、
    100万分の一回のねこだった頃の記憶を
    著名な作家さん達が
    う~ん…と、思い出して
    書き綴ってくれた
    佐野さんが大喜びしそうなアンソロジー。

    生き方も性格も暮らしもそれぞれだけど
    ねこの冷めた瞳はずっと一点を見つめている。

    その先にいるのは、白いねこちゃんなのかな…
    さて、
    どうなのかな…

  • 絵本「100万回生きたねこ」の作者・佐野洋子さんを追悼して、帯にあるあらゆる分野の作家たちが、この絵本に関する読み物を書いた、アンソロジー本。
    普段ハードカバーの本はあまり買わないのだけど、これはもう見た瞬間買うことを即決してしまった。
    この絵本が好きだからというのも勿論だけど、書いている作家が好きな人揃いだったから。

    100万回生きたということは100万回の人生(猫生?)があったわけで、そのうちの1回の猫生もそれぞれ濃いものがあったはず。
    そのうちのひとつの猫生を書いた作家もいれば、この絵本全体の流れをつかんでそれを物語にした作家もいる。
    残酷な物語も中にはあったのだけど、100万回も生きていれば、実際残酷な猫生を生きたねこもいたはず。100万回全部幸せに暮らせたはずはないのだから。
    それぞれの個性が出ていてとても興味深く面白かった。

    小さい頃からずっとねこを飼ってる身として心に残ったのは角田光代さんの小説で(確か角田さんもねこを飼っているはず)自分では可愛がっているつもりでもねこ自身は何を思って幸せなのかどうか分からない、でも幸せだと思いたい、みたいな感じで。笑
    あとはやはり好きな江國香織さん、そしてかなり個性的なアプローチの町田康さん。そしてかなり短いながらも広瀬弦さんの「博士とねこ」というお話が印象的だった。

  • タイトルと、「あの」ねこの絵を見ると、それだけでワクワクしてきます。

    だいたいもともと好きな作家さんの話は面白く、苦手な作家さんの話はやはりイマイチ、という感じでしたが、『100万回生きたねこ』の影響の大きさを改めて知った気がします。

  • 作家さんの色がでていて、とても興味深かったです。
    いろんな猫たち。
    でも、きっと、全部あの猫。
    悲しくて、寂しくて、でも、温かくて、やわらかで。
    そんなお話たちでした。
    「百万円もらった男」だけ、ちょっと猫感がなかったけれど、作者には意図があるんだろう。
    私にはわかんなかったけれど。

    きっと、好き嫌いはある。
    でも、自分からは手に取らないだろう作品も読んで感じることができる、というのが、とても魅力的だな。
    みんなの心の中の、ねこ。

  • 絵本「100万回生きたねこ」へのオマージュアンソロジー。

    面白かった編
    ・100万円もらった男
    タイトルもじっただけでねこ出てねぇじゃん!でも面白いというか業が深いというか。男が持ち崩していく残高が妙にリアル。己の畑を耕さなかったからだ、と言われるものの、植わっているのが何なのか、芽が出るのかどうか、花が咲くのかどうか、分からないことだらけの中で「耕せ!」と言われてもそれはちょっと酷なんじゃと思わなくもない。「己を信じて努力できる」ってのも才能の内ではあるんだろうけどけどけど。
    荒れ地の上に何ができるのか、それでも耕すことを選んだ男に、立派でなくとも美しい何かが実ればいいなと祈るように思う。

    ・おかあさんのところにやってきた猫
    自由のない世界で生きることは幸せかどうか。室内飼いをしたことがあれば、一度も考えない飼い主はいないんじゃないかなあと。与えられない自由の分だけより溺愛するんだけど、それがウザがられるのもまたあるある。
    そして安寧のおうちを捨て、おかあさんを捨てたはずのおちびちゃんが、年を取って戻ってきたところが泣けた。ぐるぐるぐるぐる。

    ・生きる気まんまんだった女の子の話
    小生意気でほろ苦くていい話。
    わざわざ好きになれなさそうな夫を選んだのに、いざ死なれてしまうと会いたくてたまらない。だったらやっぱり自分が好きになれる人を選んで楽しく生きた方がよかったのかなあと思う。ねこにとっての白ねこみたいに後悔のないように。でもダメ男だったから手放せなかったってのもあるのかもしれないけど。人生長いしなー。

    ・博士とねこ
    こちらも飼い主としてどこまでしてやるべきか、延命治療の話として読んで痛かった。死なないで欲しいと手を尽くすのは愛なのかエゴなのか。博士には迷いがなかったようだけど、ねこは日に日に自分が自分でなくなっていくことに苦痛を感じてたかもしれない。最後は電気仕掛けで生かされていたみたいで、生身のねこ本体はとうに亡くなっていたのかもかも。どんな姿になってもずっといっしょにいてほしいっていう気持ちもよく分かるんだけどね。でもなー。

    総評
    作家それぞれのカラーが濃ゆくて面白い。そして元ネタの「100万回生きたねこ」を読み返したくなる。100万回生きたなら、もっともっとこの他にもねこの一生があったんだろうなあと。ねこはずっとつまらなかったんだろうけど、ねこと生きて、ねこのために泣いた人たちは、愛されなくても愛することそのものが幸せだったんだろうなあと本編と同じ余韻にふける。

  • 「100万回生きたねこ」は、もしかしたら日本で一番有名なとらねこかもしれない。
    何しろ100万回生き、100万回死んだことがある、立派なねこなのだ。
    そうしてみんながとらねこに夢中になっても、誰のことも愛さない。
    そんなクールなねこなのだ。

    本作は、「100万回生きたねこ」に13人の作家・詩人・画家が捧げるオマージュである。
    100万回生きたねこだから、100万の人生(猫生)があってしかるべき。
    稀有なとらねこの100万分の1の生涯を描き出して見せましょうぞという作品集。
    その着眼点やよし。

    ・・・なのだが、うーん、発想はよかったけれど、一番よかったのは、そのアイディアだったんじゃないかな、といういささか肩すかしな感じが否めない。
    このアイディアで、売れっ子さんも揃えて、え、これなのか・・・?というところだ。辛い言い方をすれば。

    それぞれのお話はちょっとひねりのあるものもあって、悪くはない。けれど、ちょっと小粒じゃないかな・・・?
    江國香織さんのは本歌の趣意を一番汲んでいる雰囲気。でもちょっと薄味。
    角田光代さん、前半の束縛のねっとり感は薄ら寒さを孕んでさすがな感じだけど、相手がねこなだけに、後半は焦点が呆けたように私は感じた。
    町田康さんのはおもしろいけど、寓話めいていすぎるし、そもそもこれ、ねこ関係ないしっ。いや、先刻承知で書いていらっしゃるのでしょうけれど。
    綿矢りささん、発想がかっ飛んでいておもしろいけど、トーンが明るすぎ・軽すぎな感じが。
    どれもそれなりにおもしろかったけど、どれもそれなりに少しずつ違和感があったと言うか。すとんと胸に落ちなかった。
    3作を迷いながら上げると、今江祥智さん、唯野未歩子さん、谷川俊太郎さん(こちらは別格か・・・)の作品、かな・・・? 岩瀬成子さんも機会があれば別作品を読んでみたいかな。

    1つの作品を軸に据えて、いろんな作家さんの競演を読めるというのは、一粒で二度おいしいようで、実はなかなか難しいのかもしれない。限られた字数で、持ち味を生かしつつ、オリジナルも匂わせるというのは、結構な離れ業なのかも。

    いっそ、100万人の作家さんを集めたらどうだったんだろう。それはそれでおもしろいような。いや、無理だけど。

    冒頭のそれぞれの作家さんが「100万回生きたねこ」との関わりを語るショートエッセイがおもしろい。

  • それぞれの作家で見方が違ったりする。面白い。
    死の定義まで変わってくるんだなあ、と。死んだ誰かを想って泣いて泣いて自分も死ぬ、そうすることで私があの人と混ざる、幸せな空気になる。なるほどそれはいいなあと思えた。

  • 学生(らいすた)ミニコメント
    13人の作家による「100万回生きたねこ」のトリビュート短編集。


    桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/580722

  • ねこたちの短編集

  • 佐野洋子さんの絵本『100万回生きたねこ』をトリビュートしているアンソロジー。
    https://ameblo.jp/sunnyday-tomorrow/entry-12061719807.html

  • 「100万回生きたねこ」のトリビュート短編集ということで13人の文筆家が書いているが4人しか男性がいない、これは今の出版業界の実情を表しているかのようである。そしてこうして作品が並ぶと作家の実力が如実に現れるが特に男性陣は酷いテーマさえ踏襲できていない者さえいる。もう男性作家はミステリー以外は存在価値がなくなっているのかもしれない。芥川賞直木賞が女性に独占されるのも分からんではない気がする。

  • 佐野洋子さんの絵本が好きなひと、沢山居ると思う。その誰もが、自分だけの虎猫ものがたりを心の中に描けるんだろうな。
    山田詠美さん、江國香織さん、角田光代さんの話がそれぞれ心に残った。もう生き返る気力も無いくらい、誰かを愛すのって清々しい。
    最後の谷川俊太郎さんの話。別れた妻へのラブレターみたいだ。お互いの健闘を讃えあうといったところか。
    わたしも、力の限り今の人生を生き抜こう。

  • 色んな作家の、佐野洋子さん、とらねこちゃんへの愛つまった一冊。
    絵本に近いとらねこちゃんもいれば、全然違うねこの話も。ねこが出てこない話まで!(笑)
    後半の方が好きかな。普段偏った作家さんの本ばかり読むので、色んな作家の話が読めてよかった。

  • 佐野洋子さんの名作「100万回生きたねこ」へのトリビュート短篇集。各作家が「100万回生きた猫」を元にしたり題材にしたりして短篇を書いているのですが、1つ1つが個性的。それぞれの作家の持ち味が出るのはもちろん、「100万回生きたねこ」への解釈の仕方も人によっていろいろなのですね。

  • 永遠のベストセラー、
    『100万回生きたねこ』に捧げる豪華な短編集です。
    何しろ執筆しているのが、
    江國香織、角田光代、町田康、山田詠美、川上弘美、綿矢りさ・・・などなど、名前を書き連らねる手が震えてきそうな
    そうそうたるメンバー。
    どれもこれもが、胸に沁み入る物語でした。

    その昔、友人と一緒に『100万回生きたねこ』を読んでいて
    『あ~、ねこが最後幸せになってよかった♪』と思っていたところに友人が、
    『ねこ、最後可哀想だったね・・・』って!!
    その時初めて、物語の受け取り方というのは
    人それぞれなのだと知ったワタクシでございました。

    『100万分の1回のねこ』も本当にそれぞれ全く違う
    『ねこ』の物語です。
    (中には猫すら登場しない物語も・・・)
    でも、どのお話の中にも
    愛すること、生きることの意味がギュッと詰め込まれています。
    角田光代さん・山田詠美さんの物語が個人的には
    ◎でした♪

  •  名作絵本「100万回生きたねこ」のオマージュ、13人の作家による短編集。一冊の絵本を基にそれぞれ寄稿されているのに、まったく違う切り口であったりするから面白い。
     角田光代さんの「おかあさんのところにやってきた猫」、唯野未歩子さんの「あにいもうと」、女性らしい感性で描かれたこの2つの作品がわりと好き。
     ペットになる猫は寿命も長く、病気や飢えの心配も少ないから幸せだ、というのは人間の一方的な考え方。猫にも人間のような複雑な感情があったなら(という時点で人間のエゴ丸出し)、うちの猫たちにとって幸せってなんなんだろう・・・そんなことを考えさせられる「おかあさんのところにやってきた猫」。それはまるで母と子の関係でもあるようで、身に覚えのある気持ちと、これからが不安になる気持ちが混ざり合った。
     大好きな作家である町田康氏の「百万円もらった男」も最高だった!猫一匹たりとも出てこんし!あんだけ猫エッセイ書いてるのに!なんなん!

  • 図書館本。表紙の猫のイラストを見たらすごく懐かしくて借りてみました。『100万回生きたねこ』のオマージュ、短編作品集。さすがに、死を扱っている作品なので暗めなものが多いのですが、100万回生きた中には、こんな人(猫?)生もあったのかなと、楽しく読み終えました。中でも、江國さんと角田さんの作品が好きでした。

  • 猫が一匹も出てこなかった町田康の「百万円もらった男」がよかった。

  • 執筆陣も内容もばらばらで、オトナ向けのアンソロジー

  • 様々な作家による「100万回生きたねこ」のオマージュ作品集。
    佐野洋子って、すごいね!

    息子の広瀬氏と、元夫の谷川俊太郎の2作品は、もしかしたらオマケかも…。

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著者プロフィール

1931年東京生まれ。詩人。1952年、21歳のときに詩集『二十億光年の孤独』を刊行。以来、子どもの本、作詞、シナリオ、翻訳など幅広く活躍。主な著書に、『谷川俊太郎詩集』『みみをすます』『ことばあそびうた』「あかちゃんから絵本」シリーズ、訳書に『スイミー』等がある。

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