- Amazon.co.jp ・本 (768ページ)
- / ISBN・EAN: 9784153350052
作品紹介・あらすじ
2060年、オックスフォード大学の史学生三人は、第二次大戦下のイギリスでの現地調査に送りだされた。メロピーは郊外の屋敷のメイドとして疎開児童を観察し、ポリーはデパートの売り子としてロンドン大空襲で灯火管制(ブラックアウト)のもとにある市民生活を体験し、マイクルはアメリカ人記者としてダンケルク撤退における民間人の英雄を探そうとしていた。ところが、現地に到着した三人はそれぞれ思いもよらぬ事態にまきこまれてしまう…続篇『オール・クリア』とともにヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞の三賞を受賞した、人気作家ウィリスの大作。
感想・レビュー・書評
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人気作家コニー・ウィリスの2010年の新作。
続編「オールクリア」とともに、ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞を受賞した大作です。
未来(今回は2060年)のオックスフォード大学の史学部で、タイムトラベルが出来るようになっているという設定の長編としては、3作目。
1作目「ドゥームズデイ・ブック」ではペストが蔓延した中世へ、2作目「犬は勘定に入れません」では19世紀ヴィクトリア朝がさかのぼった先でした。
今回は、第二次大戦中に3人の学生が送り込まれます。
メロピーは疎開児童の状態を研究するために、田舎の領主館のメイド、アイリーンとして。
ポリーは、灯火管制(これがブラックアウト)が始まっているロンドンの生活を調べるために、デパートの店員に。
マイクルは、ダンケルク撤退を調査するために、アメリカ人の新聞記者マイクに扮します。
アイリーンは手に負えない姉弟をはじめ子供達に慕われて世話に大奮闘しますが、はしかが流行ってしまい、領主館から出られなくなります。
ポリーは防空壕で催し物を企画する意気盛んな町の人々と知り合い、老いてもハンサムな俳優と劇の読み合わせを楽しむひとときも。
マイクルは少しずれた地点に出てしまい、あれやこれやで勇敢だが少々いかれている老人の船で現場に到着。取材する側ではなく、はからずもダンケルクの英雄となってしまう。
歴史を改変することは出来ないという理論があるのだが、絶対とは言いきれず、マイクルが歴史を変えたのではと悩むことに。
それぞれ、時期も場所もずれているのですが、なかなか帰還することが出来ないためにお互いを探し、大空襲のさなか、やっと合流します。
別な時代に来た緊張を抱えつつ、細やかに描かれた情景の積み重なりから、またまた大変な危機に直面する彼ら。
戦時下の勇気ある人々との助け合いに、いきいきとした感情が伝わるのが、さすがコニー・ウィリス!
冒頭でダンワージー教授が非常に忙しそうにしていて、どたばた喜劇のような始まり。その理由は何だったのか?
オックスフォードで何か起こっているのか?
高校生のコリン少年(ポリーに恋している)は、どう絡んでくるか‥?
それらの答えがすべて続編待ちというのが~つ、つらい‥
「オールクリア」は警報解除という意味なので、すっきり解決するんでしょうね!!?
続編が出るまで我慢してから読んだから、まあもうすぐなんですけど(笑)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
これこれ!こういうのが読みたかったの!半分あたりまで読んでからは、ずーっと心の中でそう叫びながら、ページを繰る手ももどかしく一気に読了。ああ、後半の「オールクリア」が待ち遠しい!大森さんもう訳してくれてるよね。
コニー・ウィリスで、しかも「ドゥームズデイ・ブック」のシリーズとあらば、面白くないわけがない。「オールクリア」が出てから読もうと思ったけれどやっぱり待ちきれませんでした。
出だしから100ページ過ぎくらいまでは(いくら分厚い本でも結構長いよ)なかなかお話が進まずちょっとつらかった。しかし物語が滑り出すとあれよあれよという間に加速して、もう後は登場人物と一緒になって、大空襲ただ中のロンドンの街を駆け回ったり、ドーヴァー海峡を渡ったり、息を詰めて運命を共にすることになる。
そのストーリーテリングの凄さはもうあらためて言いますまい。あちこちの書評でも言い尽くされていることだし。ケチの付け所が色々あるのも言われているとおり。第二次大戦を「調査」することの不自然さとか、あまりにもタイムトラベルの管理がバタバタしていることとか。でも読む進めていくとそんなこと、まったくどうでも良くなる。解説で大森氏が書いているように、ごく普通の人が絶望的な状況の中でも必死に最善を尽くそうとする姿に共感せずにはいられない。最高に面白い。
SFの世界は、そもそもジャンル草創期からクリエイターもファンも男性が多くて、ステロタイプな男性中心的世界観のものがかなりあり、ちょっとなあと思うことも結構ある。
その中にあってコニー・ウィリスは燦然と輝くわがスターだ。 -
期待どおり、長さも気にならないほどおもしろかったんだけど、結局、次巻(「オール・クリア」)が出ないことにはなんにもわからないのだった。タイムトラベルで第二次世界大戦中のロンドンに行ってる学生たちがなぜか予想外に現代に戻れなくなってしまい、なぜ戻れなくなったのかどうなってるのかわからない、という。ああ、次巻が出るまで、わたしも学生たちのように、いったいどうなってるのー!?どうしようこのまま戻れなかったらー!とぞっとしながら待つのか……。
あんまり考えてなかったけど、ロンドンにも大空襲があって人々は日常的に防空壕に逃げたりしてたんだなー、と。日本の空襲の話とかは子どものころ本でよく読んで知っている気になっているけれど。
タイムトラベルした学生が、この時代の人たちは、いつまで空襲があるのか、戦争はどうなるのか、自分はこの先どうなるのか、ってことを知らずに、でも日常を淡々と生きてる、っていうようなことを思うところが印象的だった。結局、人間ってみんな先のことはわからず今を生きるしかないんだなあ、とかしみじみ。
コニー・ウィリスの書くものはどんな状況でもユーモアがあって、なんだかすごく「キュート」って感じがして大好き。この「キュート」って感じはどこからくるんだろう、と思うんだけど。
次巻が出るまでが待ち遠しくて、ダンワージー先生と別れがたくて、このタイムトラベルシリーズの一作目「ドゥームズデイ・ブック」を再読しはじめてしまった。-
「どんな状況でもユーモアがあって」
うん。とっても素敵ですね。
いつになったら読めるかなぁ~(読みたい本が増え過ぎて、混乱気味)
「どんな状況でもユーモアがあって」
うん。とっても素敵ですね。
いつになったら読めるかなぁ~(読みたい本が増え過ぎて、混乱気味)
2012/08/28 -
そうなんです、ユーモアがコニー・ウィリスの魅力だと思います。大好き。
わたしも、たなぞうを見ているとどんどん読みたい本が増えて追いつきませ...そうなんです、ユーモアがコニー・ウィリスの魅力だと思います。大好き。
わたしも、たなぞうを見ているとどんどん読みたい本が増えて追いつきません。2012/08/29
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『ドゥームズデイ・ブック』『犬は勘定に入れません あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎』に続く、オックスフォード大学史学部タイムトラベル・シリーズ第三弾。
今回は三人の史学生がほぼ同時に第二次大戦中のロンドンへ降下する。
タイムトラベルといっても過去へ行くことしかできず、時間旅行者が歴史に影響を与えることはできない。時間旅行も、大学が研究目的で時間遡行装置を管理しているので、誰でもが簡単にいくことはできない。
当時の人たち(時代人)の中で生活をしながら、歴史的事実を見学するだけなのだ。
ポリーは、ロンドンのデパートで働きながら、ロンドン大空襲下の日常生活を体験する。
マイクルは、アメリカ人の新聞記者となって、ダンケルク撤退を取材するはずだった。
メロピーは、ロンドンから学童疎開した子どもたちの生活を観察するために、地方の領主館でメイドとして働いていた。
3人とも、絶対に安全な場所から戦時の様子を調査観察するはずだった。
ところが、日時も場所も予定とは違った場所に降ろされ、どんどん知っている歴史とは違う方に進んでいってしまう。
本当なら定期的に降下点に赴いて、オックスフォードに中間報告をしなければならないのに、次々と思わぬ事態が起こり、けがをしたり病気になったりして降下点に行くことすらままならない日々。
連絡が取れない日が続くと、回収チームが現れて、強制的に2060年に戻されてしまうはずなのに、回収チームが来ることもない。
時間旅行の予定期日が過ぎても迎えに来ない回収チーム。
刻々と悪化している1940年9月のロンドンの戦況。
自分たちが何かタブーを破ってしまったために歴史が変わり、迎えが来ないのか?
それとも2060年の方に何か重大な事件でも起こってしまったのか?
状況がつかめないまま、1940年に取り残されてしまったのではないかという不安を抱える3人。
第2次大戦中の日本のこともよく知らないのに、イギリスのこと、全然知りませんでした。
学童疎開のことは知っていたけど、ダンケルク撤退って何?とか思って読んでいました。
当時のイギリス(ロンドン)の様子もよくわからないうえ、3人の視点で場面がころころ変わるので、最初は取っ付きにくかったです。
でも、やっぱり面白い。
時代人にあやしまれないように、降下する先の時代の勉強を物凄くしてから出かけていくのに、やっぱりいろんな勘違いや、理解できないことが日常的にあるのです。
例えば車の運転。
郵便を出すということ。封筒に封をしたり、切手を貼ったり。
デパートの回転ドアをくぐること。
どの史料にも当時の人々はガスマスクを持って歩いていたと書いてあったのに、誰一人持ち歩いていない!こと。
それぞれの理由で降下点が使用不能になってしまった3人は、誰かの降下点を一緒に使わせてもらおうと、少ない手がかりを元に互いを探し始める。
そもそも時間旅行は、事前に綿密な計画を立て、しっかりリサーチして絶対に安全だと確信が持てない限り行われないはずなのに、今回は変更に次ぐ変更で事前学習も中途半端なまま。変更の理由は誰も知らされていない。
一体オックスフォードで何が起こっているのか。
そして、時間旅行の責任者であるダンワージー教授がほとんど出てこない。
忙しすぎて、何処にいるのやら。みんなが探しているのに、誰も見つけることができない。
ダンワージー教授に何が起こっているのか。
ちらちらと出てくる、1945年ころのロンドンにいる学生たちはどうかかわってくるのか。
ポリーに恋している高校生、コリンは何をしようとしているのか。
謎が全く解けないうちに700ページ超えのこの巻は終わりです。
ブラックアウト=灯火管制
続編はオール・クリア=空襲警報解除
2作合わせてヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞を受賞したのも納得の、読み応えのあるSF作品。
息をするのも忘れるほどに、深く世界にはまり込んで読みました。 -
本屋に行くのを控えていたら、おお、見事に購入量が減りました。当たり前だけど。案外、買うのを我慢できるのだな。
だいたい読書量というか読書力がガクンと落ちているんです。一つには目が悪くなっていること。パソコンもそうだし、Iphoneの画面もつらい。主な読書場所であった電車の中でも広告をぼんやりと眺めることが多くなりました。登場人物の名前も覚えられなくなったし。
あ。そうそう。コニー・ウィリスさんの「航路」は生涯でもベストと言っても良い読書体験でした。もし、これから読まれる方がいたら本当にうらやましい。
この「ブラックアウト」は同じ世界を背景にした長編(間違いです。ドゥームズデイ等のシリーズですね)で、待望の翻訳。本屋で手にしたときは分厚さに仰天。笑ってしまうぐらい。これでもじつは前篇にあたる部分で、続篇『オール・クリア』はもうちょっと待たないといけないらしい。(来年の4月)
うううう、読み終わってもしばらく経つと僕は忘れちゃうよお。失敗したなあ、続きが出てから読み始めればよかったかも。でも、止まらないよお。「航路」のあの匂いがするんですもの。うーん、幸せだ。
この「新☆ハヤカワ・SF・シリーズ」、銀背で、小口が手塗なんですよ。なんてすばらしいんだ。こーいうのを見ると電子書籍が色あせて見えてくるから困っちゃうな。
読了
人物名が覚えられないのが最近のおじさんの困っているところですが、それでもずんずん読める。途中でこんらがってしまったけど、それでもすいすいと読める。ここが著者と翻訳の大森望さんの凄いところです。
といっても続きが出るまでに細かいところ全部忘却の彼方に消え去っているのは確実なのでまた読み返すのかと思うと。ただ、もし読み返すとしたら人物と出来事のマトリックス表を作りたいな。いや、誰か作っているかな。
とのもかくにも可読性は保証。正式の感想は後編の「オールクリア」を読まないと。ここまで張り巡らされた様々な伏線がオール・クリアになるのだとしたら凄いよな。 -
久しぶりに海外SF作品を、、、、と手を出したのが運の尽き。
かなりの長編作品にぶち当たってしまいました。ただ、海外タイムスリップモノは、よだれが出る程好きなジャンルなので、全3部作の1作目は楽しんで読めました。
【内容】
2060年、オックスフォード大学の史学生三人は、第二次大戦下のイギリスでの現地調査に送りだされた。
メロピーは郊外の屋敷のメイドとして疎開児童を観察し、ポリーはデパートの売り子としてロンドン大空襲で灯火管制(ブラックアウト)のもとにある市民生活を体験し、
マイクルはアメリカ人記者としてダンケルク撤退における民間人の英雄を探そうとしていた。
ところが、現地に到着した三人はそれぞれ思いもよらぬ事態にまきこまれてしまう…
3人のお話が断片的に出てきて、その合間合間に、よくわからない謎の人物(彼らもタイムスリップしているっぽい)たちの動きもまみえる。
何よりも、第二次大戦中のロンドン描写が、すごく活きている。
痛々しい表現などはあまり無いのですが、主人公3人を取り巻く人たちの空襲被害などは主人公たちと一緒に、読んでいて胸が張り裂けられそうになります。
日本の戦時中と比べると、やっぱり先進的だなぁと感じさせられずにはいられない。
みんな地下鉄で移動してるし。
この作者、コニーウィリスは、初めて読みましたが、他の作品も手を出してみたい。
新☆ハヤカワ・SF・シリーズは、とにかく高い。1冊2000円くらいするので、SF素人には手が出しづらいのが傷。 -
「犬は勘定に入れません」を既読なので、
すんなりと入って行けた。
いやー、面白い。
分厚いが面白い。
タイムトラベルものだが、
小難しい理論は一切無いので、
人間ドラマを描いた冒険小説として楽しめる。
まだ続きが 2 冊ある。
リアルタイム読者は 8 ヶ月以上待たされることになる。
2010 年 ネビュラ賞長編小説部門受賞作品(ブラックアウト / オール・クリア)。
2011 年 ヒューゴー賞長編小説部門受賞作品(ブラックアウト / オール・クリア)。
2011 年 ローカス賞 SF 長篇部門受賞作品(ブラックアウト / オール・クリア)。 -
久々のオックスフォード史学生たちのタイムトラベル・シリーズ。コリンが高校生になってる!とワクワク、伏線を丁寧に拾いながら楽しく読了、、、続編「オール・クリア」がまだ出てない上に、分冊なのを知ってショックすぎる。
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黒死病の世界をつづった「ドゥームズデイ・ブック」、タイタニックの沈没を扱った「航路」それぞれ良かったが、これもいい。
第二次世界大戦の世界に送り込まれた、マイクル、ポリー、メロピー(20世紀用の名前:アイリーン)の3人は、それぞれ思いもかけない事態に巻き込まれて行く。
ダンケルク撤退を観察するためにドーバー近くに来たマイクルは、どういう風の吹き回しか、ダンケルク撤退に手を貸す船に乗り込んでしまう。
兵士を助けたことによって歴史を改編したのではないかという疑念にとらわれてしまった。
そして足に重傷を負って、ドーバーから遠く離れた病院に送り込まれてしまう。
アイリーンという名前のメロピーは、疎開児童の観察のために、郊外の貴族の屋敷の住み込みメイドとして働いていたが、元の時代に帰れなくなってしまい、ロンドンに出てくる。
ポリーはデパートの売り子として働き、ロンドン空襲のときの市民を観察しているが、やはり元の時代に帰れなくなっている。
ダンケルク撤退に出てくるコマンダーハロルドは、なぜか、アニメYellow Submarineに出てくる、救いを求めてロンドンに来た老船長を思い出した。
悪ガキボドビン兄弟も実にいきいきしていてよい。
脇役の周到な人物造形と、細部にこだわった描写がSFもののいかがわしさをすっかり消し去っている。
外からのぞき見ているのでは無く、その場に引き込まれてしまう感じ。
そこで強く感じたのは「英国人の強さ」である。悲劇的なところでも、決して失われない「なにくそというユーモア」。
「営業中。ふだんより大きく開けています」だったかな。
ショーウィンドウが吹き飛ばされても営業しているデパートの表示。
こういう国が強いんだと思った。翻って見るに我が国ではこれはできないだろう。
SFのはずが、歴史教育物語のようになってきている。
最終的に、元の時代に戻れなくなってしまった3人は、ロンドン大空襲時に、爆撃で破壊される直前のデパートで再会する。その後、地下鉄駅に避難して対策を考える。
さあ、どうなるんだろう、と思っていたらだんだんページ数が減っていって、最後に、「前半の終わり」と書いてある。
「あれ、まだページがちょっと残っているんだがなぁ」とページを繰ると、解説が載っていた。
「本当にこれで終わり?」という意外さで読了となった。
これだけ厚い本なので、完結すると思っていたが、なんと、「オールクリア」の前編であった。
しかも、続きは'13年4月発売で、本書よりさらに長いとのこと。
ちょっと長すぎる。
しかし、当方のようなひま人には、「長く楽しめるのでありがたい」となる。