- Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309464152
感想・レビュー・書評
-
海外の変な話を集めさせたら右に出る者はいない岸本さんの、安定の不条理短編集。
どの話も、明け方に見る脈絡のない悪夢みたいで、うっすら不安になる。よくこんな話思いつくよなあ。
ずっと意味不明なのに、へべとジャリのような人間関係を経験したことがあるような気がして、より気持ち悪さが募る『へべはジャリを殺す』、
ちょっぴりゴシック調な美しい不穏さが印象的な『あざ』、
違和感のある入社オリエンテーションが当たり前のように続く『オリエンテーション』、
何か起きそうな予感が、なぜか読み終わった後も消えない『潜水夫』が特に好き。
-
ちょっと自分には難解な作品が多かったけどそれで良いのだと思う。
背景説明も種明かしもないから意味がわからなくて当然かもしれないけど、だからこそモヤモヤして「なにこの作品...」となる。
個人的に好きな作品は「ささやき」と「ケーキ」
「ささやき」はこの作品集の中ではわかりやすい部類のお話で、オチが怖っ!!!と言っちゃうくらいシンプルに怖かった。結局だれ??
「ケーキ」は情景が頭に浮かんで笑ってしまった。いや、犬猫のこと気にせずケーキ食べたらええやん。にしてもずーっとおんなじこと言うてるな。多分病んではるんやろなぁ〜、なんて思いながら読み進めた。動物好きな自分からしたら、四六時中犬猫に見つめられてたらめちゃくちゃ嬉しいし一緒にケーキ食べようって誘うと思う。 -
「あざ」アンナ・カヴァン
「ささやき」レイ・ヴクサヴイッチの2作が好みの怖さだった -
ジャンルに分類できない「居心地の悪さ」のある小説をテーマに編まれた12の短編からなるアンソロジー。岸本佐知子さんの編訳ということで購入。
そうそう、そういえばそうだった。そういえば小説は、こういうやり方が許される媒体だった。わずか10ページ前後の一つ一つの作品を読むたびにそんなことを思い出す。
説明も無しに投げ込まれる感覚が生み出す不安。そして作家によって変幻自在に変わる構成や自由な文体。正統派の幻想小説もあれば対話体の小説があり、トリビア本のパロディなんてものもある。
翻って自分の書くものは無理な整理がされすぎてはいないか。アンソロジーなんてものを読んだのが久々だったからだろうか、自分の中でいつの間にか生じていた小説に対する“凝り”のようなものがいくらかほぐれた気がして少し楽になった。
書くことについて道に迷ったときに選集を読むのはありかもしれない。
内容に関しては、ルイス・アルベルト・ウレアの「チャメトラ」、ルイス・ロビンソンの「潜水夫」、ケン・カルファスの「喜びと哀愁の野球トリビア・クイズ」あたりが特に良かった。
「チャメトラ」は銃で撃たれた兵士の頭から“夢”が流れ出てくるというシュールで悪夢的なビジョンが色彩豊かに描かれた作品であり、収録された作品の中でも最も幻想小説的だった。
「潜水夫」はサスペンス風だがそこに夫婦間の不安なども混ざってきて面白い。世話にはなったが嫌いな人間が遠ざけておきたいのに妙に馴れ馴れしく、妻もそれを歓迎しようとするので離れられないという状況は嫌なリアリティがある。
「喜びと哀愁の野球トリビア・クイズ」は1打席に56本のファウルを打った男や、年間121個のセーフティバントを成功させて誰からも嫌われた男など、架空の出来事を描いた作品なのだが、その“居心地の悪さ”は本物であり、実に野球的。
自分にはピンとこない作品もあったが、それもアンソロジーらしさだろう。
こんどはそう来たか、という楽しみが味わえる良い一冊だった。
-
なんとも言えない読み心地の短編が12編収録されている。
不思議だったり変だったり、意味がわからず不可解だったり。時にはユーモラスだけどゾッとするような、一筋縄ではいかない話ばかり。
「チャメトラ」「分身」「オリエンテーション」「ささやき」が特にツボ。
オチも説明もなくすっきりしない読後感だけれど、それがかえって印象に残った。 -
居心地が良い本だった
当たり前と信じていたものを失い
苦しかった時期、
何時間も新幹線に乗っていて
このままどこにも着かずに乗り続けたいと
心底、心底願ったことがある
それを叶えてくれる一冊だった
なんで?の追求を諦めて
受け入れるでもなく
ただ一緒に居座る
それは、なんのためにもならないかも
しれないのに、ただ読み進めて完了させる
繊細だとか、ポジティブだとか、不安だとか、
孤独だとか、理想だとか、
そうじゃなくて
そうじゃなくって
愛なんだよ
わからなくてもいい
ただ私に愛させろ -
まさにタイトルと表紙の通りの感覚。奇妙な内容と切り捨ててしまえばそれまでだが、どうも日常の何かとリンクするのでは、という底知れぬ不安感が全体を覆っていて、引きずられる。
-
まさに『居心地が悪い』という言い方がぴったりな話たち。
怖いわけでも気持ち悪いわけでも痛いわけでもなく、ハッキリとしたオチがあるわけでもなく、モゾモゾモヤモヤとした気持ちになる。
一番読みやすくて怖かったのは『ささやき』。
エヴンソンの『ヘベはジャリを殺す』、『父、まばたきもせず』も良かった。訳がわからないなりに不穏で嫌な気持ちになる。
遠くから父母が来る途中で母が電話をかけてくる『来訪者』も好きかな。 -
短編アンソロジー。この本に限り「居心地が悪い」は最高の褒め言葉であり、どの話も期待は裏切らないと思われる。夢の中で奇妙な出来事に遭遇し、目覚めてホッとする感覚に近かった。眠りの話は、なぜそうなるのか。面白いけど。勝手にリフォームはちょっと。微妙に両者の好みも合ってなさそうだし。オリエンーションの話に至っては、サラッと爆弾発言の連発。え、無理だよ、この職場で働くの。居心地の悪さを通り越して笑った。
いつもレビュー読んでいただきありがとうございます!
岸本さんがあとがきで「読みおわったあと見知らぬ場所に放り出されて途方に...
いつもレビュー読んでいただきありがとうございます!
岸本さんがあとがきで「読みおわったあと見知らぬ場所に放り出されて途方に暮れるような、なんだか落ちつかない、居心地の悪い気分にさせられるような、そんな小説」と書いてるんですが、まさにそんなお話ばっかりの短編集です。
もし読まれたら、111108さんの推し短編教えてくださいね!
こちらこそいつもおじゃましてすみません(๑˃̵ᴗ˂̵)
岸本さんの『変愛小説集』なども、すごく面白かったのとちょっとよくわか...
こちらこそいつもおじゃましてすみません(๑˃̵ᴗ˂̵)
岸本さんの『変愛小説集』なども、すごく面白かったのとちょっとよくわからないのと二つに分かれたので、こちらも読んでジャッジ(何を?)したいと思います♪
『変愛小説集』とってもいいですよね!
この本は、よくわからない方の作品多めですが、ぜひジャッジしてみてください笑
『変愛小説集』とってもいいですよね!
この本は、よくわからない方の作品多めですが、ぜひジャッジしてみてください笑