サクラサク、サクラチル

著者 :
  • 双葉社
3.99
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本棚登録 : 1531
感想 : 133
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575246513

作品紹介・あらすじ

「絶対に東大合格しなきゃ許さない」――両親の熱烈な期待に応えるため、高校三年生の高志は勉強漬けの日々を送っていた。そんなある日、クラスメートの星という少女から、自身をとりまく異常な教育環境を「虐待」だと指摘される。そんな星もまた、自身が親からネグレクトを受けていることを打ち明ける。心を共鳴させあう二人はやがて、自分達を追い詰めた親への〈復讐計画〉を始動させることに――。教室で浮いていた彼女と、埋もれていた僕の運命が、大学受験を前に交差する。驚愕の結末と切なさが待ち受ける極上の青春ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 恵まれない家庭環境の男女の高校生、心を共鳴させあう二人がたどり着いた答えは #サクラサクサクラチル

    ■あらすじ
    恵まれない家庭環境で生きる二人の高校生。東大を目指す染野高志と、授業をさぼりがちな星愛璃嘉。他の生徒にはない同じ匂いを持つ二人が、自身の苦悩を吐露しながら心情を共鳴させていく。親への復讐を誓った二人が、お互いを支えあいながら生き抜いていく青春ミステリー。

    ■きっと読みたくなるレビュー
    現代の18歳を、現実的かつ幻想的に描いた作品です。

    受験や就職を決める、人生を左右するイベントが起こる絶妙な年齢。社会経験がないにも関わらず、なんのために大学に行くのか、どんな仕事に就きたいのかなど、重要なことに答えをださなければいけない。高学歴や高年収だけが人生の幸せとは限らないのに、周囲からのプレッシャーだけが襲ってくる。若い彼らの悩みや繊細な心の揺れが、ひしひしと伝わってくるんです。

    まぁとにかく、親が許せない。人間は生きていくために、時には他人の弱みに付け込むこともあるでしょう。しかし自分の子どもに対して、子どもが親を思いやる気持ちを利用することは、どうしても許せません。

    ただ二人が支えあいながら、純粋に懸命に、ただ前を向いて歩んでいく姿には求心してしまう。辻堂先生はいつも純粋な人間を美しく描くのがめっちゃ上手なの。読み終わった後は、心がすっかりキレイに洗われてしまうんすよね。

    若い人たちに明るい未来がやってくることを願わずにはいられません。これから社会で戦う若い子たちに読んで欲しい、素敵な青春ミステリー小説でした。

    ■ぜっさん推しポイント
    幼い頃は好き勝手に物事の判断をするもの。しかし年齢を重ねると、リスクと責任をともなう判断をしなければいけなくなる。様々な家庭環境があり、能力も違う18歳が、大人の第一歩目を判断していくんです。

    「決める」という難しさ、「生きるために学ぶ」ことの大切さが胸に刺さる物語。高校生の時に読みたかったなぁ

  • 主人公が、星さんがいないと乗り越えられなかったように、私も星さんがいないとこの本を読みきれなかったよ…

    星さんと出会えたおかげで、お互い自分の家の異常さに向き合うことができ、復讐の話が進み出す。
    2人の家庭で受けた傷は消えないと思うけれど、それに立ち向かい、成長した最後は素晴らしかった!

  • 「絶対に東大合格しろ」と過剰すぎるほどの勉強漬けで自由時間のない染野高志。
    これは教育虐待だと読んでいても気分が悪くなるほど。
    同じクラスの女子の星愛璃嘉は親からネグレクトを受けている。貧困家庭で、仕事をしない母に代わってバイトをして生活費を稼ぐ。
    二人とも違いはあれど親から逃れ、自由になりたいと思い詰めていた。
    他人に興味もなく誰とも関わらないはずの星が、染野の普通ではない様子に気づき声をかけたことがきっかけで、二人はお互いの家庭の状況を知る。
    深く共鳴した二人が、親への憎しみから復讐しようと決意する。
    その復讐とは…。

    親と同じ部類の人間に身を落とすことだけは避けたいという一筋の理性により結末は想定外であったが、これが出来得ることの最善だったのだろう。

    虐待を受けながらもどういう方法で復讐を成すべきか、いちばん良い方法を考えて突き進むときこそ、思わぬ力が発揮でき新たな自分を知ることができる。
    間違った道ではなく、選びとった道を行けるということにこの二人の出会ったのは偶然じゃなくて必然だったのかもと思った。

  • 虐待のお話ですね。
    教育虐待とネグレクト、暴力や暴言で、子供たちを支配する親がいるんでしょうね。悲しい限りです。主人公である2人には、幸せになってもらいたいです。

  •  「サクラサク、サクラチル」なんともこのタイトルにぴったりの表紙は、イラストレーターのしらこさんが手がけています。しらこさんは、乙女の本棚シリーズで「Kの昇天」そして窪美澄さんの「夜空に浮かぶ欠けた月たち」の表紙も手がけています。青とか、濃紺とか…そんなイメージだったので、今回の柔らかな緑と淡い桜のピンクは新鮮です!

    この作品には、高校3年生の染谷高志と星恵璃嘉が登場します。ストーリーは、染谷高志目線で展開されます。染谷高志は教育虐待を、星恵璃嘉はネグレクトを受けているのではないか…お互いに現状を話すことで気づけたことだった…。今の状況を効果的に壊し、親たちへのダメージを最大限与えるための復讐計画を一緒に考えることになる…。

     もうね、今うちの子が受験生なだけに、そして、ちょっと前まで上の子が受験生だっただけに…平穏な心では読めない内容もあったりして…あ、うちの子は東大なんか滅相もないんだけれど、ね(汗)。でも、このふたりの出会いがあってよかった…それがなかったら…と思うと怖くなります。

  • 親の世話をするために生まれた愛璃嘉。
    親の虚栄心を満たすために生まれた高志。
    自分の子供の頃に似てる所があり、最初は心が痛かったけど、腑に落ちたりできるとこもあり、もっと早く、この本が世に出ていたらと思う。
    そして、同じ環境で悩んだり苦しんでる人の手元に届いてほしいと願う。

    明日が来ることを楽しみにおもえるように。
    本当にそう思うけど、そう思えるようになったのは、随分大人になってから。
    ひかりのとこにいてねを読んでいるときにも思ったけど、大人の前では、子供は無力だと、つくづく感じる。



  • かたや東大一直線しか許さない親、かたや子育て放棄の親、両極端だが子虐め被害者という点では繋がっていてクラスでは浮き上がっている高3の染野高志と星愛璃嘉の2人がひょんなきっかけで互いに認め合い励まし合って行く。

    そんな二人が親の真の姿に気付いて行き、いかに真のダメージを親に与えることが出来るのか考え抜いた結果の策がメインテーマの作品です♪

    たぶんこうなるのでは?と思ったのと、陰湿に高志を妨害する真犯人はこれ!と思ったとおりの展開でしたけど、それでもついつい一気に読ませていただきました。
    へんに毒親たちが改心したり糾すことないままなのも良かったです。

    受験や模試の状況描写などなどはご自身東大卒の経験体験を描写していただいていますね笑

  • 受験戦争と家庭問題をテーマにした本作でしたが、高学歴、高収入家庭環境下における子どもへの虐待が描かれていることに少し新鮮味があるとともに、上手く青春小説としてまとまってた印象がありました。

    物語は、東大を目指すことを強要されている主人公と、自らと親の生活費を稼ぐためアルバイトしながら高校に通う、ヒロインが出会うことから始まります。そして2人はシンパシーを感じるとともに、お互いの家庭環境に疑問を持ち、復讐計画を練るというストーリー。

    若干、虐待の描写に心が痛くなることが多かったのですが、ミステリー要素が複数あって作品としては十分楽しめたと思います。

    最後に個人的なことなのですが、自分も受験期に苦労したタチなので、辛い受験期を支えてくれた親には感謝したいなと思いました。

  • 東大合格の為に教育虐待を受けている高志と、貧困家庭でネグレクトを受けている星。
    一見、真逆の環境のように見える二人だけど、親に洗脳されて自分の意思がもてなくなっているところが、とても似ている。
    星の環境の方がぱっと見は不幸に見えるかもしれないけど、高志の環境の方がより親のコントロールや暴力暴言がひどく、読んでいて辛い気持ちになった。
    共鳴できる二人が出会えたことが救い。

  • 高志の恐怖心から始まった。母にあんなふうに言われてたら、態度を取られたら、高志のように思ってしまっても仕方がないと思う。自分が母親でもあのようにしてしまうのだろうか。パニック発作のことは理解できる。動機、嫌な汗。第1章の高志と愛璃嘉の辛い境遇を読んでいるときも辛かったけれど、復讐を決意してから加速度的に読み進めた。

    怖かった。昔、ノストラダムスやアルマゲドンにおびえていた時代があった。でも、そんな架空のものよりも、今回の話の方がよっぽど現実に起こりそうで、恐怖なはず。家庭内トラブルや殺人は決して珍しくないことなのに、”怖いこと”として見れていなかった。
    読後の今は、見えない予言よりもこういう家族関係の方が怖いとわかる。誰でも彼らの親のようになってしまう可能性はあるし、きっと少なくない人たちが同じ被害、虐待にあっているのだろう。

    今回の”復讐”の結末は、いい意味で意外だった。あっさりしていた。でも現実だと思った。伏線回収は面白かった。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。東京大学在学中の2014年、「夢のトビラは泉の中に」で、第13回『このミステリーがすごい!』大賞《優秀賞》を受賞。15年、同作を改題した『いなくなった私へ』でデビュー。21年、『十の輪をくぐる』で吉川英治文学新人賞候補、『トリカゴ』で大藪春彦賞受賞。

「2023年 『東大に名探偵はいない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

辻堂ゆめの作品

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