([ん]1-6)3時のおやつ (ポプラ文庫)

  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591141663

感想・レビュー・書評

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  • それにしても『三時のおやつ』とは
    なんと甘美な響きなんだろう。

    生まれた時からコンビニがある今の若い人にはピンとこないだろうけど、
    僕が子供だった頃はまだ
    ご飯の時間以外に何かを食べるなんてすごく贅沢なことだった。
    (勿論お金持ちの家は普通に食べてただろうけど)

    幼い頃に両親を亡くし児童養護施設で育った僕には
    そんなおやつの記憶も数少ないんやけど、
    母親に唯一作ってもらったホットケーキと
    食パンの耳をカラッと揚げて砂糖をまぶした「カリッと揚げ耳パン」の味は
    今でもまだ舌が覚えている。

    あっ、あと施設で作ってもらったいちごやメロン味のフローズンデザートの「シャービック」と
    (知ってる人いる?)

    友達の家に行くと必ずおばさんが作ってくれた
    もやしとコーンたっぷりの
    「サッポロ一番味噌ラーメン」も忘れ難い美味さだったなぁ~。


    ということで本書は、
    伊藤たかみ、犬童一心、大崎梢、大島真寿美、加藤知恵、越谷オサム、東直子、宮下奈都、柚木麻子など
    三十人のクリエイターたちがおやつにまつわる思い出を語った、
    食いしん坊体質なアナタなら
    よだれタラタラな食エッセイ集。


    中でも面白かったエピソードを挙げると
    夜中の三時にお餅を揚げて塩で食べる「揚げおかき」を作って食べた絲山秋子さんの話。
    (しかも本人は記憶にないらしい笑)
    同じく絲山さんで笑ったのは、小学生時代、荷物用エレベーターを自ら作って木の上でバナナを食べていた話。
    木の上で誰にも邪魔されずに食べるバナナは笑いたくなるほど美味しいらしい(笑)

    あと、桃太郎世界を支配し動かしているものは明らかに吉備団子で、悪い鬼をやっつけたのは桃太郎ではなく吉備団子なのだと
    吉備団子最強説を力説する森見登美彦さんの話。
    吉備団子に似ているという奥様へのノロケ話は必読(笑)。

    さつま芋や煮干しなど昭和初期っぽい(笑)おやつ人生を歩いてきた女優のミムラさんが出会った、
    ぴょんぴょん飛び跳ねるくらい衝撃的な美味さのグミベアーの話や
    (必然性のないもののほうがおやつ感が強く、ご飯から遠いほうがよりおやつっぽいという考察には妙に納得)

    「おやつ、まだ~?」
    「あともう少し、三時になってから~」
    という親子のやりとりにほっこりし、
    塩トーストの衝撃に
    読んでる僕の喉までごくんと鳴った平松洋子さんの話。

    他にもタルトへの過剰な思いに爆笑必至の万城目学さんの話や
    母や妹に食べさせたくて大好きな給食のチョコクリームを食べずに持って帰る益田ミリさんの話にはちょっとウルウルしたし、
    僕自身東京に来て初めて食べた時はその美味さに感動すら覚えた、
    ペヤングソース焼きそばの隠された謎に迫る(笑)原宏一さんの話も面白かった。


    疲れを癒やし
    気分をリフレッシュさせてくれる
    おやつという存在。

    おやつを食べているとき、人は脳内幸福物質が分泌され
    誰も彼もが笑顔になれる。

    そして職場や学校で人間関係を円滑にするコミュニケーションツールとしても
    絶大なる力を発揮してくれる頼もしいヤツ。

    日本人の美意識からくる
    「おもてなしの心」は
    実は三時のおやつという習慣にも
    ひそやかに息づいているような気がします。

    表紙も可愛いのでインテリアにもなるし(笑)
    (どんなインテリアや!)
    一つのエピソードがサラッと読める長さなので
    通勤通学のお供にもピッタリだし、
    食エッセイ好きなら
    なおさら至福の時が過ごせる一冊ですよ(笑)

  • 30人のクリエイターによる、おやつエッセイ。子供の頃に食べた懐かしいおやつから、大人になって初めて食べたような物まで様々なおやつがエピソードと共に綴られている。中にはおやつ?と思うようなものもあるが、美味しいものの話は読んでいて本当ニヤニヤしてしまう。わかるわかる!とか、初めて聞いた!とかいちいちリアクション大きくしながら一気に読んでしまった。おやつの思い出って、なんだか幸せを感じてしまう。
    私の思い出のおやつってなんだろう?小さい頃のタマゴボーロ、ヒロタのシュークリーム、ピープ(シフォンケーキみたいな菓子パン?今でも時々食べます)、おばあちゃんが作ってくれたはったい粉(はったい粉の話も文中にあり。)、アメリカンドーナツ、パウンドケーキ、ゼリエースとプリンミクス、ツインクルチョコレート…思い出は尽きない。

  • うふっ。思わずにやけてしまうほどの、
    懐かしくておいしそうなおやつがてんこ盛りです。
    そして、この豪華な作家さんのラインナップ♪

    まず「サンボのとらバターで焼いたホットケーキ」は外せない。
    「サンタの長ぐつ」履いた!履いた!
    「吉備団子」初めてホンモノを見たときの感想…わかる~。
    だって桃太郎が犬、猿、雉を釣って(失礼)鬼を退治したパワーの源ですよ!
    おむすびのような大きいお団子を想像しちゃってたもの。

    定番のお菓子も、皆さん独特の食べ方のこだわりがあったりしてね。
    初めて聞くお菓子や、なかには「おやつなの?」と言いたくなるような思い出の味もあって楽しかったです。

    そんな私の思い出のおやつは、母の手作りのケーキ。
    そのなかでも一番好きだったのが「マドレーヌ」
    それもケーキ屋さんみたいにラッピングしてあってね。
    ランドセルをしょって学校から帰ってきて、ドアを開けた瞬間、
    母の焼くケーキの香りがしたときの、あのうれしかったこと!
    今と違って、製菓材料を揃えるのがそう簡単ではなかった時代。
    (生クリームは近所のケーキ屋さんから牛乳瓶で分けてもらっていたみたい)
    その頃住んでいた仙台のサトー商会(?)というお店に、
    よく母に連れられて行った記憶があります。

    偏食で、食の細い子供だった私が大喜びで食べるので、
    なんとかおやつででも栄養を摂らせようと、がんばってくれたんだと思います。
    こうして書きながら、今では自分一人で大きくなったみたいに、
    母に向かって生意気な口をきいてしまう自分を反省しきりです。

    なんだか自分の思い出のおやつ自慢みたいになってしまったけれど、
    誰もがおもわず「私の思い出のおやつはね~」って話したくなるような、
    至福の一冊だと思います♪

    • honno-遊民さん
      「児玉清さんのような方」?、それはとんでもない思い込み(笑)児玉氏の足元にも及ばない、本を読みのがただ好きな、しがない年金生活者です。これか...
      「児玉清さんのような方」?、それはとんでもない思い込み(笑)児玉氏の足元にも及ばない、本を読みのがただ好きな、しがない年金生活者です。これからもブクログに読んだ本の感想を載せるので、気が向いたら寄ってください。
      2015/06/23
    • 円軌道の外さん

      杜のうさこさん、はじめまして!
      関西出身で東京在住、
      読書は勿論、映画と音楽と猫には目がないプロボクサーです。
      遅くなりましたがリ...

      杜のうさこさん、はじめまして!
      関西出身で東京在住、
      読書は勿論、映画と音楽と猫には目がないプロボクサーです。
      遅くなりましたがリフォローありがとうございました(^o^)
      (あと、沢山の花丸ポチ押していただき感謝感激です!)

      それにしてもお腹が鳴りだすほど
      素敵なレビューですね!(笑)
      ケーキ屋さんみたいにラッピングしたお母さん手作りのマドレーヌのエピソードに
      ほっこり胸があたたかくなりました。

      僕もこの本、表紙の破壊力に
      まんまとヤラれ購入したんですが、かなり面白かったです。
      絲山秋子さんやモリミーやミムラさんや原宏一さんの話が好きでした。

      しかし、おやつって不思議ですよね。日本人なら誰しも一つくらいは思い出のおやつについて
      小一時間くらいは語れそうですもんね(笑)

      とりとめないことダラダラと書いてしまいましたが(汗)、
      杜のうさこさんの本棚を拝見したところ
      猫や料理やパンやお菓子など
      好きのツボも似ているみたいで
      嬉しくなってしまいました(笑)
      またオススメありましたら
      教えていただけると嬉しいです。

      ではでは、これからも末永くよろしくお願いします!

      コメントや花丸ポチいただければ
      必ずお返しに伺いますので
      こちらにもまた気軽に遊びに来てくださいね。
      (お返事は仕事の都合によってかなり遅くなったりもしますが、そこは御了承願います…汗)

      ではでは~(^^)
      2015/06/27
    • 杜のうさこさん
      円軌道の外さん、はじめまして!
      こんな拙いレビューを気に入って下さって、ありがとうございます!
      私も同じく、この表紙につられました~
      ...
      円軌道の外さん、はじめまして!
      こんな拙いレビューを気に入って下さって、ありがとうございます!
      私も同じく、この表紙につられました~
      美味しい本の誘惑には抗う術を持ちません(笑)

      そして、フォローと、たくさんの花丸をありがとうございます!
      (まるで、スターマインのプレゼントみたいに嬉しいです)

      実は、だいぶ前からこっそり本棚にはおじゃましてました。
      「うわぁ~好きなものがいっぱい!」って、わくわくしながら♪
      自分の大好きな本棚さんを見つけたときの感動は、円軌道の外さんならもちろんわかってくれますよね~。
      ですから、フォローしてくださったときには、嬉しくて嬉しくて~!!

      それにしても、円軌道の外さんは本当に楽しくてやさしくて温かい、素敵なレビューを書かれる方ですね~。

      でも、ひとつだけ困ったことがあります(笑)
      それは、レビューがあまりに面白くて、自分の本読みのペースが遅くなってしまうことです(^.^#)

      私もレビューするときは、なるべく素直な感想を書きたいと思っています。
      そのせいか、テンションMaxだったり、逆にとても感傷的になってしまったりで(汗)お恥ずかしいです。

      ブクログ始めてまだ半年足らず、レビューもコメントも、いまだにドキドキです。
      こんな素敵な出会いができて、本当に嬉しいです。
      こちらこそ、気軽に遊びに来て下さいね♪
      末永くよろしくお願いします!!
      おススメもぜひぜひです♪

      では、また、遊びにいきますね~!
      2015/06/28
  • 一部作家さんじゃない方も入っているが、ほぼ作家さん達なので、やはり言葉のプロにかかると昔のおやつ及びその背景が俄然生き生きと蘇ってくる。
    文筆業の方達って、表現力だけでなく記憶力も素晴らしいのだなあ。

    内容としては、安っぽいおやつの方が、なんだか懐かしくて楽しい。
    各タイトルのおやつだけではなく、それぞれの本文に書かれているおやつの中にも懐かしいものがいっぱいあった。

    そういうわけで、自分がそんな年代だからなんだろうけれど、40〜50代の方が書いているおやつの方が魅力的で、大好きな万城目学氏はお若いから小洒落た「タルト」だったのが個人的に残念。

  • 2022/1/7

    すごく良い。
    3時のおやつにまつわる有名作家たちのエッセイ集。
    作風と違う雰囲気なのも楽しい驚きだし、初めて読む作家さんの作品一覧にも興味津々。
    「バタークリームケーキ/安東みきえ」が特に好き。
    「百円玉/中脇初枝」は衝撃事件が淡々と描かれていて、笑ってしまった。

    わたしのおやつは、風邪の時に食べるシュークリームかな。

  • 思い出の「3時のおやつ」について思い思いに自由に語られたエッセイ集。
    気楽に読めて息抜き本にぴったり!もちろん、3時のおやつと共に、昼下がりのひと時に。逆におなかがすいているときには避けたい1冊。

    もともともりみー関連書として手にしたのですが、十人十色のさまざまなおやつに彩られた素敵なエッセイ集だった。大人になって思い返すと、誰しもおやつに絡んで様々なことを思い出します。

    幼少期野原を走り回る子供だった私は、「木登りバナナ」にすごく親近感を覚える。そして「煮りんごセラピー」!読むだけで、りんご煮たい!!って気持ちがむくむく膨らむ一作。あぁ、りんご買おう。主人にりんご煮たいって言ったら、「は?」って言われた。

    こういうタイプのエッセイは、短い中にその人の人柄や歴史が垣間見えて楽しい。いつも新しい作家さんとの出会いを助けてくれる。

    個人的な話だけど、私の思い出のおやつを考えてみたところ、幼少期に母が作ってくれたゼリーとババロアが上下層になったケーキが真っ先に思い浮かぶ。当時岐阜という田舎にあって、生花(食べられるもの)が入っているという衝撃的な見た目を忘れることができず…
    それがなんと、最近東京駅で全く同じ形状・デザインのケーキを見かけ、再び衝撃を受けた。うちの母は先を行き過ぎていたのかもしれませんねぇ。。。

    --

    30人の人気クリエイターが語る、とっておきの“私のおやつ"!

    子どもの頃にいつもお母さんがつくってくれた懐かしいケーキ、自分で初めてつくったクッキー、友だちの家でごちそうになった不思議なおやつ、いちばんお気に入りのスイーツ、どんなに豪華なお菓子より魅力的だったアレ……30人の人気クリエイターが「おやつと言えばこれ! 」というとっておきを、それにまつわる思い出とともに語ります。
    ポプラ社の小説誌「asta*」掲載の人気エッセイ30篇をまとめた、おいしい記憶がたっぷり味わえるエッセイ・アンソロジーです。

  • まずもう表紙のドーナツの美味そうなこと。うおお。

    五十音に並べられたそれぞれのおやつ。
    井村屋のあんまん、いもだんご、カップヌードル、木登りバナナ、吉備団子、キュウリ、グミベアー、ごかぼう、ココナッツサブレ、さきいか、サンタの長ぐつ、塩トースト、タルト、ちいさくてかたくてしょっぱいもの、チョコクリーム、豆花、煮りんごセラピー、パウンドケーキ、バタークリームケーキ、はったい粉、パフェ、パン、百円玉、風船ガム、ペヤングソースやきそば、ホットケーキ、ホームランバー、めくるめく角砂糖、ラムネ、ロバのパン屋さん。

    大崎梢さんと伊藤たかみさんが認識していた性別と違ってて勉強になりました。あとペヤングの語源。

  • おやつにまつわるエッセイを50音順に読める贅沢な一冊。
    登場するクリエイター(作家さん)は、なんと30名。
    食エッセイにハマっているの大満足だった。

著者プロフィール

第9回電撃小説大賞〈大賞〉を受賞し、2003年『キーリ 死者たちは荒野に眠る』でデビュー。その他の著書に、『鳥籠荘の今日も眠たい住人たち』(電撃文庫)、『エンドロールまであと、』(小学館)など多数。

「2009年 『NO CALL NO LIFE』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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