- Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591153093
感想・レビュー・書評
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デモに参加しませんかというチラシからデモに参加し、そこで出会ったカメラマンと恋をし結婚した。アイはどうしても自分の血を分けた子供が欲しいと妊娠に向けて頑張るが妊娠せず、それも原因はアイ自身にあった。人工授精で何とか妊娠したが安定期に入る前に流産。今まで色んな事から免れてきたが、いざ自分が遭遇すると「なぜ」「どうして」わたしなのと思うように今までが綺麗事だったと感じ始めた。
親友のミナがレズビアンの彼女ミラと別れた。
理由はニューヨークでアイの初恋の相手と偶然遭遇し妊娠したからである。
その子を堕ろすというミナをアイは許す事が出来ず連絡を控えた。
※地震の時アメリカに行かなかった理由
「命の危機を、その恐怖を語る権利を得たかったから」アイはそんな権利を得ようと思った自分を、この上なく恥じた。
ユウからシリアの写真を撮る権利がアイにはあるという→ルーツだから。だかアイはそれは関係ない→ユウが出した答えは「そこに愛があるか」
それがあれば問題ない。
※ミナ=ALL(社会).アイ=i自分、ユウ=YOU詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
想像することの大切さを学んだ。
本は想像するということを教えてくれる。 -
一気読み。すごかった。
全然違うけど「サラバ」を読んだ時の感じを思い出した。なぜか引き込まれてしまう。気付いたらどんどんページをめくっていている感じ。
アイの複雑な矛盾するような繊細さ、私とは全然違うけど少しわかるような気がした。
普段、新聞もニュースも見ない私だが、世界中にはこんなにたくさんの人が犠牲になる出来事が、こんなにもあるのか、、と思わせられる。
ミナ、綾子、ダニエル、ユウ。アイは素敵な人に囲まれて幸せ者だと思う。
「この世界にアイは存在しません。」に囚われ続けるアイがそれを越えていく話。 -
マイノリティとして生きていくこと、紛争のない世界で生きていくこと、災害の多い地域で生きていくこと
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シリアに生まれ、アメリカ人の父と日本人の母のもとに来たアイ。彼女は自分のルーツと恵まれた環境に不安と罪悪感を抱えていた。
いつしか世界で起きた事件や災害の死者数をノートに記録することが習慣となったアイが、成長するなかで自身を肯定できるようになる物語。
今作では、世界で起きたことがニュースやノートの文章として時々登場した。そして中盤では、日本で起きた出来事もアイが経験したこととして描かれる。
その箇所を読んだとき、何故だか日本で起きたことが描かれることを想定していなかった自分に気づいた。それは世界で起きたことに心を痛めながらも、自分の身に起きることを想定していなかったアイと近いものがあったのかもしれない。
ラストシーンは、自分の存在を肯定できなかったアイがもう一度生まれ、自分の存在を再確認するかのようなシーンだった。とても素敵で印象的なシーンだったと感じた。
アイの繊細さが周りの人には向けられず自分本意な言動に感じる場面もあったけれど、自分の中に傲慢さや矛盾はあっても、それでも自分自身は自分の存在を肯定しようというメッセージを感じた作品だった。 -
想像はあくまで想像でしかあり得なくて、その事やその人のことがリアルにわかるわけではない。でも、だから想像することに意味がないわけではない。
想像することで、事や人に寄り添うことで、想像による関係ができる。ズレていようが、思いが届かなかろうが、無視をされようが、その関係とともに自分がこの世界に存在している事を規定する。
大切な人が、置かれている状況で選択するべきでない事を選択すると、その人は失ってほしくないものを失うことになる。
その事はもちろん残念な事だけど、だからその人が大切な人でなくなるわけではない。大切だという事はそういうことをひっくるめて大切なのである。
想像で繋がる事も、大切な人を大切と思うことも、自分の存在に関わるレベルの深さの、愛と呼ぶしかないものだと思う。 -
自分は何のために生まれてきたのか。
自分はこの世界に生きていていいのか。
誰かの幸福を踏みにじり、押しのけてまで、生まれ、生きている理由があるなら、知りたい。
そんな思いをずっと抱えて生きてきたシリア難民の子どもで養子の主人公アイの、自分自身の存在を受け入れるまでの物語。
西加奈子さんの作品の中では、あまり響かなかった。若い頃に読んでいたら、どっぷり感情移入していたかも。 -
読み始めの頃はなんて残酷な話なんだろうと思ってた。
子供特有のわがまま、自由さ、明るさ、それらがアイにはない。感情を押し込めるように生きている彼女を、読んでいてとても苦しかった。
人間バランス感覚が大事だなと思った。
価値観は人それぞれ。
でも自分だけ幸せは悪いという考えは何となく受け付けれなかった。
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西加奈子は極めてまっとうなことを書く。愛、友情の素晴らしさ。そんなのイマドキ、児童書だってストレートに書かないのに。
しかし、この小説を読んで感動するのは、二人の友情の後ろに、世界中で命を奪われたり、家族をなくしたりした人たちの姿がちゃんと見えるからだと思う。どんな美しい愛情や友情を描いても、この世にはなんの落ち度もないのに命を奪われる人がいて、その人たちの苦しみを考えたら、何が愛情だ、友情だ、恵まれた社会に生きてる人は呑気でいいね、と思ってしまう。あるいは、後ろめたさを感じてしまう。そこを、きちんと書いて、なおかつそれでも愛は大事だと言える。それは厭世的であったり冷笑的であったりするより、ずっと勇気がいることだし、様々な背景を持ち、考えも違う読者に納得させるのは、とても難しいことだけれども、西加奈子にはそういう才能がある。それは本当に稀有な才能なのだ。
何よりいいのは、西加奈子の本が売れてること。読みやすくて、わかりやすい。それでいて世界の抱える問題にちゃんと向き合っている。この本でアイが記したたくさんの死者たち。そんなの関係ないし興味ない、って層の人にも読んでもらえそうなところがいい。読んでほしい。
「誰かのことを思って苦しいのなら、どれだけ自分が非力でも苦しむべきだと、私は思う。その苦しみを大切にすべきだって」(p157,270)