夜がどれほど暗くても

著者 :
  • 角川春樹事務所
3.38
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本棚登録 : 777
感想 : 101
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758413473

作品紹介・あらすじ

志賀倫成(しがみちなり)は、大手出版社の雑誌『週刊春潮』の副編集長で、その売上は会社の大黒柱だった。
志賀は、スキャンダル記事こそが他の部門も支えているという自負を持ち、充実した編集者生活を送っていた。
だが大学生の息子・健輔(けんすけ)が、ストーカー殺人を犯した上で自殺したという疑いがかかったことで、
幸福だった生活は崩れ去る。スキャンダルを追う立場から追われる立場に転落、社の問題雑誌である『春潮48』へと左遷。
取材対象のみならず同僚からも罵倒される日々に精神をすりつぶしていく。
一人生き残った被害者の娘・奈々美から襲われ、妻も家出してしまった。
奈々美と触れ合ううちに、新たな光が見え始めるのだが……。

感想・レビュー・書評

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  • 一人息子が殺人を犯し、自殺をした。

    週刊誌の副編集長の志賀は、これまで自分がスクープを追いかけ、事実を追うものだったが、この事件をきっかけに反対に追われる身になる。

    両親を殺された奈々美は、その犯人の両親を恨む。

    被害者家族と加害者家族。どちらにも「正義」という名を振りかざし、無責任な立場からプライバシーを侵害される。
    現代の週刊誌による不倫問題を暴いた出来事や、SNSでの誹謗中傷などをテーマにしている。

    あーほんと、それわかる!と思う場面が何箇所も。
    私も芸能人が不倫しようが、誰かがネットで何を発言しようが、あまり興味はない。
    大勢でよってたかって、1人の人間をこてんぱんにやっつける今の世の中に疑問を持っている。
    そんなモヤモヤが随所に描かれていた。

    中山七里先生の作品を読んでいるというより、薬丸岳先生の本を読んでいる気分になってしまった(笑)
    そのくらい中山七里先生らしからぬ雰囲気だった。

    素晴らしい表現力、そして痛々しいリアリティある描写は、さすがは中山七里先生なのだが(*^^*)

    最後は少しホッとして、ほっこりできたかな。。。
    いつもの中山七里先生のキレがちょっと足りない気がしてしまった(^_^;)

    ⭐️は、3.5くらいかな。。。

  • 週刊誌の記者として芸能人のスキャンダルを追いかけてきた志賀。私生活をも赤裸々に暴く仕事ぶりに批判を受けながらも、仕事に誇りを持ち、自分なりの正義を持って働いてきた。
    しかし突然一人息子の健輔が人妻にストーカー行為を働き、挙げ句相手の夫を殺害し、女性と無理心中をしたとの疑いがかけられ、一気に追う側から追われる側へと追い込まれていく。平凡で幸せだったはずの生活は一変し、妻は家を出て行き、職場では閑職に追いやられ、見ず知らずの人からも悪意を投げつけられる。そんなどん底の日々にさした光が被害者遺族である奈々美だった…

    読む前は、週刊誌記者の父親が息子の冤罪を晴らすために奮闘する話なのかと思っていたが、全く違っていた。
    犯罪が起きたとき必ず生まれる、被害者遺族と加害者家族、本人は何も罪を犯していないのに犯人と同様な嫌がらせや迫害を受ける。理不尽だと思った。
    自分勝手な正義をふりかざし、まるで正しいことのように嫌がらせをする不特定多数には本当に頭にきた。
    最後のエンディングはちょっとできすぎで、そんなことあるかな…と思ったけれど、奈々美ちゃんも志賀も幸せになって欲しいと思った。

  • スキャンダルを扱う雑誌の副編集長の志賀。大学生の息子・健輔がストーカー殺人をし、その現場で自殺したと疑いがかけられた。スキャンダルを追う側から追われる側になった志賀。妻は実家に戻り、教授の残された子供にも襲われる。しかし、志賀はその子供と意思疎通を試みる。
    加害者側被害者側どちらも辛い目に遭う、読んでて苦しくなった。そして、マスコミの単純さにも。結末、実は犯人は、というところはさらっとしていましたが、内容は、格差社会やLGBTなど盛り沢山。志賀がいじめから守ろうと盾になっているとこ、しびれたね。

  • 週刊誌副編集長でゴシップ記事とか載せたの出してた志賀さんの息子が何とストーカー殺人!
    取材する側からされる側になり加害者家族として世間から非難囂囂、同業者からの執拗な取材攻勢...
    被害者家族と加害者家族の苦悩を描きながら、何かいー感じにまとまるお話。

    最後は絶対有り得ないだろぉぉぉ?って思いますけど、いー感じに終わってよかったです( ^∀^)
    葛城刑事はあの葛城さんでいーんですよね?

  • 犯罪の加害者家族、被害者家族の苦悩。
    そして家族の向き合い方。
    主人公のこれまでと合わせて考えさせられる作品でした。
    心が痛む描写の数々はやはり中山作品らしいもの。
    真相の終盤の展開は少し雑な気もしたけど。
    読み応えある1冊でした。

  • 芸能ネタ中心の「週刊春潮」で副編集長をつとめる志賀。
    スキャンダルを追う側だった彼が、殺人犯の父親として、取材される側となる。

    加害者遺族への、容赦のないバッシング。
    やり場のない怒りや、事件を信じられない心情は、よくわかる。

    被害者遺族にまつわる後半の展開は、ややむりがある気がした。

  • つい最近単行本で出たと思っていたが、ドラマ化されるからなのか、あっという間に文庫になった印象。
    今作はどのシリーズにも属さない単独の作品。
    「週刊春潮」の副編集長だった志賀はある日、息子が起こした事件により加害者家族となる。
    他人の不幸などのスクープを売りにしていた「週刊春潮」だった為に、逆に取材対象になってしまった志賀へのマスコミの攻撃は容赦ない。
    SNSなどもあり、個人が守られない今のご時世の恐ろしさを描いているのは、もちろんだったが、意外だったのが、志賀が息子の潔白を晴らす為に奔走する話だと思ってたのが、ひたすら世間の目に晒され、追い込まれていく話が中心だった。
    特に被害者遺族で、両親を失った奈々美の復讐心が恐ろしく、完全に犯罪なのに、志賀夫婦は奈々美を訴えもしないし、挙句の果てには罪の意識から、学校でいじめにあっていた奈々美を救った志賀。その志賀に心を開いて行ってしまう奈々美。
    中山七里作品には珍しくちぐはぐした印象で、全体的な感想は微妙…
    最終的に息子の潔白を調べ始める志賀だが、そのきっかけも意思が薄いし、ラストもいつものどんでん返しがなく、ちょっとイマイチだったかな…
    ドラマ化されるらしいけど、絶対見たくない。
    人の悪の感情をむき出しにしたドラマなんて、心が落ち込むだけのような気がする。

  • 内容紹介 (Amazonより)
    志賀倫成(しがみちなり)は、大手出版社の雑誌『週刊春潮』の副編集長で、その売上は会社の大黒柱だった。
    志賀は、スキャンダル記事こそが他の部門も支えているという自負を持ち、充実した編集者生活を送っていた。
    だが大学生の息子・健輔(けんすけ)が、ストーカー殺人を犯した上で自殺したという疑いがかかったことで、幸福だった生活は崩れ去る。スキャンダルを追う立場から追われる立場に転落、社の問題雑誌である『春潮48』へと左遷。
    取材対象のみならず同僚からも罵倒される日々に精神をすりつぶしていく。
    一人生き残った被害者の娘・奈々美から襲われ、妻も家出してしまった。
    奈々美と触れ合ううちに、新たな光が見え始めるのだが……。






    1ヶ月くらい前に読み終わっていたのに レビュー書くのを忘れていました。
    WOWOWで上川隆也さん主演ドラマ化と知り読んだのでした。
    真犯人を推理する内容なのかと思い読んでましたが  そうではなく被害者家族や加害者家族の世間からの誹謗中傷などで更なる被害が降りかかってくるといった内容でした。
    ラストに真犯人がわかるのですが えっ?そうなの?って思ってしまいました。
    殺人犯の家族の立場って ちょっと恐ろしすぎて想像出来ません。もう生きていけないと思ってしまいそう...

  • 犯罪加害者家族と被害者遺族のお話。
    最終的に理想的な結末だったけど、実際はこうは行かないだろうな。
    一人息子が大学講師にストーカー殺人の挙句に自殺。
    迫害を受けながら自ら事件の取材をする新聞記者の加害者の父親。
    そして被害者の一人娘へのイジメ問題。
    中学生ってこんなに残酷で怖いの?息子の学年では、いじめなんて無縁の学校だったので、ちょっと想像できない。
    真実の追求と被害者の父親が父性に目覚める下りが良くって徹夜読書で一気読み。

  • 著者は毎月出版を目指している最中であるが、今回の作はズバリ週刊文春に対するものであったようだ。現在の週刊誌をクソ味噌に貶しており、これは文春に対する警告の書のようでもある。事件の方は大したトリックもなく、中国留学生による犯罪といったものであり、これも現代への警鐘でもあるのか。ただ事件の解決が心地よい結末であったのは救いであった。

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著者プロフィール

1961年岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー。2011年刊行の『贖罪の奏鳴曲(ルビ:ソナタ)』が各誌紙で話題になる。本作は『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』『追憶の夜想曲(ノクターン)』『恩讐の鎮魂曲(レクイエム)』『悪徳の輪舞曲(ロンド)』から続く「御子柴弁護士」シリーズの第5作目。本シリーズは「悪魔の弁護人・御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲~(ソナタ)」としてドラマ化。他著に『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『能面検事の奮迅』『鑑定人 氏家京太郎』『人面島』『棘の家』『ヒポクラテスの悔恨』『嗤う淑女二人』『作家刑事毒島の嘲笑』『護られなかった者たちへ』など多数ある。


「2023年 『復讐の協奏曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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