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出版禁止 死刑囚の歌 (新潮文庫)
- 長江俊和
- 新潮社 / 2021年2月27日発売
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2024年4月14日
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すみせごの贄 (角川ホラー文庫)
- 澤村伊智
- KADOKAWA / 2024年3月22日発売
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待望の比嘉シリーズ。相変わらずどの話もユニークで楽しい。
シリーズものとして登場人物の引き継ぎはあるけど、あくまで人物説明と事後処理を簡略化するための装置でしかなく、メインディッシュたる恐怖のモチーフは毎回違うあたりやはり信頼できる。
はやく長編で読みたい。
2024年4月13日
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私の生活改善運動 THIS IS MY LIFE
- 安達茉莉子
- 三輪舎 / 2022年9月16日発売
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可処分所得が増えるにつれ衣食住その他に少しずつ贅沢をするようになり、自分の人生に加わった新しい彩りに心が踊った経験は誰しもあると思う。本作はそれが人生のやや遅いステージで到来した作者の心情を綴ったもので、その感動を追体験させられるような文章は心地よくはあるのだけれど、言ってしまえば周回遅れな作者の体験談が読者に気づきを提供できるかを考えると少し疑問ではある。グルメだけど汚部屋に住んでる、みたいな快楽追求の方向がアンバランスな人には刺さるのかな。
あと作者のメンタルヘルスが事あるごとに損なわれているのが気になる。個人的には生活の彩りって安定した収入と身体的健康っていう地盤があってこそだと思うので、大変失礼ながらこの方はその2点の改善が先決じゃないかな。
2024年4月6日
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「科学的」って何だ! (ちくまプリマー新書 66)
- 松井孝典
- 筑摩書房 / 2007年9月1日発売
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終始つまらなかった。
南氏が相槌屋にしかなっておらず、テーマが深まらない。結果的に松井氏の雑感が散文的に展開されるだけになっている。
2024年3月31日
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月世界の無法者―キャプテン・フューチャー (1980年) (ハヤカワ文庫―SF)
- エドモンド・ハミルトン
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装丁に惹かれて考えなしに買ったが、本作はフューチャーメンシリーズの『輝く星々のかなたへ!』の続編な模様。とはいえ登場キャラに深いバックストーリーがあるわけでもないので、本作から読んでも特に支障はない。
超ハイペースなご都合主義スペクタクル。月と地球を易々と往復するくせに電話はできない頓珍漢な設定が愛しい。思い切った口語訳と単純明快なストーリーでサクサク読み進められるので、SFの皮を被った絵本の世界に2時間ぐらい浸りたいときにちょうどいい。
古本屋で探すものが増えたな。
2024年3月31日
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粘膜蜥蜴 (角川ホラー文庫)
- 飴村行
- KADOKAWA / 2009年8月25日発売
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意外にミステリ要素が強く新鮮だった。相変わらずどこまで本気なのかがわからない。トカゲ人間が存在する世界で種明かしをされたところで変な笑いしか出てこないんだよな。
2024年4月3日
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粘膜人間 (角川ホラー文庫)
- 飴村行
- KADOKAWA / 2008年10月25日発売
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好き。モノホンの河童が出てくるようなお下劣バカストーリーなのに、五感に訴える表現は終始丁寧で、同じエログロナンセンスでも首チョンパ赤インクブッシャー系B級映画では得難い鮮烈なグロにブン殴られる。
2024年3月29日
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ジムグリ (集英社文庫)
- 飴村行
- 集英社 / 2018年1月19日発売
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非常に好き。心に闇を抱えた主人公が、闇との相性がいい(意味不明)と言われジワジワと地下の世界に心を奪われていく様子と、住人の胡散臭さと地下世界の陰鬱なイメージとが相まって終始気持ち悪かった。ツチヘビとかシャーベとか妙にイメージしやすいモチーフでの飾り付けが見事。写実的な表現がうまいんだと思う。
理解不能な部分も多く、博人のキャラのブレ具合は気になったけど、画の強さだけで楽しめた。初飴村行だったのでグロ要素の期待値の低さもあったと思う。
2024年3月26日
正直理解できなかった。
当初は「オフィスワーカーは同調圧力によって類型化される」という話かと思ったんだけど、そう読むには各登場人物が圧力に抵抗出来すぎていて(好きなコスメに囲まれてみたり、異性ウケを放棄してみたり、中途半端にガールズパワー的な要素を散りばめたのが原因だと思う。出来てんじゃん、抵抗)コンセプト的に不徹底だし、同調圧力関係なく人間似てるよねという話であれば、同一性から出発して結果的にカラーがにじみ出ている日本のオフィスビルをスタックとして見るより、ジョブディスクリプション基準で容易に代替可能な部品として寄せ集められた外資のキュービクルの方が適例ではと思う。
社会に対する皮肉を意図したものなのはわかるんだけど、意図する効果と、それに伴って結局何を主張したいのかという点があまりに不明瞭で、皮肉というよりは結論のない愚痴に突き合わされているよう。作者のしたり顔だけが浮かんできた。
2024年3月23日
第170回芥川賞受賞作品。
最初は目が滑って仕方がなかった。登場人物の牧名は目の前の現象に脳内検閲を通った当たり障りのない感想を提出するだけで、信条らしい信条がなく(というより、抑圧している)、饒舌でありながら主張が何一つとして頭に入ってこない。彼女自身がAI的で、この人物に視点を置く大胆さがすごい。
脳内検閲に阻まれ方向転換を繰り返すばかりで何が言いたいかわからない文章を追うなか、嫌悪感マックスの「ホモ・ミゼラビリス」の導入で徐々に作品の方向性が見えだし、ポリコレの不気味さを具現化したような同情塔のディストピア具合にようやくメッセージ性がみえる展開が見事。
2024年の社会の気持ち悪さをフリーズドライしたような作品で、10年後に読み返すのが楽しみ。
2024年3月20日
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花束は毒 (文春文庫 お 82-1)
- 織守きょうや
- 文藝春秋 / 2024年1月4日発売
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2024年3月17日
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対怪異アンドロイド開発研究室
- 饗庭淵
- KADOKAWA / 2023年12月22日発売
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設定勝ち。怪異というゲームイベントの裏側をデベロッパーツールで覗こうとするようで、ゲームデザイナーらしい怪談へのアプローチだと思う。これまで「そういうものだから」と納得するほかなかった怪談の裏側にはじめて頭を突っ込めたような快感がある。
アリサの先進性、得られた記録の重大さに対する世間の反応があまりにアンバランスで、それに伴って研究所の成り立ちに色々と疑問が生じること、いかにもラノベ/アニメっぽいキャラづけ・口調づけ、会話主体で話を進行させる作品としての軽さは個人的に好きじゃない。
良くも悪くも設定の面白さ一本で押し通した感がある。異世界アニメみたいなギルティープレジャー。
2024年3月17日
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火のないところに煙は (新潮文庫)
- 芦沢央
- 新潮社 / 2021年6月24日発売
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2024年3月18日
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ゆうずどの結末 (角川ホラー文庫)
- 滝川さり
- KADOKAWA / 2024年2月22日発売
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2024年3月9日
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かにみそ (角川ホラー文庫)
- 倉狩聡
- KADOKAWA / 2015年9月25日発売
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2024年3月3日
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近畿地方のある場所について
- 背筋
- KADOKAWA / 2023年8月30日発売
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なんだオムニバスかよと思ったら表題を貫徹してくれて嬉しかった。得体の知れない過去の怪異に複数筋からジワジワ迫っていく感覚は初体験で、装丁含めた雰囲気もいいし、袋綴じも楽しい。構成勝ちのモキュメンタリーだと思う。
素人目にも粗い文章が多いのが残念。伝聞なのにやたら解像度高い部分があったり、穴を塞ぐためにやたら説明的でかえって不自然だったりも。
とか文句言いながらも、お釣りがくるぐらいとにかく楽しいホラーだった。
2024年3月3日
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黄色い家 (単行本)
- 川上未映子
- 中央公論新社 / 2023年2月20日発売
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社会のセーフティネットに引っかからない、いわゆる境界性知能の人たちやその子どもたちのポートレートという感じで、こういう人って社会にたくさんいるだろうなあと昔かじった刑事政策を思い出しながら読んだ。
身の回りの大人に寄りかかる以外に助けの求め方を知らない主人公が特に痛ましい。一般論として「金に執着しても幸せにはなれない」というのはそりゃそうなんだけど、家族という後ろ盾のない主人公のような人間にとっては結局金こそが最も確実な生活基盤となるわけで、衣食住が足りてて小説を買って読んでネットにレビューするような人間(自分含め)の尺度では理解できない心理なのは弁える必要があると思う。金・疑似家族への執着は家族の加護に対する憧れの裏返しで、そうすると当然金は足りない(稼ぎ手としての親の代替を求めると、花が作中で桃子を詰めたように「死ぬまで」の金が必要になる)し、仲間の頼りなさに鬱憤がたまって関係にヒビが入るのは傍から見ると当然も当然すぎる結末なので、必死にもがく主人公がなおのこと痛ましい。
川上未映子作品はこれと『乳と卵』と『すべての真夜中の恋人たち』しか読んでないけど、教養はないけどStreet smartで、それでいて自己分析が弱くてアウトプットが不器用で、恋愛に対して潔癖な主人公にどうしても共感できない。
主人公の境遇を考えると、「れもん」の客に父性のかけらを見てハマり込み、自身と同じような子供を再生産するのが最もよくあるパターンな気がするけど、本書の花はあくまで知性的・お上品に物語を終える。
風水に執着させるという工夫はあるが、どうしても「社会的弱者に”まともな”人間を挿入して観察してみました」感が拭えず、リアリティの面では主人公のまともさがこの小説の弱点になっている気がした。ので星4。
2024年3月2日
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ハーレムの熱い日々 (講談社文庫)
- 吉田ルイ子
- 講談社 / 1979年1月29日発売
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年表を読むだけでは知り得ない、当時のハーレムの生のスナップショットみたいな作品。最高です。
2024年2月27日
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「最悪」の医療の歴史
- ネイサン・ベロフスキー
- 原書房 / 2014年1月28日発売
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流し読み。過去のトンデモ療法がひたすら列挙されるだけで、なぜそうなったのか(あるいはなぜ改善されなかったのか)にはほぼ言及がなく、題材がいいだけに浅さが惜しい。
紹介例を読んで思うに、反証可能性がないこと(たとえば、ダニエル・ベッカーは武器軟膏の効力の"科学的根拠"は瀕死の男の動物霊気が凝り固まったもの(P. 72)だという…観測不能なものを持ち出されては反論のしようがない)、治験の概念がないこと(療法がランダムでAnecdotal、たまーになんとなく効いた風な例があったんでしょう)+医療界の権威主義が主な原因だったのではという気がする(この本だけでは「気がする」としか言えない)。
それと、「現代の医療も未来から見れば同じかもね」という感想がちらほらあるが、データと知見の蓄積がある現代医療は上の点で過去のものと決定的に違っているし、だからこそ冒頭のデイビッド・ウートンの「2400年の医療の歴史のうち2300年は間違っていた」という主旨のコメントがあるわけで、そこを無視した安直な感想は現代の科学者にあまりに失礼でしょう。
2024年2月18日
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我々は、みな孤独である (ハルキ文庫 き 8-1)
- 貴志祐介
- 角川春樹事務所 / 2022年5月13日発売
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2024年2月11日
良くも悪くも詩に近い。
「人は心からも血を流す」という言葉に感動できる読者と困惑する読者とで評価が二分するだろうが、自分は後者。このフレーズがある意味この本の論の典型で、論拠の提示も敷衍もなく、要するに「自分はそんな気がした」という事実の披露に過ぎないので、このフレーズ自体をありがたがれる人には刺さるが、そうでないと「あなたにとってはそうなんですね」の一言で終わってしまう。
さらに言えば、作者の「そんな気がした」は尊重されるべきだが、それが人生経験から得られた「事実」として語られる瞬間があり、危うい。そして、自分の発想に我田引水する際は他人の著作をアッサリと切り取ってしまう二面性が怖い。
自分のバックグラウンドが法律なのもあると思うが、言語に限界があるのはわざわざ指摘するまでもなく、だからこそ我々は一語一語の定義を積み重ねながらその機能性を高めてきたわけで、たとえば「私にとっていつくしみとはこういう意味です」と宣言するのは構わないが、そう理解されるべきだと言われると突っ込まざるを得ない。
(「いつくしみ」の例を深堀りすると、作者は導入にローマ法王をひいているが、法王がItsukushimiなんて言葉を使うわけがない。調べると"MISERICORDIA"というPityとCompassionのニュアンスを併せ持つ単語のようで、そのうちCompassionのニュアンスを持ち帰って日本語の「いつくしみ」の定義を拡大しているようだが、こちらのニュアンスは日本語でいう「同情」あたりに棲み分けされるのが相当だろう。神谷美恵子や石牟礼道子のくだりは、無理やり拡張した「いつくしみ」の例として読むより、MISERICORDIA≒Compassion≒同情の例として読んだほうがスッと落ちませんか)
青少年に語る体をとっているが、その実態は反論を避けながら上から一方的に教える立場でありたいというエゴイズムだろう、というのは穿ち過ぎか。
2024年2月25日
『鈍色』なしでも十分成立していると思うが、いかんせん文章が現代的なのでいかめしい年代物のゴシック小説的な雰囲気はない。まあこればっかりはどうしようもないか。
2024年1月27日
2024年1月27日