小説としてのディテールよりもトリックの面白さ優先という印象。自分には合わなかった。
メインの短歌にしても、いかにもトリックのセットアップという感じがしてノれず、中身も縦読みレベルのギミックで正直期待外れ。
(他の作者と比べるのは失礼だけど…貴志祐介氏の『梅雨物語』はその点うまく出来てたなと)

…長江氏のバックグラウンドを考えるに、エンタメ性のあるモキュメンタリーをあらゆる媒体で作ってみたいという意識が強いと思うので、そもそも小説としての完成度を求めるのはお門違いなのかも。

2024年4月14日

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読書状況 読み終わった [2024年4月14日]
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待望の比嘉シリーズ。相変わらずどの話もユニークで楽しい。
シリーズものとして登場人物の引き継ぎはあるけど、あくまで人物説明と事後処理を簡略化するための装置でしかなく、メインディッシュたる恐怖のモチーフは毎回違うあたりやはり信頼できる。
はやく長編で読みたい。

2024年4月13日

読書状況 読み終わった [2024年4月13日]
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可処分所得が増えるにつれ衣食住その他に少しずつ贅沢をするようになり、自分の人生に加わった新しい彩りに心が踊った経験は誰しもあると思う。本作はそれが人生のやや遅いステージで到来した作者の心情を綴ったもので、その感動を追体験させられるような文章は心地よくはあるのだけれど、言ってしまえば周回遅れな作者の体験談が読者に気づきを提供できるかを考えると少し疑問ではある。グルメだけど汚部屋に住んでる、みたいな快楽追求の方向がアンバランスな人には刺さるのかな。
あと作者のメンタルヘルスが事あるごとに損なわれているのが気になる。個人的には生活の彩りって安定した収入と身体的健康っていう地盤があってこそだと思うので、大変失礼ながらこの方はその2点の改善が先決じゃないかな。

2024年4月6日

読書状況 読み終わった [2024年4月6日]
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終始つまらなかった。
南氏が相槌屋にしかなっておらず、テーマが深まらない。結果的に松井氏の雑感が散文的に展開されるだけになっている。

2024年3月31日

読書状況 読み終わった [2024年3月31日]
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装丁に惹かれて考えなしに買ったが、本作はフューチャーメンシリーズの『輝く星々のかなたへ!』の続編な模様。とはいえ登場キャラに深いバックストーリーがあるわけでもないので、本作から読んでも特に支障はない。
超ハイペースなご都合主義スペクタクル。月と地球を易々と往復するくせに電話はできない頓珍漢な設定が愛しい。思い切った口語訳と単純明快なストーリーでサクサク読み進められるので、SFの皮を被った絵本の世界に2時間ぐらい浸りたいときにちょうどいい。
古本屋で探すものが増えたな。

2024年3月31日

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意外にミステリ要素が強く新鮮だった。相変わらずどこまで本気なのかがわからない。トカゲ人間が存在する世界で種明かしをされたところで変な笑いしか出てこないんだよな。

2024年4月3日

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好き。モノホンの河童が出てくるようなお下劣バカストーリーなのに、五感に訴える表現は終始丁寧で、同じエログロナンセンスでも首チョンパ赤インクブッシャー系B級映画では得難い鮮烈なグロにブン殴られる。

2024年3月29日

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非常に好き。心に闇を抱えた主人公が、闇との相性がいい(意味不明)と言われジワジワと地下の世界に心を奪われていく様子と、住人の胡散臭さと地下世界の陰鬱なイメージとが相まって終始気持ち悪かった。ツチヘビとかシャーベとか妙にイメージしやすいモチーフでの飾り付けが見事。写実的な表現がうまいんだと思う。
理解不能な部分も多く、博人のキャラのブレ具合は気になったけど、画の強さだけで楽しめた。初飴村行だったのでグロ要素の期待値の低さもあったと思う。

2024年3月26日

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正直理解できなかった。
当初は「オフィスワーカーは同調圧力によって類型化される」という話かと思ったんだけど、そう読むには各登場人物が圧力に抵抗出来すぎていて(好きなコスメに囲まれてみたり、異性ウケを放棄してみたり、中途半端にガールズパワー的な要素を散りばめたのが原因だと思う。出来てんじゃん、抵抗)コンセプト的に不徹底だし、同調圧力関係なく人間似てるよねという話であれば、同一性から出発して結果的にカラーがにじみ出ている日本のオフィスビルをスタックとして見るより、ジョブディスクリプション基準で容易に代替可能な部品として寄せ集められた外資のキュービクルの方が適例ではと思う。
社会に対する皮肉を意図したものなのはわかるんだけど、意図する効果と、それに伴って結局何を主張したいのかという点があまりに不明瞭で、皮肉というよりは結論のない愚痴に突き合わされているよう。作者のしたり顔だけが浮かんできた。

2024年3月23日

読書状況 読み終わった [2024年3月23日]
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第170回芥川賞受賞作品。
最初は目が滑って仕方がなかった。登場人物の牧名は目の前の現象に脳内検閲を通った当たり障りのない感想を提出するだけで、信条らしい信条がなく(というより、抑圧している)、饒舌でありながら主張が何一つとして頭に入ってこない。彼女自身がAI的で、この人物に視点を置く大胆さがすごい。
脳内検閲に阻まれ方向転換を繰り返すばかりで何が言いたいかわからない文章を追うなか、嫌悪感マックスの「ホモ・ミゼラビリス」の導入で徐々に作品の方向性が見えだし、ポリコレの不気味さを具現化したような同情塔のディストピア具合にようやくメッセージ性がみえる展開が見事。
2024年の社会の気持ち悪さをフリーズドライしたような作品で、10年後に読み返すのが楽しみ。

2024年3月20日

読書状況 読み終わった [2024年3月20日]
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気持ちよく騙された。一向に素性のわからない婚約者が怪しいとは思いつつも、DNAの話と長野の登場でその可能性を消しちゃったって人は多いと思う。あえて書き切らない結論も好み。
文章は弁護士らしく丁寧すぎるほど丁寧で、たしかに焦れったい部分もあったが、性犯罪における被害者保護と冤罪予防のバランス取りの難しさ、記録上前科ですらない冤罪が被疑者にもたらす社会的インパクトの大きさを描写したいという意図もあったろうし、実際の弁護士の作品ということで法学部出身者的には面白く読めたので、結末に関わるかという点だけにフォーカスして冗長と切り捨てるのは酷だし勿体ないと思う。

2024年3月17日

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設定勝ち。怪異というゲームイベントの裏側をデベロッパーツールで覗こうとするようで、ゲームデザイナーらしい怪談へのアプローチだと思う。これまで「そういうものだから」と納得するほかなかった怪談の裏側にはじめて頭を突っ込めたような快感がある。
アリサの先進性、得られた記録の重大さに対する世間の反応があまりにアンバランスで、それに伴って研究所の成り立ちに色々と疑問が生じること、いかにもラノベ/アニメっぽいキャラづけ・口調づけ、会話主体で話を進行させる作品としての軽さは個人的に好きじゃない。
良くも悪くも設定の面白さ一本で押し通した感がある。異世界アニメみたいなギルティープレジャー。

2024年3月17日

読書状況 読み終わった [2024年3月17日]
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最近読んだホラーでは一番好み。それぞれのエピソードがユニークだし、モキュメンタリー構造がホラーお決まりの「いつしか禁忌を犯していた」展開に応用される流れも鮮やか。各エピソードをまとめる怪異のモチーフが占い師というものいい。あの得体のしれない人種の薄気味悪さに覚えがある人間としてはなかなか"クる"選定だった。
思ったよりも評価が低くて驚いている。「どうせ恐怖することなんて滅多にないから、ベタな王道よりユニークな搦手がみたい」という擦れたホラー好き目線の評価なのかも。

2024年3月18日

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読書状況 読み終わった [2024年3月18日]
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登場人物のキャラ付けが極端かつプロットがホラーの型式どおりで人形劇感が強い。角川ホラー文庫や実在作者の名前が繰り返し出てきたり、ほん怖が出てきたり、内輪臭も。
バッドエンドが見えていながら読んで報われるほどのトリックやゾッとするモチーフはなく、メタフィクションとしても中途半端で、途中出てくる『ゆうずど』の中身は本編と違うし、読者の名前が登場するギミックは未処理。『リング』本編で呪いのビデオをチラ見させられたときの衝撃と比べちゃうとどうもね。

2024年3月9日

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読書状況 読み終わった [2024年3月9日]
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ホラーというよりは筒井康隆のシュール小説っぽい。
猫を飼ってる人間としては、手の中に小さい命を預かることの恐ろしさみたいなものは身に覚えがあって、ラストシーンのしんどさはよくわかるつもりだけど……うーん、ホラーなんだろうか。
ホラー小説大賞ってことで手に取ったから、出会い方が悪かったかもね。

2024年3月3日

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読書状況 読み終わった [2024年3月3日]
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なんだオムニバスかよと思ったら表題を貫徹してくれて嬉しかった。得体の知れない過去の怪異に複数筋からジワジワ迫っていく感覚は初体験で、装丁含めた雰囲気もいいし、袋綴じも楽しい。構成勝ちのモキュメンタリーだと思う。
素人目にも粗い文章が多いのが残念。伝聞なのにやたら解像度高い部分があったり、穴を塞ぐためにやたら説明的でかえって不自然だったりも。
とか文句言いながらも、お釣りがくるぐらいとにかく楽しいホラーだった。

2024年3月3日

読書状況 読み終わった [2024年3月3日]
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社会のセーフティネットに引っかからない、いわゆる境界性知能の人たちやその子どもたちのポートレートという感じで、こういう人って社会にたくさんいるだろうなあと昔かじった刑事政策を思い出しながら読んだ。
身の回りの大人に寄りかかる以外に助けの求め方を知らない主人公が特に痛ましい。一般論として「金に執着しても幸せにはなれない」というのはそりゃそうなんだけど、家族という後ろ盾のない主人公のような人間にとっては結局金こそが最も確実な生活基盤となるわけで、衣食住が足りてて小説を買って読んでネットにレビューするような人間(自分含め)の尺度では理解できない心理なのは弁える必要があると思う。金・疑似家族への執着は家族の加護に対する憧れの裏返しで、そうすると当然金は足りない(稼ぎ手としての親の代替を求めると、花が作中で桃子を詰めたように「死ぬまで」の金が必要になる)し、仲間の頼りなさに鬱憤がたまって関係にヒビが入るのは傍から見ると当然も当然すぎる結末なので、必死にもがく主人公がなおのこと痛ましい。

川上未映子作品はこれと『乳と卵』と『すべての真夜中の恋人たち』しか読んでないけど、教養はないけどStreet smartで、それでいて自己分析が弱くてアウトプットが不器用で、恋愛に対して潔癖な主人公にどうしても共感できない。
主人公の境遇を考えると、「れもん」の客に父性のかけらを見てハマり込み、自身と同じような子供を再生産するのが最もよくあるパターンな気がするけど、本書の花はあくまで知性的・お上品に物語を終える。
風水に執着させるという工夫はあるが、どうしても「社会的弱者に”まともな”人間を挿入して観察してみました」感が拭えず、リアリティの面では主人公のまともさがこの小説の弱点になっている気がした。ので星4。

2024年3月2日

読書状況 読み終わった [2024年3月2日]
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年表を読むだけでは知り得ない、当時のハーレムの生のスナップショットみたいな作品。最高です。

2024年2月27日

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流し読み。過去のトンデモ療法がひたすら列挙されるだけで、なぜそうなったのか(あるいはなぜ改善されなかったのか)にはほぼ言及がなく、題材がいいだけに浅さが惜しい。
紹介例を読んで思うに、反証可能性がないこと(たとえば、ダニエル・ベッカーは武器軟膏の効力の"科学的根拠"は瀕死の男の動物霊気が凝り固まったもの(P. 72)だという…観測不能なものを持ち出されては反論のしようがない)、治験の概念がないこと(療法がランダムでAnecdotal、たまーになんとなく効いた風な例があったんでしょう)+医療界の権威主義が主な原因だったのではという気がする(この本だけでは「気がする」としか言えない)。
それと、「現代の医療も未来から見れば同じかもね」という感想がちらほらあるが、データと知見の蓄積がある現代医療は上の点で過去のものと決定的に違っているし、だからこそ冒頭のデイビッド・ウートンの「2400年の医療の歴史のうち2300年は間違っていた」という主旨のコメントがあるわけで、そこを無視した安直な感想は現代の科学者にあまりに失礼でしょう。

2024年2月18日

読書状況 読み終わった [2024年2月18日]
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ハードボイルド・ミステリ・SF・ホラーのジャンルてんこ盛りが楽しく嫌いではなかった。ただ、後半はどうも魂の仕掛けが優先してしまって足元の出来事に綺麗にオチがつかなかった印象。ストーリー半ばで加茂禮子が結構決定的なヒントを出すので、そこで察しがついた読者は特にそうなんじゃないかな。

2024年2月11日

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読書状況 読み終わった [2024年2月11日]
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良くも悪くも詩に近い。
「人は心からも血を流す」という言葉に感動できる読者と困惑する読者とで評価が二分するだろうが、自分は後者。このフレーズがある意味この本の論の典型で、論拠の提示も敷衍もなく、要するに「自分はそんな気がした」という事実の披露に過ぎないので、このフレーズ自体をありがたがれる人には刺さるが、そうでないと「あなたにとってはそうなんですね」の一言で終わってしまう。
さらに言えば、作者の「そんな気がした」は尊重されるべきだが、それが人生経験から得られた「事実」として語られる瞬間があり、危うい。そして、自分の発想に我田引水する際は他人の著作をアッサリと切り取ってしまう二面性が怖い。
自分のバックグラウンドが法律なのもあると思うが、言語に限界があるのはわざわざ指摘するまでもなく、だからこそ我々は一語一語の定義を積み重ねながらその機能性を高めてきたわけで、たとえば「私にとっていつくしみとはこういう意味です」と宣言するのは構わないが、そう理解されるべきだと言われると突っ込まざるを得ない。
(「いつくしみ」の例を深堀りすると、作者は導入にローマ法王をひいているが、法王がItsukushimiなんて言葉を使うわけがない。調べると"MISERICORDIA"というPityとCompassionのニュアンスを併せ持つ単語のようで、そのうちCompassionのニュアンスを持ち帰って日本語の「いつくしみ」の定義を拡大しているようだが、こちらのニュアンスは日本語でいう「同情」あたりに棲み分けされるのが相当だろう。神谷美恵子や石牟礼道子のくだりは、無理やり拡張した「いつくしみ」の例として読むより、MISERICORDIA≒Compassion≒同情の例として読んだほうがスッと落ちませんか)
青少年に語る体をとっているが、その実態は反論を避けながら上から一方的に教える立場でありたいというエゴイズムだろう、というのは穿ち過ぎか。

2024年2月25日

読書状況 読み終わった [2024年2月25日]
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『鈍色』なしでも十分成立していると思うが、いかんせん文章が現代的なのでいかめしい年代物のゴシック小説的な雰囲気はない。まあこればっかりはどうしようもないか。

2024年1月27日

読書状況 読み終わった [2024年1月27日]
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駄作とは言わないまでも文量に見合うだけのカタルシスはなかった。作者の業界トークというかエンタメ論みたいなものは面白いんだけど、それなら小説の形を取らずエッセイとするべきで(恩田陸のエッセイは好き)、小説風の連載をなんとか一本のミステリー小説風に味付けしようとしてやりきれなかったのが本作ではと穿った見方をしてしまう。散々おヒレのついた伝説の人物が実は俗な小物というモチーフにしても、実際の対面までしっかり描き切ってくれたユージニアの方が好み。

それと、かなり決定的なネタバレもあるので、読むべき順序でいうと間違いなく『夜果つるところ』が先でこっちがあとだと思った。作者がどこかで刊行順に読めと書いていて、調べたらこっちが先に刊行されていたと思ったんだけど、自分の勘違いか。

2024年1月27日

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読書状況 読み終わった [2024年1月27日]
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正直ついていけなかった。上巻半ばで見せた革命×ゲーム論的な切り口を期待していたんだけど、完全に別物のSF。これはこれで面白いのだけど、上巻いらなかったのでは?と思わなくもない

2024年1月14日

読書状況 読み終わった [2024年1月14日]
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