たった一つを変えるだけ: クラスも教師も自立する「質問づくり」

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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794810168

作品紹介・あらすじ

なぜ、「質問をすること」が大切なのでしょうか。この問いに対して、義務教育、大学、ビジネス界で大きな影響力をもった三人の著名人が答えています。
「私たちがもっている知識は質問の結果です。実際、質問をすることは人間がもっている最も重要な知的ツールです。〔中略〕このような大切な知的ツールを、学校では教わらないのです」(ニール・ポストマン、元ニューヨーク大学教授)
「人間の基本的なスキルは、解釈と探究に必要な、ものごとを分析する力です。言い換えると、どのように質問したらいいかを知っていることです」(レオン・ボットスタイン、元バード・カレッジ学長)
「最も頻繁に起こるマネジメントの問題は、正しい答えを見つけることができないということではなく、よい質問が浮かばないことです」(ピーター・ドラッカー)
 本書では、このように大切な質問づくりのスキルが容易に身につけられる方法をていねいに紹介しています(その中には、学校や大学教育や社会や日常生活で軽視されている優先順位をつけるスキルも含まれています)。このスキルの習得は、これまで生徒たちに自分で考えさせようと「発問づくり」に時間とエネルギーを割いてきた教師が、生徒たちのサポート役になることで可能となります。その結果、教師に依存していた生徒たちの学びは、主体的かつ自立的な学びに転換します。
 最近、頻繁に見かける教育用語を使えば、これこそ「究極のアクティブ・ラーニング」と言えます。「質問づくり」を習得することで、「二一世紀スキル」「イノベーターに求められるスキル」「社会人基礎力」「EQやライフスキル」「民主主義を実践するためのスキル」といった現代人に最も求められている力も身につきます。ぜひ試してみてください。(よしだ・しんいちろう)

感想・レビュー・書評

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  • 授業で使えそうだと思った本でしたが、これはアイデアや、発想力が必要な職場ならどこでも使えそうな方法です。
    事実、この本の考え方が生まれたのは、進学校でも、大学でもなく、生活保護を受けているような人かららしい。

    単純だけど、発送の逆転で、本書にあった通り、これまで良い発問はなにか?という、技術を追求してきた先生たちからすれば盲点です。
    かなり詳細に事例やねらい、注意点も書かれていて、ルールも取り扱いやすい。
    やってみたい!と思わせる取り組みでもあって、事例でたくさん質問を作る生徒たちの姿に、とても興奮させられました。

    これまで先生たちが課してきた質問を、生徒たちが行うことで、その物事に積極的に関わろうとするし、質問することで、自然と疑問が浮かび、様々な方面から物事を考えるようになる。

    考え方としては、小さな子どもがお父さんやお母さんに、たくさんの質問を投げかけて学ぼうとするのに似ていると思います。

    ただ、教員はぼんやりと質問を作らせたらいいかというとそうではなく、質問の焦点を決めたり、その質問をいかに使うかを考えたりと、力量は試されると思いました。
    基本部分と、実践は示されているものの、自分の国語の時間でどうやってこの本の実践を生かすのか?ということが難しい。
    応用部分で、個々の先生たちの指導力の差、授業の組み立て方の力の差が出る実践です。シンプルがゆえに応用は効くので、ぜひともモノにしたい。
    でも、やってみなければ身にならないので、今学期、当たって砕けろで何度か試してみたいと思います。

  • 自分が授業を行うにあたり、本書をどう生かすか。
    そのためのメモ。

    質問をすることはより深く考えること

    「教師の発問に生徒が答える」授業
    「生徒自らが質問をつくり出す」授業

    教師の役割→発問するのではなく、質問の焦点を示す。

    質問の焦点…生徒たちが質問をつくり出すための引き金

    質問の焦点を使って何を実現したいのか?
    指導上の目標や学習の成果を念頭に置く。

    3つの思考力
    ◯発散思考…多用なアイディア。幅広く創造的に考える能力

    ◯収束思考…情報やアイディアを分析、統合する能力。

    ◯メタ認知思考…考えたことや学んだことをふり返る能力。

    質問づくりの7つの段階
    ①質問の焦点
    ②質問づくりのルール
    ③質問をつくる
    ④質問を書き換える
    ⑤質問に優先順位をつける
    ⑥学習目標に合致した質問の使い方を考える
    ⑦ふり返り

    ふり返りのための質問
    ・学んだことは何か?
    ・どのようにして学んだか?
    ・学んだことをどのように応用できそうか?

    質問づくりの4つのルール
    ①できるだけたくさんの質問をする
    ②質問について話しあったり、評価したりしない。
    ③質問は発言の通りに書き出す。
    ④意見や主張は疑問文に直す。

    いかなる質問も歓迎され、その価値が認められる。

    自分たちがつくり出した質問を見直し、そこからどんな情報が得られるかを分析する。

    「閉じた質問」→はい/いいえ 一語で答えられる。
    「開いた質問」→説明を必要とする。

    2つのタイプの質問の長所と短所を考える。

    質問文の構造を学ぶ
    ・「なぜ」「どのように」→開いた質問
    ・「何」「誰」「どこ」「いつ」→両方の可能性
    ・5W1Hを含んでいない→閉じた質問

    質問に優先順位をつける
    学習の目的に応じて質問を選ぶようにする。
    選んだ質問の理由を述べられるようにする。

    教師は質問を選びの基準を示すことで生徒をサポート


    第7章のタイトルは
    「質問を使って何をするか考える」となっている。

    何のために質問をつくるのか?
    質問をつくることを通して何が可能になるのか?
    授業のどの段階で質問を使うのか?

    授業における質問づくりの活用
    ・読み書きの糸口として
    ・プロジェクトのテーマ決定のために
    ・授業の計画
    ・話し合いのテーマとして
    ・宿題を自分でつくり出す 自主的な学習
    ・テスト対策として
    ・学習内容の理解に関する情報提供
    ・レポート発表のために
    ・学びのふり返りに役立てる
    ・インタビューに備えて
    (詳しくはP188 表7−1を参照)

    学んだことについてふり返る

    ふり返りは学んだことを自分の言葉で語るチャンス

    学びのプロセスと内容をふり返る。

    ふり返りで使う質問
    ・あなたは何を学びましたか?
    ・「質問すること」を学ぶのはなぜ大切なのですか?
    ・内容について学んだことは何ですか?
    ・どのように学びましたか?
    ・質問をつくるときどんな感じがしましたか?
    ・質問づくりでよかったことは何ですか?
    ・学んだことを今後どのように使いますか。
    ・質問づくりをどんな場面で生かしますか?

    質問づくりのプロセスを体験を通して学ぶ機会をつくる。

    教師が質問の例を示すことは、生徒の発散思考を止めてしまうことにつながる。

    何をどう学んだかを自分の言葉で発言する機会があること。

    「いい教え方は、生徒たちが質問の仕方を知っていて、本当に知りたがっている質問に私たちみんなで答えられるときにはじまります」

    教師は生徒に質問づくりのスキルを教える。
    そして、生徒が自ら作った質問を使いこなせるようにする。

  • <目次>
    はじめに
    第1章  質問づくりの全体像~多様な思考力を磨く方法
    第2章  教師が「質問の焦点」を決める
    第3章  ルールを紹介する
    第4章  生徒たちが質問を出す
    第5章  質問を書き換える
    第6章  質問に優先順位をつける
    第7章  質問を使って何をするか考える
    第8章  学んだことについて振り返る
    第9章  教師や指導者へのアドバイス
    第10章  生徒もクラスも変化する~自立した学び手たち
    のコミュニティ
    おわりに  質問と教育、質問と民主主義

    <内容>
    先日の授業で、こちらが設定した質問を教科書から探させ、まとめさせ、他のメンバーに説明する(授業する)授業をおこなった。生徒を見くびっていたことがわかる結果となった。きちんとまとめ、他の生徒にきちんと説明をしていた。日頃ただただだらしない生徒がリーダーシップを取ったり、説明用に自ら図表を作成したものもいた。彼らはできるのだ。そこから敷衍すれば、この本の趣旨は、その質問も生徒たちが考えていけばよい、ということになる。私の授業の趣旨は、「教師の言葉を理解できないのなら、自分たちの言葉で説明させればよい」ということだった。それは相当効果の高いことが分かった。ならば、最初の質問から彼らが考え、論議し、その結果(質問を想定)から、まとめ、調べ、説明していけば、生徒の頭への定着、理解は進み、私たち教師が長いこと悩んできた、「どのように理解させるか?」をより進めることができるのではないか?そう考えた。

  • 確かに、発問中心の授業は、生徒が考えるべきことを教師が一生懸命考えていると言える。
    道徳や総合で「質問づくり」を活用してみたい。

    メソッドとしては素晴らしいが、
    内容に無駄が多いので☆☆☆

  • 考えたり、学んだりするときに不可欠な質問づくりの方法は、民主主義を可能にする基本スキルである。
    思考力を構成する3つの思考力があり、それは
    「多様なアイデアを考えだし、幅広く創造的に考えられる発散思考」
    「答えや結論に向けて、情報やアイデアを分析統合する収束思考」
    「自分が考えたことや学んだことを振り返るメタ認知思考」
    である。
    生徒自身による質問づくりを可能にするため、教師が発問するのではなく、質問を作り出すための引き金となる「質問の焦点」を示す必要がある。また、それは
    ①明確
    ②質問ではない
    ③刺激によって新しい思考を誘発
    ④教師の好みや偏見は表さない
    ものが効果的である。
    質問をたくさん出すための5つのルールは
    ①できるだけたくさんの質問をする
    ②質問について話し合ったり、評価したり、答えたりしない
    ③質問は発言の通りに書き出す
    ④意見や主張は疑問文に直す
    というもの。

  • 生徒に「質問づくり(QFT)」の機会をつくることで、劇的に生徒の学習への向かい方が変わるという内容の本。

    授業のなかでの「問い」というと、私の場合はまず「発問」をイメージがします。それを生徒に渡し、生徒自身が「問い」を持ち、文章や単元に向かうという感じでしょうか。

    本書の中に国語での実践は書かれていませんが、以下の号の『教育科学 国語教育 2019年1月号』に実践がまとめられているということで取り寄せました。
    実践は中学国語1年生の文学的文章である『少年の日の思い出』
    生徒自身が問いをつくり、自分たちで答えを見つけながら、文章を読み深めていることがわかりました。

    この学習活動で大事だと思うのは、最後の振り返りです。
    どのような質問が良い質問なのか、どう話し合いを進めたらよかったのか、そのような質問づくりを俯瞰して振り返ることでメタ認知の力を養うことが大事だと思います。

    具体的にどのような授業で実践すればよいのかは正直まだイメージできません。
    特に作られた問いをどのように扱うのかという点をどうすればよいか悩みます。

    けれど「問い」をもつ力はこれからの社会を生きていく上で大事な力だとは思うので、なんとか実践はしてみたいです。

  • 授業デザインをする上で非常に参考になった。FDやIDにおいても活用できそうである。さらにこの教育効果を実践研究していきたいと感じた。

  • 質問づくり…やってみたい。

  • 問いを生徒に考えさせることの意義、その学校での実践例や意識するポイントがまとめられていて、今の教育で求められる主体的な学びを実践する大きな助けになる要素が紹介されている。

    共感することも多いが、星マイナス1の理由は以下の2つ。
    1. 翻訳が良くない。本文に忠実に訳しているとは思うが、原文をそのまま日本語にしたようで分かりにくい箇所が多い。
    2.本文の構成自体も読みづらい。結論を最後まではっきりと言わないので、紹介している例のポイントがわからないまま読んでいるような感覚。

  • 教師に指示されている限り、僕らは何も学んでいない

    ドキッとするキーフレーズ。自分で学ぶ自立した学習者はそりゃあ、自分で課題を考えて主体的に悩んで学べないといけないわけだけど、学校ではそんなことほとんど全くできてない。
    だってどうすればいいんだ。何をすれば?

    そういう疑問を吹き飛ばす[たった一つで]授業の基本を大きく変える可能性を示している本です。総合的な学習の時間や理科、社会とは特に相性が良さそう。
    国語ならスピーチや作文、作品について思考する場面で是非やってみたい。

    いい本を読みました。三学期が少し楽しみになりました。Twitterで奨めていた誰かさん、ありがとう。

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