宮部みゆきさん おすすめ10選・後編~文庫版 時代小説~

こんにちは、ブクログ通信です。

多作な宮部さんの作品のなかから、前編ではデビュー作を含むさまざまなジャンルのものを、後編では時代小説をまとめました。短編から長編まで、どれも読みやすいものばかりですので、ぜひ気になったものから手に取ってみてくださいね。

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宮部みゆきさんの作品一覧

6.宮部みゆき『かまいたち』辻斬りの正体と目的は!?ミステリ仕立ての時代小説

かまいたち (新潮文庫)
宮部みゆき『かまいたち (新潮文庫)
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あらすじ

正体不明の辻斬り「かまいたち」が、江戸の夜に出没し、人々を恐怖に陥れていた。ある晩、町医者の父を心配して様子を見に出た娘・おようは辻斬りを目撃してしまう。九死に一生を得たおようだが、今度は近隣に不審な人物が越してきて……。サスペンス色濃厚な表題作のほか、人間の欲望や超能力をモチーフにした「師走の客」「迷い鳩」「騒ぐ刀」の3編を収録。宮部みゆきの軌跡を辿る、時代小説の初期短編集。

おすすめのポイント!

ハラハラするような展開もあれば、落語のように洒脱なオチのものもあり、時代小説をあまり読み慣れていない人でもサクサク読み進められます。人物を構築する力に長けた宮部さんだからこその安定感といえるでしょう。本作は、次に紹介する『本所深川ふしぎ草紙』や『幻色江戸ごよみ』などとともに『茂吉の事件簿 ふしぎ草紙』としてテレビドラマ化され、第3シリーズまで続く人気ドラマとなりました。

宮部みゆきの時代小説を読みたいと手にした本です。再読です。再読ですが、やっぱり面白い。短編が4作収められてる本作。どれも初めて読んだときに衝撃を受けたのか、すべてオチを覚えていました。それでも楽しかったですし、描写が怖い。宮部みゆきさんの書く作品は頭の中にその現場を浮かべやすいため、ぞっとしました。 後半2作は「霊験お初捕物控シリーズ」のお初が初登場します。再読して思いましたが、自分はこういう話が好きなんだと再認識しました。夜に怖くなるくせに読みたがる・・・。このシリーズ、まだこの2作しか読んだことがないため、これから何作か読めると思うと楽しみで仕方ないです。

くーさんのレビュー

7.宮部みゆき『本所深川ふしぎ草紙』不思議を孕む下町人情噺

本所深川ふしぎ草紙 (新潮文庫)
宮部みゆき『本所深川ふしぎ草紙 (新潮文庫)
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あらすじ

寿司屋を営む近江屋藤兵衛が殺害された。下手人は娘・お美津かと噂されるが、幼い頃にお美津から受けた恩義を忘れずにいた彦次には信じられず……。表題作を含む7編の連作で暴かれる本所深川の七不思議を、岡っ引きの親分である回向院の茂七が次々に解き明かす。不思議がさらなる不思議を呼び、一筋縄ではいかない人間くささや悲哀に満ちた珠玉の連作。宮部ワールド全開の、人情味溢れる下町推理小説。

おすすめのポイント!

怪談というと死者への恐怖を煽るものが多いですが、宮部さんの怪談は、「生きた人間の想念の恐ろしさ」を前面に押し出しているように感じられます。思いこみや信仰を持つことで生きていく人もいれば、忘れることで生きていける人もいます。そんな人々の想念が下町を舞台に混ざりあい、切なさに満ちた物語となっています。大切なものはなにか、心に問いかけながら読みたい作品です。第13回吉川英治文学新人賞受賞作。

岡っ引きの茂七親分が守る本所深川を舞台にした時代小説。地元に伝わる7つの不思議な話を下地に、少しギョッとする事件を織り交ぜながら人情あふれる短編物語が展開する。仲の悪そうな父と娘が実は心根では共通の思いを持っていた「片葉の芦」は涙する話。

のりゆきisgさんのレビュー

8.宮部みゆき『おそろし 三島屋変調百物語事始』白と黒の境目は、実はとても曖昧だ

おそろし 三島屋変調百物語事始 (角川文庫)
宮部みゆき『おそろし 三島屋変調百物語事始 (角川文庫)
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あらすじ

川崎宿の旅籠の娘・おちかは実家で起きたある事件をきっかけに心を閉ざしていた。今は江戸で袋物屋「三島屋」を営む叔父夫妻の元へ身を寄せ、行儀見習いという名目で黙々と働く日々を送っている。ある日、叔父・伊兵衛に頼まれ訪問客の対応をしていたおちかは、曼珠沙華に関する怪異について聞くことに。事の顛末を知った伊兵衛は、江戸中から不思議な話を集める「変わり百物語」を看板に出し……。大人気、三島屋シリーズ第1作。

おすすめのポイント!

『おそろし』をはじめとした三島屋シリーズは、百物語をモチーフにしたホラーテイストの時代小説です。宮部さんの時代小説の中ではもっとも長いシリーズで、2021年には『魂手形 三島屋変調百物語七之続』が最新作として刊行されました。5つの短編からなる連作長編ですので、長編小説が苦手な方でも読みやすいでしょう。2014年には、波瑠さんが主演を務め、テレビドラマ化を果たしました。

宮部みゆきは火車以来ずっと読んできたのだけど、時代小説は評判葉山もちろん良いのだけど避けてきた。読まず嫌い。?だけどそれは間違いだった。やっぱり、宮部みゆきはストーリー語りが抜群に面白いし、上手い!この三島屋シリーズ初巻最後の話の大団円は見事。

ロマンスカー読書人さんのレビュー

9.宮部みゆき『桜ほうさら』哀しみを背負えど、ひたむきに生きよ

桜ほうさら(上) (PHP文芸文庫)
宮部みゆき『桜ほうさら(上) (PHP文芸文庫)
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あらすじ

藩校「月祥館」に通う笙之介には、入り婿の話も進んでいた。しかしその矢先、父に収賄の嫌疑がかけられる。動かぬ証拠とされたのは、父本人も驚くほどの出来映えの偽文書。この事件を皮切りに笙之介の家族は断絶状態に。温和で実直な武士であった父の汚名を晴らすため、笙之介は江戸深川の長屋で生計を立てながらも、密かに事件の真相を追いはじめる。ままならない人生の苦みと下町の人々の温かさが沁みる時代ミステリ小説。

おすすめのポイント!

真面目で心優しい笙之介が父の無実のため奔走する姿にグッとくる作品です。読み進めるうち、山梨県の一部で使われる方言「ささらほうさら」と「桜」を絡めたタイトルは、物語を象徴する言葉であるとわかります。ミステリーでありながらも人情噺としてのテイストが色濃い本作は、人間の悲哀と優しさに満ちています。2014年には玉木宏さん主演でテレビドラマ化され、正月時代劇の枠で元日に放送されました。

ほんわかとして淡々と進む。とおもったら中盤からいろいろ動いてきた。思わずうるっとくる文章はさすが。穏やかな気持ちになれる。

chimachimakiさんのレビュー

10.宮部みゆき『この世の春』デビュー三十周年を記念したサイコ×時代×ミステリー

この世の春(上) (新潮文庫)
宮部みゆき『この世の春(上) (新潮文庫)
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あらすじ

時は六代将軍・徳川家宣の江戸中期。下野北見藩二万石で起きたできごとにより物語は幕開けとなる。若き藩主・北見若狭守重興は、「病重篤」のため別邸・五香苑で隠居の身に。重興の代わりに従弟・尚正が藩主を務めるようになると、それまで権勢を振るっていた御用人頭・成孝は失脚。五香苑に勤めることになった多紀は、従兄の半十郎や医師、元家老の石野織部らとともに重興を見守る。そしてついに重興の秘密が明らかとなり——。

おすすめのポイント!

時代小説ではあまり扱われない「サイコサスペンス」の要素をかけあわせ、これまでにない時代ものを書きあげた気鋭の作品です。これだけでも盛りだくさんなのですが、それに加え、宮部さんが得意とする人物描写により、登場人物たちに感情移入しながら読める時代ものになっています。文庫本3冊にわたる長編ですが、グイグイと文章の力に引きこまれるでしょう。2017年週刊文春ミステリーベスト10にも入った力作です。

宮部みゆきさんの時代物の小説は、本当に読みやすく現代の私達にも分かりやすく描かれていて、とても好きです。この世の春…。一見時代物の物語ですが、読みすすめるとファンタジー・ラブ・ストーリーにすら感じました。宮部マジックです!

マウントフジさんのレビュー

デビュー作から、短編から、時代ものからと、気になるものから手に取ってみてはいかがでしょうか。ジャンルに縛られず多くの作品を生み出す宮部さんの小説を、ぜひチェックしてみてくださいね。前編5作品はこちら!