吉田修一さん作品5選!~人間の本質に迫る珠玉の名作選~

こんにちは、ブクログ通信です。

吉田修一さんは、1997年に『最後の息子』で第84回「文學界新人賞」を受賞し小説家デビューしました。2002年には『パレード』で、第15回「山本周五郎賞」を受賞、同年、『パーク・ライフ』で、第127回「芥川賞」も受賞します。純文学と大衆小説の文学賞をW受賞した快挙は大きな話題となりました。その後も、意欲的に執筆活動を続け、2016年には「芥川賞」の選考委員に就任し、名実ともに大作家の仲間入りを果たしています。

今回はそんな吉田さんの作品の中から、ブクログユーザーから絶大な支持を受ける傑作5つを紹介いたします。繊細な心理描写で描かれる骨太な物語が魅力の名作選です。ぜひこの機会にチェックしてみてくださいね。

『吉田修一(よしだ しゅういち)さんの経歴を見る』

吉田修一さんの作品一覧

1.吉田修一『パレード』五人の若者たちの歪なルームシェアを描いた著者代表作

パレード (幻冬舎文庫)
吉田修一『パレード (幻冬舎文庫)
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あらすじ

良介、琴美、未来、直輝の男女四人は、都内にある2LDKのマンションで共同生活をしている。それぞれに不安や焦燥を抱えながらも、居心地の良い「上辺だけのつき合い」に徹することで、若者たちは優しくも怠惰な日々を過ごしていた。ある日、ひょんなことから男娼のサトルが共同生活に加わる。サトルの登場は、平穏な日々に小さな波紋を起こして……。

おすすめのポイント!

発表直後から話題になった、第15回「山本周五郎賞」受賞作です。ルームシェアする五人の若者たちの日常をライトに描きつつ、少しずつ歪んでゆく関係性や隠された心理を巧みな筆致で描いています。序盤は都会的で怠惰な日常を描く一方、徐々に物語が思わぬ方向に進んでいくため、先が気になり次へ次へとページをめくる手が止まりません。やがて訪れる結末に、きっとみなさんも驚かされるはずです。

隣で笑う友達を、横で肩組むチームメイトを、一緒に語り合う同僚たちを、自分はどれほど知っているだろうか。現代の人と人とのつながりをありありと描いている名作。

satoru nishidaさんのレビュー

2.吉田修一『悪人』人間の本質は善なのか悪なのか、心揺さぶる衝撃作

悪人(上) (朝日文庫)
吉田修一『悪人(上) (朝日文庫)
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あらすじ

ある冬の夜、九州地方のとある峠で一人の女性が殺された。被害者は若い保険外交員で、容疑者は、女性の知人の男子大学生だ。しかし実は、女性は殺された夜、土木作業員の清水祐一と会っていた。佐賀市内で双子の妹と暮らす馬込光代は、平凡な日常から逃れようと出会い系サイトに登録する。そこで出会った運命の相手——ところが、彼は殺人を犯していた。

おすすめのポイント!

第61回「毎日出版文化賞」および第34回「大佛次郎賞」をW受賞した作品です。2008年度の「本屋大賞」では第4位を獲得するなど、文壇からも一般読者からも高く評価されています。2010年には妻夫木聡さん、深津絵里さんのW主演で映画化され、モントリオール世界映画祭ワールド・コンベンション部門にて最優秀女優賞を受賞し話題となりました。人間の本質に鋭く迫る作品で、「悪とは何か」を深く考えさせられる衝撃作です。

15年前の作品。上下巻の作品なので感想は下巻の方にしっかりと記したい。上巻を読み終えて「悪人」というタイトルの作品だが上巻を読む限りでは誰の何が「悪人」?今一つピンときていない。誰しもが持っている人間の表と裏の顔の事を指しているのか?はたまたまた別の何かなのか?この先の展開が楽しみだ。

NSFMさんのレビュー

3.吉田修一『横道世之介』愛すべき大学生・世之介の青春を描くハートウォーミング小説

横道世之介 (文春文庫)
吉田修一『横道世之介 (文春文庫)
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あらすじ

1980年代後半、18歳の横道世之介は大学進学のため長崎から上京してきた。自動車教習所に通ったりアルバイトに励んだりと、ごく普通の大学生活を過ごす世之介。愛すべき押しの弱さと内に秘めた芯の強さで、彼は様々な人との出会いと笑いを引き寄せるのだった。友人の結婚と出産、学園祭のサンバ行進、お嬢様との恋……。読む人の心に温かな光を灯す爽やかな青春小説。

おすすめのポイント!

バブル期の東京を舞台にした、横道世之介という大学生の青春を描いた作品です。2010年度「柴田錬三郎賞」受賞作であり、同年度の「本屋大賞」で3位に入賞しています。流されやすく、ちょっとだらしない、そして熱しやすい性格の世之介がとてもチャーミングで、読み進むほどに感情移入してしまうことでしょう。そして、様々な出会いを通して成長してゆく世之介の姿は、まさにきらめく青春そのもの。爽やかな読後感を味わえる作品です。2012年に高良健吾さん主演で映画化され、第5回「TAMA映画賞最優秀作品賞」受賞しました。

始めは面白さがよく分からなかったが、読み進めていくうちに世之介の人柄なら良さが徐々に分かりました。懐が大きいと言いますが全てを受け入れるのは凄いなと。噛めば噛むほど的な感じです。あの人面白い人だったよねって思い出されるのって凄いと思います。

せさんのレビュー

4.吉田修一『パーク・ライフ』公園で過ごすひと時のような緩やかで穏やかな小説

パーク・ライフ (文春文庫)
吉田修一『パーク・ライフ (文春文庫)
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あらすじ

公園で一人座っているとき、見えてくるもの……池や樹木、苔むした石垣。あなたには、何が見えますか?——スターバックスのコーヒーを片手に、風に乱れる髪をなでつけているのは「僕」が地下鉄で話しかけた女性だった。日比谷公園を訪れる男女の出会いとさりげない交流を描く新感覚小説。

おすすめのポイント!

第127回「芥川賞」受賞作です。表題作と『flowers』の2作が収められています。『パーク・ライフ』は日比谷公園を舞台に、偶然の出会いから始まる男女の交流と微妙な距離感を、臨場感たっぷりに描き出している作品です。日比谷公園という広大な空間の中で、特に大きな事件が起きるわけでもなく、大々的に恋愛が発展するでもなく、ごく平凡なありふれた日常の中の出会いと交流がスタイリッシュに切り取られています。公園で過ごす心地よいひと時のような、さらりとした読み心地の小説です。

「パーク・ライフ」何気ない日常を綴っているように見えて、不思議と心惹かれてしまう表現が多かった。主人公のぼくが公園に座り目を見開いた瞬間、あらゆる景色が大小問わず一気に押し寄せてくる場面がある。その感覚は私が幼少期にブランコに乗りながら感じた感覚に似ており、遠い記憶がふっと呼び起こされたような不思議な気持ちになった。 「flowers」はエゴや虚栄心など人間の負の感情がひたすら描かれており、読んでいて辛かった。一人の悪意が周りの人へドミノ倒しのように伝わっていく様子に戦慄した。作者の作風は振り幅が大きい。

あおのあしあとさんのレビュー

5.吉田修一『怒り』秘密を抱えた人間を信じることはできるか、読者の心に迫る意欲作

怒り(上) (中公文庫)
吉田修一『怒り(上) (中公文庫)
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あらすじ

ある日、若い夫婦が自宅で惨殺された。現場には血で書かれた「怒」の文字が残されている。犯人は27歳の山神一也だと判明したが、その行方は杳として知れない。捜査は難航するばかりだ。事件から一年が経った頃、房総の港町で働く親子と、大手企業勤務の青年、沖縄の離島で母と暮らす女子高生の前に、三人の男が現れた。身元不詳の男たちの正体は——?

おすすめのポイント!

とある殺人事件を縦軸に、そこにまつわる人々の交流と心の揺らぎを横軸に描き出す、重厚で読み応えある作品です。過去に秘密を抱えた三人の男たちと、彼らと出会い「信じるとはどういうことか」を突きつけられる人々の心模様を丁寧に描き出しています。親しくなった人間が殺人犯かもしれない……そんな究極の疑念に囚われたとき、人はどう動くのか、圧倒的な筆力で読者の感情を揺さぶる作品です。2016年に渡辺謙さん主演で映画化され、数々の映画賞でノミネート及び賞を獲得しました。ぜひ、原作と映画を併せてお楽しみください。

まだ上。文章としても面白く、始め犯人に抱いていた怒りをだんだんに忘れていく。色々な人の暮らしを応援しながら楽しんで読んでいる。誰にも不幸なことが起こってほしくない。でもなんか起こるんだろうな。あぁ、怪しいな。と段々に不安を思い出す。あちこちに怪しい人がいてドキドキする。さぁ下を読むぞ。

bunbunbookさんのレビュー


吉田さんの作品は、人間の本質に迫る鋭い心理描写が特徴です。今回は、時に感情移入し、時に心揺さぶられ、読み終わった時には深い余韻が残る名作を取り揃えました。ぜひ気になる作品を手に取ってみてください!