君の膵臓をたべたい

著者 :
  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575239058

感想・レビュー・書評

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  • 「クラスメイトであった山内桜良の葬儀……」冒頭一文目から結末が告げられるなんて…。

    これは自分の殻に閉じ籠っていた「僕」と、明るく人間味豊かな桜良との切なく、輝きに満ちた歩みの物語だ。
    膵臓の病で余命わずかな桜良。一日一日を輝かせていこうと生きている。彼女が見る桜は他の誰よりも綺麗に見えるとの描写がある。

    自分自身に笑い話にしかならない体験がある。小学生の時分、カブトムシを採りに行ってマムシに咬まれた。当時の自分は「あぁ死ぬんだな」と病院に向かう車中で思った。(もっともマムシの毒で死ぬことは稀らしい)不思議と怖さがなく、心が澄み渡っていった。電柱が、街灯が、町の風景が輝いて見えた。「あぁこんなに世界って美しかったんだな。」と飽くことなく車窓から眺めていた。後にも先にも、こんな体験は一度きりだった。大人になった今でも覚えている。
    想像するに桜良には、命の有限さを知るがゆえに、見るもの全てがまばゆかったに違いない。無論、哀しみと表裏一体ではあるが。

    そんな咲良に出会った「僕」は化学変化をうけたように変わっていく。それは閉ざしていた心の殻を破るほどのものであった。彼の心の奥底では人との関わりを求める気持ちがあり、それが咲良によって解き放たれたと見ることもできる。
    そうした鍵となる人との出会いが人生の中に、誰でもあるのではないか。
    本書にあるように「自分で選択」していったから、その結果出会えたのだと思う。「僕」が桜良に出会えたように。

    自分という人間は今まで出会った人々との関わりからできている。
    時に人と関わることは煩わしいものだけれど、それらは一生続いていく。だけど人を認めたい、人を愛したい。「僕」はそんな人間的な感情の数々に咲良との出会いから気づいていったのだと思う。

    恋愛なんて遠い昔の私は、どうしても親目線で見てしまう。桜良の思いを知る度に、切なくて胸が締め付けられるようであったし、命がかかっているだけに重い気持ちにもなった。

    でも、不思議と桜良が「僕」の生き方が清々しい読後感を与えてくれた。誰かとの出会いは自分が選択してきた積み重ねの結果であり、それが自身の大きな成長を産み出すことがある。今の自分自身がこうなってるのもそうなのかもと思うと、それはそれで良かったのかもと思える。
    忘れられない作品の一つとなった。


  • 難病を抱えた女の子と一人ぼっちの男の子の青春小説。

    最初は明るかった女の子が、病気が進むにつれ弱気になっていき、最後には死にたくないともらす……というよくあるストーリーかと思ったら、これが違う。つっけんどんだった男の子も、死を前にした女の子の枕元でやっと自分の気持ちに正直になり……というわけでもない。「なるほどそう来るか」という〆かたで思わず唸ってしまった。

    もし、桜良がきちんと生きながらえて死んだら(?)、果たして主人公は恭子と仲良くなれただろうか、と私は考えてしまう。

    長すぎる時間は、関係性を育むばかりではなく壊すこともある。寿命が残り1年となったとき、病人は1年間をなるべく有意義に過ごそうとする。しかし、寿命が残り80年もある人は、今日という1日を丁寧に過ごそうとはしない。いずれ来る明日に向けて、いつもと変わらない日常を過ごしてしまう。

    本書では主人公と恭子が仲良くなった期間を描いてはいない。お互いがお互いに歩み寄ったステップは分からずじまいのままだ。
    けれども、もし桜良が残り少ない寿命を全うしたならば、そして、死に目に主人公と恭子の2人が立ち会っていたのなら、きっと、2人の気持ちはすれ違ったままだったのではないだろうか。ともに桜良の喪失を悲しんだまま終わってしまったのではないだろうか。

    人の死はときに周りの人々に成長をもたらすが、あまりに早すぎる死は修復不可能なほどの深い傷を負わせてしまう。しかし、本書の「早い死よりもさらに早い死」はまた別だ。最期に立ち会えなかった主人公は、人と関わることの素晴らしさに気づいた。人を認め、人に認められる人間に、人を愛し、人に愛される人間に変わろうと努力した。そのひたむきさに、恭子も心を動かされていった。

    人の命は突然終わる。しかし、突然終わるからこそ一瞬一瞬の輝きが生まれる。その輝きが主人公と恭子を引き寄せた。そう思ってやまない。

  • 幸いなことに、刊行されてからこれまでにこの本について知っていることといえば、タイトルと、泣ける話だということ。この2点であった。
    タイトルに気持ち悪さだとか怖さだとかは全くなく、足掻きだとかやるせなさだとか、そうしたいと願うような何かがあったのだろうと推測していた。
    泣ける話だと帯に書いてあるからこそ、センセーショナルとも言えるタイトルが気になって単行本で刊行当初に買ったものの、気持ちが向くまで開く気になれなかったのだ。

    冒頭にあるので書いてしまっていいだろう。
    物語の始まりは、同級生の女の子の葬儀が執り行われたことと、主人公である「僕」が、それに行かなかった、というシーンから始まる。
    最初から、その子は亡くなるのだ、とわかった上で読み進めていく「僕」視点の考え方と景色。学校。
    それがどのように変化していくのかは、思春期ならではのもの、だけではないと思う。

    思いがけない出来事と、「僕」も知りえなかった彼女からみた世界が後半に入り徐々に押し寄せてきて、最後の方は胸がぎゅーっと締め付けられながら一気読みした。

    タイトルの意味がわかったところで、もう一度冒頭部分を読み返した作品。

  • あなたは、何を信じて生きていますか?

    「違う。違うよ。偶然じゃない。
    流されてもいない。
    私たちはみんな自分で選んでここに来たの。
    運命なんかでもない。
    君がしてきた選択と私がしてきた選択が私たちを会わせたの。
    私たちは自分の意志で出会ったんだよ。」

    「誰かと心を通わせること・・かな。
    誰かを認める、好きになる、嫌いになる。
    誰かと一緒に居て、手を繋ぐ、ハグをする、すれ違う。
    それが生きる。
    自分一人じゃ生きてるってわからない。」


    引用:君の膵臓をたべたい


    運命や占いを僕は信じない。

    信じるのは必然と自分。
    信じるのは直感と気持ち。
    信じるのは信じたいと思った言葉。

    だって自分の今ある気持ちは
    本当に揺るがない真実だと思うから。
    それ以上の真実なんてこの世にあるだろうか?

    何てことを10代の自分は、1ミリ程度も考えていなかった。

    怠惰に囚われ、生きるのが馬鹿馬鹿しいとすら思っていた。

    生きる意味なんて考えてなかった。

    ただ何となく生きていた。
    寂しい人間で、弱い人間だった。

    占いや宗教、神を信じて生きる人たちを
    ずっと子どもの頃から疑問に思っていた。

    信じる力を知らずに。

    なんで、自分のありのままを、何も分からない未来を、人の人生を、決めつけられ信じる事ができるのだろうって。

    信じられるのは、目に見えるものだけだと思っていたかもしれない。
    自分の気持ちだって、疑って生きていたのかもしれない。

    数字を信じて
    偏差値を信じて
    テストの点数を信じて
    会社を信じて
    役職や地位を信じて
    評価を信じて

    目に見えるものは、事実だからと言い聞かせて。
    事実だったら疑いもなく、信じて間違いないと思っていたから。

    けどどこか、寂しさを感じていた。
    虚しさを感じていた。
    その理由も分からずに。

    その理由は、大人になって気づいた。
    それは、自分の感情を、他人の感情を、信じようとする気持ちが足りなかったんだ、満たそうとしていなかったんだって。

    自分とも他人とも向き合うのが、怖かったんだ。

    きっと嫌われるのも、傷つくのも怖かったんだ。
    人付き合いを、深い関係を、築く事から逃げていたんだと思う。

    だから信じられる数字を、事実を信じて生きていた。
    自分の感情と向き合い、知ろうともせずに。

    感じている気持ちに、気づかないふりをして

    現実逃避を繰り返していたんだと、今になっては思う。

    事実よりも大切な、本当の気持ちを蔑ろにして。

    誰だって、本当は現実に向き合う事が怖いんだろうと思う。
    真実を突きつけられる事が、知ることが、怖いんだと思う。


    本当は自分が大切だから、いくら自虐したって、卑下したって、傷つかないように、自分を無意識に守ってるんだろうって思う。

    だから、現実を忘れるかのように
    何かを信じているのだと思う。

    周りの目ばかり気にして、自分を

    偽って生きてるんだろうと思う。
    そして、何かを頼って生きているのだろうと思う。

    それは、
    占いかもしれないし
    信仰心かもしれない
    親かもしれない
    友達かもしれない
    恋人かもしれない
    お金かもしれない
    地位かもしれない
    権力かもしれない

    それが自分を幸せにしてくれると、信じて。

    何を信じるのが1番だなんて
    決めつける事はできないけど

    信じたいと思った自分の気持ちには

    嘘をついて生きたくはないと僕は思う。
    僕は生きているこの世界を
    今自分が生きて感じている
    今、この感情を信じている。

    だから

    自分の気持ちと向き合えず
    自分の病気と向き合えず
    自分の現実と向き合えず
    苦しんでいる人たちを
    僕は黙って見ている事ができなかった。

    そんなある時、家族が病気になった。
    生きていくのが不自由になる重たい病。

    悔しかった。
    気づけなかった自分が。
    何も出来なかった自分が。

    だから、家族が、そんな人たちが
    もう一度この世界を
    もう一度自分自身を
    信じられる手助けが、したいと思った。

    思った時には、公務員の辞職願を出していた。
    自分の気持ちに、初めて正直になったかもしれない。
    そんな自分が、今では医療現場に足を踏み入れた。
    いや、正確には踏み入れ始めたひよっこだ。

    絶対にここで働きたいと決めていた病院があった。
    第二志望なんて、滑り止めなんて受けなかった。
    そして、その病院で働く事が決まった。

    これから、自分の信じた道の上で、どんな苦労とも向き合って、真っ直ぐに生きていくと決めている。

    あなたは何を信じて生きていますか?

    自分の本当の気持ちに目を向けていますか?

    • 胡桃さん
      看護さんのレビューはいつも真剣で、生きることや人として真摯に向き合われている。そんな気持ちがとてもストレートに伝わってきて心揺るがされます。...
      看護さんのレビューはいつも真剣で、生きることや人として真摯に向き合われている。そんな気持ちがとてもストレートに伝わってきて心揺るがされます。
      この本は私にとっても生きるという大切な気づきをくれた思い入れある一冊になりました。看護さんにとっても、心に届くものがあったようでとても嬉しく思います。
      看護さんは、ご家族の病がきっかけで医療の道に進まれたのですね。看護さんのような方に看てもらえたら、きっと病という不幸の中にも、幸せを感じられるだろうなと思いました。言葉で表現しなくても、人の手から伝わる心の温かさは言葉以上に相手に伝わるものだと思っています。
      今はコロナ渦のなか、人との距離が広がる一方ですが・・・

      医療現場はどこも逼迫し、心身共に休めない状況かと思います。医療現場で従事される方々へ感謝が絶えません。早く落ち着くのを願っています。

      看護さんの情感溢れるレビューは、密やかな楽しみです。これからも楽しみにしております。
      忙しい日々かと思いますが倒れないよう、ご自愛くださいませ。良いお年を!
      2021/01/01
    • 看護さん
      胡桃さん、馬鹿真面目なレビューに丁寧なコメント残してくださってありがとうございます!そしてあけましておめでとうございます

      話題性のある本で...
      胡桃さん、馬鹿真面目なレビューに丁寧なコメント残してくださってありがとうございます!そしてあけましておめでとうございます

      話題性のある本ですが、想像以上に良いストーリーと内容で読んで良かったと感じています

      僕は人を動かすのは目に見えない心の温かさだと信じています
      思いはきっと言葉と行動になって現れると思っています

      コロナが人を遠ざけた事で
      人との繋がりの大切さに気付ければ...

      お気遣いありがとうございます
      読書量はすっかり減ってしまいました

      きっとこれからがコロナ医療の本番が押し寄せてくるように感じています
      気を引き締めて頑張りたいと思います
      2021/01/09
  • 映画も良かった。でも小説は思っていたよりももっとよかった…読んでよかったなって、思いました。



    病室でした、一回勝負の真実か挑戦かゲーム。
    彼女は負けて、「君にとって、生きるっていうのは、どういうこと?」と質問された返事…



    「誰かと心を通わせること。そのものを指して、生きるって呼ぶんだよ。」

    ・・・ああ、そうか。
    僕はそれに気付いて、鳥肌が立った。



    主人公春樹のように、
    ここに一番、私自身もはっとさせられた。



    つづけて、彼女が言ったこと。。。

    誰かを認める、好きになる、嫌いになる、鬱陶しい、楽しい、手を繋ぐ、すれ違う。それが、生きる。自分たった一人じゃ、自分がいるって分からない。

    誰かを好きなのに誰かを嫌いな私、

    一緒にいて楽しいのに鬱陶しいと思う私、

    そういう人と私の関係が、他の人じゃない、私が生きているってことだと思う。

    今の私がいるのは、皆んながいるから。
    私の体があるのは、皆んなが触ってくれるから。
    そうして形成された私は、今、生きてる。

    まだ、ここに生きてる。

    • 看護さん
      レビューを見て読んでみました!自分の生き方を考えさせられて、泣ける素晴らしい話でした。
      素敵なレビューありがとうございました。
      レビューを見て読んでみました!自分の生き方を考えさせられて、泣ける素晴らしい話でした。
      素敵なレビューありがとうございました。
      2020/08/18
    • 胡桃さん

      看護さん、こんばは。

      拙い感想ですが、看護さんがこの一冊を手に取るきっかけに少しでもなれたことに、とても嬉しく思いました。

      生きるって...

      看護さん、こんばは。

      拙い感想ですが、看護さんがこの一冊を手に取るきっかけに少しでもなれたことに、とても嬉しく思いました。

      生きるってなんだろうか…と考えてたときだったので、一生懸命に生きる二人の姿や言葉がとても心に刺さりました。大切なことを教えてもらいました。

      本当に、泣ける素晴らしい作品だと私も思います!

      気持ちを共有できて嬉しかったです。
      読んだよと、声かけてくださってありがとうございました!


      2020/08/19
  • 4.9
    ずっと読みたいと思っていた本
    やっと読むことが出来ました。
    そんな気持ちがあり、かなり期待した状態で読んでいきましたが、期待以上の良さでした。
    亡くなる時に泣けるのかなと思って読み進めていましたが、見事に裏切られ、亡くなってからの話で泣けました。
    大切な人が亡くなったのに、こんな綺麗な終わり方が出来るんだと、感心しました。
    私にとっては、先々記憶に残る良い本に出会えました。
    また、いつか再読したいと思います。

  • 2016年年間ベストセラー第1位。青春恋愛小説。

    同じ高校のクラスメイト同士であり図書委員でもある僕と山内桜良の非常に面白くしばしば笑ってしまう会話のやり取りを中心に端正に文学的に表現していて読んでいて心地よい。

    単行本で280ページ中の80ページ位読んだ辺りまでで後世に残る名作になると思った。

    この作品の中では個人の過去の選択が現在の自分を作っているという考えをとっている。また主人公の僕が孤立していることとは対照的に、桜良が人とのつながりの中で生きていることを描いていて、結局僕は人々の間で生きることの大切さに気付く。繰り返して書くが、何といっても僕と桜良のテンポのいいやりとりは秀逸で、地の文も素晴らしいし面白い。

    膵臓という言葉がタイトルに入ることと冒頭辺りからの流れで大方の読者は桜良がどうなるかはわかるので、結末がどのようになるかを早く知りたいと待ち望んで読むことになり、結局最後まで一気に読んでしまうことになるだろう。

  • また同じ夢を見ていた・よるのばけもの に続いてようやくデビュー作を読みました。

    『読後、きっとこのタイトルに涙する』という帯や、冒頭からヒロインが亡くなることも書かれているので人が死ぬ話というのはあらかじめ予想がついているのだけど、最後まで読んでみた結果、泣きのポイントがわからず。
    主人公が「うわああああえぐえぐっ」と次ページにわたり三行も泣き叫んでいたところでしょうか?あえて文章で表現せず台詞で号泣というのは私にはある意味新鮮でした。
    純愛、友達、病気、死、悲しみを乗り越えて成長する主人公の青春物語、というのに泣けないとなると非情な人間のように思われそうでなかなか書きにくいのですが・・・
    まず、ヒロインのさくらちゃん、自由奔放キャラはいいけどクラスの人気者というのがピンときません。主人公と正反対のタイプで人気者だ、という表記があるけれど、その魅力が伝わりませんでした。明るくて活発な女の子=人気者 という構図?
    意味のない喩えを繰り返す会話もおしゃれだと思っていそうでちょっと恥ずかしいです。電車で横に座った中高校生からこんな会話が聞こえてしてたら鳥肌が立っちゃいそう。読みながらも少しイラッとしました。
    膵臓の病気→医学の進歩によって普通の人と変わらない生活を送れる→リュックの中には注射器と大量の薬→暴飲暴食→アルコールまで接種→それが原因かはわからないが入院→入院長引く・・・
    もしかしてモルヒネでも打ってるの?普段の生活結構無理してるのでは?病人以前にそもそも未成年で飲酒はダメでしょ・・・と突っ込みどころ満載でした。
    病名は明かされていないので、そこにリアリティは求めちゃいけない作品なのかもしれません。
    そんなわけで、いくつもの要素が重なって、さくらちゃんが死んでも主人公が泣き叫んでも全く泣けませんでした…。

    3作そうだったのですが。読むタイミングが私には合わなかったのでしょうね。
    最新作もまた同じテイストで青春ファンタジーの内容ならもうお腹いっぱいなので読まないかも。

    • dakara.さん
      初めまして。 感想を読ませていただいて、共感する部分が多かったので思わずコメントしてしまいました。特に会話については、私も読みながらゾクゾク...
      初めまして。 感想を読ませていただいて、共感する部分が多かったので思わずコメントしてしまいました。特に会話については、私も読みながらゾクゾク鳥肌を立たせていました…。(良くない意味で)
      2017/06/13
    • チョビさん
      初めまして。
      文章の軽さに対して、私も全く同意見を持ったところでしたので、思わずコメントしてしまいました。
      私は、結局泣かされてしまったので...
      初めまして。
      文章の軽さに対して、私も全く同意見を持ったところでしたので、思わずコメントしてしまいました。
      私は、結局泣かされてしまったのですが、それは単に人の死を扱った、いわば「ずるいテーマ」だったからのでは…なんて思ってしまって。
      ただ、主人公が泣いているシーンで涙が引っ込んでしまって、その理由を探していたのですが、にゃん吉さんの指摘のように、泣く様を文章で表現していないからだとも思えました。
      何にせよ、泣くほどには私の心には響くものがあったんだな、そういう意味では、読んでよかった本だな、と思いました。にゃん吉さんが仰るように、読むタイミングもあるかもしれないですね。
      反応しづらい長文で、すみません。
      2017/07/23
  • このタイトルからは全くかけらも想像できないほどの豊かで瑞々しく温かく、そして哀しい思いを受け取りました。
    130Pあまりの物語の中にたくさんのキラキラと輝く言葉を見つけ、その一つ一つにこめられた思いの深さに涙した。
    10代の少女にとって余命宣告はどれほど残酷なものか。まだこれからたくさんの人と出会い恋をし悩み傷付きながら人生を楽しんでいくはずなのに。その全てを諦めろ、と言われるのだから。
    桜良が、どうやってその苦しみ悲しみを受け止め飲み込み笑顔の下に隠す覚悟をしたのか、それは彼女にしかわからないのだけど、最後の4か月がその苦しみを昇華してくれたことは間違いないだろう。いや、そうあって欲しいと心から願ってしまう。納得して逝ったわけじゃないけれど、その覚悟というか気持ちは大切な人に伝えることができたのだから。
    彼女が親と「クラスメイトくん」以外に決してその余命を知られないようにしたこと、それは彼女なりの最期の矜持だったのかもしれなけど、親友の恭子にとってみればかなり残酷。きっと知りたかった、知ってなおあえてその残りを一緒に過ごしたかっただろう。たとえそれが親友の最期の望みだったとしても。でも、それでもだからこそ思い出の中の桜良は最後まで笑顔だろうね。
    けど、運命って残酷だな、と。残り少ない人生をなぜあえて奪う事件が起こるんだ、と。怒りがふつふつと。誰でもよかった、という聞き飽きた動機で通りすがりの人を傷つけるやつを、心の底から憎む。お前の人生を桜良に譲れ!
    それと、桜良が最後まで求めていた「日常」を共に過ごした春樹が、なぜあんなに厭世的で他者とのかかわりを避けてきたのか、というところをもう少し知りたいと思った。
    2人の出会いは偶然のようだけど、きっと神さまの贈り物だったのだろうとそう思う。
    行き場のない思いと欠けた心を持つ2人が出会い、その心が一つの温かい世界になる。
    生きることって、本当に素晴らしい。そう教えられる一冊でした。

  • 好きな世界観です。
    「君の膵臓を食べたい」という言葉の意味するところが、非常に素敵でした。
    自分とは正反対の存在にたいする憧れ、とても共感できる。

    「言葉は往々にして、発信した方ではなく、受信した方の感受性に意味の全てはゆだねられている。」
    この一説がお気に入りだ。

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著者プロフィール

高校時代より執筆活動を開始。デビュー作『君の膵臓をたべたい』がベストセラーとなり、2016年の本屋大賞第二位にランクイン。他の著書に『また、同じ夢を見ていた』『よるのばけもの』『か「」く「」し「」ご「」と「』『青くて痛くて脆い』『この気持ちもいつか忘れる』『腹を割ったら血が出るだけさ』がある。カニカマが好き。

「2023年 『麦本三歩の好きなもの 第二集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

住野よるの作品

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