82年生まれ、キム・ジヨン [Kindle]

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  • ある日突然、自分の母親や友人の人格が憑依したかの様子のキム・ジヨン。
    誕生から学生時代、受験、就職、結婚、育児……キム・ジヨン(韓国における82年生まれに最も多い名前)の人生を克明に振り返る中で、女性の人生に立ちはだかるものが浮かびあがる。


    フォロワーさんの感想を読んでいて、絶対コレ、共感できそう!!!と思いAmazonでポチっと購入してしまった(笑)

    「わたしもあなたも登場人物のひとり」

    正にね。読んでいてそう思う場面が何ヶ所も。


    私は18歳の頃入社した会社で、正社員として勤め続ける46歳で、子供が二人。
    二人の子供はもう既に社会人になり、私は今人生においての休息時間かなぁ~?と思う(笑)


    22歳で結婚して、翌年子供を授かったが、一年の育児休暇を取得し、子供は保育園に入れ、正社員を続けてきた。


    想像するより、育児って過酷で、育児しながら仕事続けるのはかなりの苦労を強いられる。

    今のように、夫が積極的に家事や育児に参加する時代でもなかったから、炊事洗濯育児は当たり前のように私がやっていた。

    そんな大変だった過去を頭に浮かべながら、あっという間に読み終わってしまった。


    文中の彼女の台詞

    「失うもののことばかり考えるなって言うけど、私は今の若さも、健康も、職場や同僚の友だちっていう社会的ネットワークも、今までの計画も、未来も、全部失うかもしれないんだよ。だから失うもののことばっかり考えちゃうんだよ。だけど、あなたはなにを失うの?」

    「その、「手伝う」っての、ちょっとやめてくれる?家事も手伝う、子育ても手伝う、私が働くのも手伝うって、何よそれ。この家はあなたの家でしょ?あなたの家事でしょ?子どもだってあなたの子じゃないの?どうして他人に施しをするみたいな言い方するの?」

    激しく同意してしまう自分が居た(笑)

    ほんとよね。二人の子なのに、何で女ばかりが?!
    それは女が働いていたとしても、世間は家事も育児も女性にばかり求める。

    会社の同僚で、旦那がさんが洗濯をしてくれる人が居るが、旦那さんが外で洗濯物を干していると、

    「あの家は、旦那さんに洗濯やらせている」

    という噂が立ったとか(^-^;


    世の中が変わらないと、こういう感覚はなかなか変わっていかないのだろうなぁ~。

  • 夫と1歳になる娘と暮らす33歳のキム・ジヨン。突然自分とは別人格になって話し始めたジヨンに夫はとまどい、精神科に連れて行く。この話は、ジヨンへのカウンセリングをもとに精神科医が綴った彼女と彼女の母、祖母の人生の記録である。

    映画を観た後すぐに本屋に買いに行き、近くのカフェで一気読みした。
    女性として生きていたら一度は体験する、あるある内容が満載で、日本の小説ではないかと錯覚するほどだった。そして、こうやって小説の中で提示されて初めて「あ、よく考えたらあのことも差別だと主張してよかったことなんだ」と気づかされることも多かった。それほど脈々と続いてきた差別や刷り込みは、男性だけでなく女性自身も毒しているのだなあ、と改めて思う。小説のラストも、この問題の根深さを突きつける皮肉な終わり方だった。

    ジヨンは、目の前に広がっていた可能性が一つ一つつぶされていくのに対し、おかしい、おかしい、と思いながらも言えずにきてしまった。別人格になる事でしか蓄積した行き場のない思いを外に吐き出すことができなかったのだろう。ジヨンのような症状にまで至る人は多くないかもしれないが、世の中には、世界中には大勢の「キム・ジヨン」が今も存在する。そして、自分自身が知らず知らずのうちにジヨンを追い詰める加害者になっているかもしれない。

    小説は、ジヨンが別人格を持つに至った原因をふりかえり、問題提起するところで終わっているが、映画は、現状をどう変えていくか、という未来も描いている。小説では名前すら出ていなかったジヨンの弟や、それほど協力的に描かれていなかった夫も、映画版では、自分たちにできることを一生懸命考えてくれているし、姉や元職場の女性同僚、上司も理解のある人たちだ。公開するにあたり内容をマイルドにした、という事情があるかもしれないが、これから少しずつでも変えていける、というメッセージが込められていたのだと思うし、そうであってほしいと思う。

  • 社会が無意識に敷く男女区別のレール・ステレオタイプとされている生き方に気付けばいつの間にか乗ってしまっていることに気づいた時の主人公の恐怖感、自らの本心と社会や周りが求める役割とのギャップ、主人公が今まで大切に抱え自分を構成してきたものを一つずつ手放し、母親という以外の人格が強制的に消されていく過程が非常にリアルに描写されており、読了後は息が詰まるような感覚になった。

  • NHKラジオの番組『カルチャーラジオ文学の世界』で、翻訳家小山内園子氏による『`弱さ’から読みとく韓国現代文学』を聴いている。その中でこの作品が紹介され興味を持った。
    『82年生まれ、キム・ジヨン』は、淡々とと事実のみを語る文章であるが、内容はどれだけ韓国の女性が理不尽な状況に置かれているか、彼女らの犠牲で社会が支えられているかなど、偽りのない生々しい韓国の女性の実態が描かれている。
    韓国ドラマをよく見るのだけど、先輩後輩の関係は絶対なんだなぁとか、年上の人にタメ口で話すのは相当に失礼なことなんだなぁとか、年上の人とお酒を飲む時は横を向いて両手で盃を持って飲むんだぁとか、日本と比べて儒教の影響が強いという印象だった。韓国の恋愛ドラマはほとんど見ないけど、私が見たドラマを通して映る男女の関係は平等なものだった。労わられ、優先され、大事にされている存在であった。でもこれはあくまでも理想の姿だった。
    日本のジェンダーギャプは156ヵ国中の120位である。日本もこの小説の世界と変わらない世界なのだ。

  • 医師の診療記録として、淡々と描かれていく「キム・ジヨン氏」の半生には、数えきれないほどの女性であるがための差別や苦痛が記されています。

    韓国が舞台とはいえ、すべてがどこか身に覚えにあるような、知らない話ではないように、身近に感じられました。それは女性ならありふれている、男性ではないために自然と受け入れ、受け流し、呑み込んできた物事たちばかりだったからです。

    でもそれは本来は、おかしいことです。
    生命そのものを否定するような昔ほどではなくとも、今なお、れっきとした「差」「区別」は存在します。

    それを、「キム・ジヨン」の名を借りた女性のかたちで、切々と、淡々と、浮かび上がらせていくこの小説は、フィクションとノンフィクション、ドキュメンタリーを併せ持ったような不思議な読み応えの作品でした。

    けれども、間違いなく作者の堅固な意思があって描かれていた「小説」であることを、私はうかつにも巻末の解説で知りました。ジヨン氏の夫以外に、男性には名前が与えられていないということ。その明確な「区別」こそが、強烈なアピールだったのです。シンプルにその意味は強く鋭いメッセージとなって、この小説は多くの人々の心をつかんだのでしょう。

    唯一作中で公平に誰にも降り注いでいたのが、雪のかけらでした。とても美しくて魅かれてやまない雪のひとひらは、けれどあえなく消えていく。もっと確かなものにあたたかく包まれる世の中になるよう、願います。

  • きっと読んでいて苦しくなるだろうと覚悟して読み進めたが、患者のカルテという体をとってくれているので読みやすかった。それでもその息苦しさや生き辛さは感じられる。
    女だから、男だから、でなく、全ての人類が等しく幸福に生きる事ができるようになりたい、読み終えてそう感じた。

  • 3ヶ月の娘を育てる私を助けに度々来てくれている母が、この小説を私に勧めた。私は1985年生まれ、ジヨンと同世代だと言っていいだろう。母は私に、「働きながら子育てをしてきて、このような事は少し思い当たることもある」と言った。

    ガラスの天井指数というものがある。仕事における男女平等の度合いを表すもので、OECD加盟国29ヵ国の中で日本は韓国の次に悪い28位。でもそんなに悪い実感はない。私は新卒で入った会社でサラリーマンの平均年収以上のサラリーを稼ぎ、その後転職を経て、今年育休中にも関わらず昇格した。会社は保活コンサルを雇って、育児休業者の復職のために、住んでいる地域に合わせた保活情報を提供してくれた。

    ただ振り返ってみれば、韓国の女性たちが娘のためにと努力して積み上げてきた様に、祖母から母へ、母から私へと続く思いが、よくわかった。その上に今の私がいるのだ。そしてそれは報道にある様に、まだ様々なところに残っている。
    私も幼い娘の母となった今、私は娘にどの様な社会を手渡せるだろうと考える時がきた。

    母は長男の嫁だが、55で早期退職をするまで、保育士として勤め上げた。
    祖母は母が嫁いだ時、この家に主婦は2人も要らないと言って、働き続けることを勧めたのだそうだ。
    祖母は、きっと母に自分の様になって欲しくなかったのではないか。男の子3人と何もしない夫の面倒を1人でみて、自由になるお金や気晴らしの時間も少ない、そんな自分に。

    私の出産を機に、母とは出産育児について話すことが増えた。
    私は、妹と2人姉妹だ。母は、妹を産んだ時のことを振り返って、「爺ちゃんは、女の子だと分かると病院にも来なかった」と、悔しそうに言った。私はそれなりに凝った名前だが、妹は、祖父と父の無関心の表れなのか、生まれ月と同じ名前である。

    私の同級生は、女の子は大学なんて行かなくていいと言う父親を持ち、母親から渋々学費を出してもらった。アルバイトで生活費を稼ぎ、苦しい時には連日もやしを食べて大学を卒業した。有名企業に入った後、彼女は今、彼女がずっと欲しかった温かい家庭を築き、海外で楽しそうに暮らしている。

    医学部の試験で女性が不当に扱われていたことは、確かに私には関係ない。
    でも娘には関係するかもしれない。あなたの娘にも、関係するかもしれない。あなたの孫にも、関係するかもしれない。
    人は他者の為を思う時、最大のパフォーマンスが出せる。
    さあ、娘達のため、孫娘達のため、父親、母親、お爺ちゃん、お婆ちゃん、動き出そう。

  • ある日突然、母親や友人の人格が乗り移ったかのような言動をし始めるキム・ジヨン。何故そうなったのか彼女の半生を振り返っていく。女性が人生の中で出会う困難、差別が迫ってくる。韓国の話ではあるが日本でもなくならない問題。男も女も読むべし。必読の一冊。

  • これまで女性であることに否定的であり、そのことについて向き合うことを避けている自分がいた。しかし昨今、環境が変わり、女性と関わるアルバイトを通してフェミニズムについて自然と学び、考える時間が増えて今あらためて学びたい欲が湧いてきている。

    で、kindleを新しくし、unlimitedで前から気になっていた本書を手に取った。

    主人公やその母親世代や次世代の女性たちの姿がリアルに描かれていて、韓国が舞台ではあるが、日本にも共通する部分が多い。

    今後、心に浮かぶ「違和感」を見逃さないように、大切にして、丁寧に向き合っていきたいと思う。あらためてそう感じさせてくれた作品だった。

  • 2019年に読んだ本で一番読むのが苦しかったかもしれない。評判通り、私の話であり、母の話であり、友人の話だった。一方で、男性側の意見や感じ方、同じように抱える葛藤をいろんな人から聞きたいと思った作品。早く日本で映画公開されないかな。

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著者プロフィール

チョ・ナムジュ:1978年ソウル生まれ、梨花女子大学社会学科を卒業。放送作家を経て、長編小説「耳をすませば」で文学トンネ小説賞に入賞して文壇デビュー。2016年『コマネチのために』でファンサンボル青年文学賞受賞。『82年生まれ、キム・ジヨン』で第41回今日の作家賞を受賞(2017年8月)。大ベストセラーとなる。2018年『彼女の名前は』、2019年『サハマンション』、2020年『ミカンの味』、2021年『私たちが記したもの』、2022年『ソヨンドン物語』刊行。邦訳は、『82年生まれ、キム・ジヨン』(斎藤真理子訳、ちくま文庫)、『彼女の名前は』『私たちが記したもの』(小山内園子、すんみ訳)、『サハマンション』(斎藤真理子訳)いずれも筑摩書房刊。『ミカンの味』(矢島暁子訳、朝日新聞出版)。『ソヨンドン物語』(古川綾子訳、筑摩書房)が近刊予定。



「2024年 『耳をすませば』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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