- Amazon.co.jp ・本 (624ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062110976
作品紹介・あらすじ
目の前に、こんなにも雄大な森がひろがっているというのに、あたしは見えない森のことを考えていたのだ。どこか狭い場所で眠っている巨大な森のことを。学生時代の同級生だった利枝子、彰彦、蒔生、節子。卒業から十数年を経て、4人はY島へ旅をする。太古の森林の中で、心中に去来するのは閉ざされた『過去』の闇。旅の終わりまでに謎の織りなす綾は解けるのか…?華麗にして「美しい謎」、恩田陸の全てがつまった最高長編。
感想・レビュー・書評
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誰が書いたとも知れぬ小説『三月は深き紅の淵を』の第一章が『黒と茶の幻想』でもあり、表題作の作品があると知り、読んでみようと手に取ると…分厚いっ(汗)!これ、文庫だと上下巻に分かれているようですね。
学生時代の同級生、利枝子、彰彦、蒔生、節子の4人で、卒業から十数年後Y島を旅することになる…。それぞれが「美しい謎」を持参することが旅の条件になっており、4人の視点から物語が展開する…。4人は何らかの形で現在は姿を消している憂理(『麦の海に沈む果実』」で理瀬のルームメイトだった子)と関わっており、なぜ姿を消したのか、生きているのか、その「美しい謎」に迫る…。これは「美しい謎」の1つ、他にも沢山の「美しい謎」が描かれています。
Y島の自然とあいまって、「美しい謎」がなんだかとっても重厚なものに感じました。いいですね~私もこう気の置けない仲間とこんな旅をしてみたくなりました!この4人が再びY島を訪れる続編も恩田陸さん、手がけてほしいです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
40歳、大学同期の男女4名の屋久島旅行
幼馴染、元恋人、親友(訳あり)が旅で過去を振り返る。
ノルウェーの物語を連想する親友の死とトラウマ、禁断の愛などが盛り込まれている。
真実を語らない優しさはなぜ、誤解を生むのだろう?
「利枝子」のような女性はなぜか気になる。
今の年齢だから、楽しめる本かもしれない。 -
再読。恩田作品の中でも一番好きかも知れない。
学生時代の同級生が卒業後十数年を経て、仲間の送別会をきっかけにY島への旅を企画する。
本間節子、辻蒔生、利枝子、三崎彰彦。利枝子と蒔生はかつて恋人同士だった。皆今はそれぞれに家庭を持っている。
旅のテーマは「美しい謎」過去の謎をそれぞれに持ち寄って、旅の間に解決しようと彰彦が提案する。
過去の謎、太古の森への旅。私の大好きなテーマがぎっしり詰まって、まさに宝石箱のよう。恩田世界にどっぷり浸れます。
以下ネタバレ
利枝子と蒔生が別れた原因となる女性に梶原憂理が登場。
「麦の海に沈む果実」で理瀬のルームメイトだった子。彼女の一人芝居ではあの寄宿学校での麗子とのエピソードが語られる。憂理は利枝子の親友だった。何故蒔生は恋人の親友を好きになったのか?憂理は何故姿を消したのか?生きているのか?
彰彦は何故紫陽花が怖いのか?高校時代の親友の友紀が死んだ事を忘れていたのは何故なのか?
節子の夢に度々現れる紫の割烹着の女性は誰なのか?
それぞれが胸に抱いた過去の亡霊が紐解かれていくのがとても面白い。
そして随所にちりばめられた小さな謎解きにもうーん、とうならせられる。
4人が一人ずつ語っていく形式なので、それぞれがお互いに抱いている思いが微妙に擦れ違っていたりして、何気ない会話やエピソードがものすごくツボ。
観光案内としても秀逸。今すぐに屋久島にいってみたくなる。
最初から最後まで一語一句全てが美酒。 -
再読本だと思うのですが、記録になく……。(かなり前に読んだのかな)
大学時代に仲の良かった男女4人組で、とある島の山の中にある有名な杉と、その近くにある心の疚しい人には見えないという、三顧の桜を見に行くことに。
卒業してから10年以上たち、それだけ大人になったからこそ見えてくるものとかもあるわけで。
その時はわからなかったけど、今思うと、こうだったのだね。という話がたくさんありました。(登山しながら、4人で色々な話をしていくので)
麦の海に沈む果実に出てくる憂理が、名前だけ出てきます。
コロナ療養中に読んだ旅行もの。行った気分になれました。 -
この物語がミステリのカテゴリなのかどうかは分らない。そして、読む人全てが深く感銘できる作品だとも思わないし、してくれなくても構わない。だけど、神秘的な雰囲気と謎が複雑な人間関係と絡んで進行するこの不思議でとても素敵な作品は、自分にとってメモリアルな作品になっていることは間違いがない。
男女四人の同級生が屋久島に旅行に行く過程でそれぞれの立場からそれぞれの思いを語る進行は女性の読者向けであるようにも思うが、男が男性の視点で読んでも十分に読み応えがある。
自分や自分の恋人が四人の登場人物の誰に一番近いか、ついつい考えてしまうが、様々な場面で見られる各々の発言や言動にはそれぞれに共感出来る部分が多い。おそらく四人の登場人物のどこかにでも自分の過去を投影出来た人は物語に引き込まれて行くのだと思う。
自分としては最高の評価をする作品であるが、誰彼なく読むのを薦めることは一切したくない。そんな特別な作品である。 -
分厚い本を読み進める勇気?が出るまで、少し時間 がかかりました。 しかし、4人が島に着いてからは、自分でも驚くほ どのスピードで読みました。 それほど続きが気になったんでしょうね。
美しい謎なのかは正直分かりませんでしたが、登場 人物と同世代の今のタイミングで読めたことに、勝 手に縁を感じました。
旅をしたくなりました。 -
これだけの長編を
飽きさせもせず
進められる・・・すごい
各々の見方で進むけど
私だけ知ってていいのって思う -
大人の遠足、大人の修学旅行。不思議な謎は持ち込まれたり、その場で出会ったり。それぞれが納得できる答えを探していく中で、4人の過去にまつわる謎もほどかれて…。タブーの恋愛を織り混ぜて、そこは恩田さんらしいと感じました♪四人ともが魅力的で、確実に老いながら過去に触れる様は私も経験してみたい程の強い友情が存在していました。一癖も二癖もある蒔生と紫織の存在が光りました。決して気持ちの良い人達ではなかったけれど。自分が優しいと思っている人より、自分は優しくないと知っている人の方が優しいのよ…そうであって欲しいです。
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「三月は深き紅の淵を」関連の本。
第1章:利枝子、第2章:彰彦、第3章:蒔生、第4章:節子と
それぞれの視点で描かれている。
それぞれが「美しい謎」を持って屋久島を旅する。
いろいろな謎が出てくるけど、解決しないものが多い。
でもそれが良いんじゃないかと思う。正解ってないしね。
どの登場人物にも感情移入できて、
それぞれに秘められた想いが伝わってくる。
他に重要な役割を持っている紫織、憂理もまた魅力的。
心理描写や登場人物の描き方が上手いなぁって思う。
何度読んでも引き込まれる物語。
(図書館→購入) -
厚い!笑 四人の会話だけ追っていくと実際の設定よりずっと若く感じられたんだけど、きっと昔の知り合いっていくつになって会ってもあんなかんじで会話するんだろうな。
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それぞれが内に思いを秘めて臨む旅。好きです。この本はきっと読む歳によって見え方は全く変わってくる本なんだと思います。高校生のときに読めば、個人的には何か学生生活に憧れを抱くような、大学生のときに読めば、青春が何かを考えさせられ、社会人になってから読むと何とも言えない懐かしさが込み上げて来ると思います。また時が経ってから読み返して見たい本です。
この本を読むなら先に「三月は深き紅の淵を」と「麦の海シリーズ」を読むことをお勧めします。 -
数十年来の友人同士が屋久島を訪れ、過去の秘密を話し合うという、非常に不穏な感じがする物語。特に最後の語り手がとても感じのいい女性なだけに、実はすごく後味の悪い小説だったらどうしよう、と警戒していたのですが、そうか、こんなふうに締めるのか。人の底知れなさを思わせつつも、根底には、いろんなものを受け入れて変わっていける人間に対する信頼があって、ほっとしました。
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小さな魅力的な謎が散りばめられた贅沢な物語。一言でゆうとこんな感じです。 日常の中の小さな美しい謎…こんな旅がしてみたいです。
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学生時代の友人同士の利枝子、彰彦、蒔生、節子の4人で屋久島(Y島と表記)を旅する話。「美しい謎」をテーマに話しながら、最終目標縄文杉と三顧の桜を目指して旅は続く。利枝子の親友だった憂理(「麦の海に沈む果実」に出てくる)はどうなったのか?彰彦の紫陽花が怖い理由とは?節子の突き落とされる夢の根拠は?四十前の男女の友人同士の旅というのがまず面白かった。学生時代と変わったところ、変わらぬところ。そして屋久島の自然。数々の「美しい謎」。最後、節子の章で思わぬ展開となった。長編だが、飽きさせない。