- Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
- / ISBN・EAN: 9784844331148
作品紹介・あらすじ
グーグル、ヤフー、ツイッター、アマゾン、動画サイトの3.11。IT集団の初動レポートとともに、日本・社会・メディアを問う。
感想・レビュー・書評
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ITという視点から、震災と原発事故を検証する本
序章の「Googleの72時間」は、以前PDFで無料公開された。
第一部では、Yahoo Japan, Twitter, Amazon, AWSというIT企業の、震災直後から、どのように考え行動し、支援サービスを作っていったのかのドキュメンタリー。
面白かったのは、それぞれ別の企業なのに、同類のサービスが乱立する事なく、それぞれの得意分野で可能なサービスに住み分けがなされていた事だ。
本文中では、IT業界は転職が多い事と、エンジニア手動なので、普段から横の交流が多い為ではないかと推測されている。
重要だと思ったのは、GoogleとYahooが、自治体と官公庁に持っていたパイプが最大限活用されたという事だ。
特に、Googleはストリートビューにより、地方自治体にパイプがあり、これがサービスの迅速展開に非常に役にたっている
IT企業の支援体制がある程度有効に働いた理由のひとつに、普段から不確定でスピードが要求される仕事をしているからというのもあると思う。
第三部の「複合震災とITの可能性」は、ITとはいいつつも、マスメディア論や、エネルギー論、脱原発論を評論家が語るという内容で、冒頭のドキュメンタリーの熱意はなかった。
後半はほぼ飛ばし読みだったのだが、最終章、
「市民として、引き受けて考える社会へ」
の、この一節はすごく印象的だった。
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民主主義は多数派政治というより参加と自治だと言いました。
参加と自治においては知識社会が前提となります。
たとえ少数者の意見であっても多数者の意見よりも理にかなっていることがわかればそれを採用するという事です。
知識社会とは<知識を尊重する社会>という事です。
でも、日本ではそうではなく(空気に縛られる社会)です。
(任せて文句を言う社会)と(空気に縛られる社会)が合わされば、社会は合理的な決定ができません。
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【要約】
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【ノート】
・ややこしいのは、これから起きてくる問題は、グローバルなアッパー層とリージョナルな貧しい層の分断だけじゃないということ。たとえはグーグルやyoutubeみたいなネットのサービスは、無料だから全世界の貧しい人たちにまで普及する。それらはグローバルなプラットフォームだから、貧しい人々もバーチャルにはグローバル市民なんですね。でも同時に、リアルな世界において彼らは、生まれた場所から100キロも移動したことがない。これからの経済というのは、そういう人たちから小銭を集めて、現実に世界を移動できるグローバルな階級が編成されるような形になっていく。P251
・たとえば、京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんの原子力に対する識見と行動には深く敬意を抱くんだけど、一定の条件下で汚染された食べ物を自分が引き受けるとか、この人が言うのを聞くと、考え方がちょっと純粋すぎるというか、それを、他の人にも薦める形になったら、それはそれで困ることになると思う。宮沢賢治もそうだけど、理系の人は、大変すばらしい。でも、ときに、過度に純粋で、ちょっと単純だったりするよね。P342
・その結果、ますます不信感を募らせることになったんだけど、まず怒りを感じたのが、さっきも話に出た小出裕章さんの、5月23日の衆議院行政監視委員会における発言を多くの新聞が報じなかったこつ。これはNHKも中継してない。それこそネットで検索すればすぐ出てくるから、未見の人はぜひ見てもらいたいんだけど、これが感動的だった。P355
・元外務官僚の孫崎享さんも、自分の主たる舞台はツイッターだって言ってるね。P359 -
次世代を担う人たちの答え。
震災当時、震災以前の反省と現状認識、そして将来への課題など素晴らし良い内容がつまってる。 -
貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784844331148 -
(推薦者コメント)
2011年3月11日、日本を襲った大震災と、インターネット上のメディアとの関係を記録した書。これからのインターネットというものを考えるにあたっていい材料だろう。 -
東日本大震災の時に各種ネットサービスはどんな動きをしたのかがわかる。
Googleは、Amazonは、Yahoo!は。
この時、単なるお遊びツールだったtwitterやUstreamが素晴らしい支援ツールになった。いや素晴らしいは言い過ぎかもしれないが。
前半は「この企業(サービス)がこんないいことを」話だが、後半は東電や既存マスメディアを叩く内容などそれはそれで面白いが同じ本で展開されるのはどうも。 -
東北の震災の際に関わったITのお話。パーソンファインダーとかUstとかポジティブな面と、人間のダイレクトな関係が支えたあの時期についての考察をさまざまな方がしています。今回ほどSNSが重要な役割を果たしたことはなかったと思う。でもいろいろと課題もあったのも実際です。私がもし使いこなせなかったらどうだったんだろう…気になったのは書き手の差かな?いろいろな人の観点から見れるのは面白いけど、明らかに当事者だった人と取材して他人事だった人の文章は違うと感じました。
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2011.3.11の際のGoogle、Yahoo、Twitter、Amazon、各動画サイトとテレビ局の対応と、それらの「メディア」を人々はどう活用できたのか、あとは原発の話題を扱った本。
ブログはこちら。
http://blog.livedoor.jp/oda1979/archives/4163240.html -
Google Crisis Responseの動きに「アジャイル開発のエクストリームな実践」という観点から注目していた。
https://www.facebook.com/note.php?note_id=220537684634774
p.35 グーグルの72時間
一方、災害時にもっとも重要かつ信頼できる第一次情報を発すべき政府と行政は、安否情報システムひとつをとっても、十分な機能を果たせなかった。原発や核被害に関する第一次情報についても同様である。私企業にまかせておくだけでいいのか、という点については、市民であるわれわれもまた、社会の一員として再考しなければならない。
※逆に考えたい。「政府にまかせられるのか?」と。オープンデータと新しい公共。
p.44 ヤフーの災害プロジェクト
ヤフー株式会社R&D統括本部FE開発本部メディア開発部部部長高木正行氏
「ところが驚くべきことに、当初の行政の対応は『一企業だけに情報を提供するわけにはいかない。必要なら業界全体から要請する形にしてほしい』というものでした」
※馬鹿げた話。こういう事例を無くすためにオープンデータの推進が必要。
p.48
・被災地ではほとんどインターネットにつながらない状況でした。
・今回の経験から感じたのは、インターネットの特性を理解し、ツールとして正しく認識し、過小評価も過大評価もしないのが重要だということ。
・なによりも大切なのは、“人”が動かしているという自覚を持つこと。
※浅い教訓めいた認識で終わるのではなく、これを契機に「情報とは何か」と問う情報哲学を実践していきたい。
p.148 震災後の地域メディアをITはエンパワーできるか 道具的文化から表現的文化へ 飯田豊
・災害文化 disaster subculture
・道具的 instrumental 文化:被災者が適切に行動するための知識や技能を意味する
・表現的 expressive 文化:人々の不安や恐怖を和らげ、連帯感を深めるための
p.162 地域社会とウェブ・コミュニティ@浦安 円堂都司昭
「浦安の液状化被害は報道してほしいが、地価への影響を考えると町名まで出してほしくない」
※オープンデータとステイクホルダー。詳細な地理情報とひもづいた犯罪発生データの公開の負の面。
最後は安定の宮台節。