たかが英語!

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062177634

感想・レビュー・書評

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  • 楽天が社内公用語を英語にするという発表をした後にはてんやわんやの大騒ぎだったことをおぼえております。本書は代表である三木谷氏が自らそういった声に答え、自らのプロジェクトの進行具合を世に問うものです。

    本書は献本御礼。

    楽天とユニクロを展開するファーストリテイリングが社内公用語を英語にするというニュースを聞いたときには賛否両論の大騒ぎになったことを思い出します。本書は渦中の人物である楽天の三木谷氏が自社での英語化の取り組みと日本における英語教育に関する提言をしたものです。

    実はこの記事を書く前に成毛眞氏の『日本人の9割に英語はいらない』を再読して楽天とユニクロの社内英語公用語化に関するところを見てみると「自分が取締役だったら真っ先に逃げ出すだろう」というまさにミもフタもない批判からはじまってそのあとはもういいたい放題の「成毛節」でしたが、本書でそれらの意見にも反論する形をとっており、そういった意味でも読んでよかったなとは思いました。

    確かに日本人の9割に英語は要らないのかもしれませんが残りの1割は英語はいる。楽天はその1割になろうとしているのだな、という印象を持ちました。ただし、ここで言う英語とは外国の人間とシェイクスピアやアリストテレスについて自分の見解を述べよ、というものではなくてあくまでもビジネス英語、グロービッシュとのことなんだそうです。あまり詳しいことはかけませんが、僕の見聞きした話によると、ビジネスそのものでいえばジャニー喜多川よろしく「YouはDreamをHaveね」というちゃんぽんイングリッシュでも極端な話、ビジネスはできます。しかしここでいう「グローバル企業」になるためにはそういうわけにもいかないでしょう。

    そういうことで楽天は社内プロジェクトとして筆者いわく「僕は予感した。これは、かつて日本で行われたことのない実験になる。7000人以上の日本人が、2年間で英語をマスターするなんてことが、本当に実現できるだろうか。僕は狂っているのかもしれない。しかし、この実験を成功させることでしか、楽天も、そして日本も生き残れないと思った。さあ、実験開始だ」ということで大胆な決断に踏み切ります。

    グローバル=英語とは一概には言い切れないと個人的には思っておりますが、英語が出来ないよりはできたほうが少なくとも世界は広まります。例えば、徒手空拳の自分でも英語ができさえすれば、もしくはグーグルなどの翻訳ツールを補助として使いこなすことさえできれば例えばアメリカ大統領に対してでもツイッターなどで直接意見が言えるわけです。

    それはさておいて、最初は英語習得時に関する費用は三木谷氏が「身銭を切ってこそ」という信条から負担はしなかったのだそうです。それに関してもベンチャー企業の過酷な業務に加えてビジネス仕様の英語をまさにイチから習得する…。社員の苦労が行間からにじみ出てくるような話から、後に新入社員のために業務につかせず給料を払って英語を学習させ、さらには成績不振者には語学留学をさせるなどの話を読んでいるときには 「三木谷さん優しいなぁ」という思いと、そこまで会社としては本気なんだな、ということをことの是非は別として感じることができました。

    以前、佐藤優氏の『紳士協定 私のイギリス物語』という本で、彼がイギリスはベーコンズフィールドにある陸軍語学学校の過酷なまでの英語学習のエピソードを聞いているので、余計にそう感じたのかもしれません。結果に関しては発展途上ながらも三木谷氏にとってはおおむね満足できるようなものが出たらしく(だから本書を書いたわけですが)日本の英語教育について後半述べられている箇所については僕にとって思春期の前に英語を学習させるや英語の試験は全てTOEICにさせるという箇所については正直『どうだろうか…』という疑問が抜けませんでした。

    これに関しては作家で同時通訳者の米原万里さんなどが主張する『複数の言語を人生の最初に学ぶとどちらも中途半端になる』という考え方を僕は支持したいですし、仕事の上では英語を使うのもアリなのかもしれませんが、ある程度それは日本語を土台としての話だと僕は思うのです。おそらく、楽天に入る人間は(会ったことがないので想像で書きますが)学歴社会で言うところの「エリート」であろうと想像せられますし、それに関しては問題がないのでしょう。

    楽天が扱っているビジネスもインターネットというスピードありきの世界で翻訳に頼らないで発信されているホットな情報を知り、自分たちのビジネスに活かしていくには英語というツールは不可欠なものなのかもしれませんが、ここで書かれていることを9割の日本人がそのままとりいれることができるか?ということにつきましては若干の疑問符がつくと思われます。ただ、僕は楽天のやろうとしていること自体については否定も肯定もしまい、と心に決めて筆を擱かせていただきます。

  • ハーバードビジネススクールケーススタディに取り上げられる language and globalization, Englishnization at Rakuten

  • 楽天社長の三木谷氏が、楽天の「英語公用語化(Englishnization)」について述べた一冊。英語が必要な理由、どのように英語化を実行したか、などについて言及。
    「1000時間」英語の環境にいれば、自然と英語が身に付くらしい。毎日2時間練習すると2年かからず身に付くそうで。英語の勉強のためには、とにかく四六時中英語に触れることが最大のコツのようだ。

  • ブクログより献本。

    楽天の社内公用語が英語化にというニュースが流れてから、
    はや2年が過ぎるそうです。
    ちょうどユニクロも同じ時期に社内英語化が決定され、
    雑誌なんかでもその功罪について色々議論がなされました。

    この本は、楽天の三木谷さんが社内公用語を英語と宣言してから、
    社員にTOEIC受験を義務化し、昇進にTOEICの点数を盛り込み、
    社員が英語を喋れるようにあの手この手で工夫をした経緯を
    一冊の本にまとめた本。

    当初の三木谷さんの考えから初まり、楽天の施策、
    (一部の)社員の反発までの記録が残されています。

    僕のようにビジネス英語を目標に
    TOEICをちょうど勉強し始めた人間や
    社内で英語化を推進したい人事や役員の人には、
    面白いと思うのですが、それ以外でこの本を読みたいと思う人はいるのだろうか。。
    正直、それが一番の僕の疑問です(笑)

    「英語」や「TOEIC」という視点で読めば
    読む人は限られてきますが、
    これを一つのプロジェクトと考えた場合、
    三木谷さんがどのようにこのプロジェクトを成功させようと
    奮闘したのか、そんな読み方をすると面白い本です。

  • 楽天の社長、三木谷浩史さんの著書です。
    2年前に世間を驚かせた、社内の公用語をすべて英語にするという宣言から早二年。
    ついにその時期がやってきた。この2年間の楽天の取り組み。そして英語にすることで起きた変化、社内での言葉を英語にする理由。壮大な実験ともいえるこのプロジェクトの結果(まだまだ終わりでなく、これからもこのプロジェクトは続いていく)をこの本で明かしています。

    第1章 社内公用語英語化を宣言
    まず、何故三木谷氏は、社内の公用語を英語にしようと決断したのかについてです。2009年11月に参加したある合宿で、2006年時点で日本のGDP比率は世界の12%だが、2020年に8%、2035年に5%2050年にはわずか3%に落ち込むという予測を聞く。日本のGDP比率が世界の3%に下がる以前に、日本は人口が減少し、マーケット規模は縮小していく。2035年時点で5%ということは、世界のマーケット規模の20分の1である。逆に考えれば世界には日本の20倍の市場が存在することになる。衰退していく日本の中で、それなりに強いプレーヤーとしての地位に甘んじるのか、それとも真のグローバル企業となるのか。三木谷氏が選んだ答えは、真のグローバル企業になることだ。創業以来、世界一のインターネットサービス企業になるという目標を掲げていた楽天にとっては、答えは一つだった。グローバル化の推進は、選択肢の一つではなく、必ず実現させなければいけない生命線だった。

    2005年あたりから楽天は海外でのビジネス展開をそれないりに進めていたが、どうも効率が悪いと感じていた。その効率が悪い原因を考えるうちに直面したのが言語の問題だった。通訳を介すために意思疎通がワンテンポ遅れてしまう。何より、一緒にビジネスを進めていくという一体感を持ちにくかった。また、将来の世界進出をにらみ、オリジナルなサービスを生みだしていくためには、日本だけではなく広く世界から優れた才能を持った人材を雇い入れなければいけない。
    グローバルな経営を実現するには英語によるコミュニケーションが不可欠であることを悟った。

    では、どうやって英語化を推進していけばいいのか。楽天に勤務するインドと中国の社員たちが、わずか3ヶ月で日本語を喋れるようになっていた。どうして彼らはあんなに外国語の習得が早いのだろうか。理由は、彼らが日本語の環境に置かれているから。言語をマスターする上で重要なことは、その言語になるべく長く触れ、使う時間がじゅうぶんにあることだ。
    その時に三木谷氏はひらめいた。終始、英語に触れられるような環境を社内に作り出せばいいと。社内の基本言語を英語にすることを決断した。

    三木谷氏は仮説を立てた。英語をマスターするのに必要な時間を。楽天に勤務する外国人が日本語を習得するのにだいたい3ヶ月。そこから1000時間という必要時間が出てきた。1日2時間、忙しいときでも1時間は英語に触れる時間を作り出すことは可能なはずだ。そうすると、およそ2年で1000時間を超える。2年間で社内公用語を英語にすることを決断した。

    社内の反発や、想定していなかったストレスを抱えていた社員もいたりし、英語を習得するためのプロジェクトも軌道修正をしながら、力強く推進していった。壮大な実験が始まった。

    第2章 楽天英語化プロジェクト・スタート
    昇格用件にTOEICのスコアを入れた。ただ昇格用件に入れるだけでなく、自分の肩書きにあったTOEICの点数はあとどれだけ必要なのか分かるよう、KPI(Key Perfomance Indicator)日本語では重要業績評価指標を作り、目標を数値化し、社員全員が自分に必要な点数があとどれくらいか分かるようにした。また成功事例を社内の部署間で共有出来る仕組も作った。ここで楽天社員の英語の勉強方法の実例が紹介されています。この部分の実例はこれから英語を勉強する方には参考になると思う。

    第3章 英語は仕事
    2011年の新入社員に対し、入社するまでにTOEIC650点以上を獲得しておくよう求めた。新卒研修を終えて、配属の時期となる頃にも170人が未達成だった。三木谷氏はその170人をどの部署にも配属させなかった。その代わりに、勤務時間中に英語を勉強させた。仕事をせずに、英語を勉強している彼らにも、ちゃんと給料は支払っていた。仕事として英語を勉強させていたのである。
    当初は、社員の自主性に重んじていた英語学習だが、個人差もあるため、会社として支援策を充実させていった。

    第4章 楽天英語化の中間報告
    最初に、表や図で楽天の英語化の状況が説明してある。この2年間で楽天社員のTOEICの平均スコアは161.1点アップしている。しかし、「読む・書く」はできるが、「聞く・話す」はまだまだできていないということも分かってきた。今後の課題はリスニング・スピーキング能力の向上とのこと。
    その他にも、楽天社員で英語が苦手なのに海外転勤させられた社員の言葉が紹介されている。英語が得意な社員を海外へ転勤させるのではなく、あくまで仕事ができる人間を転勤させたからだそうだ。多少英語ができなくても、環境が変われば英語は話せるようになるだろうという読み通り、彼らはその高い仕事能力を発揮し、英語をマスターしたそうだ。

    第5章 楽天グローバル化計画
    楽天の次なる目標はグローバル化をし、売上げを10兆円を越すことだ。そのために、これからどうしていくかということも書かれている。

    第6章 グローバル化は日本の生命線
    日本人唯一の欠点、グローバルなコミュニケーション能力。特に、この能力の重要な要素の一つ、英語力が日本人には不足している。もし日本人に英語力があったならば、今日のような経済的凋落を招くことはなかった。英語を通じて、世界のビジネスの動向に注意を払っていれば、もっと早い段階で「ものづくり神話」は崩壊するという認識を持つことができたはずだ。今からでも遅くないので、国家レベルで、国民の英語力の底上げに取り組むべきだ。実際に楽天の社内公用語を英語にして、ますますその思いを強くした。この2年間で最初はたどたどしかった英語を話す社員達も、今では普通に英語を使って仕事をしているのを見ていると、誰でも英語を話せるようになるというのを自信を持って言える。
    でも何故英語が話せないのか。日本の英語教育に問題があると指摘する。どのような英語学習が必要なのか、ここで三木谷氏が説明している。
    また、これから楽天社内で培ったこの英語化のノウハウをすべてオープンにして公開していくそうだ。(個人的には、この壮大な実験のおかげで、楽天の新しいビジネスも生まれるのではないかと思う)
    この実験データのおかげで、これからの日本の英語力アップに貢献することを期待したい。

    最後に、三木谷氏の今の気持ちを書きながら、次に取り組みたい事は、プログラミング言語を社員全員に習得させたいとのこと。たしかに、僕もコンピュータを使っていると、プログラミング言語が分かるといいのにと思う場面がある。プロレベルとまでいかないまでにしても、ある程度プログラミング言語が分かることで、楽天はますますグローバルに競争力を持つ会社になるでしょう。

    この本は、グループ7000人以上の日本人全員が英語を習得するという実話です。そのためにとても説得力があります。どんな英語学習本より説得力があると思うと同時に、これからの厳しい時代を生きていくためには、僕らは置いていかれないように日々英語の勉強をし英語をマスターしていくと同時に、その先に目指す物を見つけていく必要があると痛感しました。

    何事もがむしゃらに取り組めば結果は出る。そんなことをこの本は教えてくれます。

  • 今頃、楽天社内では目標達成できなかった人とそうでない人の明暗がはっきりしているのでしょうか。
    「英語公用語化」ってものすごいインパクトがあるけれども、やみくもに英語を話せ!といっているわけではなく、楽天が目指す場所はどこなのか、それを実現させる手段としての英語公用語のプロセスはどうあるべきなのか、が考えつくされているのがよくわかる。これは「英語」に焦点があたっているものの、やはり楽天流の仕事論として読める本。KPI設定の方法や、検証、オープンな社風でこそのトップへの情報のあがり方と、それを受け入れる度量のある経営陣。会社が全面的にバックアップして、英語の勉強が出来る、なんてとってもうらやましい話。
    次にめざすのが、プログラミング、と宣言していて、これまた深く共感。これだけITが不可欠になっている中で、プログラミングのプの字も知らないでは済まされない。プログラミングを学ぶことは、たとえそれがどんな言語であったとしても、1文字間違ってもプログラムは動かない、とか、書いたようにした振舞わない、とかが体感でき、システム化にあたっての要件定義におけるMECEの重要性の理解につながるのだ。
    TOEIC受験者にとっても、どのぐらいのスコアの人が、どのぐらい勉強すれば750点のバーが超えられるのかの事例があり、参考になります。

  • 三木谷さんが楽天の公用語を英語にしたことについて、なぜ英語科する必要があったのかどのように進めていったのかその思いなどが書いてある

  • 楽天での社内の公用語を英語にする取り組みを実施した社長の目線から説明してある。たかが英語とのタイトルではあるが、グローバル化が日本企業に重要であることを述べ、そのために世界の公用語となっている英語を話せるようにし、コミュニケーションをスムーズにするということである。決して流暢な英語でなくてよく、片言でも英語を使って意思疎通が行えれば問題ない。
    当時は賛否両論あったと思われるが、日本文化や日本語を否定している訳ではなく、英語を学ぶことで自国にも新たな見方を生み出すと考えている。
    楽天はIT企業で英語化を推進しやすい環境にあったとは思うが、他の日本企業にも広がって行く取り組みだと思う。現に現在の自分の職場で海外に展開する際に書類を日本語から英語に翻訳する作業があり、元々を英語で記載しておけば必要のない作業だと何度も感じた。
    私の英語のレベルはまだ自由にコミュニケーションを取れるほどではないので、一度社内が英語化すると想定して、不自由ないレベルまで身につけたい。

  • 英語の習得は筋力トレーニングに似ているというのはわかりやすい表現だ。どちらも適切な頻度で適切な負荷を維持しなければならない。楽天が社内公用語を英語化すると発表した時、自分もニュースで見て驚いた記憶があるが、その後すっかり忘れてしまっていた。本書で英語化の宣言から移行期間の2年間に取り組んだこと、段階的に切り換えるといった会社の効率性低下を抑制するための運用への気遣い、そして宣言通り英語化した今、楽天が感じているメリットについて興味深く読んだ。自分の会社はまだまだそんな兆しはないけど、個人レベルではいいかげん英語ひとつも使えないのはまずいんじゃ、と内心焦りはじめてきたところだ。そんな心境の自分にはまさにうってつけのタイミングで読んだ本で、楽天社員を見習って英語の勉強を開始することにした。2020年いちばん最初に読んだ本がこれでよかった。

  • ふぅ~
    読んだ。

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著者プロフィール

三木谷浩史(みきたに・ひろし)
1965年神戸市生まれ。88年一橋大学卒業後、日本興業銀行に入行。93年ハーバード大学にてMBA取得。興銀を退職後、96年クリムゾングループを設立。97年2月エム・ディー・エム(現・楽天)設立、代表取締役就任。同年5月インターネット・ショッピングモール「楽天市場」を開設。2000年には日本証券業協会へ株式を店頭登録(ジャスダック上場)。04年にJリーグ・ヴィッセル神戸のオーナーに就任。同年、50年ぶりの新規球団(東北楽天ゴールデンイーグルス)誕生となるプロ野球界に参入。11年より東京フィルハーモニー交響楽団理事長も務める。現在、楽天株式会社代表取締役会長兼社長。

「2014年 『楽天流』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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