ブクログでも話題に!2023年発売の個性豊かな短編小説5選

こんにちは、ブクログ通信です。

名作や話題作と呼ばれる作品にはある種の安定感がありますが、誰かの批評を聞く前に、自分の価値観だけで作品を熟読したい時には、新刊本がおすすめです。自分の好きな作家や話題の作家の新作は、「今度はどんな物語で楽しませてくれるのか」と期待感が高まりますよね。

今回は、2023年に発売された本の中から、特におすすめの短編小説を5作品集めました。まとまった読書時間が取れない方にも、新しい作家を開拓したい方にも手に取ってほしい短編小説ばかりを集めましたので、参考になりましたら幸いです。

1.米澤穂信『可燃物』ロジカルな捜査と推理が光る!新シリーズ始動

可燃物
米澤穂信『可燃物
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あらすじ

群馬県太田市の住宅街で、可燃ゴミから発火する連続放火事件が発生した。県警の葛班が捜査を始めるも、月曜から木曜にかけ、連続して3件もの放火が確認された後、犯行は途絶える。容疑者特定に至らず、犯行の動機も見えない放火事件に共通項はあるのか(『可燃物』)。上司に疎まれ、部下からも好かれず。葛警部の卓越した捜査能力が鮮やかな5編の短編集。

おすすめのポイント!

『黒牢城』で第166回「直木賞」受賞の他、国内ミステリ・ランキング史上初の4冠を果たした米澤さん。ですが意外にも、警察ものの推理小説は本作が初めてだそうです。組織内での評価は高いものの、寡黙で無愛想な主人公・葛警部。ド派手な推理劇というよりは、理詰めで事件解決に導いてゆく展開になっていますので、推理合戦をしながら読んでみるのも楽しそうです。各話のタイトルも秀逸で、小気味良い読後感の短編小説となっています。

米澤穂信さんの作品一覧

面白かった。人間の行動って必ず論理的に破綻なく解き明かせるのかと思ってしまうほど、納得した。当たり前と思い込んでしまうことも、必ず裏を取るなんて、いい加減な私にはできないな、凄いな。

gaiaさんのレビュー

2.近藤史恵『ホテル・カイザリン』毒を孕んだ8つの短編

ホテル・カイザリン
近藤史恵『ホテル・カイザリン
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あらすじ

高校二年の学園祭。校舎のエントランスに貼られた「降霊会、行います」のポスターに、僕は思わず足を止めた。責任者は幼馴染みの宮迫砂美。嫌な予感がした僕は、実行委員の仕事を抜け出し、降霊会が行われるという理科準備室へと向かった(『降霊会』)。人間の心の谷底を流れる残酷さ、秘められた絶望と真実が、容赦のない筆致で抉り出される彩り豊かな8つの物語。

おすすめのポイント!

切れ味の鋭い文章で描かれる8編はどれも、どこかホラー的な要素を孕んでいます。見てはいけないものを見たような、それでいて、もう少し奥まで覗き込んでみたくなるような、人間の真理を炙り出すような作品群に出会えるでしょう。「ゾッとする」「ヒヤリとした」というレビューも。飲み口は柔らかいのに酔いやすいお酒を飲んだ時のように、思いがけない毒を食らう短編ばかりです。肝まで冷える短編で、残暑を乗り越えるのも良いかもしれません。

近藤史恵さんの作品一覧

8編収録されている作品集。冒頭の『降霊会』が素晴らしい。学園祭の実行委員で語り手である南田。子供騙しのような降霊会が展開されていく中で南田自身のことと繋がっていく。その展開の不穏さや、どんでん返しとそれだけでは終わらないラストの衝撃まで一気読みで本当にすごい。他の作品も面白いけれど『降霊会』がひとつ抜けている印象。

MISERYさんのレビュー

3.窪美澄『ルミネッセンス』寂れた団地が舞台のダークサイド小説

ルミネッセンス
窪美澄『ルミネッセンス
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あらすじ

50代の私は、バツイチ、子無しの数学教師だ。30年近くも女子校で教えていると、期待せず、落胆しないようになる。そんな私ですら、気を滅入らせていることがある。母の老いだ。足首を捻った母の介助のため、週末毎に母の住む団地へ帰る度、溜め息が漏れる。そんなある日、実家の近くで買い物をしていると、見知らぬ女性に声をかけられ……(『トワイライトゾーン』)。

おすすめのポイント!

収録されているのは、『トワイライトゾーン』の他、『蛍光』『ルミネッセンス』『宵闇』『冥色』と、どれも光と影を感じさせる五つの物語。低層団地をベースに、シャッター街と化した商店街、寂れた歓楽街、墓場のような町の闇が渦巻き、引き込まれる展開になっています。窪美澄さんは、『夜に星を放つ』で第167回「直木賞」を受賞し、今最も勢いのある作家さんの一人です。程良い不気味さがあり、呑まれるような読書がしたい方におすすめの連作短編集となっています。

窪美澄さんの作品一覧

各篇のタイトルをシャッフルしても違和感がないほど全てのイメージは繋がっている。人生の黄昏に差し掛かり 過去や後悔という闇に呑み込まれる心の有り様がどのようなものか、今の私には分からない。だが 人がゆっくりと狂っていく描写には強い説得力があった。読み手によって、この物語から受け取るものは全く異なるのではないか。

Tomoyukiさんのレビュー

4.一穂ミチ『ツミデミック』稀代のストーリーテラーが贈る犯罪小説集

ツミデミック
一穂ミチ『ツミデミック
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あらすじ

大学を中退し、夜の街で客引きのバイトをしている優斗。ある日、バイト中に話しかけてきた女は、中学時代に死んだはずの同級生の名を名乗った。過去の記憶と目の前の女の話に戸惑う優斗は——(『違う羽の鳥』)。渦中の人間の有様を描き取った心震える全6話。

おすすめのポイント!

コロナ禍をきっかけに、人生に行き詰まった人々の物語を描いた短編集です。本作がテーマにしているのは、コロナに感染したことによる苦悩ではなく、あくまでコロナ禍に染まった社会において苦しむ人々の姿です。未曾有の事態に巻き込まれた人々が社会を生き抜くため、そして自分自身を守るために犯罪に巻き込まれてしまう。そんな登場人物たちに、読者が抱く感情は怒りか憐れみか、それとも——?各話それぞれに違った読み応えを味わえるエンタメ作です。

一穂ミチさんの作品一覧

新型コロナウイルスのパンデミック下での犯罪=「ツミデミック」なのかー。なるほど!6話の犯罪短編小説、どれもが不穏で少し怖くて…でもその中に人間味みたいなものも感じられる。ちょっと不思議な読後感だった。個人的には「特別縁故者」が一番良かった。

ねこさんのレビュー

5.青崎有吾『地雷グリコ』「騙しと理詰め」が冴えわたる頭脳バトル小説!

地雷グリコ
青崎有吾『地雷グリコ
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あらすじ

射守矢真兎、女子高生。勝負事にやたらと強いが、平穏を望む彼女が日常の中で風変わりなゲームに巻き込まれ……?ミステリ界の旗手が仕掛ける本格頭脳バトル小説、全5編!

おすすめのポイント!

様々なゲームが登場し、頭脳戦を繰り広げてゆく連作短編集です。「グリコ」「じゃんけん」「だるまさんがころんだ」など、誰にでも身近なゲームに独自のルールやトリックが加わり、相手を出し抜くための駆け引き心理バトルが展開されます。難易度が徐々に上がってゆき、最後の最後までハラハラさせられる構成力は圧巻です。主人公をはじめ、キャラクターたちにも個性があり魅力的なので、映像化も期待したいところです。一気読み必至の学園青春ミステリをお見逃しなく!

青崎有吾さんの作品一覧

青崎有吾さん初読みです。馴染みのある遊びやゲームをアレンジして、頭脳バトルを繰り広げていくストーリーですが、プレイヤー射守矢真兎が最高。ゲームでの駆け引きや心理戦にハラハラし、一気に読んでしまいました。フォールーム・ポーカーは、やや力技で押し切った感がありましたが、すべて読後感は良し。青崎さんの別の作品も読みたくなりました。

あいらぶさんのレビュー


今回は、2023年発売の個性豊かな短編小説5選をご紹介しました!
気になる作品には出会えましたか?ぜひ読書生活の参考にしてくださいね。