-
哀しい予感 (幻冬舎文庫 よ 2-14)
- 吉本ばなな
- 幻冬舎 / 2006年12月12日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
あの人は、そういったなつかしいものや、胸の痛むことや、どうしようもなく歯ぎしりするようなことのすべてだった。
あの人がかさをさして雨の校庭を横切ってやってくるのを見ているだけで、僕は何かを思い出しそうになって気が狂いそうになったものです。
2024年5月8日
-
話の終わり (白水Uブックス)
- リディア・デイヴィス
- 白水社 / 2022年12月28日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
その女だけがもつ体のパーツの一つひとつが、それが愛する女のものであれば、彼にとってはかけがえのないものになった。持ち主にとってよりも大切なものだった。
2024年3月26日
-
水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫)
- 安部公房
- 新潮社 / 1973年8月1日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
不幸な女よ、親切なおれは、おまえのために、
中央委員会だろうと、臨時総会だろうと、
思いつく限りの会合を思いついてやるつもりさ。
2024年2月6日
子易氏は後日、どうして日常的にスカートをはくかとうことについて、親切にわかりやすく説明をしてくれた。
「ひとつには、こうしてスカートをはいておりますと、ああ、なんだか自分が美しい詩の数行になったような気がするからです」
2024年1月1日
-
死者の奢り・飼育 (新潮文庫)
- 大江健三郎
- 新潮社 / 1959年9月29日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
この手ごたえだけ重い、
不可解な縺れをとくことはできないな。
生きている人間を相手にしているのでは、
決してそれは、やれないな。
2023年12月1日
これほど豊かな肉体が、これほど孤独だというのは、不公平すぎるような気がする。
同時になぜか似合っているような気もした。
2023年11月14日
-
芽むしり仔撃ち(新潮文庫)
- 大江健三郎
- 新潮社 / 1965年6月2日発売
- Amazon.co.jp / 電子書籍
- 購入する
《死》は僕にとって百年後の自分の不在、幾百年、限りなく遠い未来の自分の不在ということだった。それは遠くはるかな時代にも、戦争が行なわれ子供らは感化院に収容され、同性愛の男らのための娼婦をつとめる者らがおり、極めて健康な性生活をおくる者らもいるだろう。しかしその時僕はいない。
2023年9月9日
-
けものたちは故郷をめざす (岩波文庫)
- 安部公房
- 岩波書店 / 2020年3月15日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
高は最後の力をふりしぼって、まっすぐ立ちつづけていた。
まっすぐに立つことこそ、人間の尊厳の度合いだというのが、日頃の彼の信念だったのである。
たぶんそれはぜんぜんの間違いではなかっただろう。
彼は直立しているつもりで、実はおかしいほどぐらぐら揺れ続けていた。
2023年9月3日
-
夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語
- カズオ・イシグロ
- 早川書房 / 2009年6月10日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
人生って、誰か1人を愛することよりずっと大きいんだと思う。あなたはその人生に出ていくべき人よ、スティーブ
2023年8月6日
-
あなたのことが知りたくて : 小説集 韓国・フェミニズム・日本 (河出文庫)
- チョ・ナムジュ
- 河出書房新社 / 2022年8月5日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
先生はあのとき、我々が学ぶことを望み、何ごとかを知ろうと望むならば、そのためにはもしかすると一方の腕を差し出すことになるのかもしれないのだと言っていた。
学ぶということの本質は実に、そういうことなのかもしれないのですと。
2023年8月3日
見渡すかぎりの曠野です。
その中でぼくは静かに果てしなく成長してゆく壁なのです。
2023年7月13日
-
ヤモリ、カエル、シジミチョウ (朝日文庫)
- 江國香織
- 朝日新聞出版 / 2017年11月7日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
いい音だ、と真雪は思う。
もうじきこの人は帰ってしまうわけだけれど、
この音だけは私にくれればいいのに、と思う。
せめて音くらい、ここに残して行ってくれればいいのに、と。
そうすれば、真雪は一晩中この音を聴きながら眠ることができる。
朝、目が覚めて最初に耳に飛び込んでくるのもこの音だ。
会社から帰って、ドアを開けた真雪を迎えてくれるのも。
2023年6月21日
-
持続可能な魂の利用 (中公文庫 ま 51-3)
- 松田青子
- 中央公論新社 / 2023年5月25日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
自分の体が自分のものでしかないとき、体自体が必要じゃなくなる
2023年6月14日
-
カンガルー・ノート (新潮文庫)
- 安部公房
- 新潮社 / 1995年1月30日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
もうぼくのことなんか忘れてしまったみたいだ。
胸がうずいた。
そうなんだ、他人の記憶の中で生きるのだって、
けっこう骨が折れることなんだ。
2023年6月3日
-
生き上手 死に上手 (文春文庫 え 1-12)
- 遠藤周作
- 文藝春秋 / 1994年4月9日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
愛の第一原則は「捨てぬこと」です。
人生が愉快で楽しいなら、人生には愛はいりません。
人生が辛くみにくいからこそ、人生を捨てずにこれを生きようとするのが人生への愛です。
2023年5月23日
もう手遅れだって、思い切り気付かされたの?
2023年5月14日
-
十代に共感する奴はみんな嘘つき
- 最果タヒ
- 文藝春秋 / 2017年3月27日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
彼はもっと歴史として人を愛している人だった。
つみかさねてきた過去と未来を、見守るような人だ。
2023年4月24日
どうも君は神経質すぎるよ。
なぜもっと実際的になれないのだ。
いくら力んでみたって、
いずれ出来ることしか出来ないのに。
2023年4月18日
-
緑の歌 - 収集群風 - 下 (ビームコミックス)
- 高妍
- KADOKAWA / 2022年5月25日発売
- Amazon.co.jp / マンガ
- 購入する
私は彼にすべでを捧げます
なとえ彼が永遠に私を愛することはなくても
寂しくなんかありません
たとえそれが細野晴臣や
あなた
もしくはこの先
私が好きになる誰かであっても
私は
そんな気持ちでずっといたいと思った
2023年4月7日
-
バレンタイン: 短篇集
- 柴田元幸
- 新書館 / 2006年6月1日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
午前三時の目ざめ方は特権的なのである。
何なら文学的といってもいい。
2023年3月28日
-
らくだこぶ書房21世紀古書目録 (ちくま文庫 く 21-6)
- クラフトエヴィング商會
- 筑摩書房 / 2012年4月1日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
もし、生きて行くことすべてを文章に置き換えることができたなら、私は一日に何度○を打つのだろう?
2023年3月28日
-
約束された移動 (河出文庫 お 27-4)
- 小川洋子
- 河出書房新社 / 2022年8月5日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
惨めでも哀れでもありません、
気高い死体でした、
と老人は証言しています
2023年3月22日
-
無関係な死・時の崖 (新潮文庫)
- 安部公房
- 新潮社 / 1974年5月28日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
それにしても、どんなにか恐ろしい、孤独の日々だったことだろう。
ぼくは灰汁のような憐れみにひたされ、燻製のようになりながら、
やっとの思いで彼女を振り向いて見た。
2023年3月6日