全2巻。
江戸城明け渡しが間近に迫った幕末、
官軍のにわか先遣隊長として
江戸城に送り込まれた身分低き主人公。
そこで見たのは喋らず動かず座り続ける一人の侍。
明け渡しまでに此奴をどかせと命じられるも、
どこの誰だか詳細不明。
この侍は誰なのか。何のために座り続けるのか。
謎が謎を呼び、笑って泣ける、
個人的にここ数年で一番の傑作。

これはすごい。
何がすごいって浅田次郎すごい。
しばらくブクログ休んでたけど、
これは書かねばと思い久しぶりにログイン。

正体不明・目的不明の侍を巡り、
周りの人間が散々に振り回されながら
勝手に事件を大きくしていく滑稽な喜劇。
言葉で説明するとそれでしかないんだけど、
読者もそれに巻き込まれ、
主人公たちと一緒に驚き、ドキドキ、涙する。
よくもまあこの構成で最後まで読ませれるもんだ。
ミステリーだし感動話なんだけど、
客観的に整理するとコメディでしかない。
キツネにつままれた気分。

特にラスト、
どんな風に物語をたたむのかと思いきや、
力業で最後まで読者をだまし続ける。
なんでこんな構成でこんなに泣けるんだろう。
浅田次郎恐るべし。本当にこれにつきる。

人は選ぶかもしれない。
特に女性は「なんで?」が残るかもしれない。
でも、時代物に詳しい人ほど騙され、
物語の狂乱に巻き込まれそう。
時代物好きには是非読んでもらいたい。

2017年1月22日

読書状況 読み終わった [2017年1月22日]
カテゴリ 時代小説

全1巻。
デビュー作『出世花』の続篇で完結篇。

うーん。
判断に迷う。

『出世花』の続篇を願うファンの声が多く、
今作を発表したとのことだけど、
よかったのかどうか。

前作の様々なエピソードの続きで構成されていて、
最終的には主人公自身の幸福とはってとこに
落としこまれてるんだけど、
三枚聖の仕事については前作の方が良かったし、
事件の謎解きとかも前作の方が自然だし、
アクセントになってたと思う。
終わり方も悪くはないけど物足りない。
個人的には母を弔うとかで終わると思ってた。

決してつまらなくはないんだけど、
前作のファンブックって感じがした。
ファンとしては嬉しいけど、
物語としては蛇足なのかも。

2015年7月7日

読書状況 読み終わった [2015年7月7日]
カテゴリ 時代小説
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全1巻。
続篇あり。
「みをつくし料理帖」シリーズの著者、デビュー作。

幼くして両親と死別し、寺で育てられた女の子が、
死者を弔う「三昧聖」として成長していく物語。
「おくりびと」みたいな仕事。
たぶん。
映画見てないけど。

これでデビュー作かってほど、
高田郁だった。
「みおつくし」に見られる職人的な描写や、
不幸に負けないけなげな人物像は
とてもらしい。
グッと来る。

ただ、デビュー作ってことでしょうがないけど、
少しアッサリ物足りない。
続篇が有る事を知った上で読んだので、
シリーズ1作目としては気にならなかったけど。

とりあえず続篇へ。

2015年7月7日

読書状況 読み終わった [2015年7月7日]
カテゴリ 時代小説
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全1巻。
藩を追われた男2人が、初恋の人を守るため、
旧藩の陰謀に再び巻き込まれるって話。

うーん。
著者お得意の藩政ものかと思いきや、
なんだかよくわからない女心に振り回される感じ。
読者も。

とにかくヒロインがムカつく。
ムカつくままなんとなく良い話っぽくまとめられて、
最期まで腑に落ちなかった。
こういう女だいっきい!って感想のみが残り、
モヤモヤする読後感。

2015年6月29日

読書状況 読み終わった [2015年6月29日]
カテゴリ 時代小説
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全2巻。
「天地明察」の冲方丁版水戸黄門。

黄門さま最大のミステリー、
藤井紋太夫の手討ちを軸に、
水戸光圀の生涯をたどる形。
個人的に、水戸黄門と言えば村上元三版だったのだが、
これはこれであり。
藤井紋太夫事件を中心においているので、
村上版よりハッキリしてる。
キャラ造形も藤井紋太夫事件を念頭に考えられており、
自然に沖方版事件を受け止める事ができる。
背表紙に「宮本武蔵と出会う」なんて書いてあって、
やばいかなーと思ったけど、
これも割と説得力があり、
トンデモ感はあまり無かった。

ただ、惜しむらくは、
最大のテーマであるはずの事件の真相について、
そこまで盛り上がらなかった事。
ここがガッとできてたら
エピローグいらなかったのに。
クライマックスでなく、
前半がピークになってしまった印象。

少年時代が面白すぎた事もあり、
事件の真相が盛り上がりに欠ける事もあり、
少し物足りない読後感に。
おしい。

2015年6月29日

読書状況 読み終わった [2015年6月29日]
カテゴリ 歴史小説
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全1巻。
三十路前の女三人が急に伊勢参りに旅立つ話。
直木賞作家・朝井まかて版、東海道中膝栗毛。

いや面白い。
江戸→伊勢までの道すがら、
数々の事件に巻き込まれていく、
痛快(元)ずっこけ三人組。

主人公達の設定が秀逸。
女の曲がり角、
青春の終わりを自覚しだす三十路前の女三人。
それなりに背負った人生の哀しみと
センチメンタリズムが、
物語を単純な痛快コメディじゃなくしている。
妙にリアルに胸に沁みる。

惜しむらくはクライマックスのアッサリ感。
他作品でもそうだったけど、
最期に全部の謎が集約して盛り上がるんじゃなくて
駆け足で消化してる感がちょっとある。
結果、女達のそれぞれの哀しみ、
そして哀しみと改めて向き合うこれからについての
掘り下げが浅くなり、
キャラがイマイチ確立しないままで終わっちゃった。
おしいなあ。

でも、
クライマックスに用意されてた驚きは
著者っぽくて好きだった。

2015年5月25日

読書状況 読み終わった [2015年5月25日]
カテゴリ 時代小説
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全1巻。
新シリーズ1作目。
江戸時代に実在した小説家・柳亭種彦が、
とぼけた仲間と市井の事件を解決する。
て話。

うーん。
まだシリーズ1作目だからってのはあるけど、
畠中先生の他シリーズ、
「しゃばけ」はもちろん、
「まんまこと」「ちょらちょら」とかと比べると、
イマイチぱっとしない印象。
正直普通。

マンガ業界をマンガ化した
「バクマン」ってマンガがあったけど、
あれの小説業界版。
+αで江戸時代って感じ。

多分一番楽しいのは先生自身で、
読者はいつもの「畠中節」を楽しめない感じ。
楽しみ方のベクトルが違う。
可愛さもホンワカもちょっと控えめ。
表紙がいつもと違う感じなのが象徴してると思う。

まあ、今後の展開に期待。
というか、
急に違う方向の物語を発表された理由が気になる。
先生がノりにノってるからってんなら良いけど、
病気にかかってたりしないか勝手に少し心配になった。

2015年5月13日

読書状況 読み終わった [2015年5月13日]
カテゴリ 時代小説

全2巻。
父の急死により、
いきなり参勤交代の責任者をまかされる主人公。
父から何も引き継いでいないのに、
しくじりがあれば切腹、断絶。
やがて見えてくる事件の真相。
とぼけた面々の助けを借りながら、
果たして無事お江戸に着くことができるのか?
って話。

いやおどろいた。
喜劇じゃん。
浅田先生の物語には
ニヤリとさせられることが多いけど、
ここまで明確に笑わせにきたのは初じゃなかろうか。
まるっきり三谷幸喜の世界。

中山道を江戸に向かう道すがら、
各地で一話完結の事件が起きるつくり。
これが毎回笑って泣かされる。
軽快だけどぐっとくる、
さすがとしか言いようのない出来。

ただ、ちょっとだけ残念だったのが、
主人公の影が段々薄くなっていくこと。
もう途中から御殿さまに完全に食われちゃってる。
クライマックスや最後もあっさり目だけど、
これは映画化にはちょうど良い具合かも。

というか、読み進めるうちに、
三谷幸喜で映画化決定としか思えなくなってきた。
御殿さまは谷原章介、
主人公は二宮君とかでどうでしょう。
ちょっと年いってるけど。
双子は割と本気でザ•たっちとか良いと思う。

映画化に期待。
いや、面白かった。

2015年5月10日

読書状況 読み終わった [2015年5月10日]
カテゴリ 時代小説
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全1巻。
「闇の獄」の続篇。

うーん。
シリーズ化するっぽいので評価は保留。
今作に限って言うとあんまり。

前作でシリーズ化に期待していたけど、
前作で興味深かった主人公の葛藤とか、
今後が気になる道連れキャラとか、
あっさり切り捨てられててちょっとがっかり。
前作はまだ光るものがあったけど、
今作は凡作って印象。

まあ、シリーズとしての出来に期待。

2015年5月7日

読書状況 読み終わった [2015年5月7日]
カテゴリ 時代小説
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全1巻。
「刀剣商ちょうじ屋光三郎シリーズ」にも出てくる
刀鍛冶・源清麿の生涯。

著者の真骨頂、職人もので刀鍛冶。
面白くないはずがない。
いろいろ不明なところがあるらしい清麿を
説得力ある物語で再構築した手腕はさすが。

ただ、なんでだろ、
ちょっとあっさりした印象。
というか、
そもそも清麿が打った代表作ってどれなんだろう。
刀の素人でも名前を知ってるような
有名な刀打ってないのかな。
清麿って名前のメジャーさに比べ、
刀自体はメジャーじゃないのかな。
あっさりした印象の根は
刀自体の印象の少なさな気がしてきた。

最初に打った刀が、
清麿本人にとって重要なのはうなずけるが、
目利き達にも評価され続けるのもちょっと出来過ぎ。
その原因も、
飛び抜けた代表作の不在(物語中で)のせいかも。

著者が清麿を描いたってのは、
個人的には著者が本丸に攻め入ったってイメージだけど、
「いっしん虎徹」の方が好きだったかも。

2015年5月7日

読書状況 読み終わった [2015年5月7日]
カテゴリ 歴史小説
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全1巻。
だけど、別視点の
「天主信長〈裏〉 天を望むなかれ」とセット。

うむ。
本能寺の変の解釈は新しく、
少し強引な箇所はあるものの
それなりの説得力を持ち、
目から鱗だった。
ちょっとおおってなった。
おもしろい。


問題は、〈裏〉 を発表しちゃった事。
〈表〉は織田側視点で竹中半兵衛がメイン、
〈裏〉は黒田勘兵衛視点。


出版としては〈表〉 の別視点ですよって
セット感を押し出しているが、
前後関係が変わっちゃってたり、
想いや動機が変わっていたり、
視点が変わって見えてくる新たな真実とかじゃなくて
単純に別の物語にしあがってる。
基本は同じ物語なのに。
A案B案どっちが良い?ってだけ。

著者のあとがきでは、
捨てるに忍びなかった別案を、
文庫化にあたって〈裏〉 として出したとある。
ただの別視点じゃなくて、
読者が2度楽しめるように別の物語としたと。
しかし、別の物語と言えるほど違わず、
中途半端な調整レベルで、混乱しか起きない。
読者のための調整ではなく、
著者自身のための調整の結果だと思う。

上田先生は割とこうだよねって感じ。
設定とか凄く面白くて、
物語に引き込む力も強いのに、
ツメが甘い感じ。
そんなのいいから物語の核心である
上田版本能寺の真実について、
もっと深く掘り下げてほしかった。
〈表〉も〈裏〉も勘兵衛の動機付けが甘い。
あと信長の最期も。

やっぱり本気の伝奇ってより、
時代文庫が向いてる人なのかなあと思った。
ファンだけど。

2015年4月4日

読書状況 読み終わった [2015年4月4日]
カテゴリ 歴史小説
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全2巻。
言わずと知れた浅田次郎先生の代表作。
変わり種新撰組。

ずっと読んでなかった壬生義士伝。
メジャーすぎて敬遠してた。
新撰組のマニアックな人が主役ってのは知ってたし、
なおさら。

いやあ。
すごい。
やっぱりうまいなあ。
がんがん泣かされる。

大正の世で、
主人公に関わりのあった人達にインタビューしていく形式。
過去の主人公本人の独り語りと、
現代でのインタビュー内容が交錯する構成。
あれだ。
「永遠の0」が同じような構成。

侍とは、義とは何か。
守銭奴と後ろ指を指されながら
懸命に妻子を思うラストサムライ。
斉藤一のくだりはヤバかった。

ただ、自分の読解力のなさのせいか、
本作の重要な部分に何点か疑問が残る。
え?なんで?結局なんだったの?って。
また、主人公が途中で退場したままなのも残念だったし、
インタビュワーが物語に絡まないままだったのも肩すかし。

すごい泣かされるし、心に残る物語であるが、
もうちょっと丁寧でも良かったんではと思った。
映画見たらもっと解りやすいのかな?

2015年3月30日

読書状況 読み終わった [2015年3月30日]
カテゴリ 歴史小説
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全1巻。
狩野永徳の生涯。

久しぶりに全開の山本節って感じ。
よくぞ最期まで書いてくださいました山本先生。

あいかわらず知識ゼロでも読ませる職業小説。
特に物語中盤、信長との絡みは、
初期作品の「信長テクノラート三部作」を思わせ、
嬉しくなった。
出世作「火天の城」の主人公との絡みとか、
初期代表作と、
山本先生が亡くなってからの物語がリンクして
感慨深いものがある。

『火天の城』
http://booklog.jp/users/bullman/archives/1/4167735016


ちょっと残念なのが、
永徳のライバル等伯、そして等伯の妻へ対する思いが
物語のキーとして設定されているんだけど、
結果的にあまり目立たず、
結末に向けて収束もしなかった事。
個人的には、
最期に本音をぶちまけるようなシーンを期待してた。
等伯に対して。
等伯の妻の絵の使い方ももったいない。

とはいえ、読ませる力は凄い。
最期までぐいぐい引っ張られた。
山本兼一真骨頂。

2015年3月19日

読書状況 読み終わった [2015年3月19日]
カテゴリ 歴史小説
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全一巻。
戊辰戦争で活躍した医師、関寛斎。
の、妻の生涯。

浅学にして関寛斎という人物を知らなかったんだけど、
すごいな。この人。
波瀾万丈すぎ。
物語はその関寛斎を支えた妻の視点で進む。

著者のヒット作「みをつくし料理帖」と同じく、
これでもかってくらい運命に翻弄される主人公像。
ただ、主人公が朗らかでポジティブな人格のため、
「みをつくし料理帖」みたいにジメジメしてない。
困難を困難と思わず前向きで、
あたたかい愛が深すぎて泣けてくる感じ。

すごく良いんだけど、
中盤以降、関寛斎の史実を追う段になって、
全体的に駆け足になってしまったのが残念。
関寛斎の活躍にページを割くことで
主人公が弱くなるのを懸念したのかもしれないが、
だったら「○○年後」みたいに
大きくジャンプしちゃえば良かったのに。
小刻みに何度も飛ばすから、
ただの早送りになっちゃってるのがもったいない。

まあ、良い話なのは間違いない。
自分も前をむいて生きようと思わせてくれるし、
関寛斎記念館とか行ってみたいと思ったし。
だけにちょっともったいない。

2015年3月13日

読書状況 読み終わった [2015年3月13日]
カテゴリ 歴史小説
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全1巻。

うわあ。
どうした。
最近ダメダメだなあ。
平将門とか面白かったのに。

真田幸村だけなら一杯あるけど、
後藤又兵衛とセットの設定が興味深く手に取った。
が、
書き散らした印象。

真田十勇士を否定する設定はまあ良いとしても、
代わりの小説的なキャラが全員活用できてない。
最後まで何だったんだアイツって役割のキャラ多い。
設定の叩き台のまま発表された感じ。
小説としてぐちゃぐちゃ。
PHP文庫.....って感想。

ただし、
又兵衛も幸村も最期がすごく良い。
全然な物語で嫌気さしていたのに、
ここは泣きそうになった。
読ませるパワーはすごいんだから、
久しぶりにちゃんとしたの書いてほしい。

2015年1月19日

読書状況 読み終わった [2015年1月19日]
カテゴリ 歴史小説

全1巻。
哀しい恋をしている女絵師が、
様々な哀しさと出会う話。

結構いい。
葉室先生が女を書くと外れる印象を持っていたけど、
これはよい。

女絵師が依頼された「博多八景」。
その一景を一章として、
一章ごとに完結する哀しいエピソードが積み重ねられていく、
群像劇のような構成。
地味な話だけど中だるみ無く最後まで読ませる。
クライマックスは結構グッと来た。

「待つ女」なんて湿ったテーマだし、
活かしきれていないキャラがいて少し気になったけど、
奇麗な物語だった。
女性が読んでも良いかも。

2015年1月15日

読書状況 読み終わった [2015年1月15日]
カテゴリ 時代小説
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全二巻。
盗賊の引き込みをしていた男が、
裏切られて殺されかけ、
盲目の殺し屋として再生する。
って話。

これシリーズ化するのかな。
シリーズになるなら読みたい。
これで完結ならうーんって感じ。

座頭市と必殺仕事人が合体したような感じだけど、
主人公は殺し屋になってから逆に真人間になっていき、
そこの葛藤とか結構いい。
表紙はあいかわらず中二くさいけど、
中身は割と重厚感あるし。

ただ、上で記した通り、
シリーズ一作目なら結構期待だけど、
これで終わりなら尻切れとんぼ。
今後に期待。

2015年1月13日

読書状況 読み終わった [2015年1月13日]
カテゴリ 時代小説
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全1巻。
本能寺の変の真相。

いいね。
すごくいい。
なんで逝っちゃったの山本先生。

朝廷黒幕説を採用した本能寺の変。
で、
群像劇。
これがすごくいい。
帝や公家、信長や光秀などそれぞれの思惑が錯綜し、
緊張感が持続して目が離せない。
朝廷が信長討伐を決意する経緯や
信長の国家観にも説得力あるし、結構新鮮。

惜しむらくは本能寺後の扱い。
ここはもっと薄くて良かったんじゃないかと思った。
少ない枚数で明智が討たれるまでを扱ってるので、
駆け足の状況説明になっちゃってる。
明智と朝廷のやり取りも前半に比べると説得力が弱い。
物語は明智の絶望で終わって
数行で事後を説明くらいでも良かったんではと思った。

とはいえ、
間違いなく読む価値のある一冊。
おもしろい。

2015年1月7日

読書状況 読み終わった [2015年1月7日]
カテゴリ 歴史小説
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全1巻。
藩を放逐された浪人が、
亡き妻の遺言を守るために帰ってくる。
帰参した浪人を待っていたのは
藩を二分とする御家騒動。
保身に勤しむ甥っ子とともに
好まざる争いに巻き込まれていく。
って話。

や。
いいね。
本当、葉室先生は小藩の政争が抜群にうまい。
今の作家達の中でピカイチだと思う。

ロマンチックな「想い」の設定は
胸が苦しくなるほど切ないし、
どんでん返し連続なミステリーは、
だれもが怪しく見える前半とか本当秀逸。

ただ、惜しむらくは謎解きパート。
それぞれの謎の答が深く絡まり合ってなく、
小粒な謎が一杯って印象になっちゃってる。
「想い」についても駆け足消化な感があり、
「事件の真相」「妻の真実の想い」に絞って
うまく昇華してほしかった。
ちょっと要素が多すぎ。

まあ、
少し白けた後味は残るかもしれないが、
グッとくるのは間違いないと思う。

2015年1月6日

読書状況 読み終わった [2015年1月6日]
カテゴリ 時代小説
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全2巻。
真田幸隆〜真田幸村の真田3代史。

久しぶりにど真ん中の正統派歴史小説を読んだって感じ。
珍しく、真田幸隆の時代から真田氏を掘り下げた本著。
「表裏比興の者」とか「日の本一の兵」とか評されるまでの流れが分かりやすく、真田入門として良いかも。

ただ、この枚数で三代ってことで、
各人の掘り下げが少しあっさり。
小説的なキャラを設定するも、
物語としてうまく活用しきれてないように感じた。
物足りない感は残る。

これが池波先生の「真田太平記」レベルの巻数だったら
かなりな名作になっていたと思う。
残念。

とはいえ、それなりに長く、読み応えはある。
変なひねり方もなく、素直で真摯な物語って印象。

2014年12月2日

読書状況 読み終わった [2014年12月2日]
カテゴリ 歴史小説

全1巻。
九州の儒学者、広瀬淡窓の物語。

ああ。
ぽい。
今作を読む前に「冬姫」を読んだけど、
あっちは全然だった。
こっちはらしい。

大きなメリハリがある訳じゃないけど、
まさに表題の通り、
しっとり、じわじわ染みてくるような話。
生きていくことの哀しさが底に漂い続ける
藤沢周平っぽい葉室凛。
ちょい役だと思ってたやつが重要なキーマンだったり、
大塩平八郎と対比するアクセントだったりと、
構成もよくできてるなあと思った。
まあ、地味だけど。

自分はみちのく出身なので、
藤沢先生の暗く湿った感じは理解できるんだけど、
カラッと眩しい九州の人間が、
どうして藤沢先生と同じようなニオイをさせているのか、
改めて不思議に思った。

2014年11月26日

読書状況 読み終わった [2014年11月26日]
カテゴリ 歴史小説
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全1巻。
織田信長の次女、冬姫の生涯。

うーん。
葉室先生はたまにこういうの書くよねって印象。

冬姫っていうテーマと、
表紙や広告のおかげで売れそうだけど、
個人的にはあんまり。

史実をネタにした伝奇的なエピソードが積み重ねられていく感じの作り。
キャラの掘り下げが浅いままの仲間達が
なんとなく強くて危機を乗り越え、
冬姫すてきでだいたい解決。
一話ごとにエピソードが完結することもあって
なかなか感情移入できなかった。

藩政ものとかじゃなく、
ど真ん中の歴史もの書くとスベる印象が有るなあ。
葉室先生。

2014年11月26日

読書状況 読み終わった [2014年11月26日]
カテゴリ 歴史小説
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現在進行形のシリーズ。
現状4巻まで。
(2014.09.16)

元旗本の読売屋(今で言う新聞記者)が
世の悪を暴くって感じの物語。

おもしろい。
結構いんじゃないの。

改めて考えると、
訳あり新聞記者が事件解決って
2時間ドラマのサスペンスみたいだけど、
時代物では案外目新しい設定かも。
著者の代表シリーズである
『風の市兵衛』シリーズもそうだけど、
主人公の職業の設定がうまいなあと思う。

『風の市兵衛』は、実は実家が権力者っていう、
水戸黄門的勧善懲悪の世界だし、
無敵の剣術使っていうど真ん中でベタな設定だけど、
今作は少しニヒル。

腐れ役人にも腰低く、平気で袖の下を差し出す主人公。
清廉潔白な正義の味方でなく、
清濁併せ吞むリアリストって感じ。
剣術も強いけど何度も危なくなるし、
市兵衛ほど現実離れしていない。

あと、クライマックスのチャンバラが、
テンポよくて気持ちいい。
カメラが2カメ3カメに切り替わる感じ。
ある戦い、その同時刻の別の戦いみたいに。
結構斬新なんじゃないかしら。これ。

『風の市兵衛』のベタさがあんまりって人は
こっちの方が面白いかも。
ちょっとマンネリ化してきているし、
設定がおざなりになってきているし。
市兵衛。
これからが楽しみなシリーズ。

2014年9月16日

読書状況 読み終わった [2014年9月16日]
カテゴリ 時代小説
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全1巻。
北条早雲とならぶ関東下克上の雄、
長尾景春のはなし。

戦国初期、北条早雲と同世代で、
何度負けてもあきらめずに抗い続けた人らしいが、
いかんせんこの時代の関東は複雑すぎ。
正直あまり頭に入ってこなかった。

そこそこメジャーな太田道灌を兄と慕いながら、
後に争う事になる流れは良いのだが、
中盤早々に太田道灌は退場してしまう。
その後は舞台の複雑さもあって
急に事務的になっちゃう印象。
後半は、前半とは違う物語な感じ。

生涯全てでなくてvs太田道灌に絞ればよかったのに。

2014年9月16日

読書状況 読み終わった [2014年9月16日]
カテゴリ 歴史小説
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