ジェリーフィッシュは凍らない (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488406219

作品紹介・あらすじ

特殊技術で開発され、航空機の歴史を変えた小型飛行船〈ジェリーフィッシュ〉。その発明者であるファイファー教授を中心とした技術開発メンバー6人は、新型ジェリーフィッシュの長距離航行性能の最終確認試験に臨んでいた。ところが航行試験中に、閉鎖状況の艇内でメンバーの一人が死体となって発見される。さらに、自動航行システムが暴走し、彼らは試験機ごと雪山に閉じ込められてしまう。脱出する術もない中、次々と犠牲者が……。21世紀の『そして誰もいなくなった』登場! 精緻に描かれた本格ミステリにして第26回鮎川哲也賞受賞作、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 80年代のアメリカが舞台。雪山に不時着した飛行船のクローズドサークルミステリ。
    連続殺人が起こる艦内の様子、事件を捜査する刑事の視点、犯人らしい人物の独白、といった3パートに分かれて進む展開は、私にとって斬新な構成だった。

    しかしながら、航空工学、化学合成などなど、理化学的なシナリオは、文系の私からすると少々難解であった故、理解するのに読み返しも含めて多分の時間を要しつつ読了。

    本作は21世紀の『そして誰もいなくなった』との煽りがある作品らしいが、私はその名作ミステリーと名高いアガサ・クリスティのソレをまだ拝読していない。これが読み進めるも、都度ピンと来ない理由に拍車をかけてしまったようだ。

    ただし、施された叙述トリックには、いつもの如く呆気なく騙され惨敗。いやはやお見事だった。

    そして、ふと気付く。
    そもそも私が小説読書デビューして、来月で1周年。今まで通読してきたミステリーは9割9分日本が舞台。

    日本人ならではの喜怒哀楽、嫉妬、妬み、嫉みがあって、感情移入していく私には、本作品はハードルが高かったようだ。そう、私はまだまだ読書初心者の中級あたりなのだろう。

    だが、それで良い。
    わたしは読書が好きな、ただのおじさんだ。
    それ以上でも以下でもない。

    読みたい作品を、その頃合いと気分で読む。

    それが今回、この頃合いと気分で本作品に触れられたことは良い巡り合わせだった。

    • まーちゃんさん
      突然のメッセージ、失礼します。

      いつもakodamさんの本棚、参考にさせてもらってます。

      僕も以前、本書を読んで、同じ様な感想を持ちまし...
      突然のメッセージ、失礼します。

      いつもakodamさんの本棚、参考にさせてもらってます。

      僕も以前、本書を読んで、同じ様な感想を持ちまして…共感しました!

      本書とは関係ありませんが…いつも「いいね!」ありがとうございます。今後も励み(?w)とさせていただきます。
      2021/06/23
    • akodamさん
      まーちゃんさん

      メッセージありがとうございます。

      本作品のようなミステリーを、いつの日かじっくりと味わえる日がくれば良いなぁと思いつつ。...
      まーちゃんさん

      メッセージありがとうございます。

      本作品のようなミステリーを、いつの日かじっくりと味わえる日がくれば良いなぁと思いつつ。

      私の本棚を参考にしていただけているなんて、とても光栄です。ありがとうございます。

      私こそまーちゃんさんのレビューや本棚を拝見させていただいていますよ。

      このご縁に感謝です。
      改めてよろしくお願いいたします!
      2021/06/23
  • 犯人と被害者の関係がこんなに希薄なのにこんな大胆なトリックを実行するのがびっくり。犯人も含め誰もいなくなってしまった事件。トリックが思いもつかず完全に騙されました。ある計画を乗っとることで不可能を可能にしていった。凄かった

  • 前々から読みたい気持ちはあったのだが、一度肝となる部分を他の方のレビューで読んでしまった気がしたので、忘れるまで寝かせようと思っていた一冊。
    でも、意識すればするほど忘れられない。。。
    たまたま図書館の棚にあるのを目にしたので、まぁいいかと手に取る。

    1983年、U国(アメリカでしょうね)では、小型飛行船ジェリーフィッシュが実用化され、それはさながら大物俳優がクルーザーを保有するような感覚で、世間でのポジションを確立していた。
    開発元のUFA社では軍からの依頼を受け、最新機能を搭載した新型ジェリーフィッシュの試験航行段階に入っていた。
    その試験航行中、同行していたジェリーフィシュを支える技術の発案者フィリップ・ファイファー教授の毒殺体が発見される。
    そこからひとり、またひとりと乗組員が殺されていく。。。

    事件が繰り広げられるジェリーフィッシュの中での出来事と、事件発覚後の警察(マリア&漣)の捜査パートが交互に語られる。
    そして幕間としての犯人の独白。

    扉には21世紀の『そして誰もいなくなった』なんていう紹介文あったけど、めちゃくちゃ十角館だった。
    十角館が『そして誰』を意識して書いたとも言われているので、正しいっちゃ正しいのだけれど、どんぴしゃで書きすぎるとネタバレしすぎちゃうという配慮なのか、ウケを狙っただけのことなのか。
    「あの一行」ばりの事実が明らかになったときの、マリア&漣達は気付いていなくて読者側だけ「え!?」ってなる構図もまさに十角館。

    本書における「あの一行」はWhat(何が起きていたのか)に対するどんでん返しとなるのだが、読みどころはそれに尽きない。

    幕間によりWhy、Whoはあからさまとも思える。
    だがHowの部分、どうやってこの事件を起こして、事件解明への痕跡を残さず幕引きできたのか分からない。
    結果、あぁなるほど。
    やっぱり肝と思っていたところはそうだったのだが、それがどう組み込まれていたのかに思い至らず、結果、単純といえば単純な仕掛けにしてやられた。

    意味をなしていない伏字だったり、わざわざ国外設定にしているところ(これは物語の背景、展開上の理由もあるとは思うが)にしっくりこないところもあったが、鮎川哲也賞受賞も納得の一冊。

    次は『ブルーローズは眠らない』。

  • クローズドサークル系
    気嚢式浮遊艇「ジェリーフィッシュ」の試験航行中に、雪山に誘われるように不時着。そこで乗組員たちが次々に殺されていく。
    犯人の過去。警察の捜査。ジェリーフィッシュでのパニック状態の中の殺人。この3つのパートの話がが交互に進んでいき、テンポよく読むことが出来ました。
    手口はびっくりするほど大掛かり。だけど、この状況なら有り得るかと思ってしまう。
    ジェリーフィッシュ内での惨劇も矢継ぎ早に起こり、誰が犯人かわかりませんでした。
    捜査ではマリアと漣の掛け合いもテンポよく、空軍少佐まで巻き込んで、深刻なのにちょっとコミカルで面白かった。
    最後に犯人と刑事たちが対峙した時、犯人より質問は一つだけと言われ、マリアが発した質問にドキっとしました。

  • 理化学的な部分が、正直私には難しかった。
    でも『十角館の殺人』を彷彿とさせる衝撃の一行、犯人の情熱的な感情、ラストのシーンは、なんとも魅力的だ。

  • 特殊技術で開発された小型飛行船"ジェリーフィッシュ"。その航行試験中に起きた連続殺人事件の真相に、地上にいる探偵コンビが迫る。

    現代版『そして誰もいなくなった』といわれる本作品。
    理系要素の強いクローズドサークルミステリーだったが、マリアとレンの探偵コンビのかけ合いのおもしろさもあり、一緒に推理を楽しみながら読むことができた。

    殺人現場と地上とテンポよく場面が切り替わり飽きさせない展開。
    設定も事件のトリックも発想が斬新。
    すべてを語らずとも、きっとそうなんだろうなと思わせるような、想像の余韻を残すラストもよかった。

  • 市川憂人さん初読みです。
    真空の気嚢で浮力を得る画期的な飛行船の開発に関わる人達が試験飛行の工程で次々に殺されていく。実際は真空の気嚢は無いので未来の話かと思いきや、1980年代の設定となっています。

    犯人がそれなりに賢く冷静なので、どうしても動機が腑に落ちないと感じてしまった。毎日少しずつしか読めず時間がかかり夢中になれなかったので、盛り上がらなかったのかもしれない。
    次の「ブルーローズは眠らない」で答えを出すか。。。

  • 初読みの作家さんのデビュー作。
    パートがきっちりと3つに分かれつつ進んでいくので理解しやすかった。
    ただ、警部のマリアの話し方が好きにはなれなかった。
    ここからシリーズ化されていっているようなのだが…

    本書の解説や他の方のレビューに『十角館の殺人』の「あの1行」と書かれているのだが、私はあの有名な小説の何一つ内容を覚えていない。
    購入本だったのだが、とっくの昔に断捨離してしまっている。

  • 楽しめた、一冊。

    特殊技術で開発された小型飛行船。
    その性能確認試験の飛行中にメンバーが一人変死。
    そしてお決まりの次なる犠牲者が…。

    脱出不可能、いわゆる密室状態で読者をいざなう本格ミステリ。

    なかなか最初はペースが上がらなかったけれど一人また一人…にやっぱり謎解き心はくすぐられた。

    一つの疑問、矛盾が消えてもまた一つの新たな謎が生まれる。
    それをマリアと蓮のコンビが読み手の頭をも整理し、一緒に謎解きにいざなってくれる、この過程が読みやすくて良かったな。

    読後は うん、楽しめた、そんな思いが湧き上がった作品。

  • 「21世紀のそして誰もいなくなった」の紹介ありで気になっていた小説。ジェリーフィッシュという小型飛行線が不時着して起こる殺人撃。マリア&漣が個性的で良い。一瞬で綻びに気づき大胆に行動できるマリアと頭脳明晰でクールな漣。この2人の会話だけでも楽しめた。後半はやや重くなるが面白かった。

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著者プロフィール

1976年、神奈川県生まれ。東京大学卒。2016年『ジェリーフィッシュは凍らない』で、第26回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。他の著書に『ブルーローズは眠らない』、『グラスバードは還らない』(以上東京創元社)、『神とさざなみの密室』(新潮社)など。

「2023年 『東大に名探偵はいない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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